不夜島の少年～兵士と高級男娼の七日間～

99．真相

「所詮は小競り合い、さしたる危険もないので戦場の経験を積むには良い機会だとか何とか言って、伯爵子息を送り出すことに成功した。戦場で孤立させることまでできた。しかし、そこで邪魔が入ったのだよ」

「俺……ですか……」

　助けようという強い意思があったわけでもなく、偶然でしかない。それでも結果として、アデルジェスは伯爵子息を助けることとなった。

「そう。きみが伯爵子息を助けたのは彼らにとって計算外だった。彼らは計画を練り直さなくてはならなかった。そして、邪魔になりそうなきみは始末してしまったほうがいいとなったのだよ」

「それで、この島に……」

　昨日、ミゼアスからも聞いた。始末するか取り込むべく、この島にご褒美と称して送り込んだのだと。

「グリンモルド伯爵夫人の妹がこの島にはいるからね。この島は隔離された、特殊な場所だ。この島で起こったことは外部に漏れにくい。ここでなら怪しまれずに始末できると思ったのだろう」

　そのあたりからの話は、昨日起こった出来事になるのだろう。フェリスはアデルジェスを始末しようとし、失敗したのだ。
　あのとき用意されたのは、強力な興奮剤だったという。腹上死でもさせたかったのだろうとエアイールは言っていた。
　もしかしたらアデルジェスは、島ではしゃぎすぎて腹上死ということになっていたかもしれないのだ。

「しかし、グリンモルド伯爵は彼らの動きを察知していたのだよ。証拠を集めるために、褒賞としてきみをこの島に送り込むことも許可した。きみに接触する相手がいることを察して。……つまり、きみは囮に使われたのだよ」

「え……」

　驚いてアデルジェスはウインシェルド侯爵を見る。
　グリンモルド伯爵が自分を囮に使ったとはどういうことだろうか。ご子息を助けたことに対してあれだけ感激し、上機嫌に送り出してくれた伯爵がまさかそのようなことを……。
　アデルジェスの頭は混乱し、様々な疑念がぐるぐると渦巻く。

「この件についてグリンモルド伯爵から私のところに相談があってね。私はきみに見張りをつけた。それが、ミゼアスだ」