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野花怪異談集全100話
67話「おまえのつぶ像かさないならおまえんチぶ…………」
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「1」
ーー「神木童心神社07時32分」ーー
「お父様行ってきます」
「いってらっしゃい」
童心神社の神主の娘である神木命は春休み明け高校生デビューになる。
そして通学時でも忘れずに巫女装束を着用したまま野花高校へ登校するのである。
ーー「通学路」ーー
命が通う野花高校は自宅の神木神社から数十分で着く距離である。
そこにちょうど馴染みの永木翼と遭遇して恒例のハイタッチする。
「命、おはよう」
「おはようございます。翼さん」
彼もまた野花高校に通う同級生である。
「先週のスケボー大会どうでしたか?」
「ああ。予選落ちだけど。いい線までいったよ。あはは」
翼は高校生なると同時にスケボーを始めた。アマチュア大会ではそこそこ活躍して一定のマダム達にファンがついていた。また趣味のアナログゲームは健在だった。
命は制服の代わりに巫女装束着用してるのは学校側が特別許可してもらっているので気軽に巫女装束着用のまま通学ができる。
「今日の放課後、命も部活参加するのか?」
「はい。もちろんです」
と、命は意気込んでいた。
彼らがいろいろと会話してる間に野花高校に辿り着き各クラスの教室に入った。
ーー「野花怪異談同好会」ーー
「では、命さんね」
「はい」
怪異談同好会の部長である楓の指示により命は怪異談を披露する。
野花怪異談同好会にはそれなりに20人ほどの大所帯である。
その人前で披露するの慣れてない命はどこか緊張感があった。
「私が披露する怪異談というより、怖い体験ですね」
「へぇーどんなやつ?」
「私がちょうど街外れの公園のトイレが借りるときにそのトイレは便座ポットン式だったんですけどね。そのポットン式トイレを覗くとどこまでも広くて深い穴の底だったですよ。私怖くていつ落ちるか思ってました」
「いやぁ~。それは怖いわ」
「以上、私の怪異談はおわりです」
怪異談を披露した命に部員達は拍手する。
「次は亜華葉ね」
「来たわね。私の怪異談は先程より怖くて眠れなくなるよ。とあるつぶ像にまつわる話ね。あれはー」
ーーーーーー。
わしの名前は吉田権蔵。68歳。
わしは骨董屋で念願の欲しかった立派なつぶ像を購入することができた。
もちろん、アレをすればぶつけられるからな。
と、骨董屋に出る時妙に怪しい坊主頭の青年に呼び止められる。
「なぁ、そのつぶ像かさないか?ほんの少しだけよ」
どうやら、わしのつぶ像を貸して欲しいみたいだが無論怪しさ全開だったから拒否した。
「ならんならん!おまえさんみたいな奴にかすもんか!」
と、断るとその坊主頭は、
「そうかい。おまえんチぶ…………してやる」
と、その坊主頭はどこかへ去っていた。
坊主頭の言ってることは意味不明だったがそのまま帰宅した。
次の日、わしは家がペシャンコに潰れてしまいそのまま埋もれて亡くなった。
「2」
「どうしょう……」
僕は曰く付きのつぶ像を上司から引き取って自宅にある。
なんでも坊主頭がつぶ像かさないか?という声をかける事案が発生していた。
なんでも拒否すると家が潰されるし、実際につぶ像をかそうとしても何故か拒否されてしまうのだ。
僕は上司からつぶ像に無理矢理引き取った形であり、そのまま処分しようにもつぶ像だからないがしろ出来なかった。
その時、僕の自宅に彼が現れてくる。
「よー。おまえつぶ像持ってるだろ?それかさないか?」
終わった。ついにやってきた。
僕はどうすることもできなかった。
しかし、ふと彼の言った言葉が気になっていた。
「どうした?つぶ像かさないのか?」
なぜ彼はつぶ像かさないか?と言ってるのだろうか?
実際に貸すことはできない。
いや、かさないかさないかさない……?
僕は思わずハッと気づいたのだ。
「あるぞ!!少し待っててくれ」
僕はつぶ像かすことにした。
「ありがとうな。これで安心したぜ」
彼は満足の笑みを浮かべながら帰宅した。
僕は玄関先で傘を指してるつぶ像を見て安堵した。
「何それ?」
その怪異談を披露すると部員達は首を傾げていた。
「だから、つぶ像に傘がかさないからぶ……されたのよ」
「ん。ま、いいわ。次どなた」
楓は気を取り直して次の怪異談を披露した後、お開きになった。
ーー「とある男性部員の視点」ーー
俺は部活の帰り道の夕方だった。
当然ながら、つぶ像のアレはまったく信じてなかった。
しかし、俺は思わぬ事態に遭遇する。
「なー?おまえんちつぶ像持ってないか?俺にかさないか?」
「え!?」
ちょうど俺の自宅前にあの坊主頭の青年がいた。
まさかと思っていたがつぶ像は持っている。あの秘蔵コレクションのひとつだ。
当然、背には変えられないと思ってかすことを決めた。
「あるぞ!今からかすからな」
「お?悪いな」
ーー「数分後」ーー
「どうだ!つぶ像に傘さしたぞ」
「は?」
俺はそいつに玄関先でつぶ像に傘をさしたところを見せたがその坊主頭は納得いかず文句を言った。
「意味わかんねーよ?俺につぶ像かすんじゃねーのかよ?」
「だから!!おまえに傘さした所をみせたぞ?わかんねーかな」
俺と坊主頭と話が噛み合わなかった。そして坊主頭は「ぶ……してぇわ」とつぶやいたので俺はそうはさせないと坊主頭と揉み合いになる。そこで騒ぎが大きくなったのか近所からの通報により、警察がやってきて俺たちに事情聴取をした。
俺は家にぶ……されたくないからつぶ像に傘をさして、坊主頭はつぶ像を少し借りたくて俺に近づいてきたのだ。
その後、坊主頭はつぶ像の盗難の余罪があったため捕まった。
そしてあの一件以来、俺は玄関先につぶ像に傘をさしたままである。
「という怪異談ならどう?」
「……怖いというより、コメディかな」
「これも実話怪異談なんて信じられないな」
「私もそう思う」
とある、部員の自宅でつぶ像コレクターの部屋でそう語る。
おまえのつぶ像かさないならおまえんチぶ………… 完
ーー「神木童心神社07時32分」ーー
「お父様行ってきます」
「いってらっしゃい」
童心神社の神主の娘である神木命は春休み明け高校生デビューになる。
そして通学時でも忘れずに巫女装束を着用したまま野花高校へ登校するのである。
ーー「通学路」ーー
命が通う野花高校は自宅の神木神社から数十分で着く距離である。
そこにちょうど馴染みの永木翼と遭遇して恒例のハイタッチする。
「命、おはよう」
「おはようございます。翼さん」
彼もまた野花高校に通う同級生である。
「先週のスケボー大会どうでしたか?」
「ああ。予選落ちだけど。いい線までいったよ。あはは」
翼は高校生なると同時にスケボーを始めた。アマチュア大会ではそこそこ活躍して一定のマダム達にファンがついていた。また趣味のアナログゲームは健在だった。
命は制服の代わりに巫女装束着用してるのは学校側が特別許可してもらっているので気軽に巫女装束着用のまま通学ができる。
「今日の放課後、命も部活参加するのか?」
「はい。もちろんです」
と、命は意気込んでいた。
彼らがいろいろと会話してる間に野花高校に辿り着き各クラスの教室に入った。
ーー「野花怪異談同好会」ーー
「では、命さんね」
「はい」
怪異談同好会の部長である楓の指示により命は怪異談を披露する。
野花怪異談同好会にはそれなりに20人ほどの大所帯である。
その人前で披露するの慣れてない命はどこか緊張感があった。
「私が披露する怪異談というより、怖い体験ですね」
「へぇーどんなやつ?」
「私がちょうど街外れの公園のトイレが借りるときにそのトイレは便座ポットン式だったんですけどね。そのポットン式トイレを覗くとどこまでも広くて深い穴の底だったですよ。私怖くていつ落ちるか思ってました」
「いやぁ~。それは怖いわ」
「以上、私の怪異談はおわりです」
怪異談を披露した命に部員達は拍手する。
「次は亜華葉ね」
「来たわね。私の怪異談は先程より怖くて眠れなくなるよ。とあるつぶ像にまつわる話ね。あれはー」
ーーーーーー。
わしの名前は吉田権蔵。68歳。
わしは骨董屋で念願の欲しかった立派なつぶ像を購入することができた。
もちろん、アレをすればぶつけられるからな。
と、骨董屋に出る時妙に怪しい坊主頭の青年に呼び止められる。
「なぁ、そのつぶ像かさないか?ほんの少しだけよ」
どうやら、わしのつぶ像を貸して欲しいみたいだが無論怪しさ全開だったから拒否した。
「ならんならん!おまえさんみたいな奴にかすもんか!」
と、断るとその坊主頭は、
「そうかい。おまえんチぶ…………してやる」
と、その坊主頭はどこかへ去っていた。
坊主頭の言ってることは意味不明だったがそのまま帰宅した。
次の日、わしは家がペシャンコに潰れてしまいそのまま埋もれて亡くなった。
「2」
「どうしょう……」
僕は曰く付きのつぶ像を上司から引き取って自宅にある。
なんでも坊主頭がつぶ像かさないか?という声をかける事案が発生していた。
なんでも拒否すると家が潰されるし、実際につぶ像をかそうとしても何故か拒否されてしまうのだ。
僕は上司からつぶ像に無理矢理引き取った形であり、そのまま処分しようにもつぶ像だからないがしろ出来なかった。
その時、僕の自宅に彼が現れてくる。
「よー。おまえつぶ像持ってるだろ?それかさないか?」
終わった。ついにやってきた。
僕はどうすることもできなかった。
しかし、ふと彼の言った言葉が気になっていた。
「どうした?つぶ像かさないのか?」
なぜ彼はつぶ像かさないか?と言ってるのだろうか?
実際に貸すことはできない。
いや、かさないかさないかさない……?
僕は思わずハッと気づいたのだ。
「あるぞ!!少し待っててくれ」
僕はつぶ像かすことにした。
「ありがとうな。これで安心したぜ」
彼は満足の笑みを浮かべながら帰宅した。
僕は玄関先で傘を指してるつぶ像を見て安堵した。
「何それ?」
その怪異談を披露すると部員達は首を傾げていた。
「だから、つぶ像に傘がかさないからぶ……されたのよ」
「ん。ま、いいわ。次どなた」
楓は気を取り直して次の怪異談を披露した後、お開きになった。
ーー「とある男性部員の視点」ーー
俺は部活の帰り道の夕方だった。
当然ながら、つぶ像のアレはまったく信じてなかった。
しかし、俺は思わぬ事態に遭遇する。
「なー?おまえんちつぶ像持ってないか?俺にかさないか?」
「え!?」
ちょうど俺の自宅前にあの坊主頭の青年がいた。
まさかと思っていたがつぶ像は持っている。あの秘蔵コレクションのひとつだ。
当然、背には変えられないと思ってかすことを決めた。
「あるぞ!今からかすからな」
「お?悪いな」
ーー「数分後」ーー
「どうだ!つぶ像に傘さしたぞ」
「は?」
俺はそいつに玄関先でつぶ像に傘をさしたところを見せたがその坊主頭は納得いかず文句を言った。
「意味わかんねーよ?俺につぶ像かすんじゃねーのかよ?」
「だから!!おまえに傘さした所をみせたぞ?わかんねーかな」
俺と坊主頭と話が噛み合わなかった。そして坊主頭は「ぶ……してぇわ」とつぶやいたので俺はそうはさせないと坊主頭と揉み合いになる。そこで騒ぎが大きくなったのか近所からの通報により、警察がやってきて俺たちに事情聴取をした。
俺は家にぶ……されたくないからつぶ像に傘をさして、坊主頭はつぶ像を少し借りたくて俺に近づいてきたのだ。
その後、坊主頭はつぶ像の盗難の余罪があったため捕まった。
そしてあの一件以来、俺は玄関先につぶ像に傘をさしたままである。
「という怪異談ならどう?」
「……怖いというより、コメディかな」
「これも実話怪異談なんて信じられないな」
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