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天に吠える狼少女
第三章 自然と共に生きる者達・6
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「何止まってるの?……ああ、可愛いわね。でも早く族長に会わないと」
「……ああ」
思わず立ち止まっていたレイがセラの言葉により我に還ってまた前を向く。
(だいぶ、ユウに感化されてきたようだ)
そう苦笑交じりに心の中で呟く。そして本人が気づいているかは分からないが、それはセラも同じ。例え子供とはいえ、相手は魔族。それを可愛いなどと。
レイがそんなことを思いながら進む内に、一見の家へと辿りつく。
一同が近づくと誰かが声をかけるより早く、家主が出入り口にかかる布を押し上げて顔を覗かせた。
「親父!」
その顔を見て、ディナが喜色ばんだ。それは相手も同じようで、その獣の口で不器用にニッと笑みを浮かべると梯子を使わずに身軽に大地へと降り立つ。
「よく帰ったな!心配なんぞしてねぇがな!」
言葉とは裏腹に、懐に飛び込んだディナを強く抱きしめてその身体が浮くほどにぐるんぐるんと振り回す。最初にあった狼人族よりもさらにがっしりとした体躯。戦場で猛威を振るう戦鬼族とも殴り合いができそうだ。おそらく彼が族長なのだろう。
振り回されたにも関わらずよろけもせずにディナは着地。
「本当かよ。あたしがいなくて不安で夜も眠れねぇんじゃねぇか?」
「馬鹿言え快眠だ!ぐっすり寝すぎて夢も見ねぇ」
軽口の応酬。だが、そこには確かな親愛の情がある。それは二人の表情が何よりも確かに証明していた。
「なんでぃ、知らねぇやつが多いな」
ディナの頭上越しに族長はユウ達を一瞥。
「ここじゃなんだ。まずは中に入りな」
そう言って今しがた出てきたばかりの家の梯子に手をかけるが、それをディナが引きとめる。
「待ってくれ。こいつらのこともそうだが、まず、話をしなけりゃならねぇことがある」
突然悲哀を帯びたディナの声色に族長がまた彼女に向き直った。そして、ディナが懐から取り出した物を見て全てを察したようにその黄の瞳を細めた。
「すまん。守れなかった」
ディナが取り出したのは一本の組紐。彼女が自分の右腕に付けているものと同じ物だ。それを受け取った族長は鼻先に近づけて匂いを嗅ぐ。
「ああ、エディモの匂いだ」
「エディモ……じゃあこれの持ち主はアシャルカか……」
族長がこちらの様子を遠巻きに見物していた狼人族の一体に声をかけると、すぐに二体の狼人族が連れて来られた。身体的特徴からしておそらく夫婦。
族長から組紐を受け取った雌の狼人族はしばし呆然とそれを眺めると、やがてボロボロと涙を溢しその場に泣き崩れた。その肩を雄の狼人族が抱く。
雄の狼人族は族長とディナに頭を下げると何も言わずに、泣き続ける妻を連れてその場を後にした。最後に、いくつかの感情の入り混じった視線をユウ達に向けて。
「――あたしがラドカルミアに行く前のことだ」
「……ああ」
思わず立ち止まっていたレイがセラの言葉により我に還ってまた前を向く。
(だいぶ、ユウに感化されてきたようだ)
そう苦笑交じりに心の中で呟く。そして本人が気づいているかは分からないが、それはセラも同じ。例え子供とはいえ、相手は魔族。それを可愛いなどと。
レイがそんなことを思いながら進む内に、一見の家へと辿りつく。
一同が近づくと誰かが声をかけるより早く、家主が出入り口にかかる布を押し上げて顔を覗かせた。
「親父!」
その顔を見て、ディナが喜色ばんだ。それは相手も同じようで、その獣の口で不器用にニッと笑みを浮かべると梯子を使わずに身軽に大地へと降り立つ。
「よく帰ったな!心配なんぞしてねぇがな!」
言葉とは裏腹に、懐に飛び込んだディナを強く抱きしめてその身体が浮くほどにぐるんぐるんと振り回す。最初にあった狼人族よりもさらにがっしりとした体躯。戦場で猛威を振るう戦鬼族とも殴り合いができそうだ。おそらく彼が族長なのだろう。
振り回されたにも関わらずよろけもせずにディナは着地。
「本当かよ。あたしがいなくて不安で夜も眠れねぇんじゃねぇか?」
「馬鹿言え快眠だ!ぐっすり寝すぎて夢も見ねぇ」
軽口の応酬。だが、そこには確かな親愛の情がある。それは二人の表情が何よりも確かに証明していた。
「なんでぃ、知らねぇやつが多いな」
ディナの頭上越しに族長はユウ達を一瞥。
「ここじゃなんだ。まずは中に入りな」
そう言って今しがた出てきたばかりの家の梯子に手をかけるが、それをディナが引きとめる。
「待ってくれ。こいつらのこともそうだが、まず、話をしなけりゃならねぇことがある」
突然悲哀を帯びたディナの声色に族長がまた彼女に向き直った。そして、ディナが懐から取り出した物を見て全てを察したようにその黄の瞳を細めた。
「すまん。守れなかった」
ディナが取り出したのは一本の組紐。彼女が自分の右腕に付けているものと同じ物だ。それを受け取った族長は鼻先に近づけて匂いを嗅ぐ。
「ああ、エディモの匂いだ」
「エディモ……じゃあこれの持ち主はアシャルカか……」
族長がこちらの様子を遠巻きに見物していた狼人族の一体に声をかけると、すぐに二体の狼人族が連れて来られた。身体的特徴からしておそらく夫婦。
族長から組紐を受け取った雌の狼人族はしばし呆然とそれを眺めると、やがてボロボロと涙を溢しその場に泣き崩れた。その肩を雄の狼人族が抱く。
雄の狼人族は族長とディナに頭を下げると何も言わずに、泣き続ける妻を連れてその場を後にした。最後に、いくつかの感情の入り混じった視線をユウ達に向けて。
「――あたしがラドカルミアに行く前のことだ」
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