尾股城の姫君

くろ

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第一章

狆の宝物

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スッキリとしたエロ関白は上機嫌で城を後にした。
父上も、母上も、これでこの城も暫く安泰だと、ほっと胸を撫で下ろしていた。
しかし、姫君は違っていた。自分自身の先の人生を考えると、暗い気持ちになった。
あの醜いエロ関白の側室となり、好き放題オモチャにされ、ゆくゆくは飽きられ、肩身の狭い思いをしながら生涯を終えることとなる。
一体この人生は何なのだ?私は何の為に生まれてきたのだろう。
そしてもっと姫君を悩ませたのは、もし、自分があのエロ関白と同じ性別で、同じ両親に育てられ、同じ環境で育ったなら、同じことをしたのではないか?ということだった。
その疑問の答えは、いくら考えても出るものでは無かった。でも、あのケダモノと同じ性質が、自分自身の内に秘められている可能性を、胸を張って否定もできない。
そして、それは自分自身だけではなく、父上や母上、兄上、家臣や侍女、みんなに当てはまることではないのか?

そんなことを考えて、部屋で塞ぎ込んでいると、どこから入ってきたのか狆がやってきた。少し離れた場所で、尻尾をゆらゆらと振りながらこちらを眺めている。狆は口に四角を持っていなかったが、このときの姫君の心は、そこに関心が向かなかった。

「おちんちん、おいで」

姫君が優しく呼ぶと、狆は甘えるように飛びかかってきて、頬を優しく舐めてくれた。そこは涙の塩分で濡れていた。
狆が「もう泣くな」と言っているようだった。その優しさに触れ、涙はもっと溢れてきた。

「お前だけは、お前だけじゃ…」

狆は首を傾げると、やがて後ろを向いて歩き出した。襖の前までくると姫君の方を振り向いて、さも「開けろ」と言いたげにしている。開けてやると部屋を出ていき、少し歩くとまた姫君の方を振り返る。どうも「付いてこい」と言っているようだったので、姫君は訝しみながらも付いていってみることにした。

狆は壁の前に立ち止まると、その表面をガリガリと掻き始めた、すると、壁がくるりと回転して開いた。空いたスペースに狆が潜り込んだので、姫君も後に続いた。

そこは二畳程の踊り場になっており、中程に階段があった。狆は踊り場の隅に置いてあるごちゃごちゃとした小さいガラクタのようなものの集まりの横にお座りしてドヤ顔をして見せた。
よくみると、いつぞや無くしたカンザシや帯の一部、香料や小銭などがごちゃごちゃと集められていた。その中に四角もあった。
ハッ!として姫君は四角を取り上げた。
ムクムクと快楽の予感が脳内を過り、口角は自然と上がった。
ここは誰もいない…
装飾に手を掛ける。期待で体温が上昇する。
そして、ついに装飾を押下した。しかし、反応が無い…
なぜじゃ?と何度も押したが、やはり反応は無い。

「なんとしたことじゃ…」

卵形本体を急いで『こつぼ』から引き抜く。ホカホカの卵形を眼前にして、もう一度装飾を押下する。しかし、僅かばかり反応した後に、すぐにその動きは止まってしまった。

卵形は息絶えてしまった。
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