魔法少女 ミルティ=クラウゼ

桜雨ゆか

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2 急にやってきた怪人をクローゼットに隠そうとしたら引きずり込まれてとろとろにされました

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 ここは、聖封せいふう機関(通称・白輝会はっきかい)の地方支部――その中でも、選抜された魔法少女にだけ与えられる専用個室の一室だ。
 日々の任務報告、魔力測定、そして『もしもの時のための対怪異』に備えた待機室でもある、れっきとした『職場』だ。
 そしてその個室の中央に、足を組んでソファに腰かけているのは――よりにもよって敵だった。

 顔の上半分を仮面で隠し、漆黒をまとったその男は怪人ノクス。ミルティの宿敵――だった人物だ。

「ねえ、ミルティ。もうちょっと柔らかいお菓子、なかったっけ?」
「……どうして勝手に来たんですか、ノクス! 夜にわたしの部屋の約束だったはずでしょう⁉」

 ミルティは書類をデスクに置くと、ソファのノクスに詰め寄った。
 聖封機関――それは魔法少女の力を正しく導き、世界に満ちる魔的災厄を封じるために設立された公的機関。
 民間的には「白輝会」の名で親しまれ、華やかな制服と勇敢な魔法少女たちの姿に、多くの少女が憧れる。
 だがその裏で、怪異や災い、悪の組織の怪人と呼ばれる存在との戦いは絶えず、その最前線に立つミルティは、決して遊び半分では許されない――はず、なのに。

「だって、待ちきれなかったし。事務仕事してる君も見てみたかったし……」

 仮面越しの碧い瞳が細められる。
 今日のミルティは魔法少女として戦うときの、煌びやかな変身衣装ではない。
 あくまで勤務中の姿――白輝会支部における事務・待機任務用の制服に身を包んでいた。
 白を基調とした軽やかなブラウスに、薄桃色のスカーフが襟元でふわりと結ばれている。胸元には白輝会の小さな紋章が輝いていて、魔法少女であることをさりげなく示していた。
 スカートは膝上丈で、清潔感のある藍色。タイトすぎずふんわりと広がるデザインが可愛らしいものだ。
 ストッキングは透け感のある白で、脚のラインをほんのりと浮かび上がらせていた。
 ノクスのまなざしはその一つ一つをゆっくりとなぞり、ミルティは居心地の悪さに身じろぎした。

「な、なんでそんなにじっと見るんですか……?」
「別に……。ただ、可愛いなと思って」
「……ッ⁉」

 ミルティは、思わず声を詰まらせた。
 仮面越しにノクスの眼差しが注がれるたび、頬が熱くなる。

「し、支部への来訪は困ります」
「君の魔力の匂い、ここからしてたからすぐわかったよ。――警備ガバガバだね~」

 テーブルの上のお菓子を食べながら、ノクスがあっけらかんと言う。
 それを見て、ミルティは頭を抱えた。
 怪人ノクスが正義の守護者ミルティ=クラウゼの個室でクッキーをつまんでるなんて――もしも、こんなところを同僚に見られたら、当然厳罰、いや、解雇処分になってもおかしくない事態だ。

「…………」

 わかっていて徹底的に追い返せない自分も自分だと思う。
 と、ちょうどその時だった。
 出入り口の扉が控えめにノックされた。

「ミルティちゃ~ん? アタシだけど、いる~?」

 低く太い声が響いた。
 やたらと体格のいい、筋肉質な男性だけれど、艷やかな口調が特徴的な支部長だ。

(うそうそうそっ……! 来るって聞いてないっ……!!)

「報告書の件でちょっと話があるんだけど~。あと渡したい書類があって~」

 パニックになったミルティは、反射的にノクスの腕を引っ張る。

「え⁉ なに、なに? ミルティ、どうしたの⁉」
「いいから入ってください! そこ! クローゼット!!」
「え、今日はそういう遊び?」
「ちがいますっ! 黙って入って!!」

 ミルティはノクスを強引に備え付けのクローゼットに押し込んで、支部長を迎えるべく踵を返そうとした――が、できなかった。

「えっ⁉ ちょっ⁉」

 ぐい、と腕が引っ張られ、ミルティまでもクローゼットの中に引きずり込まれる。
 バタン、と扉が閉まり、そこは一瞬で小さな密室になった。
 半畳ほどのスペース、着替えや雑貨類も収納しているから、人が二人も――片方は背も高く、それなりに筋肉質な男性が入ればかなり窮屈である。
 ミルティとノクスは向かい合わせでぴったりと密着してしまう。

「狭いね♡ ミルティの体温、すぐ感じられそう♡」
「ちょ! なんで、わたしまで⁉」
「そのつもりだったんじゃないの? あ、ほら、静かにしないとバレちゃうよ?」
「――っ!」

 クローゼットのすぐ外で扉が開く音がした。

「お邪魔しま~す。あら? ミルティちゃん、いないのかしら?」

 支部長の声が部屋に入ってくる。ミルティは息をひそめ、クローゼットの壁にぴたりと背をつけた。
 こうなってしまってはもう、外に出ることはできない。

(お願い、お願いだから……このまま気づかず帰ってください……)

 息を潜める中、ミルティの太ももに、冷たい指先がすべり込んできた。

(ちょ、ノクス……今はダメ……!)

 スカートの裾がそっと持ち上げられる。
 ストッキングの上をノクスの手がゆっくりと這い回った。

(や、やめて……!)

「あら~? おかしいわね……確か今日は内勤だったはず」

 支部長が部屋を歩き回る気配がする。

「ノクス……、だめです。やめて……」
「しー……。声、出しちゃダメだよ?」
「でも、ちょっ……! んんっ♡」
「あーあ、ミルティはすぐ声出ちゃうもんね♡ でも、よかったね。気づかれなかったよ」

 唇が耳元に近づき、吐息混じりの声が鼓膜をくすぐる。
 ドクン――心臓が跳ねた。

「んー……。仕方ない。これは後で見ておいてもらおうかな」

 支部長の足音が近づき、デスクの書類をめくる音がした。
 気まぐれな足音が部屋を一周し、しばらく逡巡した末、ようやく出口へと向かう。

「もう! 部屋を開けっぱなしにするなんて……ミルティちゃんたら、油断大敵よ~」

 扉が閉まる音。それから足音が遠ざかっていく。

「……行った?」

 ミルティは小声でつぶやき、大きく息を吐き出した。

「……ん、行ったね。じゃあ、もう少し大丈夫だね?」
「大丈夫じゃありませんっ、ノクス、もう出ま――」

 ミルティがクローゼットの扉に手をかける。
 しかし、

「……え? 開かない。なんで?」

 扉が押してもなにしてもびくともしない。

「あー。歪んじゃったのかな?」
「そんな……」
「ね、ミルティ。この距離感すごくいいね。僕、興奮する♡」

 ノクスがにやりと笑うのが、暗がりの中でもわかる。

「あなたという人は……っ」

 ミルティが悔しげに呟くと、すぐ耳元で、ノクスの声が囁いた。

「……せっかくだから、楽しもうよ?」

 低く甘い声音は、ふたりきりの狭い密室にとろけるように広がっていく。
 すぐそばにある体温、肌の感触、吐息。

「もう、逃げ場ないんだからさ……ね?」

 耳元にそっと囁かれたその言葉に、ミルティの背筋がぞわりと震えた。

「ちょ、ノクス……。ここでは、あの、よくないと……っ」
「うんうん、わかってる。君は『真面目』で『慎み深い』もんね」

 そう言いながらも、ノクスの指先はすでにミルティの腰に回り込み、背中をゆっくりと撫でていた。
 そのまま滑るように背骨をなぞり、薄い布越しに温度を伝えてくる。

「ふたりきりでこんなに密着してたら、ドキドキしちゃうよね」

 ノクスの手のひらが、鼓動を確かめるようにミルティの胸元に添えられる。
 中心で高鳴るリズムが、ミルティの理性をじわじわと溶かしていく。

「ミルティ、こっち向いて?」

 ノクスが顔の仮面をそっと外した。
 驚くほどに整った顔立ちが現れる。

「……っ、やだ、近い……!」
「ほら、目、そらさないで……ちゅーしよ?」

 甘く囁く声が、すぐ目の前で吐息となってかかる。
 そして、ふわりと唇が触れた。最初は優しく、様子をうかがうように。
 だが、ミルティが抵抗せずに唇を受け入れてしまった瞬間、ノクスは舌先を絡めるように差し入れた。

「んっ……ちょ、まって……ぅん、んちゅ……♡」

 濃密なキスは、音を立てないようにという配慮の皮をかぶって、逆に淫らさを際立たせるようだった。
 舌と舌が触れ合い、唾液がこっそりと交換されるたびに、ミルティの脚から力が抜け、身体がノクスの方へ預けられていく。

「ダメ、こんなの……こんなところで……」
「いいじゃん、外からは絶対見えないよ? ね、もっと感じて……? いつもの格好もいいけど、この制服も可愛いね、ミルティ」

 ノクスが、指先でミルティの胸元にそっと触れた。
 その声音はどこかからかっているようでいて、どこまでも甘い。
 ミルティが押し返そうとする前に、ノクスの指はスカーフをほどき、ブラウスのボタンにかかる。

「でもさ、ここらへん、危うくない? ちょっと引っかかったら……ほら、すぐに」

 ぷちっ、と小さな音とともに、ボタンがひとつ外される。
 ミルティの口が「やめて」と動いたが、声にはならなかった。

「ね、簡単に取れちゃうんだよ? こういうのって、破くよりもずっとえっちだよね」

 次のボタン、そして次。
 ブラウスの前が開かれていくたびに、涼しい空気が肌に触れてゾクゾクとした感覚が広がる。

「っ……ノクス、ほんとに……やめて……っ」
「やめないよ、だって……」

 ノクスの指が、柔らかな胸の膨らみに触れた。
 レースの下着越しに指先でなぞり、ブラの中心から外側へ円を描くように撫でまわす。

「ここ、もうこんなに……」

 指先がブラ越しに乳首をぴん♡ と軽く弾いた。

「やぁ……♡ んんっ♡」

 次第に力が入らなくなっていくミルティの身体を、ノクスが支えるように抱き寄せる。
 クローゼットの壁に背を預けた彼女の胸元に顔を寄せ、ブラの上から唇を押し当てる。

「ほら、ミルティの可愛い乳首♡ こんなに尖って……。気持ちいい?」

 言葉のあとに、布越しに舌先でくすぐるように舐めた。
 さらに、舌でゆっくりと乳首を押し潰すように転がし、唇で優しく吸い上げる。

「んっ……♡ ぁあ♡ あ、あっ♡ んぅ……♡」

 ブラの布地が唾液でじっとりと濡れ、そこを吸われるたびに乳首がびくびくと反応する。
 ノクスの指はもう一方の胸にも伸び、両方同時に刺激しはじめた。

「ミルティの声、どんどん甘くなってる」

 そう囁きながら、ノクスの手が背中にまわり、ブラのホックを外した。

「……見せて?」

 ふるり♡ とこぼれ出た乳房に、ノクスが顔を埋める。

「相変わらず、ミルティの身体、素直で可愛い……」

 ノクスの指が、愛おしそうに乳房のふくらみをなぞる。
 やがて乳首へと届くと、人差し指と親指で優しく挟み、きゅっ♡ と摘まんだ。

「ひぁっ……♡ あっ……だ、め……そんな……っ」
「だめじゃないよ。気持ちいいよね。ちゃんとわかる」

 ノクスの唇が乳首に近づき、そっとキスを落とす。
 そのままちゅっ、ちゅっ、と赤子のように吸い付きながら、舌で周囲をゆっくりとなぞっていく。

「……んっ♡ あ、んぅ……♡ やぁ……♡」

 指ではもう一方の乳首を弄り、口ではもう片方を。左右同時に責め立てられ、ミルティの身体はびくびくと震えた。
 指が、乳首の根元をつまみながら、小刻みに引っ張った。吸い付く口は、少しだけ強く、深く――ミルティの奥に響くように吸い上げる。

「ノクス……やぁ……♡ だ、めぇ……乳首……いじめな、でっ……♡」
「うそつき。好きなくせに……。んっ、ちゅ♡ もっと感じるようになる。ミルティのここ、もっと……ね?」

 そう言って、ノクスは一度口を離し、濡れた乳首に息を吹きかけた。
 唾液に濡れた先端が冷たい空気に晒されてピクリと小さく跳ねる。

「わかる? 濡れたここに、冷たい空気が当たると……ゾクッとするでしょ?」
「んんっ♡ う、うん……♡ ゾクゾクする……っ♡」

 快感に震えるミルティの声を聞きながら、ノクスは乳首の先端にちゅっ、と音を立ててキスを繰り返した。
 そのたびに、舌先で尖端を押し潰し、吸って、転がして――まるで執着するように愛し続けた。

「こんなに震えて……。どっちが好き? 指? それとも、舌……?」

 指先は、乳輪の周りをくるくると円を描きながら撫で回す。
 舌は、反対の乳首をちゅく、ちゅぷ、と水音を立てながら優しく吸い続ける。

「んっ、ぁっ♡ どっちも……♡ 両方とも……きも、ちい……のっ……♡」
「そっか、じゃあ……両方で、もっと気持ちよくなろっか♡」

 ノクスの指先は、両方の乳首をリズムよく摘みながら、くにくにと柔らかく弄ぶ。
 その一方で、空いた手がそっと下がっていく。

「ん……や、だ……っ、そこ……」

 ミルティが小さく声を震わせる。
 けれどその声も、乳首をつままれ、ねっとりと舌で責められるたびに、甘く蕩けていった。

「ねぇ、ミルティ。ストッキングの上からでも、わかるくらい……濡れてる。すごく、くちゅって……」
「そんな……言わないで……っ!」

 ノクスの中指がぴたりと密着する。

「ここ……触るね?」

 トン、と小さく叩くように触れられて、ミルティは肩を跳ねさせた。
 そのまま、円を描くようにくり返しなぞられる。

「んんっ……♡ あっ、だ、だめ♡ そこは……♡」
「感じてるの、すっごく伝わってくる。……もっと気持ちよくしてあげる」

 ストッキングの上からでもしっかり伝わるように、執拗に、しかし優しくノクスが指を動かした。

「ひぁっ……♡ んんっ……っ♡ や、やだぁ……♡」
「ここが、気持ちいいんだよね? ちゃんと教えて、ミルティ……どれくらい感じてるか」

 乳首をひねる指は、じわじわと力を加えながら、そのまま根元をぐにゅ、と潰すように弄ぶ。
 同時に、クリトリスに押し当てられた中指が、円を描くようにじっくりと擦り上げてくる。

「んっ♡ あ、やっ……だめぇっ……ノクスっ、いっしょ、だめ……♡ きもち、よくなっちゃう……っ♡」
「なっていいよ。ミルティが気持ちよくなるなら、なんでもしてあげる」

 耳元で囁かれる声に、ぞくぞくと肌が泡立つ。
 乳首を舐められながら、同時にクリトリスを撫で回される。
 羞恥と快感がせめぎ合い、ミルティの身体は熱く、震えていた。

「ねぇ、ミルティ……こんなに濡れて、乳首もクリも敏感になって……全部、僕のせいだよね?」
「ぅんっ……♡ ノクス、の……せい、なの……♡ おかしく……なっちゃう……♡」

 ストッキング越しに擦られるクリトリスは、薄布の摩擦でじんじんと痺れたような感覚を起こしていた。
 腰が勝手にかくかくと震えてしまうのを、ミルティは自分でも止められなくなっていた。

「ミルティが、僕のせいでこんなに気持ちよくなってるのは……すっごく嬉しい」
「あっ♡ あぅ……っ♡ んんっ♡」
「おまんこ、もうトロトロだよ。どうする? このままイっちゃう?」

 耳元で低く囁かれて、ミルティはこくこくと何度も頷いた。

「んっ♡ いかせ、てっ♡ イキたい……♡ ノクス、おねがいっ……ッ♡」

 ミルティの声は涙混じりで、震えていた。
 全身が熱に包まれ、乳首は舌にちゅくちゅく♡ と吸われながら、ストッキング越しのクリトリスには執拗な愛撫。
 あと少し。ほんの、あと数回擦られれば――。


 コンコン……。


「――っ!」

 無情なノックの音が部屋の中に響いた。
 ノクスの指先が反射的に止まり、彼女のクリトリスの上で静止した。

「うそ……っ……」

 ミルティは、耳まで真っ赤に染めながら、肩で荒く息をし続ける。
 身体中が火照って、敏感になったまま、肝心なところで止められて――快感の余韻が引かず、脚の間がじんじんと脈打っていた。

「な、んで……いま……っ」

 震える声で、ミルティが訴えるようにノクスを見上げる。
 ノクスは、彼女の唇に指を当てて、小さく囁いた。

「邪魔されちゃったね」



「ミルティー? いるー?」

 外から聞こえてきたのは、明るく間延びした声とドアが開いて誰かが入ってくる物音だった。
 ミルティの顔が、さっと青ざめる。

(この声は……事務局のモチヅキさん……! なんで今……⁉)

 全身が、羞恥と快感のはざまで凍りつく。

「声……。我慢しないと、ね」

 ノクスが、唇の端を上げて、ささやく。

「だ、だめっ、ノクス、外に……っ、人が……ッ」

 ミルティはひそひそと抗議するけれど、ノクスは止める気などないようだった。
 ストッキング越しにぴたりと密着していた中指が、再びぬるりと円を描き始める。
 焦らすように、優しく――しかし確実に、敏感な突起をなぞっていく。

「っ、ん゛ん゛……♡」

 ミルティは口元を手で覆い、声が漏れるのを必死にこらえた。
 けれど脚の間はとろとろに熱を帯び、腰が勝手に跳ねてしまう。

「いないのかー」
「んん゛っ……♡ ぅ、んっ……♡」

 ぐりりっ♡ と押し潰すように刺激されて、ミルティはなんとか声を殺した。

(ひぁ……っ♡ だめぇ……!)

 ドアの外に人の気配を感じながらも、ノクスの指は止まることなく動く。
 もう絶頂寸前だった身体は、敏感すぎるほどで、ただ下着越しに弄られているだけで気がおかしくなりそうだった。

(やだぁ……っ♡ こんなの、無理ぃ……♡)

 そんな焦燥とは裏腹に、ノクスの指はさらに執拗さを増していく。

「濡れすぎてて、僕の指がすべっちゃう♡」
「っ……ぁ、ふっ♡ っふ、ふう……ッ♡」
「なんかさ、ここって意外と男の職員ばっかなんだね」

 彼の囁きが耳を撫で、くちゅ、くちゅ……といやらしい音が、布越しに響いてしまう。

「え……?」
「さっきの支部長もそうだけど、こいつも……。妬けちゃうな」

 ノクスの囁きが、微笑の奥にある黒い衝動を孕んでいた。
 次の瞬間、指先の動きが変わった。
 ぐり、ぐちゅっ……♡
 まるで意地の悪い子供が、玩具を壊すような強さで――。

「っひ……♡ ん゛ぅぅっ……♡♡」

 ストッキング越しの布がねじれて、敏感な突起が押し潰される。
 もうそれだけで、腰がびくんと跳ね、脚がつっぱった。
 ノクスはわざと、外の足音に合わせるように、指先をずらしながらぐちゅぐちゅと撫で続ける。

「……もしかして、ほんとは気づかれたい? 外のアイツの気を引きたいのかな?」
「っ、んんんっ……♡」

 必死に首を振るミルティの頬を、ノクスは指でなぞり、甘く歪んだ笑みを浮かべる。

「じゃあ、証明して? 気づかれないようにイケるよね?」

 その言葉と同時に、指が一段と強く、速く動き始める。
 ストッキングのざらりとした感触が、熱く充血した突起を無慈悲に刺激していく。

「っふ、ぅんんっ……♡♡」
(むり……無理ぃ……! こんなの絶対無理だよぉっ♡♡)

 爪先立ちになったミルティの脚はがくがくと震え、目の端に涙が滲んだ。
 両手で口を塞いで、声を必死に抑える。

(だめ……声……っ……でも……♡)

 愛撫というにはあまりに荒々しい刺激に、身体の芯がぐらぐらと揺さぶられた。

「~~~~ッッ♡♡♡」

 ――次の瞬間。ミルティは必死に両手で口を塞いで、絶頂の声を殺した。
 鋭い快楽の稲妻が背筋を駆け抜け、びくん! と身体が跳ねてしまう。

「ん゛ふぅ……っ♡」

 両手をぎゅっと握りしめて、目をつぶる。
 脚の間に感じる甘い痺れに、腰から下が完全に蕩けてしまったようだった。

(あ……ぁ……イっちゃった……♡♡)

 ストッキングの奥、布がひたひたに濡れていく。
 ノクスはそれを見届けると、ぴたりと動きを止め、満足げに微笑んだ。

「声出さずに、ちゃんとできたね♡ いいこ♡」

 ミルティはぐったりとノクスに身体を預けると、口元を覆ったまま、ただ頷くしかなかった。
 そして外では――。

「ま、いっかー。またあとで来よーっと」

 軽い足音が、ようやく遠ざかっていった。

「――よく頑張ったね」

 ノクスはミルティを優しく抱きとめると、囁くように言った。
 その声には、達成感と――どこか、独占欲に似た甘い悦びが滲んでいる。

「広いとこ、いこっか? 一緒に気持ち良くなろ……」

 ノクスがクローゼットの扉を押すと、最初、あんなにびくともしなかった扉があっさりと開いた。

「え……?」
「ごめんね。開かないように、ちょっと細工してた。君とくっつきたかったし」

 ノクスが悪びれもせず、楽しげに笑う。
 ミルティの身体はふわりと抱き上げられて、ソファの上に下ろされた。

「さ、もっと気持ちいいことしよ……? 破いていい?」
「えっ⁉ ちょっ……!」

 ノクスの手がストッキングにかかったと思うと、一気にびりっ! と引き裂かれる。
 ちょうどクロッチの部分だけが破れ、ミルティの恥ずかしい部分が露わになる。

「や……やだ……っ!」
「あは♡ やっぱり破くのもえっちだね♡」

 ノクスの指がショーツのクロッチを横にずらし、愛液まみれの割れ目が冷たい空気に晒された。

「美味しそう♡ ほら……こんなにとろとろに濡れて」

 ノクスは躊躇うことなくミルティの秘部へ吸い付いた。
 ぢゅるっ♡ と粘ついた水音をさせながら啜られ、舌がクリトリスを撫でる。

「ひぁ……♡ あっ、ああっ♡ や、だめ、あ、あぅ……っ♡♡」
「あんまりおっきい声出すと、部屋の外まで聞こえちゃうよ?」
「っ……!」

 ミルティは、慌てて両手で口を塞いだ。

「ん、ちゅ♡ どこまで我慢できるかな?」

 ノクスの舌がぬるりとクリトリスを包み込み、ゆっくりと舐め上げる。
 同時に指も膣内に潜り込んできて、じゅぷじゅぷ♡ と音を立てながら優しくかき回した。

「ひぅ♡ あっ、あっ♡ そこ、すご、い……ッ♡」

 ミルティの腰がびくびくと跳ねる。
 その動きに合わせて、指が膣壁をこすり上げていく。

「イっていいよ? 我慢しないで」

 にゅぷにゅぷにゅぷっ♡ ぐちゅんっ♡
 ノクスの指が、ゆっくりと膣奥をなぞりながら、敏感な部分を的確に探っていく。
 舌と指が同時に与える快楽の波に、ミルティの身体の熱は上がっていった。

「ん、ふっ……♡ あっ、や……っ♡」

 声を殺そうと口元を押さえるも、熱い吐息は漏れ、震える腰がソファに擦れて小さく軋んだ。
 ノクスはその反応を逃さず、指先の角度を変える。
 そこは――何度も触れられて、ひどく敏感になっている場所だ。
 いつもノクスに責められてすぐにイッてしまうところ。

「ここだよね。ここ触ると、気持ちいいもんね」

 にゅぷっ♡ と中で押し上げるように撫でられ、ミルティの喉が小さくひくついた。

「あっ、あ、ああっ……♡ ノクスっ、そこ、は、だめっ……♡」

 言葉にならない甘い悲鳴が漏れた。

 ぬちゅ♡ くちゅっ♡ 
 じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷっ♡

 指先の動きが速まり、まるで意地悪く探るように膣壁を掻き回してくる。水音がだんだんと濃く、ねっとりとした響きに変わっていく。

「ノクスっ……っ♡ だ、め♡ なんかっ……きちゃっ……うっ♡ そこ、でちゃ……ッ♡」

 ぐりゅ♡ と強く押し込まれ、同時にクリトリスを舌で転がされ、ミルティはびくんと身体をしならせた。

「ひぁっ♡ あ、あ……ッ!♡ ほん、とに、でちゃ……うぅッ♡」

 じゅるるるるるっ♡

 ひときわ強く吸われた瞬間に、快感が弾けた。

「ひぅッ♡ あ゛っ……~~ッッ♡♡」

 ぷしゃあっ♡ と音がした。
 ミルティの太腿の奥から、透明な雫が弧を描いて噴き上がる。
 甘い震えが何度も全身を駆け抜け、痙攣するように何度も身体が跳ねた。

「……っは、あ……ぁ……♡」

 ノクスの顔にかかった水滴が、彼の頬をつたう。それを、ゆっくりと手の甲で拭いべろりと舌で舐め取る。

「ミルティの味がする♡」
「ノクスっ……わたし……ご、ごめ……なさ……」
「なんで謝るの。気持ちよかったんでしょ?」

 ノクスの手が再び伸びてきて、今度は優しく髪を撫でた。

「ノクス……」

 か細く震える声で名を呼ぶミルティに、ノクスは唇を寄せて囁いた。

「まだ、終わりじゃないよ?」

 くすっと笑うその声は、どこまでも甘く優しいのに――ぞくりと背筋が震えるほど、淫靡だった。
 そのままミルティの脚をそっと開かせ、柔らかな太腿の間に身を沈める。

「ほら、まだ……ここ、こんなに震えてる」

 先ほど噴き出したばかりのそこに、ノクスの指先がぬるりと触れる。とろけた蜜が絡まり、敏感になりきった膣口がぴくりと痙攣した。

「やぁっ♡ だめ、まって……っ」
「君の『だめ』は、いつも『もっとして』に聞こえるんだよね……」

 ぬぷっ♡ ぬちゅっ♡ ぐちゅんっ♡

 とろけた音を立てながら、指が再び膣内を擦ってくる。

「君の中に挿入りたくてたまらない。いい?」

 ノクスが言ってズボンの前をくつろげた。
 ぶるん♡ と勢いよく飛び出してきたノクスの陰茎は、硬く張り詰めて天を向いていた。

「見て、ほら、僕のもびしょびしょ……♡」
「……ん、うん……♡ ノクスの、わたし、も……ほしい……ッ♡」
「ん……。奥まで挿入るよ? さっきイッちゃったここも可愛がってあげたいし」

 ノクスの陰茎がずるりと膣口をこすり上げ、柔らかな襞を押し広げる。
 溢れだした愛液と先走りの液を絡ませるように擦りつけ、さらに硬さを増したそれをぐっと押し込んだ。

「んああっ♡ っは……ぁ……♡」

 ミルティが甘い吐息を漏らしながら腰を震わせる。
 その声ごと飲み込むように唇を重ねると、ノクスはゆっくりと腰を揺すり始めた。

「ん、んっ♡ ちゅ……ふっ……♡ はむ……っ♡」

 舌を絡ませながら、ノクスの腰が動く。

 ぐちゅっ♡ ずちゅっ♡
 ぱちゅんっ♡ ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅっ♡

 淫らな水音が響き、そのたびにミルティの喉からは甘い声が漏れた。
 もう声を抑える余裕なんてなかった。
 ノクスが腰を動かすたびに、頭が真っ白になるほどの快楽に飲み込まれていく。

「ひぁッ! あぅ、あっ、ああっ♡」

 ぬちゅっ♡ と音を立てながら、ゆっくりとノクスの熱がミルティの中に沈んでいく。
 最奥まで押し広げられていく感覚に、ミルティの目尻から涙が零れた。

「あっ、あっ♡ ん゛あ゛あっ♡ いっぱいっ♡ いっぱい、きてうっ……♡」
「やば……♡ なか、すげ……♡ さいっこう……ッ♡」
「んあ、あっ、あっ♡ ノクス、しょれ、きもひ、よすぎて……ッ♡」
「ぎゅってしてくる♡ かわいいな……♡ 君の全部、僕のだから♡」
「んっ、んうっ♡ あ゛あっ♡ い、く♡ いっちゃうっ……♡」

 ぐちゅっ♡ ぐちゅんっ♡

 何度も、何度も奥まで届くたび、愛情ごと注ぎ込まれてるみたいだった。
 繋がったまま何度もキスを交わし、手を重ね、名前を呼び合いながら――ふたりはまるで一つの存在になるかのように、深く結ばれていく。

「も、イクね……っ♡ ミルティの中に、いっぱい出すよ……っ」
「んんっ♡ わた、しも、いく……っ♡ いっしょに……っ♡」

 ミルティが脚をノクスの腰に回し、ぎゅうっと強く引き寄せる。
 その動きと共に奥まで捻じ込まれた陰茎は、その先端を子宮口に押しつけながら、どぷっと大量の精液を放った。

「ひぁっ♡ ~~~~っ♡♡♡」

 びくん! と大きく身体が跳ねる。
 同時に膣内も激しく痙攣し、ノクスのものを締め付けた。

「くっ……♡」

 搾り取るようなその動きに、ノクスも小さく声を漏らす。
 やがて長い射精が終わると、ミルティの膣内は熱く蕩けて、まるでひとつに溶けあってしまったかのような感覚に包まれた。

「あ……っ♡ あぅ……♡」
「ん……いっぱい出ちゃった……」

 ぬるり、と温もりの残る感触がミルティの中から抜けていく。
 その直後、とろりと零れ出す精に、ミルティは反射的に太腿を閉じようとしたが、ノクスがそれをふわりと抱きしめて止めた。

「だめだよ。……可愛いところ、ちゃんと見せて」
「や、はずかしい……っ」
「あ~♡ 僕の、いっぱい♡」
「……っ」

 蕩けた瞳でノクスを見上げると、彼は満足そうに笑って、ミルティの頬にキスを落とした。
 ぴとりと肌を重ねたまま、互いの鼓動を感じ合うように静かに抱きしめ合う。

「……あったかい」
「うん。君、やっぱりすごくいい匂いする」

 言葉と共に唇が重なる。
 今度は穏やかで、でも深くて熱いキスだった。

「ちゅー、好き?」

 問われてミルティは小さく頷いた。

「……ん。好き」
「もっとしてあげる。何度だって」

 ソファの上でふたりはもう一度ゆるく抱き合って、何度もキスを交わし、肌を寄せ合った。
 幸福がじんわりと胸に広がる。
 けれど――。

「……ねぇ、ノクス」
「ん?」
「これ……」

 ミルティがソファの横をちらりと見る。
 どこかから落ちた書類や、言葉にするには憚られる水滴が床に広がっていた。

「これ……。まずいですよね?」
「夢中だったからなあ……」

 ノクスが笑ってミルティの頭を撫でる。

「あとで手伝うから、今はもう少しぎゅーってさせて? 今は君が可愛すぎてそれどころじゃない」
「でも、また、支部長とか誰か来たら……」
「大丈夫。誰も来れないように廊下に壁作っといた」
「……え⁉ それはそれで騒ぎになるんじゃ」
「大丈夫、大丈夫」

 ノクスは平然と言ってのけ、ミルティをぎゅっと抱き寄せた。

「だから、もう少しだけ……君の体温を感じてたいんだ。だめ?」

 ノクスの甘い囁きに、ミルティは一度視線を彷徨わせたあと、ノクスの身体を抱きしめ返した。

「だめじゃない、です……」
「……ん。ありがと」

 ミルティは目を閉じたまま、ぼんやりと考える。
 このあとのことを考えると頭が痛いけれど――でも今は、ミルティも彼の体温にただ包まれていたかった。


      (了)
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