ぶっきらぼう魔女は育てたい

桜乱捕り

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293話、料理を食べる前から楽しむ魔女

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「レナ、見てみろ! 目の前に大海原があるぞ!」

「本当だ、初めて見た! 絵本で見たよりも、ずっと広いや!」

 ヒロ君との出会いにより、私に関りがあったり、サニーと同じなんだと分かった人間に対し、だんだんと心を開き始めたウィザレナとレナが、ようやく着目した海を見て興奮しながら騒ぎ出した。

「護衛兵殿! やはり海の水は、しょっぱいのか!?」

「はい、とてもしょっぱいです。ですので遊泳をする際は、お気を付け下さい」

「そんなにしょっぱいのか! よし、レナ。海に行く時が来たら、波打ち際で遊ぼう!」

「うん、そうだね!」

 そして、四人目に声を掛けた護衛兵とも、自然に会話を交わせている。中央階段付近に来るまで、目に入った兵士達に、伝達がちゃんと伝わっているのか確認してみたものの。
 合計人数、容姿や種族、全員の名前を聞いてみた所。訪ね回った兵士達全員が、しっかり正確に言い当てていた。
 まだ私達は、一階層に居るけれども。この調子だったら、二階層以降に行ったとしても、全ての兵士達が質問に答えられるだろうな。しかし……。

「……海、か」

 ウィザレナとレナは、今すぐにでも行きたそうにはしゃいでいるが。私は正直、あまり乗り気じゃない。
 ここの浜辺ではないけど、左側をずっと行って街道まで出て、そこから更に三十分ほど道沿いを歩いて行くと、私とピースしか知らない秘密の浜辺がある。
 ピースが『アンブラッシュ・アンカー』に斬首され。怒り狂って我を忘れた私が、その場に居た奴らを暴走した火属性の魔法で跡形も無く蒸発させ、ピースを二度殺してしまった浜辺が。

「なあ、護衛兵さん。この近くで二十人が一気に座れて、全員美味い飯にありつける店ってないか?」

 興奮止まぬエルフ達を、柔らかな笑みで見守っていた護衛兵の横に付いたベルラザさんが、腕を組みつつ問い掛けた。
 そうだ。色々あってすっかり忘れていたが、タートに来た表向きの目的は、全員で美味しいご飯を楽しく食べることだ。
 現在の時刻は、おおよそ十一時前後。みんなでお店へ行き、何を食べるか決めたり、料理が運ばれてくる時間を考慮すれば、ちょうど良い時間帯だな。

「飯屋ですか。ちなみになのですが、レナ様とベルラザ様は、何か食べられない物とかお有りでしょうか?」

 周りに居る人達の耳に届かぬよう、声量を落とした護衛兵が、問い掛けに疑問を返した。内容的に、今の姿ではなく、元の姿に対して言っているのかな?
 そういえば、ユニコーンや不死鳥ふしちょうって、普段何を食べているのだろうか? ちょっと気になる。

「今はエルフ族に変身していますので、ウィザレナと同じ物でしたら食べられます」

「私は人間になってるから、何でも食えるぞ」

「なるほどです。エルフ族は確か、肉、魚、乳製品、卵以外の物でしたら食べられるのでしたよね?」

「ええ、合っています」

「分かりました。でしたら……」

 エルフ族が食べられない物を確認した護衛兵が、私達が来た方角とは逆の右側へ手をかざす。

「やや遠方に、薄緑の建物が見えますでしょうか?」

「薄緑色の建物……。あそこか」

 ひたいに開いた手を添えたウィザレナが、護衛兵の言った建物を目視し、会話に加わった。
 私も言われるがまま、移した視界の先。近くにある建物と比べると、二倍も三倍も大きく、一際目立つ薄緑色の建物を見つけた。

「あそこの建物は、様々な種族御用達の大食堂でして。美味しさはもちろんのこと、お客様の要望に応えてメニューに無い料理を作ってくれたり、大人数が余裕で入れる大部屋もいくつかありますので、ゆっくりくつろぎながら料理を嗜めると思います」

「ほう。これを食べたいと言えば、即興で作ってくれるのか。それはありがたいな」

「しかも、色んな種族御用達の大食堂なんだろ? ウィザレナ達でも、食えるもんがいっぱいあるかもしれねえな」

 色んな種族の要望にも応えられて、かつ大人数が入れる大部屋がある大食堂。しかも、料理が美味しいときた。今の私達は、合計で二十人。構成された種族は、人間、ウェアウルフ、エルフ。
 正確に分けると、人間、黒龍、不死鳥、ウェアウルフ、エルフ、アンデット化した死霊使い、精霊族になるが、大体が変身魔法を使用して人間になっている。

「護衛兵さんよお。あの店には、酒に合ったつまみはあるのかあ?」

「魚を扱った料理もあると、嬉しいのですが」

「俺様も、分厚い肉が食いてえな」

 お昼時が近くなってきたこともあり、ノーム、ウンディーネ、イフリート様も各々食べたい物があるか質問をしたり、欲を呟いていく。
 みんなして、食べたい物が見事にバラバラだ。かくいう私は、ああいった料理専門店に行ったことが一度も無いので、どういう料理があるのかすら分かっていない。

「お酒とおつまみも提供していますし、タートで獲れた新鮮な魚料理。もちろん、肉料理も多数あります」

「肉料理が多数あるなら、我も行ってみたいな」

「肉、ねぇ。あたしもそれでいいかな~」

「そんなにいっぱい料理があるんだ。お母さんは、何を食べるの?」

 だんだんとみんなが触発され始め、ファートやフローガンズも食べたい物が定まってきた中。私の隣に居たサニーが、問い掛けてきた。

「そうだな……。料理屋には一度も行ったことがないから、まずはどんな料理があるのか、全部見てから決めようと思ってる」

「お母さんもなんだ。じゃあ、私もそうしよっかな」

 私と同じく、料理屋初体験のサニーも、ふんわりと笑みを浮かべた。たぶんサニーも、何を食べるか迷っていそうだ。
 サニーは基本、好き嫌いはなく、私やアルビルが作った料理を何でも美味しそうに食べてくれる。
 なので、ここでも美味しい料理を沢山食べて、みんなと一緒に楽しんでいって欲しいな。

「サニー。食べたい物があったら、どんどん言ってくれ」

「うんっ! おいしい料理があったら、お母さんに教えてあげるね!」

「ふふっ、ありがとう。私も美味しい料理を見つけたら教えてあげるから、一緒に食べような」

「うんっ!」

 屈託の無いサニーの眩しい笑顔を見て、私の口元が緩んでいくのを感じた。どうしよう、もう既に楽しい。
 私も特に好き嫌いは無いし、料理に対する欲も持ち合わせていないから、どんな料理を食べるのかサニーと決めるのもアリだな。

「なあ、ベルラザ。料理を注文する時は、どう頼めばいいんだ?」

 不意に背後から、私の興味を惹くアルビスの声が聞こえてきた。注文の仕方を確認しているということは、アルビスも料理屋に行くのが初めてなのかな?

「ああ~……。店によって、頼み方が結構違うんだよな。直接店員に声を掛けて呼んだり、テーブルに呼び鈴があるから、それを鳴らせば来てくれたりすんぞ」

「ほう、なるほど。ならば、あの大食堂に行かなければ分からないという訳か」

「だな。あそこで決まりそうな雰囲気になってるし、今の内に食いたいもん決めといたらどうだ?」

「食べたい料理、ねぇ……。特に定まってないから、貴様が選んだ料理と同じ物にするよ」

「ははっ。なら、一緒に決めっか」

「うん、そうしよう」

 アルビスもアルビスで、ベルラザさんと一緒になり、食べる料理を決めると来たか。やはり仲が良いと、そういう結論に至るらしい。
 プネラも、フローガンズ達と共に肉料理を選びそうだし。ヴェルイン一味は、ノームと合流して酒に合う物を頼もうと話し合っている。
 流石に二十人も居ると、自然とした流れで組み分けが出来ているな。なら私達は、アルビス組、ウィザレナ組と合流して、一緒に楽しんでいこうかな。
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