剣が振れなくても世界を救えますか?~勇者として召喚されたのは非力な女の子でした~

noyuki

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天に吠える狼少女

第一章 深窓の才妃・8

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「ずっと前からお話したかったんだけど、最近は忙しそうだったから頃合いを待っていたの。すでにいろいろと話は聞いているけれど、貴女に直接話を聞かないと分からないことも多いと思って。今日は沢山お話しましょうね」

「は、はい」

 少々堅くなっている様子のユウにセルフィリアは微笑みかける。

「そう畏まらなくても大丈夫ですよ。勇者召喚に用いられた魔法式の図形の大部分は私が考案したもの。直接行使したわけでなくとも貴女は私が喚び出したようなものなのです。私は貴女に救いを求め、そして救ってもらう立場にある。貴女が私に畏まる必要はないのです」

「いやぁ、なんというか、ははは……」

 セルフィリアはそう言うが、ユウとて意図して緊張しているわけではない。何とも落ち着かない様子で胸の前で指同士を合わせたり離したりしている。

 跪いたままの騎士は、そんなユウの様子をらしくないなと思った。否、それだけ深窓の才妃に凄みがあるということか。他人をよく見ているユウだからこそ、それが強く感じられるのだろう。あの鷹の目の武王も妻には頭が上がらないらしい。

「すぐに話を聞きたいところだけど、もうお昼ね。食事を用意させましょう。わざわざ上がってきてもらったところ悪いけど、一階の食堂で食べてくるといいわ。リンシア、私達は部屋でいただきましょう」

「お母様、私、ユウと一緒がいいわ」

 一時も友達と離れたくないといった様子の娘は母が窘める。

「駄目よ。勇者はともかく、それじゃあ護衛の二人が食事できないでしょう?仲良くすることはいいことだけれど、自分が王女ということを忘れてはなりませんよ」

 リンシアは不満げではあったが、それに反論することはなく、ソファから腰を上げた母の後を追った。

 おそらくユウを畏まらせたとのはセルフィリアのこういうところだ。自身の身分、その貴き血を自覚し、誇りに思い、かといって奢ることなく人々の上に立つ。そういった心構えが所作に滲み出ている。王族として一つの理想形と言える精神。一方夫のエルガス王は自ら先陣を切るその勇猛さがその風格に溢れている。気品やそういったもの以上にまず力強さが前に立つために王族というよりは武将という面が先に立つのだ。戦場を知らぬユウにはその凄みを理解するのは難しい。

 再び侍女に案内されながら階下へと向かっている最中、

「……あれがリンちゃんママかぁ……思てた以上にすごい人出てきおったで……」

 と、ユウが溜息のように漏らした。

「ユウが緊張するなんて珍しいわね」

 どうやらセラもレイと同じことを思っていたらしい、そうユウに声をかけると、勇者はハハハと苦笑い。

「とてもお優しそうな方に見えたがな」

 一の騎士団ナイツ・オブ・ザ・ワンであるレイとて王妃に謁見するのは初めてである。深窓の才妃と言われるだけあって、よほど重要な公務以外ではこの屋敷から出ないお方なのだ。

 レイの呟きにユウは苦笑いのまま、

「優しい人や思うで。でもやからこそっていうか……いっちゃん敵に回したらアカンタイプの人や」
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