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あなたに救われて
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どうやら私が旅行先に選んだところは、住んでいる人が少ない場所だったようだ。
「でも、人がいるってことは、泊まれるところくらいありますよね?
二十四時間営業のファミレスとかカラオケとか……」
「ない。午後九時にはどの店も閉めるからな」
まだ夜になったばかりだというのに、開いている店がないなんて信じられない。
「隣の市まで送るよ」
「ここから一時間以上掛かるっていうのに……。優しいですね。
ガソリン代は払いますので……」
リュックから財布を取り出そうとした時、ないことに気がついた。
最後にお金を使ったのはバスの運賃を準備していた時。
恐らく、財布を座席に置いてきてしまったんだろう。
「お金がないです」
「詰んだな」
聖さんは冷静な口調と表情でさらっと言った。
街に行ってもお金がないから泊まることも食事をすることもできない。
まさか、仕事の次にお金を失うなんて……。
「ここはクマやイノシシが出るから危険だ。
……うちに来るか?」
「えっ……。それは、ちょっと……」
知らない男性について行くことも危ない。
「きみが想像しているような無礼なことはしない。
信じてもらえないと思うけど……」
「そうですね。難しいです」
「田舎は噂がすぐに広まる。悪いことだと特にな。
きみを放っておくこともできるけど、クマに襲われたらどうなると思う?
見捨てた俺は悪者になり、ここに住んでいられなくなるだろう。
俺はこの限界集落でやりたいことがあるから、悪い噂は広めたくないんだ」
「やりたいことですか……」
この男性を頼ること以外に手段がない。
それに、クマやイノシシに襲われるのは嫌だ。
私は生きるために、真剣な眼差しで見てくる聖さんを信じることにした。
軽トラックに乗って向かった場所は、大きな庭のある古民家だった。
どうやら一人で住んでいるらしい。
お腹が空いているっと言っていないのに、聖さんは私の分の食事を用意してくれた。
二人分の料理が古びたちゃぶ台の上に並ぶ。
縦長い茎のようなものが混ざっている炊き込みご飯、キノコとネギが入った味噌汁、だし巻き卵、天ぷら。
見たことがない料理がいくつかあるけど、いい匂いがするから美味しそうだ。
「だし巻き卵と天ぷら以外は作り置きしていたもので悪いな」
「そんなことありません。
ご飯までご馳走してくれてありがとうございます。
ご飯と混ざってるこの黒っぽい茎はなんですか……?」
「それはわらびだ」
「これが、わらび……。
天ぷらにした野菜はアスパラガスですか?」
「タラの芽という山菜だ」
「山菜……」
「でも、人がいるってことは、泊まれるところくらいありますよね?
二十四時間営業のファミレスとかカラオケとか……」
「ない。午後九時にはどの店も閉めるからな」
まだ夜になったばかりだというのに、開いている店がないなんて信じられない。
「隣の市まで送るよ」
「ここから一時間以上掛かるっていうのに……。優しいですね。
ガソリン代は払いますので……」
リュックから財布を取り出そうとした時、ないことに気がついた。
最後にお金を使ったのはバスの運賃を準備していた時。
恐らく、財布を座席に置いてきてしまったんだろう。
「お金がないです」
「詰んだな」
聖さんは冷静な口調と表情でさらっと言った。
街に行ってもお金がないから泊まることも食事をすることもできない。
まさか、仕事の次にお金を失うなんて……。
「ここはクマやイノシシが出るから危険だ。
……うちに来るか?」
「えっ……。それは、ちょっと……」
知らない男性について行くことも危ない。
「きみが想像しているような無礼なことはしない。
信じてもらえないと思うけど……」
「そうですね。難しいです」
「田舎は噂がすぐに広まる。悪いことだと特にな。
きみを放っておくこともできるけど、クマに襲われたらどうなると思う?
見捨てた俺は悪者になり、ここに住んでいられなくなるだろう。
俺はこの限界集落でやりたいことがあるから、悪い噂は広めたくないんだ」
「やりたいことですか……」
この男性を頼ること以外に手段がない。
それに、クマやイノシシに襲われるのは嫌だ。
私は生きるために、真剣な眼差しで見てくる聖さんを信じることにした。
軽トラックに乗って向かった場所は、大きな庭のある古民家だった。
どうやら一人で住んでいるらしい。
お腹が空いているっと言っていないのに、聖さんは私の分の食事を用意してくれた。
二人分の料理が古びたちゃぶ台の上に並ぶ。
縦長い茎のようなものが混ざっている炊き込みご飯、キノコとネギが入った味噌汁、だし巻き卵、天ぷら。
見たことがない料理がいくつかあるけど、いい匂いがするから美味しそうだ。
「だし巻き卵と天ぷら以外は作り置きしていたもので悪いな」
「そんなことありません。
ご飯までご馳走してくれてありがとうございます。
ご飯と混ざってるこの黒っぽい茎はなんですか……?」
「それはわらびだ」
「これが、わらび……。
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「タラの芽という山菜だ」
「山菜……」
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