剣が振れなくても世界を救えますか?~勇者として召喚されたのは非力な女の子でした~

noyuki

文字の大きさ
47 / 115
天に吠える狼少女

第一章 深窓の才妃・4

しおりを挟む
 気の抜けるような緩んだ笑み。ユウに答えを期待することが間違っていたと、レイは肩を竦めて考えることをやめた。直接影響を受けたわけでも、魔法にも詳しくないレイが考えたところで答えは出まい。そういうことの専門家に任せるに限る。

 ユウの持つ勇者の力とは、どのようなものなのか。

 と、一同に駆け寄る人影があった。

「あ、皆さまこちらでしたか。少しよろしいでしょうか」

 革鎧に身を包み、武装は片手剣と丸盾。ラドカルミア王国の兵士の標準装備であり、この“勇者特区”の警備兵である。看守、とも言うか。

 警備兵は一旦立ち止まり、敬礼。話を続ける。

「勇者様御一行に王都のリンシア姫より言伝がございます!」

「リンちゃんが?」

 ユウがはてと首を傾げる。

 リンちゃんことリンシア姫はこの“勇者特区”が存在するラドカルミア王国の王女である。ユウと歳が近く、友人でもある。

「はっ、リンシア姫のお母上……王妃セルフィリア殿下がぜひ勇者様と話をしたいとのこと。なのでリンシア姫と共に会いに行ってほしい、とのことです」

「王妃……リンちゃんのママか」

 そこでふとユウは思い出したように、

「そういえば王宮にいたころ、王様には会ってるけどお妃様には会ってないな」

「王宮とは別に、王都の外れのお屋敷に住んでおられるのよ。あまりお身体が丈夫ではない方なの」

 セラの説明にユウはなるほどなぁ、と納得する。

「話って、なんやろ」

「さぁ……具体的な内容まではお聞きしておりません。あ、それとリンシア姫から追加の言伝が」

 人の好さそうな警備兵の男が優しく微笑みながら、言う。

「寂しいのでなるべく早く来てほしい、とのことです」

 その一言でユウが破顔した。ユウより二歳年下の姫は勇者を唯一無二の親友としている。

「そういえばしばらく戻ってなかったな」

 “勇者特区”を設立した初期は王宮にいる宰相といろいろと相談するために“勇者特区”と王都を行ったり来たりしていたユウ達だが、“勇者特区”の運営がある程度自立し始めてからはその場に留まって現場指揮を行っていた。思えばそれきり宰相とは伝令を用いてやりとりすることが多くなり、王都には戻っていない。

「ほな、ちょっくら戻るか!」

 勇者の決定に護衛二人が頷いた。

「ばあちゃん、うちらがいいひん間、ここの事頼むわ。あの新しい子らも馴染んでくれるとええけど」

 年老いた母オールドゴブリンが頷く。

 勇者がいなくなったとしても、もはや彼女らが人間に反旗を翻すことはないだろう。人間の感情を理解できるようになった彼女らが、何の理由もなく人間に危害を加えることはもうありえない。

 こうしてユウ達は、久方ぶりに“勇者特区”を後にし、王都へと帰還したのである。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...