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第057話(風狼活躍?!)
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樹海の町ウルスとアーグ大樹海の間には広大な草原が広がっていて、そこには様々な動物が生息している。草の高さは、場所にもよるけど僕の腰ぐらいしかなく、見通しも悪くない。またで動物にとって良い環境なせいか、弱肉強食は起こっているとはいえ、そんなに驚異となる動物も少なく、樹海の町ウルスに住む人達が生活する分には困らないような土地になっている。
「じゃぁ始めようか」
僕はそう言うと魔法を使うためのスキルを展開する。ポメによれば、まずこの世界に充満している魔粒子はパッシブアビリティの魔素蓄積により魔素に変換して魔導器という器に蓄積されるらしい。この魔導器は魔獣や魔物と呼ばれている生物には魔晶石という形で存在が認められているが、人族の体から魔晶石が排出されたという例はない。だが魔導器自体は存在するとポメは言うのだ。何故ならば魔導器が存在していなければ魔粒子を魔素として扱う事ができないという事で、逆説的に存在しているとの説明だ。ポメが言葉を濁していたので何か裏がありそうな気がしないでもないけど。
次に魔素抽出というアビリティで魔導器から魔素を抽出し、魔素変換のアビリティで魔素を魔導回路に流しこみ魔力に変換する。そして作られた魔力を指先などの発動部位に導き、魔法起動にて事象を発露、魔法制御にて射程や方向、形などの制御を定義し、魔法実行にて実行させるのが魔法発動の一連の流れである。
「全探索!」
アーグ大樹海で活躍していた探索魔法を起動する。自分の周囲1kmの範囲の全ての属性に応じた存在探索する魔法だ。基本的に生物はなんらかの属性に寄っているので、ほぼ全ての生物を検知することが可能だ。
「周りに危険な生物はいないみたいだね」
「では、さっさと目的のモノを探すのです」
「うん。確かこの草原の所々に群生しているって聞いたから」
僕たちはそう言いながら草原を進んでいく。探索魔法で探せればいいんだけど、この魔法は一度僕自身が見て、その対象の魔素か魔力の波長を把握しないと、特定の物を探し出すのが難しいのが欠点だ。なので、現状は生物が何処らへんに何体いるかはわかっても、それが何の生物かまでは把握できない。
植物に関しても、僅かであっても魔素を放出していれば、特定することは可能だ。ただほぼ一緒の魔素の波長を出す亜種みたいなものを見分けるのは難しい場合もある。
なので、まずは自らが現場に行き、生物にしろ草木にしろ現物を見る必要があるのだ。
ガゥ……
草をかき分けて進んでいると、ファングが小さい吠え声を上げて、僕の蒼色の外套を引っ張る。
「何?ファング?」
僕は足を止めてファングの方を向くと、ファングは警戒するように僕の前の方を見据えている。全探索の魔法では、あたり一面に敵性ではない生物のマーカーが沢山あるので、僕としては無視を決め込んでいたのだが、ファングは何やら気配を察知したらしい。
そしてファングが見ている草むらがガサガサと揺れたと思うと、僕目掛けて黒い影が襲いかかってきた。
「うわっ!」
僕は突然伸びて襲ってきた影から急所を守るように手を体の前で交差させる。
ワォォォンッ!!
と、僕が吃驚している内に、ファングがその影の喉元に噛みつき地面に押さえつける。その影はしばらく長い体をうねらせていたが、やがて力尽きて動かなくなる。
「これは……」
僕を襲ってきたのは体長1m程もある細長い体を持ち、頭が三角形に近い爬虫類、いわゆる蛇だった。
「この頭の形を見ると多分、毒蛇だね。出血毒を持つ危険な生物だ。確か討伐依頼と素材納品に載っていたはずだ」
「だったら持って帰るのです。厄介な蛇以外は胴体部分には毒はないので食べられるはずなのです」
「そうだね。ポメ、宜しく頼むよ」
「こんないたいけな美少女にこんな大荷物をもたせるなんて御主人様は鬼畜生なのです」
ポメはそう言うと、いそいそと蛇の絶命を確認しに行く。
「ファング、お手柄だったね」
僕はそう言って、ファングの頭を撫でると、ファングは嬉しそうに撫でられるままに任せる。かなり強力な魔獣で、強力な攻撃を体毛で防いだりするはずなんだが、手触りが素敵すぎるんだよなぁ。
撫でられているファングを見て、僕の肩口に降りてきたビークが不満そうな鳴き声を上げるので、ビークも少し撫でてあげた。
毒蛇は人間に対して敵対的で僕達を狙って襲おうとしてきたのではなく、自分の縄張りに入ってきた餌だと思って襲ってくる習性だったので、敵性生物のマークが付かなかったようだ。
ただし今回、僕が危険な生物だと認識したので、僕の全探索の情報が敵性情報に書き換えられる。また、毒蛇だと名前と姿が一致したので、全探索上も毒蛇と固有名詞で認識できるようになったようだ。
「次に行くのです」
僕が全探索に気を取られていると、いつの間にか1mもある毒蛇を何処かに収納したポメが僕を急かしてくる。全くいつものことながら何処にしまっているんだろう?
「もうこの周辺には毒蛇はいないようだね。もうちょっと素材納品したいから、道すがら近くにいたら倒していこう」
僕はそう言って再び素材採取の為に、探索を再開するのであった。
「じゃぁ始めようか」
僕はそう言うと魔法を使うためのスキルを展開する。ポメによれば、まずこの世界に充満している魔粒子はパッシブアビリティの魔素蓄積により魔素に変換して魔導器という器に蓄積されるらしい。この魔導器は魔獣や魔物と呼ばれている生物には魔晶石という形で存在が認められているが、人族の体から魔晶石が排出されたという例はない。だが魔導器自体は存在するとポメは言うのだ。何故ならば魔導器が存在していなければ魔粒子を魔素として扱う事ができないという事で、逆説的に存在しているとの説明だ。ポメが言葉を濁していたので何か裏がありそうな気がしないでもないけど。
次に魔素抽出というアビリティで魔導器から魔素を抽出し、魔素変換のアビリティで魔素を魔導回路に流しこみ魔力に変換する。そして作られた魔力を指先などの発動部位に導き、魔法起動にて事象を発露、魔法制御にて射程や方向、形などの制御を定義し、魔法実行にて実行させるのが魔法発動の一連の流れである。
「全探索!」
アーグ大樹海で活躍していた探索魔法を起動する。自分の周囲1kmの範囲の全ての属性に応じた存在探索する魔法だ。基本的に生物はなんらかの属性に寄っているので、ほぼ全ての生物を検知することが可能だ。
「周りに危険な生物はいないみたいだね」
「では、さっさと目的のモノを探すのです」
「うん。確かこの草原の所々に群生しているって聞いたから」
僕たちはそう言いながら草原を進んでいく。探索魔法で探せればいいんだけど、この魔法は一度僕自身が見て、その対象の魔素か魔力の波長を把握しないと、特定の物を探し出すのが難しいのが欠点だ。なので、現状は生物が何処らへんに何体いるかはわかっても、それが何の生物かまでは把握できない。
植物に関しても、僅かであっても魔素を放出していれば、特定することは可能だ。ただほぼ一緒の魔素の波長を出す亜種みたいなものを見分けるのは難しい場合もある。
なので、まずは自らが現場に行き、生物にしろ草木にしろ現物を見る必要があるのだ。
ガゥ……
草をかき分けて進んでいると、ファングが小さい吠え声を上げて、僕の蒼色の外套を引っ張る。
「何?ファング?」
僕は足を止めてファングの方を向くと、ファングは警戒するように僕の前の方を見据えている。全探索の魔法では、あたり一面に敵性ではない生物のマーカーが沢山あるので、僕としては無視を決め込んでいたのだが、ファングは何やら気配を察知したらしい。
そしてファングが見ている草むらがガサガサと揺れたと思うと、僕目掛けて黒い影が襲いかかってきた。
「うわっ!」
僕は突然伸びて襲ってきた影から急所を守るように手を体の前で交差させる。
ワォォォンッ!!
と、僕が吃驚している内に、ファングがその影の喉元に噛みつき地面に押さえつける。その影はしばらく長い体をうねらせていたが、やがて力尽きて動かなくなる。
「これは……」
僕を襲ってきたのは体長1m程もある細長い体を持ち、頭が三角形に近い爬虫類、いわゆる蛇だった。
「この頭の形を見ると多分、毒蛇だね。出血毒を持つ危険な生物だ。確か討伐依頼と素材納品に載っていたはずだ」
「だったら持って帰るのです。厄介な蛇以外は胴体部分には毒はないので食べられるはずなのです」
「そうだね。ポメ、宜しく頼むよ」
「こんないたいけな美少女にこんな大荷物をもたせるなんて御主人様は鬼畜生なのです」
ポメはそう言うと、いそいそと蛇の絶命を確認しに行く。
「ファング、お手柄だったね」
僕はそう言って、ファングの頭を撫でると、ファングは嬉しそうに撫でられるままに任せる。かなり強力な魔獣で、強力な攻撃を体毛で防いだりするはずなんだが、手触りが素敵すぎるんだよなぁ。
撫でられているファングを見て、僕の肩口に降りてきたビークが不満そうな鳴き声を上げるので、ビークも少し撫でてあげた。
毒蛇は人間に対して敵対的で僕達を狙って襲おうとしてきたのではなく、自分の縄張りに入ってきた餌だと思って襲ってくる習性だったので、敵性生物のマークが付かなかったようだ。
ただし今回、僕が危険な生物だと認識したので、僕の全探索の情報が敵性情報に書き換えられる。また、毒蛇だと名前と姿が一致したので、全探索上も毒蛇と固有名詞で認識できるようになったようだ。
「次に行くのです」
僕が全探索に気を取られていると、いつの間にか1mもある毒蛇を何処かに収納したポメが僕を急かしてくる。全くいつものことながら何処にしまっているんだろう?
「もうこの周辺には毒蛇はいないようだね。もうちょっと素材納品したいから、道すがら近くにいたら倒していこう」
僕はそう言って再び素材採取の為に、探索を再開するのであった。
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