『真説・宇宙世紀・タルカス・サイレン共通重心超巨大連惑星系世界冒険記』

トーマス・ライカー

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外宇宙へ・・大進出時代・・奇妙な惑星系

船団集結・・・承前・・

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H S S S 218・・ブリッジ・・・・。

半舷休息に入って3時間ほどが経過した。私は2時間で副長と交代し、部屋に戻ってシャワーを浴びると部屋着を着てベッドに寝ていた。

 まだ眠気が来るほどには疲れていない。予定では、あと1時間ほどでまた交代してブリッジに入る・・起き上がると、濃い目の緑茶を《ドリンク・コーナー》に言って出させ、デスクに着いて緑茶を置くと、私のPADに挙げられてくる様々な報告をスクロールしながら読み進めていった。

と、緊急『B』のアラームコールが鳴る。

 「どうした?」

と訊くと私のデスク上の空間に3Dフィールドモニターが開き、ファルチ副長の顔が映る。

 「・・船長、お休みの所をすみませんが推進本部からクラス『B』の緊急通達です・・」

 「・・通信じゃないんだな・・?・・」

 「・・はい、文面です。そちらでプリントアウトしますか?・」   「頼む・・」

 私のデスクに内蔵されているプリンターから一枚の紙がシュッと吐き出された。

「・・副長、メインスタッフを全員、ドクターも含めてブリッジに召集だ・・私も直ぐに行く・・推進本部からの緊急指令だ・・」

「・・了解しました・・」

 10分後、メインスタッフがブリッジに全員集合していた。

 私はキャプテンシートには座らず中央に立ち、皆を見廻した。

 「・・休息中に済まないが、推進本部からクラス『B』の緊急通達が来た・・緊急指令だ・・どうやら最高評議会は疑心暗鬼に駆られたらしい・・まあ、これほどに奇妙な恒星系も無かったから無理も無いとは思うが・・ともあれこの指令には従わねばならない・・具体的に言うと、最高評議会は既に本船がこの恒星系に捕獲されてしまっている可能性が危惧されると言う事で・・可及的速やかに一旦この恒星系から完全に離脱せよとの事だ・・離脱に成功したと確認出来たらその場で待機し、近隣からこの恒星系に差し向けられる3隻のHSSSと、太陽系から新たに送られるHSSLSと補給船とを待ち受けて出迎える・・その予定だ・・」
 
「・・離脱できなかった場合にはどうする・・?・・」と、ドクターが訊いた。

 「・・その場合には、その旨を報告して無理はせず、その場で待機する・・やがて恒星系外で増援の船団が集結したら、H S S L Sの船長が指揮を執って本船の救出を段取る手筈だ・・心配ないよ、ドクター・・」

そう言いながら私はドクターの右肩を左手で軽く叩いて擦った。

「・・よし、では半舷休息を解除する。オレンジ・アラート。総員、第2警戒配置。取舵一杯。左180°回頭・・回頭したらファーストスピードで発進。20分経過したらセカンドスピードへ。更に20分経過したらサードスピードへ。また更に20分が経過したらフォーススピードへと加速する・・尚、GS1・A Bについては本船との間での直通リンクを一旦解除し、定時スキャンデータログは探査機に保存するようにリ・プログラムする・・それじゃ、始めてくれ・・」

 オレンジアラートが1分間鳴り響くと警報音は止まったが、アラートシグナルは点滅を続ける。

メインスタッフは直ぐにシートに着き、ドクターは医療室に戻る。

全乗員が慌ただしく動き始めるが、7分程で全員が自分のシートに着いた。

 H S S S 218はスムーズに回頭を終えて発進した。
 
本船のメインエンジンは、流体プラズマインパルス融合炉によるプラズマインパルス・フェイズパワードライヴだが、性能水準や技術水準に於いては融合炉もドライヴも既に第6世代に入っていて、一昔前に比べれば格段の差がある。

私が初めて乗務したHSSSは147だったが、本船と比べれば気の毒になる。

それ程、静粛性でも制振性でもパワー発顕に於いても、雲泥の差で比べ物にならない。

この世代のHSSSがフィフス・スピードラインを超えてドライヴがフルパワーを曳き出せば光速の10%にも到達するのだが、それでも揺れはおろか音や振動も殆ど感じさせない。

私は腕を組んだまま暫く立っていたが、シートに腰を降ろすと左隣の副長を見遣った。

「・・せっかくあそこまで接近したのに勿体なかったね・・」

「・・止むを得ませんわね、最高評議会の緊急指令ですから・・」

「・・そう言えば、通達の署名は誰だったかな・・?・・」

「・・マイロ・ヴィンティミリア氏です・・」

「・・なるほど、『B』の現評議会議長・・慎重派の重鎮らしい発案だな・・」

「・・恒星系外で船団と合流してから改めて共同探査、と言う事ですね・・?・・」

「・・まあそう言う事だね・・どの道本船一隻だけじゃ、どうにもならない広さに大きさだからな・・」

「・・その時には先に射出した探査機が役に立ちますね・・」

「・・そうだね、HSSLSなら距離があってもデータログのダウンロードに問題は無いだろう・・機関部長・・恒星からどの位離れれば良いだろうかな・・?・・」

「・・そうですね・・最初に来た時の距離から考えると・・5億キロ離れれば大丈夫だろうと思いますが・・」

「・・そうだな・・副長、5億キロ離れれば良いかと、推進本部にお伺いを立ててみてくれ・・?・・」   

「・・分かりました・・」

「・・メインパイロット・・今の航行設定で恒星から5億キロ離れるまでの時間は・・?・・」

「・・ええと・・92分です・・」

「・・よし、推進本部からの返答が来なくても5億キロに到達したら、時速1000キロまで無理なく減速する・・その時点でもフルチェックを掛けるが、現状でも全船にフルチェックを掛けて異常な過負荷が掛かっていないか報告してくれ・・」

「・・了解・・」

「・・船郭、船体の構造、反物質貯蔵システム、人口重力場システムに異常ありません・・」

 と、アレジ・ダ・ナシ保安部長。

「・・マイクロブラックホールモーター、対消滅反応炉、対消滅エンジンと噴射システム、流体プラズマインパルス融合炉、プラズマインパルス・フェイズパワードライヴ、サポート・インパルスドライヴ、船体各部補助エンジン、姿勢制御噴射システム、全推進システムに異常ありません・・」

と、セバット・ボスカ機関部長。

「・・メインパワー、補助パワー、全船動力系に異常ありません・・」と、副長。

「・・メイン・コンピューター、全分析システム、全センサーシステム、総ての表示システムに異常ありません・・」

と、モーレイ・カラムメイン・センサーオペレーター。

「・・循環系、全リサイクルシステム、生命維持システム、環境制御システムに異常ありません・・」

と、ドゥペル・モノ・コットドクター。

「・・操舵システムに異常ありません・・」と、イアン・サラッドメインパイロット。

「・・航行ナビゲーションシステムに異常ありません・・」


と、コリン・ユーリィ・ファースト・ナビゲーションコーディネーター。

「・・貯留物資、保存物質、各種原材料、搭載・積載装備、装置・機器に異常ありません・・」と、副長。

「・・補足しますが、恒星系重力場と惑星系重力場でも、重力場の係数に異常は見られません・・」

と、チーフ・サイエンスオフィサー、シーモン・アヤラ。

「・・了解、ご苦労さん・・副長、お伺いは立てた・・?・・」

「・・はい、送信しました・・」

「・・そうか、じゃあ続けて今の報告データに恒星系重力場係数と惑星系重力場係数のデータを添えて推進本部に送信して・・」

「・・了解しました・・」

その時、一つ思い当たる事があって思わず声を上げた。

「・!そうか・・その意味もあったか・・」  「・?・どうしました・?・」

副長が振り向いて訊いた。

「・・いや、今のHSSLSには自分で反物質を船内に積み込める機能がある・・おそらくこの恒星系の反物質を幾分か持ち帰らせるつもりで、最新のHSSLSを寄越すんだろう・・」

「・・持ち帰って、テストするんでしょうね・・?・・」

「・・そうだろうね・・どうやらこの恒星系は移住候補地としても、資源候補地としても注目されて脚光を浴びる可能性が高くなってきたな・・」

HSSS 214ブリッジ・・・・

「・・船長・・SSNNW(ソーラー・システム・ニュース・ネットワーク)の最新速報は観ましたか・・?・・」

「・・うん?・・いや・まだ観ていないな・・何か、眼を惹くものでもあったかい・・?・」

「・・どうやら、移住に有望と観られる恒星系が、見付かったらしいですよ・・」

たった今自分のシートに座ったこの男は、このHSSS 214の船長・・カーステン・リントハート・・今彼に自分のpadを差し出してそう言ったのは、本船の副長・・ラリーサ・ソリナだ。

彼はキャプテンシートに座って、ほんの10分ほど前に船内ネットワークにアップされたばかりの、現在調査中の惑星系に関するデータを自分のpadにダウンロードして、読みながらスクロールさせていたところだったが、彼女のpadを左手で受け取るとそのニュース速報に一通り眼を通した。

「・・これは推進本部の公式発表だね・・へえ・・随分と奇妙な恒星系だ・・これ程特異なシステムパターンは、やはり新発見か・・それに先住知的生命体の存在も確認されたか・・これは議論を捲き起こすだろうな・・ああ・・君が私にこれを見せた理由が分かったよ・・ここからそんなに遠くない・・どのくらいだ・・?・・」

「・・ざっと180光年ですね・・」

「・・そんなに遠くないどころじゃない・・この船の性能で言えば、ほんの少し先ってくらいだな・・HSSS218か・?・そんなに近くにいたんだ・・そう言えば他船の航程は、あまり気にしていなかったからな・・こりゃひょっとしたら手伝いに行けってお達しが来るかも知れないな・・定期的にメッセージチェックするように言っといてくれるか・?・」

「・・分かりました・・」

・・太陽系・・火星周回軌道・・整備ドライドック121・・

新造HSSLS(ハイパー・サブ・スペース・ラージ・シップ)037がゆっくりと滑り出す。

ドライドックに30秒遅れて同じ軌道を周回するMACステーション021・・。

そのメイン・ステーション・コマンド・ルームの中央部に、3人の女性が並んで立っている。

一人は、スティーナ・エクブラッド地球型惑星調探査船団司令・・。

その隣にいるのが、このМACステーション021のステーション・コマンダー、エレオノーラ・ドゥーゼ・・。

そして3人目がたった今整備ドライドックから滑り出したHSSLS 037の船長として就任が予定されている元HSSS 187の船長、アンドレア・コアー・・。

ステーション・オペレーターが報告する。

「・・HSSLS 037、ロールアウトしました・・船名登録完了・・船籍コード、strijse02764 登録完了・・現在只今より、就航・就役しました・・」

「・・コンピューター・・コマンド・コントロール・オンライン・・」

と、スティーナ・エクブラッド司令・・。

【オンライン】

「・・現在只今を以て、HSSLS 037に於ける全コマンド・コントロールの権限を、アンドレア・コアー船長に移譲する・・スティーナ・エクブラッド・・承認コード、ΣΔSHK038621・・」

【スティーナ・エクブラッド司令・声紋・個体スキャンデータ・承認コード、確認しました・現在只今を以て、HSSLS 037の全コマンド・コントロール権は、アンドレア・コアー船長に移譲されました・・】

スティーナ・エクブラッド司令はアンドレア・コアー船長の前に立ち、右手を差し出した。

「・・HSSLS 037の船長就任、おめでとう・アンドレア・コアー船長・・こちらの急な転任要請に応じてくれてありがとう・・急かしてしまって申し訳なかったわね・・」

「・・いえ、大丈夫です・・HSSLS の指揮を執るのは希望でもありましたし、今回発見された恒星系には非常に興味をそそられておりますので、今から楽しみです・・」

アンドレア船長はエクブラッド司令の右手を握り返して言う。

「・・そう言って貰えると嬉しいし心強いわ・・今回の新発見恒星系探査には、どうしても最新HSSLS が必要だったし、その指揮者としては貴女のような経験豊富な船長も必要だったから・・」

言いながらエクブラッド司令は、握手している右手に左手を添えた。

「・・私も今回の任務に私を選んでくれて嬉しいです・・難しい側面もあると思いますが、期待には最大限応えられるように努力します・・」

「・・重ねてありがとう・・副長を含めてメインスタッフの人事が、ほぼ貴女の要請通りにできた事も良かったわね・・でも8割以上のクルーが貴女にとっては初対面だし、新人も一定数は乗船しているから、改めて宜しく頼むわ・・任務のブリーフィングについては、もう良いわね・・?・・質問は・・?・・」

「・・今はありません、司令・・何かあれば、連絡します・・」

「・・了解したわ・・シャトルはもう、出られるそうよ・・」

「・・はい・・荷物はもう、乗せてあります・・」

エクブラッド司令は笑顔で、離した左手を新船長の右肩に添え、右手で彼女の左肘を支えた。

「・・アンドレア船長・・おめでとうございます・・無事に任務を遂行して帰還できますように・・」

エレオノーラ・ドゥーゼ・ステーション・コマンダーも握手を求めた。

「・・ありがとうございます・・エレオノーラ司令・・ご期待に添います・・」

エレオノーラ司令も笑顔で頷くと手を放して、ステーション・オペレーターに指示した。

「・・船にシャトルが船長を乗せて行くって連絡して・・」  「・・了解しました・・」

HSSS 210ブリッジ・・・・

「・・船長・・推進本部から、連絡です・・」

「・・あら、そう・・繋いでくれる・・?・・」

「・・いえ、通達です・・文面はこちらです・・」

ファースト・コミュニケーション・オフィサーのソーヌー・スードがソリッドメディアを、チャープラン・オープラサート船長に手渡す。

彼女はキャプテンシートに座り眼の前の空間に3Dモニターを呼び出すと、渡されたメディアを右のアームレストに挿入した。

空間投影されていた文面を読み終えると彼女は3Dモニターごと消去して左隣にいるサードオフィサーに指示した。

「・・半舷休息を解除するわ・・全船第2級警戒態勢・・メインスタッフをブリッジに招集して・・」

HSSS 214・・

センターパイロンを歩いていたカーステン・リントハート船長にラリーサ・ソリナ副長が声を掛ける。

「・・船長、こちらでしたか・・どちらへ・・?・・」 「・・食堂だ・・」

「・・推進本部から通達です・・」 そう言ってソリッドメディアを渡した。

「・・通達・・文面か・・?・・」 「・・緊急度、クラスBです・・」

言われて、ちょっと顔をしかめた。

「・・どうやら、飯を食ってる場合じゃなさそうだな・・」

HSSS 209・・・

「・・SSNNW(ソーラー・システム・ニュース・ネットワーク)の最新速報を読んだ者もいると思うが、それに関連して推進本部から通達が来た・・件の恒星系に最初に入ったHSSS 218に合流して、協力協同して恒星系の再調探査行動に入れとの事だ・・知っている者もいると思うが非常に特異且つ奇妙で大分込み入った状況にある恒星系であるとの事で、合流するのは本船だけではない・・210と214も合流する予定だ・・その他に太陽系からHSSLS 037が補給船を連れて合流するとの事だ・・全船が合流して船団が形成された時点以降は、HSSLS 037の船長による指揮・統括下に入る・・可及的速やかに指示された合流ポイントに向けて急行して欲しいとの通達だ・・」

船長のスニール・ラーマ・ラオが全メインスタッフの前でそう報告した。

「・・この恒星系に入ってからまだ130時間程度だが、これまでに得られたデータは整理整頓・取捨選択して後でまた再利用しやすいように、保存して置いて欲しい・・これには時間のある場合に取り組んでくれれば良い・・それでは、推進本部から指定された合流ポイントに向けてコースをセット・・ハイパー・サブ・スペース・ドライブの用意を頼む・・」

HSSS 218・・・

「・・距離、5億kmに到達しました・・」と、イアン・サラッド。

「・・よし、ドライブ一旦停止・・姿勢制御推進で180°一点回頭・・逆方向を向いたらドライブ再始動して、時速1000kmまで3分で減速・・その後全船全システムにダブルフルチェックを掛ける・・取り敢えず全員着席してベルト着用・・全船にアナウンスを・・」

「・・了解しました・・」

「・・ミレーナ・・本部からの返答は・・?・・」

「・・5億kmの近辺で構わないそうです・・それと支援体制が決まりました・・ここに集まってくる3隻のHSSSは209.210.214です・・それと太陽系から派遣されるHSSLSは、就航・就役したばかりの037が三隻の補給船を連れて来ます・・尚、214が近いですね・・約180光年です・・残りの2隻も、209が約880光年・・210が、約1270光年です・・」

「・・三隻も補給船を連れて来るのか・・大分長い調探査任務にするつもりのようだね・・船長の名前を教えてくれるか・・?・・」

「・・はい・・209が、スニール・ラーマ・ラオ船長・・210が、チャープラン・オープラサート船長・・214が、カーステン・リントハート船長・・037が、アンドレア・コアー船長です・・補給船の方は、まだ判りません・・」

「・・四人とも私と同期だ・・まあ、珍しい事でもないがね・・アンドレア船長は、HSSS187の船長だった筈だ・・随分と急な転任になったようだな・・だが彼女なら、この恒星系の中でもきっとHSSLSのデカい船体を、充全に操れるだろう・・初めて乗るHSSLSにしてもね・・それにこの恒星系の中では、最新のHSSLSがどうしても必要だと言う推進本部の判断は、私も正しいと思うし支持もするよ・・」


「・・船長、減速完了しました・・時速1000kmです・・」と、またイアンが報告した。

「・・よし、更に二分を掛けて完全に停止してくれ・・同時に全スタッフによる全船・全システムのダブル・フルチェックを実施してくれ・・副長は合流ポイントに到達したと推進本部に送信・・指示があれば聴いてくれ・・」    

「・・了解しました・・」

HSSS 214・・ブリッジ・・

「・・まあ簡単に言えばHSSS 218を助けに行けって話だ・・手伝いにかな・?・・で、今話した布陣で船が集まる・・その後はHSSLSの船長が仕切るって訳だ・・現在調査中のこの恒星系についてのデータは、整理して担当ごとに分類してセーブしてれ・・また後でこの恒星系には戻って来ると思うよ・・それじゃ、合流指定ポイントにコースをセット・・ハイパー・サブ・スペース・ドライブの準備に入ってくれ・・」

HSSS 210ブリッジ・・・・

「・・船長、ハイパー・サブ・スペース・ドライブの準備が完了しました・・」

「・・分かったわ・・機関部長はターゲットスキャナーをリセットして頂戴・・できるだけHSSS 218の近くにまで行きたいから・・メイン・センサーオペレーター・・メイン・パイロット・・ファースト・ナビゲーションコーディネーターは協力して、スキャナーでターゲットを2回絞り込んで再設定・・改めて合流指定ポイントとして固定して・・出来たらインターセプトコースをセット・・それで発進します・・」

HSSS 209・ブリッジ・・

ファースト・ナビゲーション・コーディネーターが報告する。

「・・船長、ターゲット・ダブルスキャン、指定目標ポイントとして再設定を完了・・インターセプトコース・セット完了・・発進準備、完了です・・」

「・・了解、全船、第一級警戒態勢・・機関部長、メイン・パイロット、発進を頼む・・」

「・・了解・・全船、全剰員に通達する・・こちらは機関部長・・これより本船は発進し、ハイパー・サブ・スペー
ス・ドライブに移行する・・全乗員は着席してベルト着用・・ノーマルドライヴ起動してファーストスピードで発進! 」

メイン・パイロットが応じる。

「・コピー! スタート・ノーマルドライヴ! ディパーチャー・ファーストスピード! 」

HSSLS 037・ブリッジ・・・

アンドレア・コアー船長が初めてブリッジに入った。

「・・キャプテン・オン・ザ・ブリッジ! 」若いブリッジスタッフが直立して宣言する。

「・・それは今後、言わなくて良いから・・」

アンドレア船長が、その声を制するかのように右手を軽く挙げて言う。

エイドリアンヌ・パリッキ副長が歩み寄って来た。

「・・船長、私をこの船の副長に推薦して下さって、有り難うございます・・」

「・・貴女がラージ・シップの乗務を希望していたのは知っていたし、私にも初めて指揮を執るラージ・シップで信頼できる副長が必要だった・・自然で合理的な判断ね・・」

「・・船長のご期待に沿えるよう、気を付けて頑張ります・・」

「・・こちらこそ、宜しく頼むわね、エイダ・・メイン・スタッフを招集して、副長・・状況を訊くわ・・」  

「・・了解、アンドレア船長・・」

HSSS 218・・・・

「・・船長、減速順調・20秒で停止します・・」と、イアン・サラッド・・。

「・・よし、全船、全システムに対し、ダブルフルチェックを開始・・」

「・・了解・・」

「・・船郭、船体の構造、反物質貯蔵システム、人口重力場システムに異常ありません・・」

 と、アレジ・ダ・ナシ保安部長。

「・・マイクロブラックホールモーター、対消滅反応炉、対消滅エンジンと噴射システム、流体プラズマインパルス融合炉、プラズマインパルス・フェイズパワードライヴ、サポート・インパルスドライヴ、船体各部補助エンジン、姿勢制御噴射システム、全推進システムに異常ありません・・」と、セバット・ボスカ機関部長。

「・・メインパワー、補助パワー、全船動力系に異常ありません・・」と、副長。

「・・メイン・コンピューター、全分析システム、全センサーシステム、総ての表示システムに異常ありません・・」

と、モーレイ・カラムメイン・センサーオペレーター。

「・・循環系、全リサイクルシステム、生命維持システム、環境制御システムに異常ありません・・」

と、ドゥペル・モノ・コットドクター。

「・・操舵システムに異常ありません・・」と、イアン・サラッドメインパイロット。

「・・航行ナビゲーションシステムに異常ありません・・」

と、コリン・ユーリィファースト・ナビゲーションコーディネーター。

「・・貯留物資、保存物質、各種原材料、搭載・積載装備、装置に異常ありません・・」と、副長。

「・・補足しますが、恒星系重力場と惑星系重力場でも、重力場の係数に異常は見られません・・」

と、チーフ・サイエンスオフィサー、シーモン・アヤラ。

「・・船長、恒星系からの安全な離脱は、問題なく完了と判断できます・・」と、副長。

「・・そうだな、私も同意する・・離脱完了を推進本部に送信・・ボスカ機関部長・・ポイントマーカーの発信を開始・・」

「・・了解・・」

「・・カラムオペレーター・・この距離で探査機のモニタリングはできるか・・?・・」

「・・いや・・かなり厳しいですね・・やめた方が良いかと・・」

「・・うん、良いよ。しなくて良い・・確認しただけだ・・船長より全乗員へ・・本船は指定座標に到達した・・このままここで、船団の集結を待ち受ける・・警戒警報・配置・体制を解除・・先だって設定した半舷休息の体制に戻る・・HSSSの集結については、あまり待たなくても良いだろうとは思うが、太陽系から来る船団の到着迄には・・暫く時間が掛かるだろうと思われる・・HSSLSが到着するまで、取り敢えず先だって設定した勤務スケジュールに沿って行動して欲しい・・船長より以上・・」

HSSS 214・・・

「・・マイクロ・ブラックホール・モーター、回転数を2へ・・慣性重力場発生を確認・・流体プラズマインパルス融合炉最大出力・・プラズマインパルス・フェイズパワードライヴ、フィフス・スピードへ・・船体、全船、全システム安定・・反物質対消滅エンジン始動準備・・噴射システムスタンバイ・・反物質対消滅反応炉起動・・反物質反応エンジン始動・・噴射開始・・船体加速・・反物質反応炉、エンジン出力最大へ・・噴射出力最大・・船体、全船、全システム安定・・船体更に加速・・光速の95%を突破・・慣性重力場と船体との中間点に、サブスペース・ディメンションポイントの発生を確認・・マイクロ・ブラックホール・モーター、回転数を4へ・・続けて反物質エンジン、ブーストブロー5秒・・ハイパー・サブ・スペース・ディメンション・・超空間駆動転移・・亜空間に突入しました・・船体、全船、全システム安定・・反物質対消滅反応炉停止シークエンス・・反物質対消滅エンジン出力減衰・・噴射出力減衰から停止へ・・反物質対消滅推進システム・・安全な停止を確認・・ハイパー・サブ・スペース・ドライヴ、巡航速度4を維持・・船体、全船、全システム安定しています、船長・・」

「・・了解、ラミラ・ハリス機関部長・・ご苦労さん・・シエラ・・この速度で合流指定ポイントへは、どのくらいで着く・・?・・」

「・・ざっと6時間程度ですね・・」と、メインパイロットのシエラ・ベッシュが答える。

「・・そうか・・ラミラ・・回転数を6に上げてくれ・・せっかく近くにいるんだ・・早いところトマク・ラオ・シン船長に会って、話を聞いてみたいからな・・シエラ・・回転数6だと、どのくらいだ・・?・・」

「・・2時間ちょっとですね・・」

「・・よし、それで行こう・・オートパイロット・セット・・メインスタッフには2時間の休暇を許可する・・他の乗員は1時間ごとの半舷休息とする・・以上だ・・副長、私は食事をしてくる・・何かあれば頼む・・」

そう副長に告げると立ち上がり、足早にブリッジから出て行った。

HSSS 210・・・

「・・船体、全船、全システム、安定して稼働しています・・反物質対消滅推進システムは、安全に停止しました・・ハイパー・サブ・スペース・ドライヴは、巡航速度6を維持しています、船長・・」

「・・ご苦労様・・機関部長はМBHМの回転数を8に上げて頂戴・・メインパイロット、回転数8のスピードならどのくらいで着くの・・?・・」

「・・4時間と40分くらいですね・・」

「・・結構よ・・このままで行きます・・オートパイロットをセットして・・メイン・スタッフには4時間の休暇を許可します・・それ以外の乗員は2時間ごとの半舷休息とします・・指定座標に到達する30分前に第二級警戒態勢のタイムアラートをセット・・以上です」

HSSS 209・・・

「・・船長、本船の全システムは安定して稼働中・・亜空間航行も順調です・・亜空間巡航速度は6を維持しています・・」

「・・了解だ・・コース、速度、指定座標はこのまま保持・・操船を自動にセット・・到着する20分前に第2級警戒警報の発令をセット・・自動探知・エラーサーチシステムをセット・・到着20分前迄、全乗員に完全休暇を許可する・・エラーサーチシステムが不具合を報せたら、その都度に対処する・・以上だ・・・」

HSSLS 037・・・

HSSLSの船長控室は、HSSSのそれと比べれば随分と広い。

上級士官用の会議室のような趣もある。

勿論船内には会議室・士官室・待機室・応接室がそれぞれ複数用意されている。

今控室にはアンドレア船長を初めとして、メイン・スタッフの全員が集合していた。

「・・本船の出発準備は、あらゆる側面に於いて総て滞り無く完了しております、船長・・」

エイドリアンヌ副長がpadの表示内容を自分でも確認し、承認のサインを記入してアンドレア船長の前に置く。

「・・反物質の積み込みが、そんなに無いから早いわね・・」

そう応じながらアンドレア船長も表示内容を確認して承認のサインを記入すると、padを副長に返しながら続けて訊いた。

「・・HSSTS 3隻の準備はどうなっているの・・?・・」

「・・HSSTS はあまり需要が無いので用意に手間取りましたが、後3時間ほどでこの近辺に集結します・・」

と、後方支援部長が報告すると・・

「・・集結後に積み込む補給物資の準備は既に終わっていますので、8時間後には総ての準備が完了する見込みです・・」と、補給部長がその後を引き取って報告した。

「・・集合指定座標で待機しているHSSS 218に連絡して下さい・・太陽系からの支援船団は、約8時間後に発進する予定だと・・それと、今取得している当該恒星系に関する総てのデータを送信するようにと・・」

「・・分かりました・・」

「・・副長・・船団集結、発進準備完了まで本船は通常直で半舷休息とします・・勤務スケジュールの調整をお願いします・・」

「・・了解しました・・」

「・・以上です・・無ければ解散・・私はしばらくここにいます・・」

HSSS 218・・・船長室・・

中央に設えられたディナーテーブルに船長と副長の2人が対面に座っている。

別にロマンチックなディナーデートと言う訳では無い。

HSSSの司令部は船長と副長と機関部長とドクターで構成されるが、その運用と意思統一・方針決定へのプロセスパターンの選定・実践については、HSSSそれぞれの船長と副長に一任されている。

HSSS 218に於いては、先ずこのような形式で船長と副長が話し合って意思統一を図り、基礎方針を策定してから司令部会議を招集すると言うプロセスパターンを採っているだけに過ぎない。

私は右手でアイスバケットの中のボトルを取り上げた。食後酒として嗜んだ事はあるが、食前酒としては初めての試みになる、ヴィンテージものの梅酒である。

そのまま取り敢えずワンショットで試してみる・・感触や味わいがしつこいようなら水やソーダで割ってみても良いかも知れない。

ショットグラスに梅酒を注いで、またボトルをアイスバケットに戻す。

お互いに右手でグラスを持ち、そのまま眼の前に掲げる。

「・・無事な航宙に・・」軽く合わせる。

私は二口で呑んだが、彼女は一口で干した。

うん、やはり食前酒として嗜むにはしつこい・・ソーダで割るか・・。

ショットグラスを片付けて細身のカクテルグラスを置く・・梅酒のボトルを取り上げてグラスの半分よりやや下まで注ぎ、冷やしたソーダでグラスの8割まで満たした。

またお互いに右手でグラスを持ち上げて掲げる・・彼女の顔色に少しピンク色が差している・・「・・任務の成功に・・」・・涼しい音色が響く。

うん、ソーダで割る方がずっと良い・・甘味が抑えられて梅の香りが爽やかに拡がる・・。

「・・こっちの方がずっと美味しいですね・・梅の香りが凄く拡がります・・」

そう言う彼女に、私も呑みながら相槌を打つ・・私が半分呑むまでの間に、グラスを干した彼女は少し恥かしそうに微笑んでグラスを置く・・顔の血色が更に良くなっている・・。

「・・喉が渇いていた・・?・・」

「・いいえ・本当にとても美味しかったですし、船長と飲むのは久し振りだったので・・」

私は立ってスープとサラダを取りに行った。彼女の前に先に置いて、自分の席の前にも置く。

「・・太陽系からは何か言って来た・・?・・」

「・・HSSLS 037から総てのデータを送信して欲しいとの要請がありましたので、応じました・・」

「・・推進本部からは・・?・・」

「・・本船の安全な離脱については同意を貰いました・・が、現状での指示は待機です・・基本方針に変更は無いようです・・」

「・・船団の集結迄にはどのくらいかな・・?・・」

「・・HSSSの集結は、長くても8時間で終わるでしょう・・太陽系からの船団の発進も、8時間後ぐらいの見込みだろうと聞いています・・」

「・・それまでの間に、本船としてやれる事・やるべき事についての君の意見は・・?・・」

「・・・GS1に於ける現状の情勢分析と、文化と言語の分析、翻訳作業は続けていますので・・全船団の集結後には、その成果を報告できるでしょう・・」

2秒程首を傾げた後で、彼女はそう答えた。

私は眼の前に座っている美しい副長を、本当に感心して眺めた・・。

また立ってメインディッシュを持って来る・・彼女のは要望でブレッドが2つ・・私はライスにした・・メインディッシュはポークロースのステーキだ・・ガーリックと黒胡椒と塩を効かせてある・・付け合わせは人参とほうれん草とポテトのソテー・・それにボイルしたブロッコリーが2つに目玉焼きが一つだ・・ワインは少し辛口の白にした・・左手のアイスバケットからボトルを取り出し、封を切ってコルク栓を開けて彼女のワイングラスから注ぐ・・食欲をそそる香りが拡がる・・。

「・・私が船長の職に就いて迎えた副長は君で4人目だけど、掛け値なしに最高の副長だよ君は・・私にとってもスタッフにとっても、本船全体にとってもね・・今回の任務が終わって太陽系に帰還したら、私は君を最も有望な優秀船長候補として強力に推薦するよ・・」

「・・ありがとうございます、船長・・お気持ちと評価は大変に有難く、本当に感謝していますが、私はまだ本船で副長として務めたいと考えておりますので・・推薦はしばらく待って下さい・・」

「・・ミレーナ・・君だって船長になりたくて頑張ってきたんだろう・?・これからの半年間でHSSSの新造船が、おそらく3隻はロールアウトするよ・・何も私が推薦しなくたって、推進本部と船団司令部の評価だけで君はその内の1隻を確実にゲットできるよ・・」

「・・私にはまだ、良い船長になる為にトマク船長から学ばなければならない事が沢山あります・・その総てを学び終えるまで、本船の副長として貴方を支えて務めます・・」

「・・私だって君をこの船に迎えて1年半にもなるんだから・・君の気持は判っているよ・・でも船長と副長で付き合っても上手くいかないし、長くも続かない・・私の知り合いの中にも船長・副長のカップルで付き合って結婚したのが4組いたけど、皆別れた・・君の知り合いの中にも居るだろう・・?・・」

「・・居ますけれども、私は大丈夫です・・トマク船長から総てを教わるまで、私はこの船に居ます・・宜しくお願いします・・」

「・・まあ、今は良いや・・話しながらでも飯を済ませようか・・?・・」

「・・はい!・・」

「・・グリーンサテライトの大気圏内に、入れるようなら入りたいと考えているんだけど・・君はどう思う・・?・・」

「・・やってみても良いと思います・・ただその場合には、ミラージュコロイドの展開が必須でしょう・・」

「・・それは僕もそう思うよ・・ただ現状でどう見ても・・グリーンサテライトに対しては、移住候補地としてのアプローチや資源候補地としてのそれも、殆ど不可能と思える程に厳しいと言う事では、決定的だろうな・・」

「・・どのサテライトにも、数億以上のレベルで先住知性体が社会生活を営んでいますからね・・となれば・・BP1ですか・・?・・」

「・・そうだね・・惑星の大気圏内に関心対象が移って行くのが、自然な流れだろうね・・そのように進言してみようか・・?・・」

「・・はい・・その際には、私も同意します・・」

「・・ただ、BP1の重力圏に接近する前までに、あれほどに巨大な岩石惑星がどうして存在できるのか?・・この謎はどうしても解かなければならないね・・」

そう言って私はワインの一杯目を飲み干した。

「・・そうですね・・やれる範囲で推測を始めさせましょうか・・?・・」

「・・そうだね・・それは、君から指示してくれるか・・?・・」

「・・分かりました・・」

ワインボトルを取り上げようとする副長を制して先に彼女のグラスに注いでから、自分のグラスにも注いだ。

「・・ん・・今日のステーキの焼き加減はどうだい・・?・・少し固いかな・・?・・」

「・・いえ、丁度良いですよ・・味付けも申し分ないです・・船長の料理には、いつも感心します・・」

「・・どこに感心する・・?・・うん、やっぱり目玉焼きは余計だったか・・?・・」

「・・メインディッシュ全体をマイルドに仕上げる事には成功していると思います・・でもポークロースの焼き上がりがとても滑らかでマイルドなので、却ってほんの少ししつこさを残してしまったかも知れません・・船長の料理は、献立の組み立てを観るだけでも凄く美味しそうな印象で、きっと美味しくなると予想させる所にいつも感心します・・」

「・・僕は君の誉め言葉と言うか、感想の組み立て方にいつも感心しているよ・・スポークスマンとしての才能を感じるね・・うん、サラダをもう少しピリ辛の味付けにすれば、目玉焼きがあっても丁度良いかな・・?・・」

「・・私もサラダの味付けを少し強めれば、全体が引き締まると思います・・あと、褒めて下さって、ありがとうございます・・」

「・・君は、たまに料理するの・・?・・」

「・・私が料理をするのは、四ヶ月に一度くらいです・・」

「・・へえ・・今度一緒に作ってみようか・・?・・」

「・・本当ですか?! ありがとうございます! 嬉しいです・・料理についても色々と教えて下さい・・」

「・・教えるんじゃなくて、一緒に創作しようよ・・その方が面白いし、楽しいから・・」

「・・分かりました・・楽しみです・・」

「・・そうだ。2人で創作した料理を、ドクターと機関部長に振舞おう・・きっと喜んで貰えるよ・・」

「・・そうですね・・私もそう思います・・」

そろそろメインディッシュも残り少なくなってきた。

「・・お代わりは・・?・・スープとサラダなら少し残っているけど・・」

「・・いえ、大丈夫です・・もう充分に頂きました・・」

「・・じゃあ、デザートだ・・今日のプディングは、ちょっと趣向を凝らしたよ・・」

私は立ってデザートのプディングを持って来て置き、空のコーヒーカップも持って来るとコーヒーを注いだ。

「・・頂きます・・うん・・美味しいです・・これは・・2種類のお酒が使われていますか・・?・・」

「・・ありがとう、君は味覚も鋭いね・・正解だ・・7:3で梅酒とモルトウィスキーをブレンドしたものを入れてみたんだよ・・なかなか上手い具合に仕上がったかな・?・・」

「・・はい、とても美味しいです・・食後酒の代わりにもなりそうですね・・シロップの量は、もう少し抑えた方が良かったかも知れません・・」

「・・うん・・僕もそう思うよ・・次に作る時には、少し抑えてみようか・・それで、船内での事で他に、君が気付いた案件とか懸念はあるかい・・?・・」

「・・はい・・パワハラやモラハラ・・法令違反等についてもともに、報告や指摘や発見や気付き・・懸念についてもありません・・保安部の定例会議にもオブザーバーとして出席しましたが、案件・懸念ともにありませんでした・・技術的、システム的な問題点・改善点については、機関部長がより詳細に把握していると思いますが・・」

「・・うん、ありがとう・・その方面については、機関部長に訊く事にするよ・・他に、クルーの感情的な関係について・・気付いた事はあるかい・・?・・」

「・・6日前に婚約を合意したと、あるカップルから報告が挙がりました・・」

「・・そのカップルについては、建設的な恋愛関係であると把握していた・・?・・」

「・・ええ、そのように承知していました・・」

「・・分かった・・私の名前で婚約のお祝いを進呈して・・内容は君に任せる・・決まっている範囲で、今後の予定が判るようなら訊いてみて・・?・・」

「・・分かりました・・」   「・・他には・・?・・」

「・・報告は受けていませんが、恋愛関係にあると観られるカップルは、6組認知しています・・恋愛の関係や感情の上でのトラブルは、報告・認知・懸念ともにありません・・」

「・・恋愛以外での関係や感情や何らかのトラブルを発端とした、クルーの関係悪化について、懸念はあるかな・・?・・」

「・・長期に渡って改善が観られないような、深刻な関係悪化としては認知していません・・任務上での意見の対立からぶつかる事はままありますが、どれも長期には及びません・・」

「・・分かった・・ありがとう・・了解したよ・・それじゃあ他に何も懸念が無ければ、これで終わりにしようか・・?・・」

そう言って私は最後のコーヒーを飲み干して立ち上がると、食器を総てシンクに運び入れる。

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