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異世界探訪
騎士『ゼンシ』…もてなされる。
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この『世界』に『転移』して、初めて会ったあの『彼』だった。
出会った時に観た、あの空間の『歪み』のようなものは…ひとつだけが、彼の頭の上に浮かんでいる。
中央に置かれたテーブルを囲んで深く座れる椅子が6人分、配されている。
奥方に手で座るよう促されたので、『彼』が座っている場所から見て、点対称で反対の位置に座る。
更に奥方から、ケープを預かるから脱いで渡すようにと身振りで促されたので、ケープの裏生地に取り付けていた総ての装備・小物を取り外し、上下上着の内側に仕舞ってからケープだけを彼女に渡した。
奥方はそれから退室したので、上座に座ったご主人と私と『彼』だけで座っていた。
ご主人、また葉巻を取り出すのではないのかと懸念していたが、それは杞憂に終わった。
ただ、私に向かって自分を示す身振りを見せながら、ある言葉を繰り返して発した。
「…ガマラス・オバク…」
「…ガマラス・オバク…」
この言葉がご主人の名前だと理解できたので、私も両手で自分を示してから両手でご主人に差し出すような身振りを示しながら、自分の名前を発声した。
「…シエン・ジン・グン…」
「…シエン・ジン・グン…」
聴いたご主人は理解して頂けたようで…にっこりと笑って立ち上がると、歩み寄って私の両手を両手で握った。
ご主人はそのまま私の左隣に座って、満足そうに微笑む。
つられて微笑みながら正面に顔を向けると、あの『彼』も同じ身振りで同じ言葉を繰り返して発声した。
「…リエン・セン・シン…」
「…リエン・セン・シン…」
私も『彼』の名前を理解した。
奥方が居間に戻って来て、トレイに乗せた人数分のカップをそれぞれの前に配してから、ご自身も座った。
どうやら、この世界での『お茶』らしい…コーヒーとは香りが違う。
奥方を見遣って、軽く会釈してからカップを取り上げる。
まあ、ハーブティーだ…香りにも味にも特段、抵抗は無い。
ご主人が奥方に話をした…どうやら、自分の名前を私に教えて憶えて貰ったと伝えたらしい。
すると奥方もご主人と同じ身振りでご自分の名前を教えてくれた。
「…リーゼ・オバク…」
「…リーゼ・オバク…」
私は右手を左胸に当てて会釈してから自分の名前を伝えた。
「…シエン・ジン・グン…」
「…シエン・ジン・グン…」
奥方は、両手を胸で合わせて会釈した…この世界に来て早々だが、良い人に出会えたな。
その後は主に奥方と『彼』との会話を聴かされていた。
トライ・コーダーと携帯端末には、音声と類意語彙のデータが蓄積されていく。
右耳の中のウィスパー・コミュニケーターからは、10秒に1語くらいの頻度で類意語が聴こえてくるようになった。
だがまだ意味は、文脈としても解らない…まだ待つしかない。
メイドさんと思しき女性が入室して、飲み干されたカップとソーサーをトレイにまとめて出て行った。
この家はかなり裕福であるらしい。
奥方が立って『彼』を呼び、私の手も引いて促して行く。
観せられたのは、この家の中庭だ。
一見して見事なものだと分かる。
大胆であり繊細な構築・構成でもあるが、実にバランスが執れていて…感嘆の吐息が洩れる。
ご主人が靴を履いて中庭に降り、私にも靴を履いて降りるように促す。
何をするのだろうと思ったが従った。
すると『彼』も靴を履いて庭に降り、私が立っている場所から観て、反対の位置で私に向き直る。
彼を取り巻いて通過する『流れ』が、直ぐに私に向けての強い接触意識を詠ませる。
何だと思って私も『彼』に向き直るが、攻撃的な意識までは詠めない。
だから、セイバーは押さえなかった。
視線が合うと直ぐ彼の頭の上の『空間の歪み』が10個に分裂して、彼を取り巻く。
それでも攻撃意識は詠めなかったから姿勢は変えなかった。
私が『歪み』を詠めていると『彼』は認識していないだろう。
そのまま10セコスが過ぎたが、何も起きない。
(…そうか…これは私の能力と言うか、感受性を観たいのか…)
そう思って『歪み』のひとつに焦点を当ててほんの少し意識を集めると『彼』は少し驚いて『歪み』をまたひとつに重ねて…それで終わった。
『彼』から視線を外して、また見事な庭園を眺めて見渡す。
ご主人が『彼』と少し会話をして…私を手招き、屋内に入るように促す。
『彼』が私に探りを入れて、能力と感受性を試そうとしたのは事実だ…何の為かは判らないが。
家の中に戻ると、ご主人は私達をダイニング・ルームに通した。
食卓を囲んで席に着き…またお茶が供されて私は、ご夫妻と『彼』の会話を聴いている。
『百話法』が功を奏し始めたようで、この世界での言語に於ける文法への理解が進んでいるようだ。
そしてモバイル・コミュニケーターにも、トライ・コーダーにも言語・単語・文法データが蓄積されていっているから、結構翻訳も出来始めてきている。
彼ら3人が交わす会話を聴いて受け止めていて…右耳の中のウィスパー・コミュニケーターが、あまり馴染みの無い類意単語を2回発音した。
『魔物』を意味する単語だ。
奇妙に感じたので、訊いてみることにした。
簡単な質問文法なら…もう解ってきていたので、声に出してみた。
「…魔物とは…何ですか? 」
3人ともギョッとして私を見た。
無理もない。
ご主人が私に向き直る。
「…言葉が解るのかね? 」
「…あ…それまでに知らない…言語であっても…短期間で…修得する技術を…身に付けて…います…」
3人とも驚いている…だが怪訝な表情ではない…何とか伝わったようだ…テクノロジーについては言わないでおこう…説明が難しいし…理解して貰えないだろう。
「…シエン君は…すごい技術を…持っているんだね…」
次に『彼』が口を開いた。
「…『魔物』って言うのはね…何と言えば良いのかな…僕達とか…普通の動物とは…全く違う…生まれとか…成り立ちの違う…生き物なんだよね…」
「…この街に来た時に…すごく強い悪意を放っている…猛獣のような生き物を…感じたのですが…それですか? 」
また3人がひどく驚いた。
今度は奥方が訊いた。
「…どうして…判るの? 」
「…子供の頃から…感受性を…鋭く…広く…深く…感じ取れるように…訓練してきました…」
3人とも口を開かずに…暫くの間、まじまじと私を観た。
一杯のお茶を…ゆっくりと飲み干すくらいの時間を置いて、ご主人が言った。
「…やはり……私の頼みたい仕事には…君達2人が打って付けのようだね……詳しい仕事の説明については…明日、丁寧に話しますから…今夜はゆっくりと…休んで下さい……」
そう言って言葉を切り、ダイニング・ルームから出て行った。
奥方も、ティー・セットを片付けに来たメイドの女性とダイニング・ルームを後にして、私と『彼』の2人が残される。
「…シエン君ってさあ…どこから来たの? 」
「…説明が難しい…今は違う世界から来た…と言う事で…認識しておいて…欲しい…」
「…分かったよ…僕が持っている『あれ』…見えるの? 」
「…見えるのと…感じ取れるとの…両方だな…」
「…そうなんだ…僕も3日前に…ご主人から…話を聞いたばかりでね…詳しい事は…まだ聞いていないんだ…」
「…そうか…」
「…まあ…せっかく…世話をしてくれるって…言っているんだから…世話になろう…久し振りに…屋根のある…家の中で寝られるんだから…ありがたいよ…」
そこまで言った時に、ご夫妻とメイドの女性がまた、ダイニング・ルームに戻って来たのだが、メイドの方は違う女性だ…思うよりもっと裕福な家庭のようだ。
メイドの女性は…鍋と深めの皿を重ねて乗せたワゴンを押してテーブルまで寄り、皿に具が多めのスープを盛り付けてテーブルに配すると、ワゴンは部屋の隅に置いて退室した。
「…お口に合わなかったら、ごめんなさいね…でも温まりますから、熱い内に召し上がれ…」
そう言って、奥方も席に着く。
ご主人は、小さめな4個のグラスと蒸留酒らしい酒のボトルを携えて入り、グラスを置くと酒を注いで配し、奥方の隣に座った。
「…いただきます…」
スープとシチューの中間のような料理だ…スープは(コーン?)の仕立てで…とろみが強い…(ビーフ?)のような細かく切った肉が煮込まれている。
勿論美味しい…塩味は塩味…甘味は甘味だ…私が居た世界でのにんじんのような根菜…玉ねぎのような球根菜…茸類も…ブロッコリーのような野菜も入っている…私の居た世界で出されても、特におかしくはない。
「…お味はいかが? 」
「…美味しいです…とても…」
「…ありがとう…」
「…この酒も…飲んでみてくれないか? 」
ご主人がそう言ってグラスを右手で持ったので、私達も右手で持った。
「…今日の出会いに…」
「…今日の出会いに…」
「…ランドカスケレス…」
「…ランドカスケレス…」
初めて聴く固有の動詞だったので、コミュニケーターも『乾杯』とは訳せなかったのだが、聴いた通りの発音で復唱した。
結構高いアルコール度数の蒸留酒だ…色と風味は…ウィスキーに近い…原料は、麦か。
「…どうだね? 」
「…これも美味しいです…ですが私は…このような強い酒に…あまり慣れていないので…美味しいと感じて飲めるのは…2杯です
「…僕なら…1杯です…」
「…ありがとう…それぞれの程度で…楽しんで下さい…」
次に運ばれて来た料理は、4種類くらいの温野菜料理に…炒めたのか焼いたのか判らない肉を併せた料理だ…量が少ないから前菜なのだろう。
肉は豚肉なのか鶏肉なのか判らない…が、美味い。
私はスープだかシチューだかをお替わりして…その前菜と一緒に、時間を掛けて食べ終えた。
その後は、食後酒のような甘い酒が1杯に…コーヒーのような飲み物が1杯と…ショート・ケーキのようなお菓子がひとつ配された。
どれもそれなりに美味い…さっきまで居た世界で出されても、何も不思議にもおかしくも思わない。
全く違う世界だが…似通っている物や事象もある…時空連続体とか…次元間としても…それ程に離れている訳ではないのかも知れない。
その後は…広い浴室に案内された。
たっぷりと湯が張られたバス。
充分に浸かって温まり、身体もよく洗って髭も剃った。
提供された下着に慣れる迄には、何日か掛かるだろう。
貴重な持ち物は、直ぐに手の届く所に置いて隠す。
ベッドは最高の手触りとクッションだ……直ぐに眠りに落ちた。
出会った時に観た、あの空間の『歪み』のようなものは…ひとつだけが、彼の頭の上に浮かんでいる。
中央に置かれたテーブルを囲んで深く座れる椅子が6人分、配されている。
奥方に手で座るよう促されたので、『彼』が座っている場所から見て、点対称で反対の位置に座る。
更に奥方から、ケープを預かるから脱いで渡すようにと身振りで促されたので、ケープの裏生地に取り付けていた総ての装備・小物を取り外し、上下上着の内側に仕舞ってからケープだけを彼女に渡した。
奥方はそれから退室したので、上座に座ったご主人と私と『彼』だけで座っていた。
ご主人、また葉巻を取り出すのではないのかと懸念していたが、それは杞憂に終わった。
ただ、私に向かって自分を示す身振りを見せながら、ある言葉を繰り返して発した。
「…ガマラス・オバク…」
「…ガマラス・オバク…」
この言葉がご主人の名前だと理解できたので、私も両手で自分を示してから両手でご主人に差し出すような身振りを示しながら、自分の名前を発声した。
「…シエン・ジン・グン…」
「…シエン・ジン・グン…」
聴いたご主人は理解して頂けたようで…にっこりと笑って立ち上がると、歩み寄って私の両手を両手で握った。
ご主人はそのまま私の左隣に座って、満足そうに微笑む。
つられて微笑みながら正面に顔を向けると、あの『彼』も同じ身振りで同じ言葉を繰り返して発声した。
「…リエン・セン・シン…」
「…リエン・セン・シン…」
私も『彼』の名前を理解した。
奥方が居間に戻って来て、トレイに乗せた人数分のカップをそれぞれの前に配してから、ご自身も座った。
どうやら、この世界での『お茶』らしい…コーヒーとは香りが違う。
奥方を見遣って、軽く会釈してからカップを取り上げる。
まあ、ハーブティーだ…香りにも味にも特段、抵抗は無い。
ご主人が奥方に話をした…どうやら、自分の名前を私に教えて憶えて貰ったと伝えたらしい。
すると奥方もご主人と同じ身振りでご自分の名前を教えてくれた。
「…リーゼ・オバク…」
「…リーゼ・オバク…」
私は右手を左胸に当てて会釈してから自分の名前を伝えた。
「…シエン・ジン・グン…」
「…シエン・ジン・グン…」
奥方は、両手を胸で合わせて会釈した…この世界に来て早々だが、良い人に出会えたな。
その後は主に奥方と『彼』との会話を聴かされていた。
トライ・コーダーと携帯端末には、音声と類意語彙のデータが蓄積されていく。
右耳の中のウィスパー・コミュニケーターからは、10秒に1語くらいの頻度で類意語が聴こえてくるようになった。
だがまだ意味は、文脈としても解らない…まだ待つしかない。
メイドさんと思しき女性が入室して、飲み干されたカップとソーサーをトレイにまとめて出て行った。
この家はかなり裕福であるらしい。
奥方が立って『彼』を呼び、私の手も引いて促して行く。
観せられたのは、この家の中庭だ。
一見して見事なものだと分かる。
大胆であり繊細な構築・構成でもあるが、実にバランスが執れていて…感嘆の吐息が洩れる。
ご主人が靴を履いて中庭に降り、私にも靴を履いて降りるように促す。
何をするのだろうと思ったが従った。
すると『彼』も靴を履いて庭に降り、私が立っている場所から観て、反対の位置で私に向き直る。
彼を取り巻いて通過する『流れ』が、直ぐに私に向けての強い接触意識を詠ませる。
何だと思って私も『彼』に向き直るが、攻撃的な意識までは詠めない。
だから、セイバーは押さえなかった。
視線が合うと直ぐ彼の頭の上の『空間の歪み』が10個に分裂して、彼を取り巻く。
それでも攻撃意識は詠めなかったから姿勢は変えなかった。
私が『歪み』を詠めていると『彼』は認識していないだろう。
そのまま10セコスが過ぎたが、何も起きない。
(…そうか…これは私の能力と言うか、感受性を観たいのか…)
そう思って『歪み』のひとつに焦点を当ててほんの少し意識を集めると『彼』は少し驚いて『歪み』をまたひとつに重ねて…それで終わった。
『彼』から視線を外して、また見事な庭園を眺めて見渡す。
ご主人が『彼』と少し会話をして…私を手招き、屋内に入るように促す。
『彼』が私に探りを入れて、能力と感受性を試そうとしたのは事実だ…何の為かは判らないが。
家の中に戻ると、ご主人は私達をダイニング・ルームに通した。
食卓を囲んで席に着き…またお茶が供されて私は、ご夫妻と『彼』の会話を聴いている。
『百話法』が功を奏し始めたようで、この世界での言語に於ける文法への理解が進んでいるようだ。
そしてモバイル・コミュニケーターにも、トライ・コーダーにも言語・単語・文法データが蓄積されていっているから、結構翻訳も出来始めてきている。
彼ら3人が交わす会話を聴いて受け止めていて…右耳の中のウィスパー・コミュニケーターが、あまり馴染みの無い類意単語を2回発音した。
『魔物』を意味する単語だ。
奇妙に感じたので、訊いてみることにした。
簡単な質問文法なら…もう解ってきていたので、声に出してみた。
「…魔物とは…何ですか? 」
3人ともギョッとして私を見た。
無理もない。
ご主人が私に向き直る。
「…言葉が解るのかね? 」
「…あ…それまでに知らない…言語であっても…短期間で…修得する技術を…身に付けて…います…」
3人とも驚いている…だが怪訝な表情ではない…何とか伝わったようだ…テクノロジーについては言わないでおこう…説明が難しいし…理解して貰えないだろう。
「…シエン君は…すごい技術を…持っているんだね…」
次に『彼』が口を開いた。
「…『魔物』って言うのはね…何と言えば良いのかな…僕達とか…普通の動物とは…全く違う…生まれとか…成り立ちの違う…生き物なんだよね…」
「…この街に来た時に…すごく強い悪意を放っている…猛獣のような生き物を…感じたのですが…それですか? 」
また3人がひどく驚いた。
今度は奥方が訊いた。
「…どうして…判るの? 」
「…子供の頃から…感受性を…鋭く…広く…深く…感じ取れるように…訓練してきました…」
3人とも口を開かずに…暫くの間、まじまじと私を観た。
一杯のお茶を…ゆっくりと飲み干すくらいの時間を置いて、ご主人が言った。
「…やはり……私の頼みたい仕事には…君達2人が打って付けのようだね……詳しい仕事の説明については…明日、丁寧に話しますから…今夜はゆっくりと…休んで下さい……」
そう言って言葉を切り、ダイニング・ルームから出て行った。
奥方も、ティー・セットを片付けに来たメイドの女性とダイニング・ルームを後にして、私と『彼』の2人が残される。
「…シエン君ってさあ…どこから来たの? 」
「…説明が難しい…今は違う世界から来た…と言う事で…認識しておいて…欲しい…」
「…分かったよ…僕が持っている『あれ』…見えるの? 」
「…見えるのと…感じ取れるとの…両方だな…」
「…そうなんだ…僕も3日前に…ご主人から…話を聞いたばかりでね…詳しい事は…まだ聞いていないんだ…」
「…そうか…」
「…まあ…せっかく…世話をしてくれるって…言っているんだから…世話になろう…久し振りに…屋根のある…家の中で寝られるんだから…ありがたいよ…」
そこまで言った時に、ご夫妻とメイドの女性がまた、ダイニング・ルームに戻って来たのだが、メイドの方は違う女性だ…思うよりもっと裕福な家庭のようだ。
メイドの女性は…鍋と深めの皿を重ねて乗せたワゴンを押してテーブルまで寄り、皿に具が多めのスープを盛り付けてテーブルに配すると、ワゴンは部屋の隅に置いて退室した。
「…お口に合わなかったら、ごめんなさいね…でも温まりますから、熱い内に召し上がれ…」
そう言って、奥方も席に着く。
ご主人は、小さめな4個のグラスと蒸留酒らしい酒のボトルを携えて入り、グラスを置くと酒を注いで配し、奥方の隣に座った。
「…いただきます…」
スープとシチューの中間のような料理だ…スープは(コーン?)の仕立てで…とろみが強い…(ビーフ?)のような細かく切った肉が煮込まれている。
勿論美味しい…塩味は塩味…甘味は甘味だ…私が居た世界でのにんじんのような根菜…玉ねぎのような球根菜…茸類も…ブロッコリーのような野菜も入っている…私の居た世界で出されても、特におかしくはない。
「…お味はいかが? 」
「…美味しいです…とても…」
「…ありがとう…」
「…この酒も…飲んでみてくれないか? 」
ご主人がそう言ってグラスを右手で持ったので、私達も右手で持った。
「…今日の出会いに…」
「…今日の出会いに…」
「…ランドカスケレス…」
「…ランドカスケレス…」
初めて聴く固有の動詞だったので、コミュニケーターも『乾杯』とは訳せなかったのだが、聴いた通りの発音で復唱した。
結構高いアルコール度数の蒸留酒だ…色と風味は…ウィスキーに近い…原料は、麦か。
「…どうだね? 」
「…これも美味しいです…ですが私は…このような強い酒に…あまり慣れていないので…美味しいと感じて飲めるのは…2杯です
「…僕なら…1杯です…」
「…ありがとう…それぞれの程度で…楽しんで下さい…」
次に運ばれて来た料理は、4種類くらいの温野菜料理に…炒めたのか焼いたのか判らない肉を併せた料理だ…量が少ないから前菜なのだろう。
肉は豚肉なのか鶏肉なのか判らない…が、美味い。
私はスープだかシチューだかをお替わりして…その前菜と一緒に、時間を掛けて食べ終えた。
その後は、食後酒のような甘い酒が1杯に…コーヒーのような飲み物が1杯と…ショート・ケーキのようなお菓子がひとつ配された。
どれもそれなりに美味い…さっきまで居た世界で出されても、何も不思議にもおかしくも思わない。
全く違う世界だが…似通っている物や事象もある…時空連続体とか…次元間としても…それ程に離れている訳ではないのかも知れない。
その後は…広い浴室に案内された。
たっぷりと湯が張られたバス。
充分に浸かって温まり、身体もよく洗って髭も剃った。
提供された下着に慣れる迄には、何日か掛かるだろう。
貴重な持ち物は、直ぐに手の届く所に置いて隠す。
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