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第5章 9月-旅行(3)
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「なあ、橋が見えてきた」
窓の外を見ていた茂が声を上げる。
「あ、そっちから見える?」
「うん。見える」
運転しながら高志は答えた。左側はすぐ近くがもう海で、前方に明石大橋が見える。
「休みだからもっと混んでるかと思ったけど、そうでもなかったな」
「だな。ここまでは結構スムーズだったな」
そのまましばらく進んでいくと、内陸側に入り込んだのか、視界が遮られて橋が見えなくなった。やがて何車線もある広いトンネルに入る。それを通り抜けて再び外に出ると、そこはもう橋の上だった。視界が一気に明るくなる。雲の少ない青い空がきれいに広がっていた。
「おお。すげえ」
茂が海を見下ろしながら声を上げる。すぐ向こうに見えるのはもう淡路島だ。本州と淡路島との間の狭い海の上に架けられた巨大な橋の上を今まさに渡っている。高志自身も気持ちが昂揚するのが分かった。
その心地良さを堪能しながら走っていると、しかしあっという間に橋を渡り終わって、気付けば淡路島に上陸していた。再び両横を木々に挟まれながら、道を進む。
「そう言えば、お前、淡路島って初めて?」
前を見たまま、ふと茂に問うと、「うん」と横で頷く気配がする。
「淡路島も四国も行ったことない。明石大橋も鳴門大橋も初めて。お前は何回も来てる?」
「淡路島はな。四国は俺も行ったことない」
「あっそうなんだ? じゃあお前も鳴門大橋は初体験か」
「そう。渦な」
「渦な!」
話していると、サービスエリアの案内が見えたので、高志はウインカーを出して、入口につながる左側の車線に移動した。他にも多くの車が入っていく。
「入る?」
「うん。ここ、橋が見えるし」
人気の観光スポットでもあるそのサービスエリアは、駐車スペースも車で一杯だったが、高志は建物から少し離れた位置に空きを見付けて車を停めた。エンジンを止め、車を降りる。
「観覧車とかもあるんだな」
助手席側から降りた茂が、駐車場の横に設置された観覧車を見上げている。
「乗りたいか?」
高志が聞くと、茂は苦笑して、
「いや、まあ興味なくはないけどさ。さすがに男二人はなあ」
と言った。
いったんトイレに寄った後、展望エリアの方に向かう。広場のようになっているそこには、それぞれに景色を楽しむたくさんの人がいた。茂が海際の柵の方まで歩いていくので、高志も後に続く。茂はしばらく橋を眺めた後、思い出したようにスマホを取り出して写真を撮った。
「天気がいいから、きれいだな」
いつしか、橋ではなく橋を見る茂を見ていた高志は、そう言って振り向く茂に気付かれないように、景色の方に視線を戻した。
「そうだな」
しばらくそのまま佇む。気持ちの良い風に吹かれながら、高志はじっと目の前の広い風景を見ていた。快晴の青い空と海、明石大橋、小さく見える対岸の街並み。
しかし、前方の景色よりも隣にいる友人の方が気になった。高志はもう一度茂に視線を向けるため、さりげなく少し距離を取った。さっきから、こうやって非日常を茂と一緒に過ごしていることにじんわりとした嬉しさを感じているのを自覚していた。茂は向こう側にある明石大橋の方を見ていて、高志にはその頬だけが見えている。茂の髪がさらさらと風に吹かれている。
茂が思ったよりも長い間ずっと景色を見ているので、高志は邪魔しないようにその場を離れた。
窓の外を見ていた茂が声を上げる。
「あ、そっちから見える?」
「うん。見える」
運転しながら高志は答えた。左側はすぐ近くがもう海で、前方に明石大橋が見える。
「休みだからもっと混んでるかと思ったけど、そうでもなかったな」
「だな。ここまでは結構スムーズだったな」
そのまましばらく進んでいくと、内陸側に入り込んだのか、視界が遮られて橋が見えなくなった。やがて何車線もある広いトンネルに入る。それを通り抜けて再び外に出ると、そこはもう橋の上だった。視界が一気に明るくなる。雲の少ない青い空がきれいに広がっていた。
「おお。すげえ」
茂が海を見下ろしながら声を上げる。すぐ向こうに見えるのはもう淡路島だ。本州と淡路島との間の狭い海の上に架けられた巨大な橋の上を今まさに渡っている。高志自身も気持ちが昂揚するのが分かった。
その心地良さを堪能しながら走っていると、しかしあっという間に橋を渡り終わって、気付けば淡路島に上陸していた。再び両横を木々に挟まれながら、道を進む。
「そう言えば、お前、淡路島って初めて?」
前を見たまま、ふと茂に問うと、「うん」と横で頷く気配がする。
「淡路島も四国も行ったことない。明石大橋も鳴門大橋も初めて。お前は何回も来てる?」
「淡路島はな。四国は俺も行ったことない」
「あっそうなんだ? じゃあお前も鳴門大橋は初体験か」
「そう。渦な」
「渦な!」
話していると、サービスエリアの案内が見えたので、高志はウインカーを出して、入口につながる左側の車線に移動した。他にも多くの車が入っていく。
「入る?」
「うん。ここ、橋が見えるし」
人気の観光スポットでもあるそのサービスエリアは、駐車スペースも車で一杯だったが、高志は建物から少し離れた位置に空きを見付けて車を停めた。エンジンを止め、車を降りる。
「観覧車とかもあるんだな」
助手席側から降りた茂が、駐車場の横に設置された観覧車を見上げている。
「乗りたいか?」
高志が聞くと、茂は苦笑して、
「いや、まあ興味なくはないけどさ。さすがに男二人はなあ」
と言った。
いったんトイレに寄った後、展望エリアの方に向かう。広場のようになっているそこには、それぞれに景色を楽しむたくさんの人がいた。茂が海際の柵の方まで歩いていくので、高志も後に続く。茂はしばらく橋を眺めた後、思い出したようにスマホを取り出して写真を撮った。
「天気がいいから、きれいだな」
いつしか、橋ではなく橋を見る茂を見ていた高志は、そう言って振り向く茂に気付かれないように、景色の方に視線を戻した。
「そうだな」
しばらくそのまま佇む。気持ちの良い風に吹かれながら、高志はじっと目の前の広い風景を見ていた。快晴の青い空と海、明石大橋、小さく見える対岸の街並み。
しかし、前方の景色よりも隣にいる友人の方が気になった。高志はもう一度茂に視線を向けるため、さりげなく少し距離を取った。さっきから、こうやって非日常を茂と一緒に過ごしていることにじんわりとした嬉しさを感じているのを自覚していた。茂は向こう側にある明石大橋の方を見ていて、高志にはその頬だけが見えている。茂の髪がさらさらと風に吹かれている。
茂が思ったよりも長い間ずっと景色を見ているので、高志は邪魔しないようにその場を離れた。
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