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CH16 刻印

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扉が開く音に、彼は目を覚ます。

?

足音が一人だけではない。

首を捻り、入り口の方を見る。

警察官の後ろに見知らぬ男が続いて入ってきた。

顔面には複数のピアス。

両サイドを刈り上げ、頭頂は長く伸ばしたヘアスタイル、小さなサングラス。

横たわる彼を見る。

「こいつか?」

ピアスが言う。

「ああ」

ピアスはニヤリと笑う。

「綺麗な肌だ、、、素晴らしい、、、始めて良いか?」

「やってくれ」

ピアスと警察官が会話をしているのを聴きながら彼は珍しく怯えている。

何をされるのだろう、、、

まともなことでは無いということは分かる。

ピアスは簡素な椅子をベッドサイドに置き、座る。

手にしていた四角い鞄をシーツの上に置く。

そして、彼の身体の方に手を伸ばすと、彼が1枚のみ身に付けている純白のTシャツの裾に指をかけるとスゥッと持ち上げた。

彼の締まった腹部が露になる。

「綺麗な肌だ、、、」

ねっとりした口調でピアスが言い、彼の腹部に手のひらを這わせる。

そして、臍の下から陰毛の辺りを丹念に撫でる。

「ここらが良いか?」

ピアスが呟く。

「いや、ダメだ。そこでは目立たない」

警察官の言葉にピアスは露骨に嫌な顔をして見る。

「なら何処がいい?」

ピアスが不機嫌そうに言う。

「臍の上にでかく入れてくれ」

「は?それじゃ、見栄えが悪いだろう。折角、こんな綺麗な体つきをしているんだ、バランスが悪い、、、」

ドンッ!

警察官が癇癪を起こしたように床を踏む。

「バランスなんてどうでも良いっ!こいつが俺のものが分かれば良いんだっ!」

やれやれというような表情をピアスは浮かべ、そして、臍の上の肌を撫でる。

「この辺りか?」

「ああ、、、」

「縦か?横か?」

「縦だ、、、」

「わかった」

ピタスが黒く四角い鞄を開ける。

?

出てきたのは黒く持ち手と上の方が楕円に太く膨らんだ器具。

それをシーツに置くと、続いて取り上げたのは長方形の箱。

それを開く。

その箱には、万年筆の先のようなハート型に尖った器具が並んでいる。

その一つをピアスが繊細な手付きで取り、黒の円筒形の器具の先に付ける。

彼は目を見開き、その作業を見る。



ピチッ!

ピチッ!

彼の腹に短く鋭い刺激が走る。

メガネを取ったピアスが真剣な目で器具の切先と彼の肌を見ながら、繊細に手を上下させる。

次第に彼のすべらかな肌に薄墨色の紋様が刻まれていく。

                              *

どのくらい経ったのだろう、、、

彼はぼんやりと思う。

長時間の拘束に、固定された身体は悲鳴を上げかけている。

腹部の皮膚をチクチクと刺される痛みは、一つ一つは小さいが重なりあい不快な重みを造り出している。

いつまで続くのか、、、

目の前のピアスの横顔。

額には汗が粒のように浮かび、時折、彼の肌に滴る。

すごい集中力だ。

一心不乱に器具を上下させ、彼の肌に紋様を刻んでいく。

部屋に差し込む陽光が赤く変わる頃、大きな溜め息をつき、ピアスが屈めていた身を起こした。

「どうだ?」

傍らの警察官に聞く。

警察官はギラギラと目を光らせ、狂気に満ちた笑みを浮かべる。

「いい、、、いい、、、これで俺のモノになった、、、これで俺のモノだ、、、」

彼は自身の腹部に目をやる。

上部からから見下ろしているせいで逆さ文字となった白い肌に薄墨色で刻まれた刻印。

それは、警察官の平凡な指名の漢字に続き“所有”と刻まれている。

ふざけんなよ、、、

彼は怒りを感じる。

ベッドサイドでケタケタと狂ったように笑う警察官を蔑むように見る。

ピアスが片手を出す。

警察官はそ知らぬ顔だ。

「急ぎで突貫でやったんだ。払うものは払って貰おう」

ピアスが凄んで言う。

「ふん、、、代金ならそのうち払う。今日のところは帰れ」

「ざけんじゃねーよ」

「無いものは無い、、、」

ヘラヘラと笑いながら警察官が答える。

ピアスは凄まじい形相で睨み付けると、タトゥーの器具を鞄にしまい、無言で出ていった。

「ようやく二人になれたね、、、」

警察官の口調にネットリとした甘さが滲む。

彼の背筋をゾワッとした嫌悪感が駆け抜ける。

クフッ、、、クフフフ、、、

嫌な笑い声を上げながら警察官が着衣を脱ぎ、全裸になるとベッドに上がる。

そして、舌を長く延ばすと彼の腹に刻まれた己の名前のタトゥーをベロベロと舐め始める。

片手は彼の股間の萎えた肉棒を揉みしだく。

彼は嫌悪感しか感じない。

拒もうとしても口は裂かれたブリーフを突っ込まれ、四肢は結束バンドで拘束されている。

抵抗しても無駄だ。

彼は目を閉じ耐える。

絶え間ない刺激に彼の若い逸物は反応し始める。

何を勘違いしたのか、警察官はウへウへと彼の逸物を攻め続ける。

“やっぱり俺がいいんだろ、、、”

“ほら、感じるか?感じるだろ?”

警察官の一言一言に彼の中の嫌悪感が増す。

彼にとって不幸中の幸いだったのは両足のきつい拘束が尻の穴を、声を出さぬよう突っ込まれたブリーフの布が口を、それぞれ守り警察官が逸物を彼に突っ込むことができなかったこと。

それはありがたかった。

だが、あの夏の日、義父と始めて肉体を交えた時に知ったセックスの喜びは訪れてこない。

勃起はしているが、それは単に刺激を受けて反応しただけで、悦びは全く湧いてこない。

セックスを苦痛と思うのは始めてだった。

それをセックスと呼んで良いのであればだが。

さっさと終わってくれ、、、

彼は願う。

だが、警察官のネチネチとした舌の、指の動きは終わらない。

無限に続くかと思った頃、ドカドカという足音が近付き、部屋がドンッと開いた。

ズカズカと入ってきたのは数人の一目で堅気ではないと分かる屈強な男達だった。

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