43 / 52
夏の風景 4 男達の酒盛り SIDE:純一
しおりを挟む
ワインバーで6人の青年達が飲んでいる。
いずれもスポーツマンであることを伺わせる逞しい体格。
そして、それぞれタイプは違うが凛々しい顔立ち。
よく飲み、豪快に食べ、爽やかに笑いながら楽しそうに話をしている。
その6人のテーブルにはライトが当たったように、明るい雰囲気で包まれている。
店内に居合わせた客が、その男らしい風貌の6人の青年達テーブルをチラッと伺うのも分かる。
一人は、サッカーの名手であり、高校の体育教師、来生純一。
そして、彼の大学時代の気の置けない仲間達。
ラグビー部出身の大柄な体格をしているのは尊。
現在、製薬会社の営業をしている。
豪放磊落な性格で医師達に可愛がられているようで、営業成績は高く、将来を嘱望されているようだ。
今日は、間もなく結婚を控えた彼のお祝いの席でもある。
落ち着いた佇まいの公平は、現在、アスリート向けのメンタルトレーナーの卵として大学院に通っている。
優しげな顔立ち。
元々は剣道の選手であった。
亮介は、実業団に所属するバレー選手。
六人の中では唯一の妻子持ちで、六人の中では一番に落ち着いた雰囲気を醸し出している。
スラッと背の高く、6人の中では一番、甘いマスクをしている憲司はトライアスロンの選手であった。
ライフセーバーでもあり、サーフィンの世界では知られた存在だ。
彼もまた、純一と同じく教職に就いている。
ただ、生真面目な純一とは異なり、かなりの遊び人でもあった。
一人だけ幼さを残す顔をしているのは輝。
まだ、大学生だ。
現在、海でライフセーバーの活動をしており、真っ黒に日焼けしている。
若々しい学生らしい笑顔。
教師を目指しており、現役教師の純一の話を聞きたいと、憲司に頼み、今日の飲み会に参加した。
元々、純一とは、顔見知りでもあった。
そして、純一の横顔を、後ろ姿を熱い視線で見ていたが、それには純一は、気付いていない。
純一は、表裏のない性格で、学校でも人懐っこい顔でいるが、やはり、気心の知れたメンツの中で和らいだ表情を浮かべている。
「俺も、もうすぐマスオさんだぜ」
間もなく結婚する尊が言う。
結婚後は婚約者の実家に同居予定だ。
「そりゃ、大変だな、でも、地元有数の医者に見込まれて娘さんと結婚するんだ、文句も言えないだろ。それに、夫婦だけじゃ子育ては大変だぜ。その点、実家にいれば楽だよ」
一人だけ既婚者の亮介が先輩顔で言う。
「尊のかみさんの実家って、あのラグビー一家だろ?たしが、弟さんは高校ラグビー界の逸材って言われている、、、」
公平が言う。
「あぁ、どうやら反抗期真っ盛りらしい。弟の良い話し相手になってくれって、頼まれてるよ」
「年の近いラガーマン同士ってことか。確かに、実の両親よりも話はしやすいだろうな。なあ、モモジリ、お前は、結婚はまだか?」
憲司が純一に聞く。
モモジリ、桃尻、純一のアダ名だ。
「結婚?全然、考えられる状況じゃないよ」
「彼女は出来たのか?」
公平も聞いてくる。
「いや、全くだ、、、」
「童貞くらいは卒業したんだろ?」
デリカシーのない憲司の質問に、純一は、口ごもる。
まさか、童貞はおろか、処女も生徒によって捨てさせられたなど言えない。
「ったく、せっかくのデカマラと、プリプリの桃尻が泣いてるぜっ」
憲司は、純一がまだ、童貞と言うことを前提で言う。
大学時代から、生真面目で、スポーツ一筋で浮いた噂ひとつない純一のイメージが強いのだろう。
まさか、生徒、、、しかも複数の生徒達と不適切な関係を持っているなど考えもしない。
「来生先輩、やはり学校は忙しいですか?」
輝が、敬愛の念を隠さず、聞く。
「あぁ、授業だけじゃなく、生徒達の指導もあって、一日がすぐ過ぎていくよ」
純一は後輩の輝が、純一のプライベートから反れた話題をふってくれてホッとする。
その話題が覚悟はしていたが、やはり、童貞を捨てたかどうかとか、彼女がいなくて溜まってないかとか、風俗は行っているのかというような、プライベートに踏み込んだ話題は、仲の良い友人とはいってもどうしても好きにはならない。
「やっぱり、教師って忙しいんだろうなぁ。それに、来生先輩は必要以上に真面目ですから、業務をきちんとこなすんでしょうね」
「輝は、もうすぐ教育実習か」
「そうなんすよ。すごく楽しみだったのが近付くと俺で勤まるのか不安になってきて、、、」
心配そうな輝の顔に、純一は朗らかに笑い、肩をポンポンと叩く。
肩を叩かれた瞬間に、輝の頬が軽く紅潮したのに純一は気付かない。
「輝なら、大丈夫さ。自身を持て」
純一の笑顔は爽やかだ。
輝はその笑顔が眩しくて、目をそらしてしまう。
憲司は、その様子を面白くなさそうに見ている。
輝は憲司の直接の後輩であり、憲司自身も教師であるのに、輝は純一への思慕を隠さないからだ。
人一倍、プライドが高い。
グラスに残ったハイボールをぐいと飲み干す。
「おぅ、みんな、まだ飲めるよなっ」
憲司の言葉に、尊達もぐいと飲み干す。
純一は、戸惑う。
明日は、学校への登校日で、プール解放に立ち会う予定である。
飲み過ぎ、二日酔いは避けたい。
「俺は、この辺りで、、、」
「おい、モモジリ、なにヒヨってんだよ」
「付き合い悪いぜ、もう一杯ぐらい余裕だろ」
軽く酔いは回っているが、まだ、泥酔という程ではない。
純一は、思い直し、レモンサワーを一杯、追加した。
そして、純一がトイレに席を立った間に、悪友達がイタズラっぽい顔で、そのグラスにテキーラをそっと継ぎ足したのには、気付かなかった。
いずれもスポーツマンであることを伺わせる逞しい体格。
そして、それぞれタイプは違うが凛々しい顔立ち。
よく飲み、豪快に食べ、爽やかに笑いながら楽しそうに話をしている。
その6人のテーブルにはライトが当たったように、明るい雰囲気で包まれている。
店内に居合わせた客が、その男らしい風貌の6人の青年達テーブルをチラッと伺うのも分かる。
一人は、サッカーの名手であり、高校の体育教師、来生純一。
そして、彼の大学時代の気の置けない仲間達。
ラグビー部出身の大柄な体格をしているのは尊。
現在、製薬会社の営業をしている。
豪放磊落な性格で医師達に可愛がられているようで、営業成績は高く、将来を嘱望されているようだ。
今日は、間もなく結婚を控えた彼のお祝いの席でもある。
落ち着いた佇まいの公平は、現在、アスリート向けのメンタルトレーナーの卵として大学院に通っている。
優しげな顔立ち。
元々は剣道の選手であった。
亮介は、実業団に所属するバレー選手。
六人の中では唯一の妻子持ちで、六人の中では一番に落ち着いた雰囲気を醸し出している。
スラッと背の高く、6人の中では一番、甘いマスクをしている憲司はトライアスロンの選手であった。
ライフセーバーでもあり、サーフィンの世界では知られた存在だ。
彼もまた、純一と同じく教職に就いている。
ただ、生真面目な純一とは異なり、かなりの遊び人でもあった。
一人だけ幼さを残す顔をしているのは輝。
まだ、大学生だ。
現在、海でライフセーバーの活動をしており、真っ黒に日焼けしている。
若々しい学生らしい笑顔。
教師を目指しており、現役教師の純一の話を聞きたいと、憲司に頼み、今日の飲み会に参加した。
元々、純一とは、顔見知りでもあった。
そして、純一の横顔を、後ろ姿を熱い視線で見ていたが、それには純一は、気付いていない。
純一は、表裏のない性格で、学校でも人懐っこい顔でいるが、やはり、気心の知れたメンツの中で和らいだ表情を浮かべている。
「俺も、もうすぐマスオさんだぜ」
間もなく結婚する尊が言う。
結婚後は婚約者の実家に同居予定だ。
「そりゃ、大変だな、でも、地元有数の医者に見込まれて娘さんと結婚するんだ、文句も言えないだろ。それに、夫婦だけじゃ子育ては大変だぜ。その点、実家にいれば楽だよ」
一人だけ既婚者の亮介が先輩顔で言う。
「尊のかみさんの実家って、あのラグビー一家だろ?たしが、弟さんは高校ラグビー界の逸材って言われている、、、」
公平が言う。
「あぁ、どうやら反抗期真っ盛りらしい。弟の良い話し相手になってくれって、頼まれてるよ」
「年の近いラガーマン同士ってことか。確かに、実の両親よりも話はしやすいだろうな。なあ、モモジリ、お前は、結婚はまだか?」
憲司が純一に聞く。
モモジリ、桃尻、純一のアダ名だ。
「結婚?全然、考えられる状況じゃないよ」
「彼女は出来たのか?」
公平も聞いてくる。
「いや、全くだ、、、」
「童貞くらいは卒業したんだろ?」
デリカシーのない憲司の質問に、純一は、口ごもる。
まさか、童貞はおろか、処女も生徒によって捨てさせられたなど言えない。
「ったく、せっかくのデカマラと、プリプリの桃尻が泣いてるぜっ」
憲司は、純一がまだ、童貞と言うことを前提で言う。
大学時代から、生真面目で、スポーツ一筋で浮いた噂ひとつない純一のイメージが強いのだろう。
まさか、生徒、、、しかも複数の生徒達と不適切な関係を持っているなど考えもしない。
「来生先輩、やはり学校は忙しいですか?」
輝が、敬愛の念を隠さず、聞く。
「あぁ、授業だけじゃなく、生徒達の指導もあって、一日がすぐ過ぎていくよ」
純一は後輩の輝が、純一のプライベートから反れた話題をふってくれてホッとする。
その話題が覚悟はしていたが、やはり、童貞を捨てたかどうかとか、彼女がいなくて溜まってないかとか、風俗は行っているのかというような、プライベートに踏み込んだ話題は、仲の良い友人とはいってもどうしても好きにはならない。
「やっぱり、教師って忙しいんだろうなぁ。それに、来生先輩は必要以上に真面目ですから、業務をきちんとこなすんでしょうね」
「輝は、もうすぐ教育実習か」
「そうなんすよ。すごく楽しみだったのが近付くと俺で勤まるのか不安になってきて、、、」
心配そうな輝の顔に、純一は朗らかに笑い、肩をポンポンと叩く。
肩を叩かれた瞬間に、輝の頬が軽く紅潮したのに純一は気付かない。
「輝なら、大丈夫さ。自身を持て」
純一の笑顔は爽やかだ。
輝はその笑顔が眩しくて、目をそらしてしまう。
憲司は、その様子を面白くなさそうに見ている。
輝は憲司の直接の後輩であり、憲司自身も教師であるのに、輝は純一への思慕を隠さないからだ。
人一倍、プライドが高い。
グラスに残ったハイボールをぐいと飲み干す。
「おぅ、みんな、まだ飲めるよなっ」
憲司の言葉に、尊達もぐいと飲み干す。
純一は、戸惑う。
明日は、学校への登校日で、プール解放に立ち会う予定である。
飲み過ぎ、二日酔いは避けたい。
「俺は、この辺りで、、、」
「おい、モモジリ、なにヒヨってんだよ」
「付き合い悪いぜ、もう一杯ぐらい余裕だろ」
軽く酔いは回っているが、まだ、泥酔という程ではない。
純一は、思い直し、レモンサワーを一杯、追加した。
そして、純一がトイレに席を立った間に、悪友達がイタズラっぽい顔で、そのグラスにテキーラをそっと継ぎ足したのには、気付かなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
136
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる