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ファースト・シーズン
…3月4日(水)…
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アラーム・タイマーはセットしていなかったが、マレットがねっとりとしたキスで起こしてくれた。
「……おはようございます……お風呂の用意が出来ていますから、温まって下さい……それからミルクティーとコーヒーをお願いします……出社用の服も準備しましたので、観て下さい……」
「……ああ…おはよう……ありがとう……」
ノロノロと起き抜けて、そのままバスルームに入る……替えの下着も準備して置いてある……流石だな……熱いシャワーで心身に喝を与えて、目覚めさせる……頭と身体を洗って流し…髭も丁寧に剃り上げる……総てを洗い流してバスに浸かる……しっかりと、15分温まって出た……。
頭と身体を拭いて下着を着け、パンツを履いてシャツも着てキッチンに立つ……よっつのミルクティーとひとつのコーヒーを点てて淹れて仕上げ、テーブルに置いた……シナモンとアンゴスチュラ・ビターズとオレンジ・ビターズもほんの少し入れた……朝食を準備する手を少し止めて、5人でテーブルに着く。
「……美味っしい~です……温まって、目も覚めます……またその気にもなっちゃいますけど、平日の朝ですから控えますね……」
「……何を朝から欲情してるのよ、エマ……アンタって、そんなに直ぐ発情するんだっけ? アタシもそうだけど、口には出さないわよ……」
「…ごめんね、マレット……アタシはもう、アドルさんに首っ丈だからさ……」
「……マレットの言う通りだよ…平日の朝なんだから、アドルさんを遅刻させる訳にはいかないでしょ? 」
「……ハイハイ…フィオナは保安部長だからね……」
「……でも……こんな事が言えたり…話したり出来るのは、アドルさんにだけですよ……アドルさんが選んだクルー以外の人がひとりでも居たら、絶対に言えません……」
「……そうだね、エドナ……それを逆に言うなら、アドルさんに選ばれたクルーはみんなアドルさんに首っ丈だからね……」
「……ハイハイ…もう分ったから、早く朝食を仕上げちゃおう……グズグズしてると、本当にアドルさんが遅刻しちゃうよ……」
知らない人が聴いたらびっくりするような話を交わしながら、準備してくれた朝食は言う迄もなく、夕食の残りを活用した賄い料理だ……ポーク・ソテーやチキン・ソテーも、サーモン・ステーキも微妙に残っていたので…卵と併せて調理し直し、キャロット・ソテーとスピナッチ・ソテーの付け合わせで盛り付けたのだ……これが結構、また美味しそうだ……ロールブレッド10個に、林檎5個を皮を剥かずに4等分する……飲み物はミルクとオレンジ・ジュースにした。
ワイワイと喋りながら、5人で朝食の卓を囲む……パワーブレックファストだ……朝から力を補給する……総て綺麗サッパリと食べ終える……全員で片付けて、洗浄…拭き上げて収納した。
4人とそれぞれ10数秒ずつ接吻してから、スーツの上着を着る……フィオナに髪をセットして貰って…マレットにネクタイを締めて貰い、コートに袖を通して出社の出立ちを整える……自室からケースに入れたギターと譜面台と、ギタースタンドと2冊の楽譜ファイルを持ち出す……帰宅の準備を整えた4人と一緒に室内からガレージに出る……バッグ以外はトランクに入れて乗車し、車内からシャッターを操作して発車した。
最寄りのパブリック・ステーション……フロント・サークル・ロータリーに乗り入れて、エントランス・パーキングに停める……両側のドアを開けて、4人とも直ぐに降りた。
「……ありがとうございました…ご馳走様でした…アドルさん……お気を付けて行ってらっしゃい……それでは、後でまた……あと、今夜は? 」
「……こちらこそ、色々とありがとう……今夜は…『レッサー・ラビット』にするよ……じゃ、気を付けてね……また連絡するよ……」
ドアを閉めて階段を上っていく彼女達を見遣り、エレカーを出勤コースに乗せた。
本社の駐車スペースに滑り込んだのが始業20分前……降りてラウンジ・カフェテリアに入ると、直ぐにスコット・グラハムが私を見付けて右手を挙げる……観ると同じテーブルにはもう、マーリー・マトリン…アンブローズ・ターリントン…モリー・イーノス…ズライ・エナオが既に着いている。
「…あっ、先輩! おはようございます! こっちです! 」
「…ああ、おはよう! ちょっと待ってくれ……」
片手を挙げてそう応え、カウンターで淹れたコーヒーをソーサーに乗せて、スコットの対面に座る。
「……おはよう…みんな、早いな……」
「……最近は、アドル係長と語らう朝のひと時が楽しみになってますんでね……ギターは持って来て貰えました? 」
「……ああ、持って来たよ……一式、トランクに入れて来た……」
「…おはようございます…今から楽しみです……アドルさんは、どんな曲が得意なんですか? 」
「……そうだね、マーリー……20年前から10年前ぐらい迄でちょっと流行った楽曲なら大体できると思うよ……2曲で好いか? 」
「……おはようございます、アドルさん……3曲でお願いします……だって私…アドルさんが弾き語りで素敵に歌われるんだって、全然知りませんでしたから……」
「……知ってるって言うか…そう認識してる人は殆どいないと思うけどね……じゃあ、アンバーさんがコーヒーを淹れてくれるのなら…頑張っちゃおうかな? 」
「……ありがとうございます…嬉しいです…私で良ければ、何杯でもお淹れしますよ🩷……」
「……私は…あまりアドル係長の素敵なところが、ここの女性社員の皆さんに拡まっていってしまうのが、心配です……私が気軽に係長と一緒に歩けなくなりそうで……」
「……大丈夫だよ、ズライ……僕にとって1番の仲間は、今ここに居る君達だからね……これから誰が来て話すようになったとしても、僕と君達以上の関係にはならないよ……それじゃあ、3曲って事で良いね? 何処で演ろうか? 」
「……そうですねえ……あそこの奥の壁の前……に…椅子と小さいテーブルを置いて……スタンド・ライトをふたつ置けば、良いですか? 」
「……スタンド・ライトはいらないだろう? そんなに暗くはないからさ……」
「……先輩……アドル係長初の記念ライブなんですから……多少演出も考えないと…格好つきませんからねと……」
「……あんまり目立ちたくないんだけどね……まあいいや…任せるよ……それじゃあ、そろそろ上がろうぜ……」
そう言うと、コーヒーを飲み干して立ち上がった。
朝礼が終わってデスクに着き、端末を起動させて使用中のファイルを確認しようとしていると、フロア・チーフのヘイデン・ウィッシャーが来た。
「……おはよう、アドル係長……今日、外回りの予定はあるのかな? 」
「……おはようございます……いえ…今日、外に出る予定は入れてないですね……」
「……そうか……申し訳ないんだが…協力を頼みたくてね……」
「…好いですよ……どんな案件でしょう? 」
「……ある商品に於ける、宣伝動画制作についての打ち合わせなんだがね……営業本部の統括担当者と宣伝部の担当者は出席できるんだが……この商品を最初から担当していた営業側の担当者が急遽、出席できなくなってしまったんだ……それで…代わりに参加できる人を探していたんだが…営業本部の統括担当者から君の名が出されてね……君なら上手く捌いてくれるんじゃないかとの推薦があったんで…今こうして君に話してる……」
「……分かりました…行きましょう……その商品の詳細は、何処で確認できますか? それと出発は何時でしょう? 」
「……ここで確認できる……今日、急に来れなくなった営業担当者の…社内個人データ格納庫だ……それでここからの出発は10:15の予定だ……向かう先は少々遠方でね……会議開始は14:00を予定している……社用車が出るから、運転の心配はしなくて良いよ……」
そう言ってフロア・チーフは、誰かの社内メディアカードのコピーを手渡すと、右手を挙げて踵を反した。
今日は外に出ないで済むなと思っていたのだが、状況は急速に転回するようだ……貰ったカードを観ると、知り合いだった。
『ゲイリー・シモンズ』……同じ出身大学で同期の入学に卒業……入社でも同期で同じ営業係長だ……大学時代から『ゲイル』:『アドル』と呼び合っている……書いてある彼のワーク・アドレスを使って、ゲイルの社内個人クラウド・データ格納庫に入る……彼が現在担当している商品がトップに掲載されていた。
『All language full automatic translation utility display』
「…オール・ラングエイジ・フル・オートマティック・トランスレイション・ユーティリティ・ディスプレイ…」
「…全言語完全自動翻訳発声表示装置…」
略して「…ALFATUD…」
これは3年前からシリーズで発表されている商品で…今回でversion 3 となる。
プレゼン用の資料も含めて丁寧に、2回繰り返して読んだ。
声を出さずに3回頷いてから携帯端末で営業本部に繋ぎ、今日の会議に出席する担当者を呼んで貰う……と、直ぐに応答が入った。
「……おはようございます…イスマイル・ガスパールです……」
「……おはようございます…初めまして…アドル・エルクです……」
「…ああ、初めまして…アドル・エルク係長……連絡、お待ちしていました…今日は、同行して頂けますか? 」
「…はい、出席させて頂きます……宜しくお願いします……」
「…こちらこそ、宜しくお願いします……商品の詳細とプレゼン用の資料は、読んで頂けましたか? 」
「……はい…今、精読しました……こちらとしては、何時でも出られます……」
「……分かりました……では、10:00に出ましょう……私から今日の会議に出席する、宣伝部の担当者に連絡します……10:00の休憩時間に、1階のラウンジでお会いしましょう……」
「……分かりました…ラウンジで一服しています……」
「……了解です。それでは……」
その後9:30迄は、通常のルーティン・デスクワークをパワー・モードで進め、次は切り換えて今日の宣伝動画制作会議で採り上げる、商品の詳細とプレゼン用資料を読み返して把握した。
9:55に席を立つ……コートを着てバッグとPADを携え、1階に降りる……ラウンジ・カフェに入り、カウンターでコーヒーを淹れて喫煙席に着いた処で、10:00休憩時間のチャイムが響いた。
ひと口飲んで1本を取り出し、咥えて点ける……もうひと口飲んで3服目を喫い…蒸して燻らせた処で、男性が対面に座った。
「……おはようございます…初めまして。営業本部のイスマイル・ガスパールです……アドル・エルク係長ですね? 今日は宜しくお願いします……」
「…あ、おはようございます。気付かずに失礼しました。初めまして。はい、アドル・エルクです……こちらこそ、今日は代理での出席ですが、宜しくお願いします……失礼して休憩していました……」
喫さしを灰皿に置くと立ち上がり、そう言って会釈すると共に握手を交わす……イスマイルが座らずに内ポケットからカード・ホルダーを出したので、私も内ポケットから出してメディア・カードを交換した。
「……宜しくお願いします…休憩時間ですから好いですよ……どうぞ? 」
そう言ってくれたので、喫さしを取り上げる。
「……ありがとうございます……」
1服喫い、蒸して燻らせてコーヒーをふた口飲む……貰ったメディア・カードを観ると、イスマイル・ガスパール課長補佐とある。
「……宣伝部の担当者も…もう直ぐ来ますので、合流したら出発しましょう……社用車のドライバーには、ここに来る前に声を掛けました……」
「……ありがとうございます……3人以上で遠方の社外会議に出席するのは初めてなので、まだ勝手がよく判りませんが宜しくお願いします……それにしてもガスパールさん…初見でよく私だと判りましたね……」
「…(笑)…イスマイルで好いですよ、アドルさん……貴方がご自身をどのように捉えていらっしゃるのか判りませんが、本社内で貴方は結構有名ですよ……特に独身女性社員にはね(笑)……なので…貴方の特徴も、結構知られています……」
「……そうなんですか(動揺)……いや、全く知りませんでした……これから、気を付けます……」
そう応えてコーヒーを飲み干すと、煙草も灰皿で揉み消した……ほぼ同時にもう1人の男性社員が来る。
「……お待たせしまして、申し訳ありません……宣伝部のアグシン・メーディエフです……一緒に今日の出張会議に出席しますので……宜しくお願いします……アドル・エルクさんですね? 初めまして…今日は宜しくお願いします……イスマイルさんも、宜しくお願いします……」
「……宜しくお願いします、アグシンさん……それじゃ、アドルさん…行きましょうか? 」
「…はい、行きましょう…改めて、宜しくお願いします……」
そう応えながら立ち上がり、アグシン・メーディエフにもメディア・カードを渡した……お返しのカードを受け取り、内ポケットに仕舞ってから歩き出す。
3人で一緒に本社正面出入り口から出てコンコースに立つと、白い大型SUVが入って来て停まる。
「……すみません…セダン・タイプの社用車が今日は出払っていて、これしかありませんでした……乗って下さい……でもこれなら、3人で色々と話しながら行けますよ……」
イスマイル・ガスパールに促されて乗り込む……運転手は40代に観える男性だった……目的地は既に承知しているようで、直ぐに発車した。
「……アドルさん……今回のプロジェクトで営業側の担当者であるゲイリー・シモンズ係長ですが、ご存知ですか? 」
「…ええ、彼とは同じ大学で同期で、入社も一緒でした……今も同じ係長ですけど(笑)……今ではお互いに忙しくてあまり話せていませんが、学生時代にはよくつるんでいました……アドルと呼ばれればゲイルと呼びますし、アドリーと呼ばれればゲイリーと呼んでいました……ご存知かも知れませんが、彼は大学3年次にミドル級で学生チャンプを張りましてね……決定戦で観せた彼のステップ・ワークは…まだ頭の中でアリアリと観えますよ……豪放磊落でも、誠実な性質ですから…責任意識は高い男です……それが…自分が担当してきたプロジェクトよりもその急用を優先させたのですから、相当に深刻な状況なのでしょう……」
「……ええ……訊けば何でも、彼のお母様が倒れられてご危篤だとか……」
イスマイルの説明に少なからず驚く。
「……そうだったんですか……学生時代に数回お目に掛かっていて…お世話にもなりましたので…私も心配です……」
「……アドルさんの御両親は、お元気なので? 」
「……ええ…私の両親は、私が14才の時に離婚しましてね……その後、私は母に育てられました……父は3年後に再婚して住所も知っていますが、会いに行った事はありません……感情的な確執はもうありませんが……まあ、特に話す用もありませんので……」
「……そうですか……分かりました……」
「……処で…今日、向かう先はどちらですか? 」
「……『フィニアス・ファーヴ』と言う宣伝・広告代理店です……今日はそこで、商品の最終的なプレゼンを行いまして…それを基に宣伝動画制作の骨子を固めて決定し、契約…と言う流れですね……」
「……分かりました……ゲイリー・シモンズに代わって、精一杯尽力させて頂きます……」
「…(笑)まあ…力は抜いて、リラックス…自然体で行きましょう……あちらとは付き合いも長いし…関係は良好です……今回の商品も、評判は上々ですから……」
「……分かりました……」
「……イスマイルさん……今日は、コマーシャル動画に出演されるタレントさんも決めるんですか? 」
アグシン・メーディエフが訊く。
「……うん…あちらさんが女優さんを推薦して下さると言う事でね……今日はその女優さんも来て下さると言う事なんで……まあ、こちらでも確認して…決定…契約と言う運びになると思うね……」
「……分かりました……処で…昼飯はどうします? 」
「……そうだなぁ……予定より早く着くし……あちらさんのラウンジで食べさせて貰うかなぁ……いや、勿論お金は払うけどね……実は以前に軽く食べた事があってね……結構旨かったからさ……」
「……そうですね……それでいきましょう……メシが美味い勤め先ってのは…人間関係とか、その他の側面も…結構好いんでしょうからね……ウチもそうですけど……」
「……そうしましょう…じゃあ、運転手さん…先方の駐車スペースに入っちゃって下さい……」
「……分かりました……」
白い大型SUVエレカーは一路、宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』を目指す……そこで俺を待ち受けていたのは新たな……女性ふたりとの出逢いだった。
「……おはようございます……お風呂の用意が出来ていますから、温まって下さい……それからミルクティーとコーヒーをお願いします……出社用の服も準備しましたので、観て下さい……」
「……ああ…おはよう……ありがとう……」
ノロノロと起き抜けて、そのままバスルームに入る……替えの下着も準備して置いてある……流石だな……熱いシャワーで心身に喝を与えて、目覚めさせる……頭と身体を洗って流し…髭も丁寧に剃り上げる……総てを洗い流してバスに浸かる……しっかりと、15分温まって出た……。
頭と身体を拭いて下着を着け、パンツを履いてシャツも着てキッチンに立つ……よっつのミルクティーとひとつのコーヒーを点てて淹れて仕上げ、テーブルに置いた……シナモンとアンゴスチュラ・ビターズとオレンジ・ビターズもほんの少し入れた……朝食を準備する手を少し止めて、5人でテーブルに着く。
「……美味っしい~です……温まって、目も覚めます……またその気にもなっちゃいますけど、平日の朝ですから控えますね……」
「……何を朝から欲情してるのよ、エマ……アンタって、そんなに直ぐ発情するんだっけ? アタシもそうだけど、口には出さないわよ……」
「…ごめんね、マレット……アタシはもう、アドルさんに首っ丈だからさ……」
「……マレットの言う通りだよ…平日の朝なんだから、アドルさんを遅刻させる訳にはいかないでしょ? 」
「……ハイハイ…フィオナは保安部長だからね……」
「……でも……こんな事が言えたり…話したり出来るのは、アドルさんにだけですよ……アドルさんが選んだクルー以外の人がひとりでも居たら、絶対に言えません……」
「……そうだね、エドナ……それを逆に言うなら、アドルさんに選ばれたクルーはみんなアドルさんに首っ丈だからね……」
「……ハイハイ…もう分ったから、早く朝食を仕上げちゃおう……グズグズしてると、本当にアドルさんが遅刻しちゃうよ……」
知らない人が聴いたらびっくりするような話を交わしながら、準備してくれた朝食は言う迄もなく、夕食の残りを活用した賄い料理だ……ポーク・ソテーやチキン・ソテーも、サーモン・ステーキも微妙に残っていたので…卵と併せて調理し直し、キャロット・ソテーとスピナッチ・ソテーの付け合わせで盛り付けたのだ……これが結構、また美味しそうだ……ロールブレッド10個に、林檎5個を皮を剥かずに4等分する……飲み物はミルクとオレンジ・ジュースにした。
ワイワイと喋りながら、5人で朝食の卓を囲む……パワーブレックファストだ……朝から力を補給する……総て綺麗サッパリと食べ終える……全員で片付けて、洗浄…拭き上げて収納した。
4人とそれぞれ10数秒ずつ接吻してから、スーツの上着を着る……フィオナに髪をセットして貰って…マレットにネクタイを締めて貰い、コートに袖を通して出社の出立ちを整える……自室からケースに入れたギターと譜面台と、ギタースタンドと2冊の楽譜ファイルを持ち出す……帰宅の準備を整えた4人と一緒に室内からガレージに出る……バッグ以外はトランクに入れて乗車し、車内からシャッターを操作して発車した。
最寄りのパブリック・ステーション……フロント・サークル・ロータリーに乗り入れて、エントランス・パーキングに停める……両側のドアを開けて、4人とも直ぐに降りた。
「……ありがとうございました…ご馳走様でした…アドルさん……お気を付けて行ってらっしゃい……それでは、後でまた……あと、今夜は? 」
「……こちらこそ、色々とありがとう……今夜は…『レッサー・ラビット』にするよ……じゃ、気を付けてね……また連絡するよ……」
ドアを閉めて階段を上っていく彼女達を見遣り、エレカーを出勤コースに乗せた。
本社の駐車スペースに滑り込んだのが始業20分前……降りてラウンジ・カフェテリアに入ると、直ぐにスコット・グラハムが私を見付けて右手を挙げる……観ると同じテーブルにはもう、マーリー・マトリン…アンブローズ・ターリントン…モリー・イーノス…ズライ・エナオが既に着いている。
「…あっ、先輩! おはようございます! こっちです! 」
「…ああ、おはよう! ちょっと待ってくれ……」
片手を挙げてそう応え、カウンターで淹れたコーヒーをソーサーに乗せて、スコットの対面に座る。
「……おはよう…みんな、早いな……」
「……最近は、アドル係長と語らう朝のひと時が楽しみになってますんでね……ギターは持って来て貰えました? 」
「……ああ、持って来たよ……一式、トランクに入れて来た……」
「…おはようございます…今から楽しみです……アドルさんは、どんな曲が得意なんですか? 」
「……そうだね、マーリー……20年前から10年前ぐらい迄でちょっと流行った楽曲なら大体できると思うよ……2曲で好いか? 」
「……おはようございます、アドルさん……3曲でお願いします……だって私…アドルさんが弾き語りで素敵に歌われるんだって、全然知りませんでしたから……」
「……知ってるって言うか…そう認識してる人は殆どいないと思うけどね……じゃあ、アンバーさんがコーヒーを淹れてくれるのなら…頑張っちゃおうかな? 」
「……ありがとうございます…嬉しいです…私で良ければ、何杯でもお淹れしますよ🩷……」
「……私は…あまりアドル係長の素敵なところが、ここの女性社員の皆さんに拡まっていってしまうのが、心配です……私が気軽に係長と一緒に歩けなくなりそうで……」
「……大丈夫だよ、ズライ……僕にとって1番の仲間は、今ここに居る君達だからね……これから誰が来て話すようになったとしても、僕と君達以上の関係にはならないよ……それじゃあ、3曲って事で良いね? 何処で演ろうか? 」
「……そうですねえ……あそこの奥の壁の前……に…椅子と小さいテーブルを置いて……スタンド・ライトをふたつ置けば、良いですか? 」
「……スタンド・ライトはいらないだろう? そんなに暗くはないからさ……」
「……先輩……アドル係長初の記念ライブなんですから……多少演出も考えないと…格好つきませんからねと……」
「……あんまり目立ちたくないんだけどね……まあいいや…任せるよ……それじゃあ、そろそろ上がろうぜ……」
そう言うと、コーヒーを飲み干して立ち上がった。
朝礼が終わってデスクに着き、端末を起動させて使用中のファイルを確認しようとしていると、フロア・チーフのヘイデン・ウィッシャーが来た。
「……おはよう、アドル係長……今日、外回りの予定はあるのかな? 」
「……おはようございます……いえ…今日、外に出る予定は入れてないですね……」
「……そうか……申し訳ないんだが…協力を頼みたくてね……」
「…好いですよ……どんな案件でしょう? 」
「……ある商品に於ける、宣伝動画制作についての打ち合わせなんだがね……営業本部の統括担当者と宣伝部の担当者は出席できるんだが……この商品を最初から担当していた営業側の担当者が急遽、出席できなくなってしまったんだ……それで…代わりに参加できる人を探していたんだが…営業本部の統括担当者から君の名が出されてね……君なら上手く捌いてくれるんじゃないかとの推薦があったんで…今こうして君に話してる……」
「……分かりました…行きましょう……その商品の詳細は、何処で確認できますか? それと出発は何時でしょう? 」
「……ここで確認できる……今日、急に来れなくなった営業担当者の…社内個人データ格納庫だ……それでここからの出発は10:15の予定だ……向かう先は少々遠方でね……会議開始は14:00を予定している……社用車が出るから、運転の心配はしなくて良いよ……」
そう言ってフロア・チーフは、誰かの社内メディアカードのコピーを手渡すと、右手を挙げて踵を反した。
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声を出さずに3回頷いてから携帯端末で営業本部に繋ぎ、今日の会議に出席する担当者を呼んで貰う……と、直ぐに応答が入った。
「……おはようございます…イスマイル・ガスパールです……」
「……おはようございます…初めまして…アドル・エルクです……」
「…ああ、初めまして…アドル・エルク係長……連絡、お待ちしていました…今日は、同行して頂けますか? 」
「…はい、出席させて頂きます……宜しくお願いします……」
「…こちらこそ、宜しくお願いします……商品の詳細とプレゼン用の資料は、読んで頂けましたか? 」
「……はい…今、精読しました……こちらとしては、何時でも出られます……」
「……分かりました……では、10:00に出ましょう……私から今日の会議に出席する、宣伝部の担当者に連絡します……10:00の休憩時間に、1階のラウンジでお会いしましょう……」
「……分かりました…ラウンジで一服しています……」
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その後9:30迄は、通常のルーティン・デスクワークをパワー・モードで進め、次は切り換えて今日の宣伝動画制作会議で採り上げる、商品の詳細とプレゼン用資料を読み返して把握した。
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ひと口飲んで1本を取り出し、咥えて点ける……もうひと口飲んで3服目を喫い…蒸して燻らせた処で、男性が対面に座った。
「……おはようございます…初めまして。営業本部のイスマイル・ガスパールです……アドル・エルク係長ですね? 今日は宜しくお願いします……」
「…あ、おはようございます。気付かずに失礼しました。初めまして。はい、アドル・エルクです……こちらこそ、今日は代理での出席ですが、宜しくお願いします……失礼して休憩していました……」
喫さしを灰皿に置くと立ち上がり、そう言って会釈すると共に握手を交わす……イスマイルが座らずに内ポケットからカード・ホルダーを出したので、私も内ポケットから出してメディア・カードを交換した。
「……宜しくお願いします…休憩時間ですから好いですよ……どうぞ? 」
そう言ってくれたので、喫さしを取り上げる。
「……ありがとうございます……」
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「……宣伝部の担当者も…もう直ぐ来ますので、合流したら出発しましょう……社用車のドライバーには、ここに来る前に声を掛けました……」
「……ありがとうございます……3人以上で遠方の社外会議に出席するのは初めてなので、まだ勝手がよく判りませんが宜しくお願いします……それにしてもガスパールさん…初見でよく私だと判りましたね……」
「…(笑)…イスマイルで好いですよ、アドルさん……貴方がご自身をどのように捉えていらっしゃるのか判りませんが、本社内で貴方は結構有名ですよ……特に独身女性社員にはね(笑)……なので…貴方の特徴も、結構知られています……」
「……そうなんですか(動揺)……いや、全く知りませんでした……これから、気を付けます……」
そう応えてコーヒーを飲み干すと、煙草も灰皿で揉み消した……ほぼ同時にもう1人の男性社員が来る。
「……お待たせしまして、申し訳ありません……宣伝部のアグシン・メーディエフです……一緒に今日の出張会議に出席しますので……宜しくお願いします……アドル・エルクさんですね? 初めまして…今日は宜しくお願いします……イスマイルさんも、宜しくお願いします……」
「……宜しくお願いします、アグシンさん……それじゃ、アドルさん…行きましょうか? 」
「…はい、行きましょう…改めて、宜しくお願いします……」
そう応えながら立ち上がり、アグシン・メーディエフにもメディア・カードを渡した……お返しのカードを受け取り、内ポケットに仕舞ってから歩き出す。
3人で一緒に本社正面出入り口から出てコンコースに立つと、白い大型SUVが入って来て停まる。
「……すみません…セダン・タイプの社用車が今日は出払っていて、これしかありませんでした……乗って下さい……でもこれなら、3人で色々と話しながら行けますよ……」
イスマイル・ガスパールに促されて乗り込む……運転手は40代に観える男性だった……目的地は既に承知しているようで、直ぐに発車した。
「……アドルさん……今回のプロジェクトで営業側の担当者であるゲイリー・シモンズ係長ですが、ご存知ですか? 」
「…ええ、彼とは同じ大学で同期で、入社も一緒でした……今も同じ係長ですけど(笑)……今ではお互いに忙しくてあまり話せていませんが、学生時代にはよくつるんでいました……アドルと呼ばれればゲイルと呼びますし、アドリーと呼ばれればゲイリーと呼んでいました……ご存知かも知れませんが、彼は大学3年次にミドル級で学生チャンプを張りましてね……決定戦で観せた彼のステップ・ワークは…まだ頭の中でアリアリと観えますよ……豪放磊落でも、誠実な性質ですから…責任意識は高い男です……それが…自分が担当してきたプロジェクトよりもその急用を優先させたのですから、相当に深刻な状況なのでしょう……」
「……ええ……訊けば何でも、彼のお母様が倒れられてご危篤だとか……」
イスマイルの説明に少なからず驚く。
「……そうだったんですか……学生時代に数回お目に掛かっていて…お世話にもなりましたので…私も心配です……」
「……アドルさんの御両親は、お元気なので? 」
「……ええ…私の両親は、私が14才の時に離婚しましてね……その後、私は母に育てられました……父は3年後に再婚して住所も知っていますが、会いに行った事はありません……感情的な確執はもうありませんが……まあ、特に話す用もありませんので……」
「……そうですか……分かりました……」
「……処で…今日、向かう先はどちらですか? 」
「……『フィニアス・ファーヴ』と言う宣伝・広告代理店です……今日はそこで、商品の最終的なプレゼンを行いまして…それを基に宣伝動画制作の骨子を固めて決定し、契約…と言う流れですね……」
「……分かりました……ゲイリー・シモンズに代わって、精一杯尽力させて頂きます……」
「…(笑)まあ…力は抜いて、リラックス…自然体で行きましょう……あちらとは付き合いも長いし…関係は良好です……今回の商品も、評判は上々ですから……」
「……分かりました……」
「……イスマイルさん……今日は、コマーシャル動画に出演されるタレントさんも決めるんですか? 」
アグシン・メーディエフが訊く。
「……うん…あちらさんが女優さんを推薦して下さると言う事でね……今日はその女優さんも来て下さると言う事なんで……まあ、こちらでも確認して…決定…契約と言う運びになると思うね……」
「……分かりました……処で…昼飯はどうします? 」
「……そうだなぁ……予定より早く着くし……あちらさんのラウンジで食べさせて貰うかなぁ……いや、勿論お金は払うけどね……実は以前に軽く食べた事があってね……結構旨かったからさ……」
「……そうですね……それでいきましょう……メシが美味い勤め先ってのは…人間関係とか、その他の側面も…結構好いんでしょうからね……ウチもそうですけど……」
「……そうしましょう…じゃあ、運転手さん…先方の駐車スペースに入っちゃって下さい……」
「……分かりました……」
白い大型SUVエレカーは一路、宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』を目指す……そこで俺を待ち受けていたのは新たな……女性ふたりとの出逢いだった。
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