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天に吠える狼少女
第一章 深窓の才妃・4
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気の抜けるような緩んだ笑み。ユウに答えを期待することが間違っていたと、レイは肩を竦めて考えることをやめた。直接影響を受けたわけでも、魔法にも詳しくないレイが考えたところで答えは出まい。そういうことの専門家に任せるに限る。
ユウの持つ勇者の力とは、どのようなものなのか。
と、一同に駆け寄る人影があった。
「あ、皆さまこちらでしたか。少しよろしいでしょうか」
革鎧に身を包み、武装は片手剣と丸盾。ラドカルミア王国の兵士の標準装備であり、この“勇者特区”の警備兵である。看守、とも言うか。
警備兵は一旦立ち止まり、敬礼。話を続ける。
「勇者様御一行に王都のリンシア姫より言伝がございます!」
「リンちゃんが?」
ユウがはてと首を傾げる。
リンちゃんことリンシア姫はこの“勇者特区”が存在するラドカルミア王国の王女である。ユウと歳が近く、友人でもある。
「はっ、リンシア姫のお母上……王妃セルフィリア殿下がぜひ勇者様と話をしたいとのこと。なのでリンシア姫と共に会いに行ってほしい、とのことです」
「王妃……リンちゃんのママか」
そこでふとユウは思い出したように、
「そういえば王宮にいたころ、王様には会ってるけどお妃様には会ってないな」
「王宮とは別に、王都の外れのお屋敷に住んでおられるのよ。あまりお身体が丈夫ではない方なの」
セラの説明にユウはなるほどなぁ、と納得する。
「話って、なんやろ」
「さぁ……具体的な内容まではお聞きしておりません。あ、それとリンシア姫から追加の言伝が」
人の好さそうな警備兵の男が優しく微笑みながら、言う。
「寂しいのでなるべく早く来てほしい、とのことです」
その一言でユウが破顔した。ユウより二歳年下の姫は勇者を唯一無二の親友としている。
「そういえばしばらく戻ってなかったな」
“勇者特区”を設立した初期は王宮にいる宰相といろいろと相談するために“勇者特区”と王都を行ったり来たりしていたユウ達だが、“勇者特区”の運営がある程度自立し始めてからはその場に留まって現場指揮を行っていた。思えばそれきり宰相とは伝令を用いてやりとりすることが多くなり、王都には戻っていない。
「ほな、ちょっくら戻るか!」
勇者の決定に護衛二人が頷いた。
「ばあちゃん、うちらがいいひん間、ここの事頼むわ。あの新しい子らも馴染んでくれるとええけど」
年老いた母が頷く。
勇者がいなくなったとしても、もはや彼女らが人間に反旗を翻すことはないだろう。人間の感情を理解できるようになった彼女らが、何の理由もなく人間に危害を加えることはもうありえない。
こうしてユウ達は、久方ぶりに“勇者特区”を後にし、王都へと帰還したのである。
ユウの持つ勇者の力とは、どのようなものなのか。
と、一同に駆け寄る人影があった。
「あ、皆さまこちらでしたか。少しよろしいでしょうか」
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警備兵は一旦立ち止まり、敬礼。話を続ける。
「勇者様御一行に王都のリンシア姫より言伝がございます!」
「リンちゃんが?」
ユウがはてと首を傾げる。
リンちゃんことリンシア姫はこの“勇者特区”が存在するラドカルミア王国の王女である。ユウと歳が近く、友人でもある。
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「王妃……リンちゃんのママか」
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セラの説明にユウはなるほどなぁ、と納得する。
「話って、なんやろ」
「さぁ……具体的な内容まではお聞きしておりません。あ、それとリンシア姫から追加の言伝が」
人の好さそうな警備兵の男が優しく微笑みながら、言う。
「寂しいのでなるべく早く来てほしい、とのことです」
その一言でユウが破顔した。ユウより二歳年下の姫は勇者を唯一無二の親友としている。
「そういえばしばらく戻ってなかったな」
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年老いた母が頷く。
勇者がいなくなったとしても、もはや彼女らが人間に反旗を翻すことはないだろう。人間の感情を理解できるようになった彼女らが、何の理由もなく人間に危害を加えることはもうありえない。
こうしてユウ達は、久方ぶりに“勇者特区”を後にし、王都へと帰還したのである。
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