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天に吠える狼少女
第五章 天に吠える狼少女・5
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作戦は作戦と言えるほど難しいものではなかった。
ようはユウが無事に肉塊に触ることができればいい。言い換えれば少しの間だけ肉塊の動きを止めることさえできればいい。ただ、言葉にするのは簡単でもあの暴れまわる化物を押さえつけるのは並大抵の労力ではない。
「デイ/オル/エテ/エテ/エファ/ウエル――」
セラの呪文の詠唱が高らかに響く。果たして、あの肉塊に魔法がどれほど有効か。
「〈雷槍よ、顕現せよ〉!」
陽光の下でもはっきりと見える白光が一直線に迸った。晴天に大地を這う雷。出力はほぼ手加減していない。人間ならば即死しかねない威力。
ビクンッと肉塊が痙攣するように跳ねた。体内に入った電流が行き場を求めて炸裂し、内から肉を破って大地へと還る。裂けた肉の傷口から肉の灼ける不快な臭気が漂った。が、その傷跡も一瞬のうちに左右の肉の膨張によって塞がれる。ダメージを与えた、とは言い難い。
だが、化物に成り果てているにしてもそれが生物という体裁を保っているのなら、身体は脳から発せられる電気信号で動いているはずだ。大量の電流を浴びせられれば筋肉の動きは制限される。
「ウオオォォッ!」
魔法によって動きが鈍った肉塊に向けてレイとディナが走った。その後ろを一定の距離を空けてユウが追従する。
二人がかりで両腕を抱え込み、肉塊を大地に張り付ける。体液で滑るその巨体を筋力と体重で無理矢理押さえ込む。
が、
グルアアアアアア――!!
肉塊が吠え、ただ無造作にその肉膨れした腕に力を込める。ただそれだけで、まず体重の軽いディナの身体が宙に浮いた。
「クソがッ!」
なんとか踏ん張ろうとディナが力を込めるが、腕の振りによって振り回され、しまいには弾き飛ばされてしまう。接地する際の衝撃を逃がすためにごろごろと転がったディナは即座に立ち上がりつつも、険しい表情で肉塊を睨んだ。
もともと体格があり、狼人族の中でも力は強い方だったテヴォだが、肉塊になってさらに筋力が増している。まるで練魔行で常に全身の筋肉を強化しているようだ。そんなことをすれば本来ならすぐに身体にガタがくるはずだが、そのガタもすぐに再生する、ということか。
「ぬぅ……!」
一瞬遅れてレイも無理矢理剥がされた。外部からの刺激を受けたことで余計暴走に拍車がかかる肉塊の腕の振りに巻き込まれない距離まで後退する。
「なんて馬鹿力だよ、クソッ!」
生き物としての形を失ってしまったが故の圧倒的な膂力。あれでは無造作に振られた腕に当たっただけで骨が砕かれかねない。たとえユウが触れることができたとしても、それで彼女がやられてしまっては元も子もないのだ。完全に動きを封じるまでユウを近づけることはできない。
「……少々手荒になるが」
そう言ってレイは再び突撃を敢行。だが、今度はその左手に陽の光を鈍く反射する鋼の刃が握られている。
ようはユウが無事に肉塊に触ることができればいい。言い換えれば少しの間だけ肉塊の動きを止めることさえできればいい。ただ、言葉にするのは簡単でもあの暴れまわる化物を押さえつけるのは並大抵の労力ではない。
「デイ/オル/エテ/エテ/エファ/ウエル――」
セラの呪文の詠唱が高らかに響く。果たして、あの肉塊に魔法がどれほど有効か。
「〈雷槍よ、顕現せよ〉!」
陽光の下でもはっきりと見える白光が一直線に迸った。晴天に大地を這う雷。出力はほぼ手加減していない。人間ならば即死しかねない威力。
ビクンッと肉塊が痙攣するように跳ねた。体内に入った電流が行き場を求めて炸裂し、内から肉を破って大地へと還る。裂けた肉の傷口から肉の灼ける不快な臭気が漂った。が、その傷跡も一瞬のうちに左右の肉の膨張によって塞がれる。ダメージを与えた、とは言い難い。
だが、化物に成り果てているにしてもそれが生物という体裁を保っているのなら、身体は脳から発せられる電気信号で動いているはずだ。大量の電流を浴びせられれば筋肉の動きは制限される。
「ウオオォォッ!」
魔法によって動きが鈍った肉塊に向けてレイとディナが走った。その後ろを一定の距離を空けてユウが追従する。
二人がかりで両腕を抱え込み、肉塊を大地に張り付ける。体液で滑るその巨体を筋力と体重で無理矢理押さえ込む。
が、
グルアアアアアア――!!
肉塊が吠え、ただ無造作にその肉膨れした腕に力を込める。ただそれだけで、まず体重の軽いディナの身体が宙に浮いた。
「クソがッ!」
なんとか踏ん張ろうとディナが力を込めるが、腕の振りによって振り回され、しまいには弾き飛ばされてしまう。接地する際の衝撃を逃がすためにごろごろと転がったディナは即座に立ち上がりつつも、険しい表情で肉塊を睨んだ。
もともと体格があり、狼人族の中でも力は強い方だったテヴォだが、肉塊になってさらに筋力が増している。まるで練魔行で常に全身の筋肉を強化しているようだ。そんなことをすれば本来ならすぐに身体にガタがくるはずだが、そのガタもすぐに再生する、ということか。
「ぬぅ……!」
一瞬遅れてレイも無理矢理剥がされた。外部からの刺激を受けたことで余計暴走に拍車がかかる肉塊の腕の振りに巻き込まれない距離まで後退する。
「なんて馬鹿力だよ、クソッ!」
生き物としての形を失ってしまったが故の圧倒的な膂力。あれでは無造作に振られた腕に当たっただけで骨が砕かれかねない。たとえユウが触れることができたとしても、それで彼女がやられてしまっては元も子もないのだ。完全に動きを封じるまでユウを近づけることはできない。
「……少々手荒になるが」
そう言ってレイは再び突撃を敢行。だが、今度はその左手に陽の光を鈍く反射する鋼の刃が握られている。
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