荒唐無稽なプレゼンター ~何処でも誰にでもプレゼントできるというクズ能力で異世界を救います~

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

文字の大きさ
1 / 17

第1話(誰にでもプレゼントできるクズ能力)

しおりを挟む
 俺はある日、道端で転がっている赤い服を着た小汚いジジイを拾った。
どうやら相棒と愛車に見放されて、国に帰れなくなって行き倒れていたらしい。
俺の家は極々一般家庭で、小汚いジジイを雇う余力はないが、一晩泊めて飯を食わせるくらいの余力と度量はある。
 仕方ないので一晩だけ面倒を見てやった次の日の朝に、金はないが御礼をやると言われて、妙な呪いを両手に埋め込まれると、俺は意識を失った。

……

 気が付くとやけに星空が綺麗な草原に寝そべっていた。混乱する頭を振って立ち上がると周りを見渡す。ただのだだっ広い草原。少し冷たいが柔らかい風が俺の頬を撫でる。

「夜だって言うのに寒くないな」
 そう独り言を喋りながら自分の身体を確認する。痛い所は……ないな。動かない所……もないな。来ている服は気絶する前の衣服のままだ。持ち物は……いつも持ち歩いているスマフォぐらいか。

「見知った風景ではない。というか異世界ってヤツだろココ」
 天を見上げると赤と青の二つの月が浮かんでいる。星の瞬きを見て俺の知識を総動員しても、俺の世界の星座との合致点が見出せない。俺も年頃のガキなので、そういった物語は少し興味があって知っているが、まさか自分にそれが降りかかってくるなど思いもしなかったけどな。

「まぁ、言葉が伝わってくれればありがたいんだが」
 よくある設定だと、都合よく神様が言語能力と共にチートスキルをくれるはずだが、俺にそんなイベントはなかったしな。そのかわり死ぬ恐怖や痛みなどもなかったのは幸いだ。

「さてと、まずは衣食住を確保するか」
 どこに行けばいいものかもわからずに、右手にスマフォ、左手をポケットに突っ込んだまま歩き出す。何気なく電源を入れてスマフォを操作する。

「電波は……当然入っていない。電池は、それなりに残ってる。となると王道通りコレを売っぱらって資金にするか」
 誰もいない草原を当てもなく歩きながら分析する。運よく人の集落に着けばよいが、普通は魔物かなんかに遭遇するのがオチだよな。そんな不埒な事を考えて歩いていると、予想通り魔物らしきものが目に止まり、同時に相手も気が付く。敵は一声雄叫びを上げると、獲物を見つけたのを喜ぶように好戦的な目をして、口から涎を垂らしながら、こちらへ接近してくる!

「LV1の敵はスライムやウサギが定番だろ?」
 俺はその魔物らしきものに語りかけると応戦の準備をする。俺はただのしがないガキだから武術なんてものは学校の授業で少しやったくらいしか経験がない。武器もない防具もない、普通は逃げ出す場面だ。

「よりによって一番最初から三つ首狼ケルベロスなんてハードモードすぎんだろ!!」
 2m近くある巨体が物凄い勢いで突っ込んでくる。当然避けられるわけもなく木の葉のように三つ首狼ケルベロスに吹き飛ばされてしまう。

「あー、死んだかもなぁ」
 宙を舞いながら冷静に状況を分析してみる。確かジジイがよこした加護、いや呪いは贈答プレゼントだったな。コイツは俺の触れているものを、一度でも俺が認識した相手・場所に強制的に送り届ける能力らしい。いつでもどこでもプレゼントを贈れるという素晴らしくクズな能力だ。
 何で俺が無差別にプレゼントしなければならないのか。あのジジイ、今度あったら一晩中正座させて説教してやる。
 普通に考えればクズのような能力だが、こうして使えば役に立つんだよ。俺は三つ首狼ケルベロス贈答プレゼントする。

グギャッ!!

三つ首狼ケルベロスは苦しそうな声を上げると、その場に倒れて地面をゴロゴロ転がる。そりゃそうだろう。からな。

 俺はそのまま地面に叩きつけられる直前に、自分の手の上にある空気を大量に贈答プレゼントする。
 空気のクッションが俺の落下の衝撃を和らげ、俺は転がって衝撃を散らしながら無事に起き上がる。

三つ首狼ケルベロスを見ると、口から泡を出しながら白目をむいて死んでいた。

「さてと、ここで異世界料理物だと血抜きとかするんだよな。とはいえ、刃物はないし心臓も止まっていると血抜きもままならないか」
 俺はボソっと呟きながら、三つ首狼ケルベロスの首に手を当て俺の手が触れている三つ首狼ケルベロスの血液を、隣の地面に贈答プレゼントする。
 一瞬で隣の地面が真っ赤な血で染まり、三つ首狼ケルベロスが縮んだように見える。まぁ体重の8%暗いが血液だから、100kgくらいあれば92kgくらいになるからな。

「クズジジイの能力も、まぁ使えん事はないみたいだな」
 俺は地面に手をむけながら、俺の背中に触れている空気を俺の手の先に連続して贈答プレゼントする。真空状態に背中が引っ張られ、手の先にある濃い密度の空気に押し出され、俺の身体は爆発的な速度で上昇する。同様の方法で空中で姿勢を制御しながら、眼下を見渡すと

「あった。うぇ、かなりでかい都市だな」
 大草原の先に巨大な城壁に囲まれた都市を見つける。面倒ごとが起きそうだが、まずはそこに向かって行くとしよう。空気を贈答プレゼントする量と位置を調整しながら元の場所に戻すと、三つ首狼ケルベロスを進行方向の目視先に贈答プレゼントしながら歩いていく。

「さてと、鬼が出るか蛇が出るか……」
 月が沈み日が昇り始める頃、俺はその巨大な城門の近くまで来ていた。そんな俺は三つ首狼ケルベロスの死体をとりあえず置いたまま、一人で呟きながらやけに立派な城門へ近付いていく。
 城門は中世の部分金属鎧をつけて槍を持った衛兵2人が正面門を守っていた。俺の姿を目に捉えると、槍を構えて威嚇してくる。

「あー、言葉は通じるか?」
 まず大事なのはコミュニケーションだな。と言う事で、俺は言葉が通じるかどうかわからんが、とりあえず聞いてみる。

「誰だ!貴様は!!」
 あー、うん。ちょっと訛りを感じたが俺の喋った言葉が通じるみたいだ。コレは僥倖。

「昨晩、後ろの草原に飛ばされてきちゃってさ。何もわからないし衣食住も確保できていないんで困っているんだなコレが」
 簡単に状況を説明すると、衛兵達はアッサリ納得して槍を収めてくれる。どうやらたまに「異界渡り」と呼ばれる人物が現れるらしい。そういう人物が現れたら王宮に案内するようにと指示が出ているそうだ。これは話が早くて助かる。そんな王宮にとても胡散臭さを感じるが、他に手もないので乗るしかないのが癪な所だ。
 すぐにでも王宮に案内しようとする衛兵に、草原での戦利品の三つ首狼ケルベロスを売り物にしたい事を話すと、凄く胡散臭い顔をされる。まぁ逆の立場だったら、俺も信用しないわ。仕方ないので三つ首狼ケルベロスの場所まで案内すると、呆れ返ったのか、あんぐりと大きい口をあけて固まってしまう。そりゃそうだろうな。
 衛兵達は人手がいるので、すぐには動かせないけど、キチンと冒険者ギルドに死体を届けてくれると約束をしてくれて、後で連絡をしてくれるらしい。いい人達だな、ホント。

 俺はそのまま衛兵に案内されて、王宮に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

処理中です...