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五月:火照り
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土曜日の午前中。
つまらない口喧嘩の結果、ギクシャクしたまま純一と和彦は初めての週末を迎えようとしている。
二人とも、本当は反省している。
初めて身体を重ねた日から絶えることなくお互いの熱情をぶつけ合ってきた。
それが、もう5日間、肌を重ねていない。
互いに、どう折れようか考えている。
朝、視線が絡む。
すぐにどちらかが逸らした視線が暫く絡む。
そして、互いに互いの動きをチラ見する。
土曜日は午前中だけの授業だ。
体育教師の一人が言った。
“そう言えば、駅裏の来々軒、今日は餃子が半額らしいぞ、、、”
その言葉に二人の動きが止まる。
学校帰りに何度か行った店、、、
視線が絡まる。
行くか?
行きます。
言葉のない意思疎通。
二人の顔が明るくなる。
そして、、、
最後の授業である二年のクラスの名簿を用意し、体育館へ向かう準備をしていると、体育教官室の扉が開いて、元気な声が聞こえた。
「和彦先生、迎えにきたよっ!」
飛び込んできたのは結城、梶山、鍋田、森崎の四人だった。
彼らは人懐っこい笑顔で和彦の周りに集まり、ラグビーのタックルのような勢いで和彦の太い腕や、盛り上がった肩にじゃれついた。
「おいおい、お前ら元気だな! 分かった、今行くから待てって!」
和彦は、若さ溢れる生徒たちの真っ直ぐな慕情に、先ほどまでの鬱屈とした気分が晴れていくのを感じていた。
その睦まじい光景に、デスクにいた他の同僚たちも「杉山先生は本当に生徒に人気があるな」と、微笑ましげに目を細めている。
その輪の中で、鍋田が小瓶に入ったカプセルを取り出した。
「先生、これ。僕が飲んでる海外の最新サプリなんです。アスリートの疲労回復に凄く効くって評判で……先生に、使ってほしくて」
「へぇ、、、この間もらったヤツ、あの後、調子が良かったよ。気が利くじゃないか、鍋田」
「あ! ずるいぞ鍋田! 先生、俺にも一口飲ませてくださいよ」
結城たちが冗談めかして手を伸ばす。
鍋田は、まず先生の分、、、と手に握っていたカプセルを渡し、結城達には小瓶を開け出したものを渡す。
和彦が礼を言って口に運ぼうとした、その時だ。
「和彦、、、サプリなんか飲んでいるのか?」
低い声が響いた。
純一だった。
アスリートはサプリメントに関しては敏感だ。
効能を高らかに謳うが、実は副作用が生じるものもある。
純一の危惧はアスリートとして当然だった。
だが、その言葉が、教師としての未熟を指摘し、生徒との信頼関係を否定するように和彦には聞こえた。
「別にいいじゃないですか。来生先生、気にしすぎですよ。生徒の厚意を無碍にする方が、教師として問題だと思いますけどね、、、」
和彦は純一の方を見ることなく、意地を張るように言い返した。
そして和彦は鍋田から受け取ったカプセルを一気に飲み込み、傍らにあった水で流し込んだ。
「さあ、行くぞお前ら! 最高の授業にしてやるからな!」
和彦は生徒たちを引き連れ、足早に教官室を出て行った。
体育館には生徒達が集まっている。
「よしっ!みんな、今日も元気に身体を動かそうっ!」
快活に言う。
だが、体育館に足を踏み入れた和彦の脳裏では、先ほど教官室で純一に言い放った言葉が棘のように刺さっていた。
だが、生徒達を見ながら、俺には俺のやり方があるんだ、生徒との接し方があるんだと思う。
隣で無邪気に笑う鍋田や結城たちの顔を見て、その選択は間違っていないと強く思う。
「よし、今日は跳び箱、あん馬、床の三カ所に分かれて練習だ。各自、自分の課題に集中しろ!」
号令とともに、生徒たちが一斉に散る。
三つのセクションに分けたのは、一つの種目だと生徒の待機時間が長くなってしまうため、なるべく生徒達が身体を動かせるようにするためだ。
20分ごとに、セクションを入れ替える。
和彦はそれぞれのセクションを回り、熱心に指導を開始した。
無心に試技を行う、生徒達を誇らしく、愛おしく思う。
そして、一度目のセクション替え、、、カプセルを飲んでから、二十分少しが経過していた。
異変は、跳び箱の補助に入った時に訪れた。
なんだ、この暑さは、、、
身体がカッカと熱くなってきている。
まるで急に蒸し風呂へ入ったように、、、
全身にジワッと汗が滲み、ジャージの生地が皮膚にねっとりと張り付く。
「先生、今の踏み切り、どうでした?」
駆け寄ってきた梶山が背後から和彦に飛び付く。
その瞬間、触れられた箇所からボッと火花が弾けるような熱が走り、和彦の身体がビクンと跳ねた。
ど、どうしたんだ?
明らかに身体に異変が生じている。
落ち着け、、、
ただの運動による火照りに決まっている、、、
和彦は気のせいだと思い込もうとした。
体調管理が出来ていないとしたら、教師としての上司である純一に叱られる、、、
それは、悔しい。
だが、先程飛びつかれた部分の肌に、梶山の身体の熱さが残り、肉を蕩かすような甘く不思議な感触として広がる。
梶山にお座なりの褒め言葉を投げ、逃げるように鞍馬のセクションへ向かう。
だが、歩を進めるごとに、身体の変調は広がっていく。
不思議なことに、股間が熱く、敏感になっていく。
普段は全く気にしたことがないのに、一歩足を進めるたびに、内股が擦れ、スラックスの内布、ブリーフの前布が股間を摩擦してくるのが気になる。
頬が上気している。
身体が火照る。
「先生、あん馬の旋回、見ててください!」
結城がしなやかにあん馬を回る。
その脚のライン、跳ねる臀部の動き。
普段なら技術的なチェックに終始するはずの光景、、、
結城の動きと共にスポーツシャツが捲れ、チラリと見える腹筋、背中の生肌が、和彦の脳裏に突き刺さる。
純一と喧嘩をして一週間、禁欲状態の和彦に性的な刺激が襲いかかる。
何を考えているんだ俺はっ、、、!
神聖な学園の授業中に生徒に性的魅力を感じるなんて、、、
授業に集中しろっ、和彦っ!
激しく自分を叱咤する。
だが、火照りは増していく。
床運動のマットへ移動する頃には、股間が重量を持ち、自己主張を始めたように思えるほどになり、呼吸まで荒くなっていた。
「ハァ、、ハ、ハァ、、、よし、次、鍋田、、、やってみろ、、、」
少し動いただけで、股間に刺激が走る。
マットの上で前転する生徒たちの、ジャージから覗く首筋や、運動で紅潮した肌。
それらが和彦の脳を溶かす。
必死で理性を保とうとする。
まずい、、、
この身体の熱さは、異常だ、、、
でも、教師としてここで授業をやめるなんて出来ないっ!
彼は自らの猛り狂う本能を隠すように、無意識のうちに腰を深く沈め、マットの端にしゃがんだ。
そんな和彦の様子を結城、梶山、鍋田、森崎が横目で見て、ミッションが順調に進んでいることを確認して、ほくそ笑む。
つまらない口喧嘩の結果、ギクシャクしたまま純一と和彦は初めての週末を迎えようとしている。
二人とも、本当は反省している。
初めて身体を重ねた日から絶えることなくお互いの熱情をぶつけ合ってきた。
それが、もう5日間、肌を重ねていない。
互いに、どう折れようか考えている。
朝、視線が絡む。
すぐにどちらかが逸らした視線が暫く絡む。
そして、互いに互いの動きをチラ見する。
土曜日は午前中だけの授業だ。
体育教師の一人が言った。
“そう言えば、駅裏の来々軒、今日は餃子が半額らしいぞ、、、”
その言葉に二人の動きが止まる。
学校帰りに何度か行った店、、、
視線が絡まる。
行くか?
行きます。
言葉のない意思疎通。
二人の顔が明るくなる。
そして、、、
最後の授業である二年のクラスの名簿を用意し、体育館へ向かう準備をしていると、体育教官室の扉が開いて、元気な声が聞こえた。
「和彦先生、迎えにきたよっ!」
飛び込んできたのは結城、梶山、鍋田、森崎の四人だった。
彼らは人懐っこい笑顔で和彦の周りに集まり、ラグビーのタックルのような勢いで和彦の太い腕や、盛り上がった肩にじゃれついた。
「おいおい、お前ら元気だな! 分かった、今行くから待てって!」
和彦は、若さ溢れる生徒たちの真っ直ぐな慕情に、先ほどまでの鬱屈とした気分が晴れていくのを感じていた。
その睦まじい光景に、デスクにいた他の同僚たちも「杉山先生は本当に生徒に人気があるな」と、微笑ましげに目を細めている。
その輪の中で、鍋田が小瓶に入ったカプセルを取り出した。
「先生、これ。僕が飲んでる海外の最新サプリなんです。アスリートの疲労回復に凄く効くって評判で……先生に、使ってほしくて」
「へぇ、、、この間もらったヤツ、あの後、調子が良かったよ。気が利くじゃないか、鍋田」
「あ! ずるいぞ鍋田! 先生、俺にも一口飲ませてくださいよ」
結城たちが冗談めかして手を伸ばす。
鍋田は、まず先生の分、、、と手に握っていたカプセルを渡し、結城達には小瓶を開け出したものを渡す。
和彦が礼を言って口に運ぼうとした、その時だ。
「和彦、、、サプリなんか飲んでいるのか?」
低い声が響いた。
純一だった。
アスリートはサプリメントに関しては敏感だ。
効能を高らかに謳うが、実は副作用が生じるものもある。
純一の危惧はアスリートとして当然だった。
だが、その言葉が、教師としての未熟を指摘し、生徒との信頼関係を否定するように和彦には聞こえた。
「別にいいじゃないですか。来生先生、気にしすぎですよ。生徒の厚意を無碍にする方が、教師として問題だと思いますけどね、、、」
和彦は純一の方を見ることなく、意地を張るように言い返した。
そして和彦は鍋田から受け取ったカプセルを一気に飲み込み、傍らにあった水で流し込んだ。
「さあ、行くぞお前ら! 最高の授業にしてやるからな!」
和彦は生徒たちを引き連れ、足早に教官室を出て行った。
体育館には生徒達が集まっている。
「よしっ!みんな、今日も元気に身体を動かそうっ!」
快活に言う。
だが、体育館に足を踏み入れた和彦の脳裏では、先ほど教官室で純一に言い放った言葉が棘のように刺さっていた。
だが、生徒達を見ながら、俺には俺のやり方があるんだ、生徒との接し方があるんだと思う。
隣で無邪気に笑う鍋田や結城たちの顔を見て、その選択は間違っていないと強く思う。
「よし、今日は跳び箱、あん馬、床の三カ所に分かれて練習だ。各自、自分の課題に集中しろ!」
号令とともに、生徒たちが一斉に散る。
三つのセクションに分けたのは、一つの種目だと生徒の待機時間が長くなってしまうため、なるべく生徒達が身体を動かせるようにするためだ。
20分ごとに、セクションを入れ替える。
和彦はそれぞれのセクションを回り、熱心に指導を開始した。
無心に試技を行う、生徒達を誇らしく、愛おしく思う。
そして、一度目のセクション替え、、、カプセルを飲んでから、二十分少しが経過していた。
異変は、跳び箱の補助に入った時に訪れた。
なんだ、この暑さは、、、
身体がカッカと熱くなってきている。
まるで急に蒸し風呂へ入ったように、、、
全身にジワッと汗が滲み、ジャージの生地が皮膚にねっとりと張り付く。
「先生、今の踏み切り、どうでした?」
駆け寄ってきた梶山が背後から和彦に飛び付く。
その瞬間、触れられた箇所からボッと火花が弾けるような熱が走り、和彦の身体がビクンと跳ねた。
ど、どうしたんだ?
明らかに身体に異変が生じている。
落ち着け、、、
ただの運動による火照りに決まっている、、、
和彦は気のせいだと思い込もうとした。
体調管理が出来ていないとしたら、教師としての上司である純一に叱られる、、、
それは、悔しい。
だが、先程飛びつかれた部分の肌に、梶山の身体の熱さが残り、肉を蕩かすような甘く不思議な感触として広がる。
梶山にお座なりの褒め言葉を投げ、逃げるように鞍馬のセクションへ向かう。
だが、歩を進めるごとに、身体の変調は広がっていく。
不思議なことに、股間が熱く、敏感になっていく。
普段は全く気にしたことがないのに、一歩足を進めるたびに、内股が擦れ、スラックスの内布、ブリーフの前布が股間を摩擦してくるのが気になる。
頬が上気している。
身体が火照る。
「先生、あん馬の旋回、見ててください!」
結城がしなやかにあん馬を回る。
その脚のライン、跳ねる臀部の動き。
普段なら技術的なチェックに終始するはずの光景、、、
結城の動きと共にスポーツシャツが捲れ、チラリと見える腹筋、背中の生肌が、和彦の脳裏に突き刺さる。
純一と喧嘩をして一週間、禁欲状態の和彦に性的な刺激が襲いかかる。
何を考えているんだ俺はっ、、、!
神聖な学園の授業中に生徒に性的魅力を感じるなんて、、、
授業に集中しろっ、和彦っ!
激しく自分を叱咤する。
だが、火照りは増していく。
床運動のマットへ移動する頃には、股間が重量を持ち、自己主張を始めたように思えるほどになり、呼吸まで荒くなっていた。
「ハァ、、ハ、ハァ、、、よし、次、鍋田、、、やってみろ、、、」
少し動いただけで、股間に刺激が走る。
マットの上で前転する生徒たちの、ジャージから覗く首筋や、運動で紅潮した肌。
それらが和彦の脳を溶かす。
必死で理性を保とうとする。
まずい、、、
この身体の熱さは、異常だ、、、
でも、教師としてここで授業をやめるなんて出来ないっ!
彼は自らの猛り狂う本能を隠すように、無意識のうちに腰を深く沈め、マットの端にしゃがんだ。
そんな和彦の様子を結城、梶山、鍋田、森崎が横目で見て、ミッションが順調に進んでいることを確認して、ほくそ笑む。
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