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第7章 新国テンプルム
第348話 勇者の血を飲んだ吸血姫
「ん……ん? だ、誰っ!?」
いつも通り国王の寝室で寝ていると、部屋の隅に何かの気配を感じた。
また眷女のみんなが侵入してきたのか?
でも寝室には入ってこられないように、強力な結界が張ってある。その僕の結界を越えることができるのは、久魅那の空間魔法しかない。
しかし、そんなことには空間魔法を使わないように、久魅那とは固い約束をしたはず。
まさかそれを破ったのか? いや、何かおかしい。
異様な気配に、僕は瞬時に眠気を飛ばして警戒態勢を取る。
『領域支配』で感知できなかったということは、問答無用で僕を殺しに来たわけではないようだが……。
なんにせよ、この僕に気付かせずにここまで接近できるのは、並大抵の者じゃない。
「貴様が当代の『勇者』か? ……ふん、まだ子供だな」
女性の声!? だが、眷女のみんなじゃない、知らない声だ。
暗い部屋の中、声の主を暗視で見てみると、そこに居たのは……。
闇にも輝く紫色の長髪に赤く仄光る瞳、真っ白い肌には薄手の布がピタリと張り付き、均整の取れた身体のなまめかしいラインを作り出している。
身長はメジェールよりも少し高く見え、162~3センチというところだ。
背には骨張った黒い翼を生やし、そして僕を見つめながらニヤリと笑う口元からは、鋭い牙がのぞいていた。
外見上は20歳そこそこという年齢に見えるが、恐らくアテにならないだろう。
この気配といい魔力といい、こいつの正体は……。
「お前は……『吸血鬼』か!?」
最強の魔族『吸血鬼』。
魔族は悪魔とは別の種族で、魔界ではなく地上にて生活をしているが、基本的には人類と敵対している存在だ。
それが僕の部屋に? いったい何の目的があってきたんだ?
「ふむ、少し違うな。ワシはただの吸血鬼ではなく、古の王の血を受け継ぐ『吸血姫』だ」
『吸血姫』!?
吸血鬼一族をまとめる姫様ってこと?
確か、古代には4人の『吸血王』が居て、その上に『真祖』という吸血鬼の始祖が君臨していたということらしいけど、もう数千年もそれらの存在は確認されてない状態だ。
彼らが住んでいたという城もあったようだけど、その場所もすでに忘れ去られている。
現在、通常の吸血鬼はたまに出現するが、上位種はとっくに滅んだと思われていた。
その吸血鬼の王族が生きていたのか!
そうか、あの穴から出てきたのが、この『吸血姫』なんだ!
『吸血鬼』は通常でも相当手強い存在ではあるが、その姫ともなると、最強クラスの人間でもないかぎりまず太刀打ちできるような相手じゃない。
しかし、僕は別だ。たとえ『吸血姫』といえども、僕の敵ではないはず。
その僕の強力な結界を越えてこられるなんて、ちょっと信じられないんだが……。
「小僧、貴様の前の勇者……ヴァンルーグはまだ生きておるのか?」
「えっ、前の勇者だって?」
前回の勇者が生きていたのは、数百年前――確か、亡くなってからすでに500年以上経っているはずだ。
当たり前だが、現在生きているはずはない。
「前の勇者になんの用があるか知らないが、もうとっくに亡くなってるよ」
「…………ふん、やはりワシの眠っている間に死んでしまったか。ワシを封印した仕返しをしたかったのに残念だ」
「お前を封印!?」
なるほど、前回の勇者が、あの穴があった場所にこの『吸血姫』を封印したのか。
復活したついでに、その復讐をしにここまでやってきたということなんだろうな。
多分、現勇者メジェールの気を感じてやってきたんだろうけど、何か間違って僕の部屋に入ってしまったんだろうか?
……あれ、ちょっと待て。
前回の勇者って、ヴァンルーグって名前じゃないぞ?
ヴァンルーグって誰だ?
「お前はいま『ヴァンルーグ』という名前を出したが、そんな勇者は居ないぞ? いったい誰のことを言ってるんだ?」
「バカな、何故そんなくだらぬウソをつく?」
「ウソじゃない、前回の勇者はそんな名前じゃ……」
いや、『ヴァンルーグ』という人は前回の勇者ではなく、もっと前の勇者なのでは?
この吸血姫が長い間――つまり500年より遙かに長期間封印されていたなら、勇者はさらに以前の人になるはずだ。
恐らくこいつは、自分がどれだけの期間封印されていたのか知らないんだろう。
しかし、それにしても『ヴァンルーグ』という名前には心当たりがない。
歴代勇者は10人以上いるらしいけど、記録に残ってるのはここ3000年程度。それより以前となると、名前の残ってない人がほとんどだ。
……まさか、この吸血姫は3000年以上封印されていたってこと?
それが、何故いまになって蘇ったんだ?
「久々に起きてみれば、地上はすっかり変わっておって驚いたぞ。ちと眠りすぎたようで、魔力の回復に時間が掛かってしまったがな」
……そうか、僕のせいだ!
僕がこのテンプルムを作るとき、整地作業で封印を吹き飛ばしちゃったんだ!
それでこの吸血姫は目を覚まし、魔力が回復したところで地上に出てきたってことか。
なら、僕がきっちりカタをつけないとな。
「ヴァンルーグという勇者に復讐をしたかったんだろうけど残念だったな。それに、言っておくが僕は勇者じゃないぞ。だが、勇者の代わりに僕がお前を退治することにしよう」
「貴様が『勇者』ではないと? またくだらぬウソを。ワシがここに居ることこそ、貴様が『勇者』である最大の証拠だ」
「お前がここに居ることが証拠? 何故それが……って、そうだ、よくこの僕の結界内に入ってこられたな? 自慢じゃないけど、魔王ですらそう簡単に侵入を許す結界じゃないんだが?」
「だから、それが貴様が『勇者』である証なのだ。ワシだからこそ、『勇者』の結界を無効にできる。ワシは勇者の血を飲んでいるからな」
な……なんだってーっ!?
いつも通り国王の寝室で寝ていると、部屋の隅に何かの気配を感じた。
また眷女のみんなが侵入してきたのか?
でも寝室には入ってこられないように、強力な結界が張ってある。その僕の結界を越えることができるのは、久魅那の空間魔法しかない。
しかし、そんなことには空間魔法を使わないように、久魅那とは固い約束をしたはず。
まさかそれを破ったのか? いや、何かおかしい。
異様な気配に、僕は瞬時に眠気を飛ばして警戒態勢を取る。
『領域支配』で感知できなかったということは、問答無用で僕を殺しに来たわけではないようだが……。
なんにせよ、この僕に気付かせずにここまで接近できるのは、並大抵の者じゃない。
「貴様が当代の『勇者』か? ……ふん、まだ子供だな」
女性の声!? だが、眷女のみんなじゃない、知らない声だ。
暗い部屋の中、声の主を暗視で見てみると、そこに居たのは……。
闇にも輝く紫色の長髪に赤く仄光る瞳、真っ白い肌には薄手の布がピタリと張り付き、均整の取れた身体のなまめかしいラインを作り出している。
身長はメジェールよりも少し高く見え、162~3センチというところだ。
背には骨張った黒い翼を生やし、そして僕を見つめながらニヤリと笑う口元からは、鋭い牙がのぞいていた。
外見上は20歳そこそこという年齢に見えるが、恐らくアテにならないだろう。
この気配といい魔力といい、こいつの正体は……。
「お前は……『吸血鬼』か!?」
最強の魔族『吸血鬼』。
魔族は悪魔とは別の種族で、魔界ではなく地上にて生活をしているが、基本的には人類と敵対している存在だ。
それが僕の部屋に? いったい何の目的があってきたんだ?
「ふむ、少し違うな。ワシはただの吸血鬼ではなく、古の王の血を受け継ぐ『吸血姫』だ」
『吸血姫』!?
吸血鬼一族をまとめる姫様ってこと?
確か、古代には4人の『吸血王』が居て、その上に『真祖』という吸血鬼の始祖が君臨していたということらしいけど、もう数千年もそれらの存在は確認されてない状態だ。
彼らが住んでいたという城もあったようだけど、その場所もすでに忘れ去られている。
現在、通常の吸血鬼はたまに出現するが、上位種はとっくに滅んだと思われていた。
その吸血鬼の王族が生きていたのか!
そうか、あの穴から出てきたのが、この『吸血姫』なんだ!
『吸血鬼』は通常でも相当手強い存在ではあるが、その姫ともなると、最強クラスの人間でもないかぎりまず太刀打ちできるような相手じゃない。
しかし、僕は別だ。たとえ『吸血姫』といえども、僕の敵ではないはず。
その僕の強力な結界を越えてこられるなんて、ちょっと信じられないんだが……。
「小僧、貴様の前の勇者……ヴァンルーグはまだ生きておるのか?」
「えっ、前の勇者だって?」
前回の勇者が生きていたのは、数百年前――確か、亡くなってからすでに500年以上経っているはずだ。
当たり前だが、現在生きているはずはない。
「前の勇者になんの用があるか知らないが、もうとっくに亡くなってるよ」
「…………ふん、やはりワシの眠っている間に死んでしまったか。ワシを封印した仕返しをしたかったのに残念だ」
「お前を封印!?」
なるほど、前回の勇者が、あの穴があった場所にこの『吸血姫』を封印したのか。
復活したついでに、その復讐をしにここまでやってきたということなんだろうな。
多分、現勇者メジェールの気を感じてやってきたんだろうけど、何か間違って僕の部屋に入ってしまったんだろうか?
……あれ、ちょっと待て。
前回の勇者って、ヴァンルーグって名前じゃないぞ?
ヴァンルーグって誰だ?
「お前はいま『ヴァンルーグ』という名前を出したが、そんな勇者は居ないぞ? いったい誰のことを言ってるんだ?」
「バカな、何故そんなくだらぬウソをつく?」
「ウソじゃない、前回の勇者はそんな名前じゃ……」
いや、『ヴァンルーグ』という人は前回の勇者ではなく、もっと前の勇者なのでは?
この吸血姫が長い間――つまり500年より遙かに長期間封印されていたなら、勇者はさらに以前の人になるはずだ。
恐らくこいつは、自分がどれだけの期間封印されていたのか知らないんだろう。
しかし、それにしても『ヴァンルーグ』という名前には心当たりがない。
歴代勇者は10人以上いるらしいけど、記録に残ってるのはここ3000年程度。それより以前となると、名前の残ってない人がほとんどだ。
……まさか、この吸血姫は3000年以上封印されていたってこと?
それが、何故いまになって蘇ったんだ?
「久々に起きてみれば、地上はすっかり変わっておって驚いたぞ。ちと眠りすぎたようで、魔力の回復に時間が掛かってしまったがな」
……そうか、僕のせいだ!
僕がこのテンプルムを作るとき、整地作業で封印を吹き飛ばしちゃったんだ!
それでこの吸血姫は目を覚まし、魔力が回復したところで地上に出てきたってことか。
なら、僕がきっちりカタをつけないとな。
「ヴァンルーグという勇者に復讐をしたかったんだろうけど残念だったな。それに、言っておくが僕は勇者じゃないぞ。だが、勇者の代わりに僕がお前を退治することにしよう」
「貴様が『勇者』ではないと? またくだらぬウソを。ワシがここに居ることこそ、貴様が『勇者』である最大の証拠だ」
「お前がここに居ることが証拠? 何故それが……って、そうだ、よくこの僕の結界内に入ってこられたな? 自慢じゃないけど、魔王ですらそう簡単に侵入を許す結界じゃないんだが?」
「だから、それが貴様が『勇者』である証なのだ。ワシだからこそ、『勇者』の結界を無効にできる。ワシは勇者の血を飲んでいるからな」
な……なんだってーっ!?
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