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四月:ジムでの探り合い
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四月も後半となり、和彦も教師生活に慣れてくる。
生徒達は若々しく気さくな和彦を慕い、和彦もそんな生徒達と一緒にいるのが嬉しい。
そして、敬愛する来生純一との距離も、日々、縮まっていった。
職場の上司として、自然に話しかける名目ができた。
以前のように、来生が出席するかどうかドキドキしながら親睦会やOB会に参加するのではなく、毎日、堂々と会い、話しかけることができる。
が、それは一方で、苦しくもあった。
常に、来生の男らしい顔を見、その逞しい背中を目にし、その笑顔に平静を保たなくてはならない。
一途な想いは、誰にも気付かれてはならないと、自分を律していた。
ある日、来生が声を掛けてきた。
「和彦、教師生活に余裕はできてきたか?」
「ええ、まだまだだと思いますけど、かなり慣れてきました」
ニッコリと笑い先輩教師を見上げると、すっと目を反らした。
少し頬が赤らんでいる気がする。
暑いんだろうかと和彦は思う。
そして、言った。
「なら、放課後、俺が通ってるジムにビジターとして来ないか? 設備のいいところだ。久しぶりに一緒に汗を流そうっ!」
和彦にとっては望外の言葉だった。
「え、ジムですか?嬉しいっす。先輩っ!ぜひ一緒に行かせてくださいっ!さん、ぜひお願いします!」
本気で嬉しかった。
純一が和彦を見る。
若く精悍な二人の体育教師が目を合わせ、微笑んだ。
そして、純一は、自分の席に戻った。
ホッとした気分を周囲の教師達にバレないように。
自然に振る舞えたかどうかが気になる。
やっと誘えた、、、
今までに、何度も喉にでかかっていた簡単な言葉。
“一緒にジムに行かないか、、、”
おそらく、他の後輩なら簡単に口に出せただろう。
けれど、その簡単な言葉が、和彦の前に出ると喉がつっかえた。
急にジムに誘って、変に思われないだろうか、、、
本当は家に帰ってゆっくりしたいのに、先輩教師が無理矢理に誘ってきたと思われたらどうしよう。
何より、俺の邪な下心を見抜かれたら、、、
和彦にだけは、軽蔑されたくない。
よそよそしい態度を取られたくない。
だから、どこか心に鎧を着て、和彦に対してしまう。
鎧を脱いだら、その瞬間、和彦を抱きしめてしまうかもしれない。
しかし、さっきのジムに誘った時のキラキラした目は、本当だった。
その瞳に引き込まれそうな気がして、その場をすぐに離れてしまった。
思い切って誘って良かったと、純一は心の底から思った。
その夕方、学園近くの会員制ジム。
二人は軽くランニングマシンでウォーミングアップした後、バディを組み、マシーンを使い始めた。
和彦は、体格に比べて少し大きめのトレーニング用タンクトップにスポーツ用半ズボン。
鍛え抜かれた身体が、布地の下でゆったりと息をしている。
対照的に、純一は全身の筋肉の起伏を余すことなく主張する、アスリート用のピッタリと身体に張り付くボデイスーツに身を包んでいた。
純一の185センチの肉体が持つ完璧な均整は、その機能的なウェアによって、彫刻のような雄々しさを誇示していた。
「今日は、全身を満遍なくいこうか、、、」
「俺、先輩の持久力が憧れっす。脚力がなるほど...!先輩のメニュー、教えてくださいっ!ぜひ試してみたいです」
その朗らかさが純一には眩しく、愛しい。
「特別なことはやってないさ、、、いつもは、チンニングからかな、、、」
腕を組み、純一が言う。
ランニングマシーンでウォーミングアップされた身体からは、精悍な熱気が溢れるようだ。
和彦はチンニングマシーンに目をやる。
先輩、いつも、こんなボディスーツを着てトレーニングしているんだ、、、
上背のある完璧とも言っていい体躯が浮き上がるボディスーツ、、、
直視したい、、、
しかし、直視すると、自分がおかしくなってしまいそうだ、、、
「先に、やってみろ、、、」
先輩の言葉に甘えて、和彦はチンニングマシーンに向かう。
広背筋のトレーニング、、、和彦が身体を引き上げると、たっぷりしたタンクトップの裾がわずかに上がり、体操で徹底的に鍛えられた引き締まった腰の美しい締まった曲線が露わになる。
純一は、その鍛えられた身体に視線が絡み取られる。
そして、背徳感を感じる。
指導に徹しなければ、、、後輩に対する適切な指導に、、、
生真面目な純一は、自分に言い聞かせる。
「そう、もう少し肩甲骨を寄せてみろ。いいぞ、和彦。お前の体操で培った身体は、重心が安定しているから、鍛え甲斐がある、、、」
純一が和彦の広背筋に軽く手を当て、フォームを修正する。
185センチの逞しい体が、165センチの和彦を包み込むような形になる。純一の涼やかな息が、和彦のうなじにかかる。
和彦はその息を感じ、ゾクッとする。
体の力が抜けかけるのを慌てて抑える。
和彦にとって、純一の指導が愛撫のように感じられ、背中の皮膚から、じわりと熱が体の中に広がる。
彼の分厚い筋肉が、和彦のフォームを直す純一の男らしい手のひらの下でピクリと反応した。
「ありがとうございます、純一先輩。でも、純一先輩の均整の取れた身体に比べたら、僕になんか、到底敵いません。まるで彫刻みたいで、正直、いつも見惚れてしまいます」
そう言った後、急に和彦は恥ずかしくなる。
お、俺、何を言ってるんだ、、、?
筋肉を鍛える話をしてるのに、身体に見惚れるなんてこと言っちゃって、、、
不純だ、、、俺、、、
恥ずかしい、、、
「彫刻だなんて、大げさだな、、、そ、そういえば、和彦、、、お前は、週末とかにトレーニングをしたりしているのか?」
「トレーニングをしなきゃと思っているんですけど、週末は、気が抜けちゃって、、、ボォっとして、洗濯して、まとめて炊いたご飯を冷凍したりしているうちに終わっちゃうんですよ。外に出ない日もあります」
「え?信じられないな、、、お前、モテそうだからデートとかで忙しいのかと思っていたよ」
「 っ! デートなんて、する相手がいませんよ。教師として一人前になることに追われて、余裕がないっす、、、せ、先輩は、余裕を持ってるから、、、生徒達が、先輩はモテモテだって噂してましたよ、、、」
微妙な探り合いをしながら、二人はフリーウエイトゾーンへと向かう。
「はは。生徒達がそんなことを言っていたのか、、、好き勝手なことを言うな、、、俺も、今は仕事くらいしか心を動かす余裕は、ないな」
「あ、そうなんすか。それは少し、安心しました」
「え?なぜ安心した?」
「いや、、、あの、、、大変なのは俺だけじゃないって、、、先輩も大変なんだと思ったら、安心して、、、」
バーベルで鍛えつつ、二人は探り合う。
純一がバーベルを上げ下げする際、ボデイスーツの下で大胸筋と腹斜筋が、波打つように、粘り強く、力強く躍動する。
その圧倒的な雄々しい肉体の動きを、和彦は補助につきながら、まばたきもせずに見つめた。
「純一、先輩の筋肉のつき方は、本当にスゴいっす。天性の骨格と筋肉なんすね、、、」
「褒め過ぎだぜ、、、まぁ、ありがたく受け取っておくよ。お前も、筋肉がまるで瘤のように逞しくて見事じゃないか、、、」
「いや、俺の身体は無骨で、、、先輩のように美しくないから、、、」
純一はバーベルを戻し、和彦の方へ顔を向けた。
二人の視線が、一瞬、絡んだ。
二人は、目を逸らすことができない。
互いの視線に熱いほどの眩しさを感じながら、目を逸らすことができなかった。
生徒達は若々しく気さくな和彦を慕い、和彦もそんな生徒達と一緒にいるのが嬉しい。
そして、敬愛する来生純一との距離も、日々、縮まっていった。
職場の上司として、自然に話しかける名目ができた。
以前のように、来生が出席するかどうかドキドキしながら親睦会やOB会に参加するのではなく、毎日、堂々と会い、話しかけることができる。
が、それは一方で、苦しくもあった。
常に、来生の男らしい顔を見、その逞しい背中を目にし、その笑顔に平静を保たなくてはならない。
一途な想いは、誰にも気付かれてはならないと、自分を律していた。
ある日、来生が声を掛けてきた。
「和彦、教師生活に余裕はできてきたか?」
「ええ、まだまだだと思いますけど、かなり慣れてきました」
ニッコリと笑い先輩教師を見上げると、すっと目を反らした。
少し頬が赤らんでいる気がする。
暑いんだろうかと和彦は思う。
そして、言った。
「なら、放課後、俺が通ってるジムにビジターとして来ないか? 設備のいいところだ。久しぶりに一緒に汗を流そうっ!」
和彦にとっては望外の言葉だった。
「え、ジムですか?嬉しいっす。先輩っ!ぜひ一緒に行かせてくださいっ!さん、ぜひお願いします!」
本気で嬉しかった。
純一が和彦を見る。
若く精悍な二人の体育教師が目を合わせ、微笑んだ。
そして、純一は、自分の席に戻った。
ホッとした気分を周囲の教師達にバレないように。
自然に振る舞えたかどうかが気になる。
やっと誘えた、、、
今までに、何度も喉にでかかっていた簡単な言葉。
“一緒にジムに行かないか、、、”
おそらく、他の後輩なら簡単に口に出せただろう。
けれど、その簡単な言葉が、和彦の前に出ると喉がつっかえた。
急にジムに誘って、変に思われないだろうか、、、
本当は家に帰ってゆっくりしたいのに、先輩教師が無理矢理に誘ってきたと思われたらどうしよう。
何より、俺の邪な下心を見抜かれたら、、、
和彦にだけは、軽蔑されたくない。
よそよそしい態度を取られたくない。
だから、どこか心に鎧を着て、和彦に対してしまう。
鎧を脱いだら、その瞬間、和彦を抱きしめてしまうかもしれない。
しかし、さっきのジムに誘った時のキラキラした目は、本当だった。
その瞳に引き込まれそうな気がして、その場をすぐに離れてしまった。
思い切って誘って良かったと、純一は心の底から思った。
その夕方、学園近くの会員制ジム。
二人は軽くランニングマシンでウォーミングアップした後、バディを組み、マシーンを使い始めた。
和彦は、体格に比べて少し大きめのトレーニング用タンクトップにスポーツ用半ズボン。
鍛え抜かれた身体が、布地の下でゆったりと息をしている。
対照的に、純一は全身の筋肉の起伏を余すことなく主張する、アスリート用のピッタリと身体に張り付くボデイスーツに身を包んでいた。
純一の185センチの肉体が持つ完璧な均整は、その機能的なウェアによって、彫刻のような雄々しさを誇示していた。
「今日は、全身を満遍なくいこうか、、、」
「俺、先輩の持久力が憧れっす。脚力がなるほど...!先輩のメニュー、教えてくださいっ!ぜひ試してみたいです」
その朗らかさが純一には眩しく、愛しい。
「特別なことはやってないさ、、、いつもは、チンニングからかな、、、」
腕を組み、純一が言う。
ランニングマシーンでウォーミングアップされた身体からは、精悍な熱気が溢れるようだ。
和彦はチンニングマシーンに目をやる。
先輩、いつも、こんなボディスーツを着てトレーニングしているんだ、、、
上背のある完璧とも言っていい体躯が浮き上がるボディスーツ、、、
直視したい、、、
しかし、直視すると、自分がおかしくなってしまいそうだ、、、
「先に、やってみろ、、、」
先輩の言葉に甘えて、和彦はチンニングマシーンに向かう。
広背筋のトレーニング、、、和彦が身体を引き上げると、たっぷりしたタンクトップの裾がわずかに上がり、体操で徹底的に鍛えられた引き締まった腰の美しい締まった曲線が露わになる。
純一は、その鍛えられた身体に視線が絡み取られる。
そして、背徳感を感じる。
指導に徹しなければ、、、後輩に対する適切な指導に、、、
生真面目な純一は、自分に言い聞かせる。
「そう、もう少し肩甲骨を寄せてみろ。いいぞ、和彦。お前の体操で培った身体は、重心が安定しているから、鍛え甲斐がある、、、」
純一が和彦の広背筋に軽く手を当て、フォームを修正する。
185センチの逞しい体が、165センチの和彦を包み込むような形になる。純一の涼やかな息が、和彦のうなじにかかる。
和彦はその息を感じ、ゾクッとする。
体の力が抜けかけるのを慌てて抑える。
和彦にとって、純一の指導が愛撫のように感じられ、背中の皮膚から、じわりと熱が体の中に広がる。
彼の分厚い筋肉が、和彦のフォームを直す純一の男らしい手のひらの下でピクリと反応した。
「ありがとうございます、純一先輩。でも、純一先輩の均整の取れた身体に比べたら、僕になんか、到底敵いません。まるで彫刻みたいで、正直、いつも見惚れてしまいます」
そう言った後、急に和彦は恥ずかしくなる。
お、俺、何を言ってるんだ、、、?
筋肉を鍛える話をしてるのに、身体に見惚れるなんてこと言っちゃって、、、
不純だ、、、俺、、、
恥ずかしい、、、
「彫刻だなんて、大げさだな、、、そ、そういえば、和彦、、、お前は、週末とかにトレーニングをしたりしているのか?」
「トレーニングをしなきゃと思っているんですけど、週末は、気が抜けちゃって、、、ボォっとして、洗濯して、まとめて炊いたご飯を冷凍したりしているうちに終わっちゃうんですよ。外に出ない日もあります」
「え?信じられないな、、、お前、モテそうだからデートとかで忙しいのかと思っていたよ」
「 っ! デートなんて、する相手がいませんよ。教師として一人前になることに追われて、余裕がないっす、、、せ、先輩は、余裕を持ってるから、、、生徒達が、先輩はモテモテだって噂してましたよ、、、」
微妙な探り合いをしながら、二人はフリーウエイトゾーンへと向かう。
「はは。生徒達がそんなことを言っていたのか、、、好き勝手なことを言うな、、、俺も、今は仕事くらいしか心を動かす余裕は、ないな」
「あ、そうなんすか。それは少し、安心しました」
「え?なぜ安心した?」
「いや、、、あの、、、大変なのは俺だけじゃないって、、、先輩も大変なんだと思ったら、安心して、、、」
バーベルで鍛えつつ、二人は探り合う。
純一がバーベルを上げ下げする際、ボデイスーツの下で大胸筋と腹斜筋が、波打つように、粘り強く、力強く躍動する。
その圧倒的な雄々しい肉体の動きを、和彦は補助につきながら、まばたきもせずに見つめた。
「純一、先輩の筋肉のつき方は、本当にスゴいっす。天性の骨格と筋肉なんすね、、、」
「褒め過ぎだぜ、、、まぁ、ありがたく受け取っておくよ。お前も、筋肉がまるで瘤のように逞しくて見事じゃないか、、、」
「いや、俺の身体は無骨で、、、先輩のように美しくないから、、、」
純一はバーベルを戻し、和彦の方へ顔を向けた。
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