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ファースト・シーズン

社宅での夕食会から、その後……

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 肉料理は、チキン・ソテーとポーク・ソテーだ……牛肉もあったんだが今回は使わずにおいた……魚料理は鮭の大きい切り身があったので、サーモン・ステーキにした……付け合わせはパウダード・スイートポテトとキャロット・ソテーだ……付け合わせに葉物野菜と根菜を使わなかったのは、葉物野菜と根菜を使ったスープ料理と温野菜サラダを作ったからだ……彼女達に指示して最後の仕上げと味の調整をして貰い、私はライスを盛り付けて運び、テーブルを整えていく……食前酒をグラスに注いで並べ、キッチンに戻ればもう総ての用意は整っていた。

 総ての料理をテーブルに並べ、取り皿等も並べて5人で食卓に着く。

「……お疲れ様でした! 頂きます! 乾杯! 」

「……乾杯! 頂きま~す! 」

「……美味っし~い! いつ頂いても美味しいですね……とてもあり合わせで作ったようには観えませんし、思えません……」

「……(笑)…マレット……賄い料理と言わない処が嬉しいね……」

「……どう致しまして(笑)…愛してますから……」

「……ありがとう…俺も愛してるよ……食べながら話そう…何でも好きに取って好いよ……生憎、今はそんなに好い酒は置いてないんだ…悪いね……処でさ……リアリティ・ライブショウの配信が始まったら、何がどう変わるかシュミレートしてみようか? トップ女優の君達は、何がどう変わる? 」

「……私達は女優として、このゲーム大会への参加希望を登録していますので……実際に選ばれた艦長から指名されて、ゲームに参加している事が知り合いの女優や女性タレントに知られたとしても、直ぐに何がどうなると言う事にはならないと思います……ファースト・シーズンが半分程経過して、まだ継続して参加している事が判れば……何か言われる可能性も出て来るでしょうが……」

 マレット・フェントンが、少し首を傾げて言った。

「……そうか……なるほどね……じゃあ、俺の場合で考えようか……配信直後からメッセージや通話が入り始める……配信された翌日に出社する……ラウンジでコーヒー飲んで、一服している間にも話し掛けられるだろうな……始業して朝礼が終わってから呼ばれて、事情を訊かれる……相手はフロア・チーフとチーフ・ディレクターかな? 何をどう訊かれるのかの予想は、今はまだ立たない……まあ、こんなものだね……今の処は……だから……気にしても仕方ない……大事な事は、堂々として居れば好いって事だね……何を訊かれても、堂々と答えられる事を澱み無く答えられば好いって事だ……それだけだね……」

 それだけ言い終えると後は口を開かずに、食べる事と呑む事に集中した……そんなに本数はストックしていなかったので、ライトビアとスパークリング・ワインのボトルは全部出した……久し振りに自分で作った料理を美味いと感じている……調理の最後は美しいトップ女優の4人に手伝って貰って、今は5人で一緒に食べているから、でもあるのだろう。

「……会社からゲームへの参加を辞めなさいと言われたら、どうしますか? 」

 と、フィオナ・コアーが訊く。

「……即行で会社を辞めるね……これは間違いないよ……俺は会社の業務に従事する会社員である、と言う事によりも、このゲームに参加するプレイヤーであると言う事に、間違い無く適性は高い……何も迷わずにスッパリと辞めるね……それより俺は……エマの事が心配だよ……【E・X・F】(インターナショナル・エクセレント・フォーミュラ)スピードポッド・レースチームの、監督もオーナーも許さないと思うんだけど…どうなんだい? 」

 食べる手を止めて、エマの顔を観ながら訊く。

「……実は……本当にここだけの話にして頂きたいのですが……監督もオーナーも知っています……女優として参加希望を登録した事も、知らせていましたし……アドルさんからメイン・パイロットとしてのオファーを受けた時にも、2人には知らせて……このゲーム大会が終わる迄はチームに復帰しないと伝えました……」

「……それで……承知してくれたの? 」

「……ええ、承知してくれました……私はこのゲーム大会が企画発表の段階から、メイン・パイロットとして自分が乞われたなら、それまで属した総てから自分を離脱させて、ゲーム大会の最後までメイン・パイロットとして活躍したいと、チームの全員に伝え続けていましたので……」

「……君の純粋で飽くなき熱意と向上心が……チームの全員を感動させたんだね……」

「……それ以上に私は……『ディファイアント』とスタッフ・クルー……何よりも、アドル・エルクさんを愛していますから……」

「……それ……監督とかオーナーにも言ったの? 」

「……言いました……アドルさん……『ディファイアント』がファースト・シーズンを乗り切ったら……2人は貴方に会いに来ます……」

「……へ~~…そうなんだ……それじゃその時には、しゃんとしてないとね……」

 それからは雑談しながら食事を進めて、頃合いを観て食後酒のリキュールを用意した。

 それを観たマレットとエドナが買って来てくれていたアイスクリームを出して、私が用意したブランデーグラスに盛り付けて持って来た……大きいブランデーグラスに綺麗なコントラストで、盛り付けてくれた。

「……へえ…綺麗に盛り付けられると、それだけで美味しく観えるよね……じゃあ、今日もありがとうございました。乾杯! 」

「…乾杯! 」

 食後酒のヴィンテージ・ピーチリキュールを頂きながら、バニラ、チョコレート、抹茶、ストロベリーのアイスクリームもりあわせを食べる……最高に美味い。

「……ああ…美味しいな……セクシーで綺麗なトップ女優4人と一緒に食べるなら…どんな賄い料理だって最高に美味いってね……俺のモテ期も最高潮だな……」

「……アドルさんがシエナと初めて逢ったのが、90日前でしたよね? クルーが全員決定して、一同に会したのが確か……60日前……それからこれまでに、こんな感じで何人かで食事したのは、もう30回以上にもなるでしょうに……まだ慣れませんか? 」

 マレットがアイスクリームに舌鼓を打ちながら訊く。

「……慣れないね……慣れる筈もないし、慣れたくもないよ……君達の誰と……何人で逢っても……一緒に食事とか……何をしても……いつも新鮮だし……楽しいし嬉しい……皆、好きだし……大事な人だし……愛してる……恥ずかしいね……90日前から、夢の中にいるみたいだよ……これが夢なら……ずっと続いて欲しい……」

「……アドルさん……皆とも話し合っていますけど……皆…貴方を愛しています……30日前ぐらい迄は……皆、自分がアドルさんの……本命になりたいと思って…抜け駆けしようとしてましたけど……今はもう……皆で…アドルさんを愛していくって決めてます……アドルさん……誰とも結婚しないで下さい……その代わり全員で……最後まで貴方と一緒にいます……」

 目を潤ませてそう言ったマレットの隣に座って肩を抱き、キスを交わす……30秒、舌を絡めた。

「……よ~し……もう食べ終わったから、片付けよう……」

 残った料理はタッパーに移して冷蔵庫に入れる……明日の朝食の材料だ……皆で食器を洗って拭き上げ、収納する……キッチンを清掃し、ダイニング・テーブルを拭き上げて、4人の為にミルクティーを淹れ、自分の為にコーヒーを点てる。

「……誰だったかな? 俺が淹れるミルクティーを媚薬だって言ったのは? 」

「……最初に言ったのは確か……カリーナですね……今じゃ皆、そう思ってますよ……」

 カップを両手で持って支え、湯気を顎に当てながらエマが言う。

「……私はシナモンを使って頂けると、効果が覿面です……」

 そう言ってフィオナは二口飲む。

「……私にはオレンジ・ビターズ・ミルクティーが、よく効きます……」

 マレットもそう言って一口飲んだ。

「……私はアンゴスチュラ・ビターズを使われると、身体が熱くなります……」

 そう言ってエドナはカップを置いた。

「……私は普通のミルクティーが1番感じますけどね……」

 そう言いながら、艶っぽい流し目で俺を観るエマだ。

 コーヒーを飲みながら、1人1人と20秒、視線を絡み合わせる……こう言う事も艦内では、カメラがあるからできない……艦長なら打ち合わせと称してスタッフを自室に呼んでも別に差し支えは無いのだが、この前の2日間でも俺はしなかった……この事から生じる、言わばある種の性的な焦燥感も、戦う上での原動力になるんだろう。

 お茶を飲み終えてカップ等を片付ける……それから一緒にバスルームに入った……以前に1度だけだったが、スタッフ・クルーと自分も合わせて12人で一緒にシャワーを浴びた事があった……あの時には流石にバスルームが狭いと感じたものだ。

「……今度また……一緒に温泉旅行に行こうか? この前行った時は、結構気付かれて騒がれたな……俺なんか、マネージャーかと思われたみたいだったけど……」

 マレットの背中を泡立てたスポンジで丹念に洗いながら言う。

「……好いですね……お勤め先の対応が定まって落ち着いたら、考えましょう……私が好い旅館を探しておきます……」

「……そうですね……マレットに任せておけば安心ですよ、アドルさん……トラベル・プランの立案は、マレットとミーシャに任せれば完璧に仕上げてくれます……」

 腰から脚に掛けてを私に洗われながら、フィオナが言う。

「……そうだな……落ち着いたら…頼むよ……会社が俺に何をどう言って来るかについては、逐一君達に伝える……何か対応すべき場合に……アイディアがあったら、それも頼む……しかし……綺麗な肌だな……この肌理の細かさ……すべすべでツルツルだ……以前に観たよりも綺麗じゃないか? 」

「……そりゃあ当然ですよ……アドルさんと知り合って、付き合うようになってから……セルフ・スキンケアには力が入っていますから……」

 エドナがシャワーで身体の泡を洗い流しながら言う。

「……さ、次はアドルさんですよ……」

 エマがそう言って、4人で俺の身体を洗い始める。

「……アドルさんの身体は、バランスが好いですね……」

 と、フィオナ。

「……ナチュラルなライト・マッチョだよね……」

 と、マレット。

「……骨格も、筋肉の付き方もバランスが好いですね……筋トレを? 」

 と、エドナ。

「……うん……ジムには通ってないけど、通販で買った幾つかの筋トレグッズでね……走りに行くのは週に2回くらいだったけど、艦長に選ばれてからは出てないな……」

「……呑むのも食べるのも好きだけど、食べ過ぎませんし、呑み過ぎませんものね……」

 と、エマ。

「……過ぎたるは及ばざるが如し…ってね……古い言い方しちゃったけど……何でも過ぎて好い事は無いよ……あと、気を付けているのは睡眠時間だね……」

 同時に自分で髭を剃り上げる……髪も身体も丁寧に洗ってくれて流して貰った……出て、彼女達が使っているスキンケア・グッズを借りて使う……男が使っても凄いものだと思った……全裸にバスローブだけを着て、微温湯を1杯飲む……一服しようかと思ったが…眠る前にしようと思い直す。

「……いつか……禁煙を決意したら……達成する迄手伝ってくれるかな? 」

「……それは勿論、お任せ下さい……」

 フィオナが笑顔でそう言いながら、私の右手を取って促し、5人で寝室に入った。

 それからの寝室の中はもう……夢?…幻?…官能と快楽と快感が支配する…別の世界だった……4対1ではバランスが悪い……自分で積極的にはほぼ動けない……と言うか…動く事が許されない……好いバランスでのセックスとしては、3対1が限度だな……私のセックスを4人に分け与えるのでは、結局4人共満足させ切る事が出来ない……却って申し訳ない想いが強くなる……私自身は充分過ぎる程に満足してしまう……それが退け目になる……4分の1ずつでは無理だと言う事実を、はっきりと認識した……4回目の射精を終えて、まだベッドサイドには2個の装着型避妊具があったが……もう俺自身がオーバーロードだった。

 ベッドに5人での川の字は、狭過ぎる……そのままで30分そうしていて、起き上がる。

「……ちょっと力が足りなかったね……悪かった……サプリに頼るのは好きじゃないから……」

 彼女達4人がそれぞれ我を忘れて絶頂に達したのは、どんなに贔屓目に観たってせいぜい1回だろう。

「……充分に幸せでした……愛してます……」

 と、エドナ。

「……充分に満足して……堪能しましたよ……アドルさん……幸せです……」

 と、マレット。

「……私は…アドルさんを満足させられたのが嬉しいです……その事に幸せを感じます……」

 と、フィオナ。

「……私もです……私の総てでアドルさんを愛せて……満足して貰えたのが凄く嬉しいですし…幸せでしたし……一緒にイキましたよ……」

 と、エマ。

「……本当にありがとう…(照れ笑い)…感謝しかないよ……後で避妊具を3ダースと、サプリも2種類買っておこう……それとマレット……組み立てキットとして、持ち込んで設置できる……スペシャル・キングサイズのベッドを注文してくれないか? まあ、ここにそれを置くと……殆ど人の歩けるスペースが、無くなると思うけどな……」

「……分かりました……」

「……それより……もっと会社に近くて…広くて大きい物件を探そうか? うん……その方が好いな……マレット……スタッフ全員にこの話を流して……1度検索してくれ……」

「……了解しました……」

「……ありがとう……社宅として認めて貰えなくても……家賃ぐらい払うさ……」

 その後で、マットレスと布団と毛布をそれぞれ数枚ずつ引っ張り出した俺は、それらを寝室の床に敷き詰めてリビングのクッションも持ち込んで枕にした。

「……まあ…これで何とか5人でも寝られるだろう……俺は下で寝るからベッドの上が狭苦しかったら、悪いけど下で寝てくれ……君達の方が早く起きられるだろうから、悪いけど朝食の用意を頼むよ……何でも任せるからさ……朝、シャワーを浴びたかったら自由に浴びてくれ……俺が明日の朝出る時、一緒に出て……パブリック・ステーションのエントランスで君達を降ろす……それで好いね? じゃあ、おやすみ……俺はもっと着込んで、ベランダで一服してから寝るよ……」

 そう言って寝室を出ると、自室で厚手な上下下着に厚手のパジャマを着込み、厚手のロングコートを着てボタンを留めた。

 キッチンでグラスにモルトをツーフィンガーで注ぎ、そのまま灰皿と一緒に持ってベランダに出る。

 デッキチェアーに座ってグラスと灰皿をテーブルに置く。

 背を凭せ掛けて息を吐く……煙草を取り出して点け、喫って蒸して燻らせながら、モルトを一口含む。

 晴れていてそんなに風はない……涼しいと感じた……煙草とモルトの味が沁み渡る……7分程で喫い終わって呑み終える……室内に戻ってコートを脱ぎ、顔を洗って歯を磨く……顔をよく拭いて水気を拭ってから寝室に入る。

 皆横になって、布団と毛布を被ってはいたが、寝入っているようでもなかった。俺は特に構う事もせず、マットレスの端っこから身体を滑り込ませ、布団と毛布を被り、クッションに頭を乗せて寝た……3分以内で眠ったと思う。

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