ちびっこ無双 ~手加減しないと環境破壊しちゃう過剰魔力を持った僕と、ちびっこい仲間達で異世界を無双しちゃいます~

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

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第063話(料理絶賛?!)

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「!!」
「?!」
 一角兎ホーンラビットのステーキ、リコピルソース掛けを口に含んだ瞬間、クーフェさんとキリクさんが目をまん丸に見開いて絶句する。そして無言のまま、口が少しずつ動いて咀嚼する。

「……何なんだこれは!!」
「美味しいっっっ!!すっごく!!」
 一角兎ホーンラビットの肉を飲み込んだ二人から絶叫に近い声が上がる。

「まずこの一角兎ホーンラビットの肉!かすかに一角兎ホーンラビットの風味がするが、普段食べている肉とは比べ物にならないくらい臭みがない!!」
「噛みしめるたびに、肉汁が口の中に溢れて蕩けちゃいそうっ!」
「そしてその肉に全く見劣りせずに、逆に香りを高めているのが、このリコピルソース!」
「食欲をそそるガリクの根の香りがお肉の味を一段と引き上げているの!」
「そのガリクの根とリコピルの相性が物凄い!そしてその繋ぎになっているのがオリガの粉末か!この風味とかすかな苦味が、酸味と一体化して奥深い旨味を生み出している!」
「私がかつて体験したことのない旨味の深さ!こんなの知ったら、私もう戻れなくなっちゃうっ!!」
 二人はどこぞの料理漫画のような食レポをしながら、料理をものすごい勢いで食べ進んでいく。

「うぉっ!パンをリコピルソースに浸すと、これまた絶品だ!!」
「え?!なになに?!」
 キリクさんがパンを千切ってリコピルソースに浸し、口に放り込み絶賛する。それを見ていたクーフェさんもキリクさんのマネをしてパンを浸す。

「あぁんっ!本当っ!いつものパンじゃないみたいっ!!」
 ……なんくあクーフェさんの口調が妙に艶めかしんですが……

 興奮する二人を見ながら僕も自分で作った料理を味わう。うん、この世界の食材で初めて料理してみたけど、自分の想像以上に美味しく出来たみたいだ。

「ぐ……世間知らずのダメ御主人様マスターなのに、こんな美味しい料理を……いいえ!ポメは!ポメは負けてないんだからぁぁぁぁぁ!!ダメ御主人様マスターのバカっ!クズっ!チ○カスっっ!!」
 同じく僕の料理を口に含んだポメが、驚愕の表情を浮かべた後、激しく僕を罵りながら号泣しつつ走り去っていく。どうやらメイドのプライドをへし折ってしまったようだ。

「本当に美味しいわ。どうして、こんな美味しく作れるのかお姉ちゃんに教えてもらえる?」
「あぁ、俺も興味あるな」
 ソースの味を何度も確かめながらクーフェさんが聞いてくる。

「特別何かと言えば、まず一角兎ホーンラビットの血抜きにあると思います。ギルドの解体場の人に聞いたんですが、この町では取ってきた獣の血抜きをほとんどしていないんだとか。血抜きをしないと、死んだ後に血が全身に留まってしまって、強烈な獣臭さが残ってしまうんです」
「血抜きって?」
「仕留めた獣の心臓が動いている内に、首などにある動脈を切って、余分な血を出してしまう作業の事です。血抜きすることで獣臭さも減りますし、重さも軽くなり持運びも少しは用意になるんです」
「なるほど、このお肉がいつも買うお肉より全然臭くないのはそういう理由だったのね」
「えぇ、あとソースですが、リコピルは火を通すことで旨味成分に変わります。火を通したお肉も旨味成分を持っていて、旨味成分が2つ以上重なると、すごく美味しく感じるんです」
「旨味成分?」
「はい。食べ物を食べた時に舌の上に、甘味、苦味、辛味、酸味、塩味以外に感じている旨味といったものです。それらがバランス良く配合されていると、料理に飽きが来にくく、美味しいと感じるんです」
「へぇ、シン君、よく知っているのね」
「ま、まぁ。親の受け売りなんですけど。今回の料理にはリコピルの酸味と旨味、一角兎ホーンラビットの肉に振った塩の塩味と旨味、オリガの粉末の苦味で色々な味を混ぜ合わせてみました」
 僕の話を真剣な顔で聞いているクーフェさん。聞き終わると顎に手を当てたまま思案顔になる。

「あのシン君。この料理なんだけど、良かったら冒険者ギルドにある酒場で出させてもらいたいんだけど……ダメかな?」
「べ、べべべべべ、別にいいですけど?!」
「本当?!」
 クーフェさんが人差し指を下唇に当てながら、上目遣いで聞いてくる。そんな仕草にドギマギしてしまい、どもりながら答えてしまう。

「あ、でも、それならこの後に仕込む料理も一緒にした方が良いかもしれないです」
「この後?」
「えぇ、時間がかかるんで、今晩仕込もうと思っていた料理があるんです。お邪魔でなかったら一晩厨房をお借りしたいんですが」
「別に良いんだけど、夜遅くまでやってたらダメよ?シン君はまっだ小さいんだから夜ふかしはメッ!よ?」
「あはははは……そ、そんなに遅くならないようにします」

バタンッ!

 そんなやり取りをしていると、乱暴に僕らが使わせてもらっている部屋のドアが乱暴に開けられる。そして、ポメがツカツカと食卓の方に寄ってきて、テーブルの上に何かを載せる。

「コレを食べて、ポメの偉大さを再認識するのです!へっぽこ御主人様マスターより、ポメのほうが上だという事を証明するのです!」

 相変わらずな物言いだと思いながらテーブルの上を見ると、木の皿の上に青く透明な円錐台型、いわゆるプリンの形をしたものがプルプルと震えていた。

「な……何これ?綺麗はきれいなんだけど」
「これ、スライム?か?」
 僕の知識だとこれはゼリーと言われているものだが、見慣れない人にとっては確かにスライムと間違えてもおかしくはないだろう。

「これはジェリーというデザートです。美味しいのでビビらないでさっさと食べるのです!」
 ズズイっとポメが詰め寄りながら食べることを強要してくる。まぁポメは僕の害になるものを作ることはないからと、先ず僕がジェリーの端にスプーンを入れて掬い取り口に運ぶ。

「うん、美味しいよ。プルプルとしていて甘くて、舌の上で溶けて消えていくね。この清涼感はミントかな?」
 僕が褒めると、ポメは誇らしげに濾してに手を当てて凹凸の全く無い胸を張る。

「シンがそういうなら……」
 そういってキリクさんも同じようにジェリーを口に含む。

「うぉっ!何だこれ?本当に口の中で溶けるぞ!」
「大丈夫?」
「あぁ、冷たくて、爽やかで甘いな」
 ちょっと心配そうな顔でキリクさんが食べるのを見るクーフェさん。そして大丈夫そうなのを確認すると、恐る恐るジェリーを口に含む。

「わぁっ!美味しい!」
 口に含んだ瞬間、不安そうな顔が吹き飛び、顔一面に笑顔が浮かぶ。そして次々と掬い上げて口に含むと手を頬に当ててうっとりとした表情を浮かべる。

「ポメの実力を思い知ったですか!」
 プライドを取り戻したポメが大げさな仕草で更に胸を張る。

「うん。美味しいよ、ポメちゃん。最初はスライムを食べさせられるのかと思ったわ」
 クーフェさんが絶賛する。

「え?!あー、うん」
 急にポメが都合悪そうに頬をポリポリかきながら明後日の方向を向く。

「え?!ポメちゃん……まさか?」
「よよよよよ、世の中には、知らないほうが幸せなこともあるのです!」
 ポメは表情が変わるクーフェさんに見つめられるが、冷や汗をダラダラ流しつつも視線を合わせない。

「ポ、ポメは、お花を摘みに行くのです!」
 耐えきれなくなって脱兎のごとく逃げ出す。

「シン君これって……?」
「ま、まぁ。美味しかったんだから良いんじゃないんですか……?」
 とばっちりを受けてジト目で見られる僕も背中にツーっと冷や汗を流しながら回答する。

「まぁ、いいわ。どうせもう食べちゃったし、美味しかったことに変わりはないのだから」
 ふぅっと溜息をついたクーフェさんの表情が元に戻る。それを見た僕はほっと胸をなでおろすのだった。
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