不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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うわさ 3

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「エアイール、助けて」

 憔悴した様子のヴァレンがエアイールの元を訪れた。

「……どうしたのですか」

 わずかに眉根を寄せ、エアイールはヴァレンを部屋に迎え入れる。時間は昼を少々回った程度で、見習いたちはまだ学校だ。

「おまえ、見習いを三人抱えていたよな。どうやって、やっていっているわけ?」

 ぐったりと椅子にもたれかかりながら、ヴァレンが質問を投げかけてくる。

「どうやってと言われても……まあ、普通に。そういえば、ミゼアス付きの見習いたちはあなたが引き継いだのでしたね。何か困りごとでも?」

「困りごとっていうか……あの子たち、ちょっと癖が強くてね。特にアルン君なんか、だんだんミゼアス兄さんに似てくる」

「アルン……確か、五花候補といわれている子でしたね。それならば、癖が強くても仕方ないのではありませんか?」

「ああ……五花候補か……そうだな、五花のアクが強いのはおまえを見てもよくわかることだし」

「……どういう意味ですか」

 眉をひそめてエアイールは呟く。

「アクが強いというのなら、あなたに勝る者などいないでしょう。逆立ちで島一周は達成したのですか?」

「それ、かなり昔の話じゃないか。俺が見習い時代の。今は品行方正に生きているんだよ、俺は」

「……面白い冗談ですね」

「いやいや、本当だって。だってさ、あの子たちなんてミゼアス兄さんからの大切な預かりものだろう。変なことを仕出かしちゃいけない、って抑えているんだよ」

 大きく息を吐き出しながら、ヴァレンは疲れたような声を漏らす。

「ああ……何となく、わかりましたよ。あなた、変に抑えているからうまくいかないのではありませんか?」

「そうかなぁ……」

「あなた、人の行動や心の内は異様なほど読み取るのに、自分が絡むといまいちですね」

 くすり、とエアイールは微笑を浮かべる。

「んー、じゃあさ、いい方法教えてくれる?」

 拗ねたように唇を尖らせ、ヴァレンが要求してくる。

「構いませんよ。お教えしてさしあげましょうね」

 エアイールがヴァレンの手を取って目を細めると、ヴァレンが口元にわずかな笑みを乗せた。

「ここで? 寝室で?」

「あなたのお好みで構いませんよ」

 愉快な気分になってくすくすと笑いを漏らすと、ヴァレンがエアイールの頬にそっと手を伸ばす。

「運動には付き合うけれど、終わったらきちんと教えろよ」

「もちろん」

 自らの頬に重ねられた手を取り、エアイールはヴァレンを引き寄せた。
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