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異世界探訪
騎士『ゼンシ』…『魔物』と呼ばれる生命体と戦う
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私が元居た世界に於いても、これ程に深く充実した、充足をもたらす睡眠は…あまり経験がない。
トライ・コーダーを手に取って見ると、ベッドに入ってから9時間30分が経過している。
この惑星世界に於ける1日が何時間なのか、まだ判らない…だが間違いなく、朝ではあるようだな。
この寝室については案内された時に説明されていたので、隣の小さな浴室を使わせてもらう。
小さな浴槽だが、もう湯がなみなみと張られている…メイドの女性達が3人くらいで張ったのだろう…私が元居た世界では、既にこうした労働者の階級階層構造はない…やはりこの惑星世界の社会構造は、私から観れば前時代のものだ。
湯を汲み上げて身体を洗う…その後は浴槽に浸かって充分に温まる。
置いてあるタオルで水分を拭き取り、服を着直す…持ち物も総て確認して、身に着け直した。
グラスを取って水差しから水を注ぎ、飲み干した頃合いでドアがノックされた。
「…失礼します。シエン様…おはようございます…朝食の用意が整っております…宜しければ、ご案内致しますが…如何でしょうか? 」
「…分かりました。ありがとうございます…今、出ます…」
監視されているような気がしないでもないのだが、従って出る。
後に続いて案内されながら言ってみる。
「…お湯を入れて下さって、ありがとうございました…」
「…お礼には及びません…仕事ですので…」
「…お手伝いの皆さんは…何人、いらっしゃるのですか? 」
「…8人です…」
「…なるほど…分かりました…」
コミュニケーターとトライ・コーダーによる音声データの蓄積と翻訳機能…それに『百話法』による言語修得とも相まって、会話はかなり出来るようになってきた。
そしてもうひとつ判ったのは、想像を超えてこの家には、大きい資産があると言う事だ。
昨夜、夕食を頂いたダイニング・ルームに通される…リエン君は既にテーブルに着いていて、お茶を飲んでいた。
「…おはよう…ミスタ・リエン…」
「…おはようございます…シエンさん…だいぶ、会話が出来るようになってきましたね…」
「…ありがとう…『百話法』と言う…知らない言語でも…短期間で習得できる…技術のおかげです…しかし、できるようになるのは会話だけで…文字や文章は解りません…」
「…話せるだけでも大したものですし、今はそれでも充分ですよ…ああ、すみません…お座り下さい…お茶が入ります…」
「…ありがとう…」
テーブルに着くとメイドの女性が、ソーサーに乗せたティーカップを置いてくれる…昨日も頂いたハーブ・ティーのように観えたが…色合い・香り・味わいも、少し違う…ブレンドを変えたらしい。
ふた口飲んだところでオバクご夫妻が入室したので、立ち上がる。
「…おはようございます…ミスタ・オバク…ミセス・オバク…」
「…おはようございます…シエン・ジン・グンさん…私のことは、ガマラスと呼んで下さい…」
「…おはようございます、シエンさん…私のことは、リーゼとね? 」
「…分かりました。では、私のことはシエンとお呼び下さい…」
「…僕のことは、リエンでお願いしますね、シエンさん…」
「…分かりました…」
お茶を飲み終わると、朝食が配された。
卵2個のターン・オーバー…ボイルされたポテト・にんじん・葉物野菜・ハム2枚にソーセージ2本…ブレッドにミルクにポタージュ・スープ…ほぼ完璧な朝食だ。
大変に美味しく頂いた…昨夜の夕食に深く安定した睡眠に、この朝食だ。
みるみる身体に力がみなぎるのを感じる…オバクご夫妻には私達2人に、やって欲しい仕事があるのだろう。
暫く休んでから、リエンが立ち上がった。
「…それじゃ、シエンさん…仕事に行きましょう…」
「…分かった…」
改めて、身なりと身に着けている物を確認してから…2人で玄関に行き、靴を履いてドアを開けた。
閉めたドアの直ぐ外でメイドの女性達4人の見送りを受ける。
会釈して歩き出すと、門扉の手前ではオバクご夫妻が待っていた。
歩み寄って握手を交わす。
「…気を付けて…」
「…無理はしないでね…」
「…ありがとうございます…」
「…早めに帰ります…」
門扉を開けて外に出る。
リエン君と並んで歩き出す。
少しして振り返ると、ミスタ・オバクが葉巻を咥えて火を点けていた。
「…街から出て森に入り…魔物を処理するんだね? 」
「…そう…最初だから…数体で良いでしょう? 」
「…別に何体でも良いがね…街の人々は…魔物による被害を結構…受けているんだね? 」
「…街の人々だけじゃないです…旅の乗り合い馬車とか…商隊もね…」
「…街には魔物に対抗できる…戦う集団のようなものは…無いのかね? 」
「…騎士団がいるけど…魔物どもの方が…圧倒的に数が多いんですよ…」
「…私が感知したところでは…魔物にそれ程の知性は無い…戦い方を工夫すれば、少ない人数でも…充分に戦えると思うがね…」
「…知性を持つ魔物ってのもいるんですよ…僕達は『魔族』と言ってるんですがね…大きい戦いになれば『魔族』が魔物どもを従えて襲って来ます…騎士団だけで対抗するのは、厳しいですね…」
「…この状況を放置すれば…いずれ『魔族』が魔物どもを従えて、この街に迫るだろう…だからオバクさんは君を勧誘して…私も勧誘しようとしているのかな? 」
「…平たく言えば、そうですね…それに、これをやっているのはオバクさんだけじゃないですよ…」
「…なるほどな…」
その後はあまり話さずに歩いて行き、やがて城市の門が観えて来た。
街の大通りは昨日と同様で人通りは多く賑やかだ。
背後から子供が走って来るような気配は無い。
リエン君が小さい出店に立ち寄って、何かをふたつ買った。
「…シエンさん、今日の昼食です…持ってて下さい…水はありますか? 」
「…ありがとう…水は持っているから、大丈夫だよ…今日の仕事は夕方まで掛かるのかい? 」
「…太陽が傾きかけたら、戻ろうとは思っていますけどね…時間的な事で、何か要望はありますか? 」
「…特にはないよ…ありがとう…」
携行する簡易食ならパルギがあるから、特に貰わなくても大丈夫なのだが…ケープのポケットに入れた。
「…外に出ますよ…」
「…分かった…」
私達は5歩程度離れて並んで歩き、門を潜って城市の外に出た…このまま一本道を行けば、森の中に入る。
後300歩歩けば森に入ると言う辺りで、リエン君に訊いた。
「…私の戦うスタイルは、主に至近距離から近距離なんだが…君はどうなのかな? 」
「…そんなに違わないと思いますけど…至近距離は苦手かな…」
「…分かった…」
どうやら脚の速さでは、私の方が上のようだ。
様子のおかしい鳥が2羽…頭上を飛び回っている。
「…上を飛び回っている鳥だけど…妙な気配だな? 」
「…流石ですね、シエンさん…あれは『魔鳥』です…つまり…僕達2人の事が、魔物どもに知られました…」
「…『魔族』にも…だろ? 」
「…ええ…でも僕らふたりだけなんで…今日は出て来ないでしょう…」
「…なるほどね…」
「…入りますよ…」
「…ああ…」
応えてから、セイバーの1本を左手で持った。
森に入って80歩の辺り…かなりの高速で近付く足音がふたつ…四足歩行と二足歩行だ…強い悪意と補食衝動が詠み取れるから、魔物だな…もう直ぐ目の前に出て来る。
「…どっちをやります? 」
「…四つ脚の方が速いから、そっちだな…残りは頼む…」
「…はい…」
会話しながらリエンの前に出て…セイバーを右手に持ち換え、起動する。
オレンジ色のライト・ソードが私の身長ほどに伸びたのを観て、リエンが驚きながら興味津々に関心を寄せたのが詠める。
直後、繁みから四つ脚の魔物が跳び出す…加速跳躍で右手に跳びながら、ソードで四つ脚を両断した。
同時に跳び退ってリエンを前に出す。
彼の頭上の『歪み』から、ひとつが分かれ出て前に出た…そこで唐突に気付く。
(…亜空間ポータルか…)
そこで、二足歩行の小柄な魔物が跳び出して、リエンに跳び掛かる。
だが、その次の瞬間に観た光景には驚かされた。
「…リエン・セン・シンに従い、出でよ! 風牙!! 」
小規模ながら音速の壁を突破するような衝撃音が響いて、そちらに気を取られていたから魔物を見るのが遅れた。
観ると、もう魔物は倒れていて…身体の中央には、何かにブチ抜かれたような大穴が開いている。
「…君は魔物を武器として使うのか? 」
「…いや…魔物よりも程度の低い…『獣魔』って奴です…この技術は『獣操魔術』と言います…」
リエンが言った最後の固有名詞を、まだコミュニケーターは正しく翻訳しなかった。
セイバーのパワーを切ってケープの裏に吊り下げる。
「…直ぐに次が来ますよ、シエンさん…どうやら本当に…全く別の世界から来たんですね…それも…遥かに技術の進んだ世界だ…」
「…さっき言った『獣魔』と言うものを君は…16匹も使役しているのか? 」
「…その通りですよ、シエンさん…本当に…流石ですね…貴方がさっき使ったあの武器…僕にも使えますか? 」
「…残念ながらそれは不可能だな…セイバーの起動には…私の生体データが必要だ…」
「…なるほど…」
またふたりで森の中を歩き出す…まだもっと魔物を斃す必要もあるのだが…魔物そのものが発するこの凄まじい臭みにも閉口したのだ。
「…魔物ってのは、こんなにも臭いのか? それに…魔物は共喰いもするのか? 」
「…両方とも、その通りです…近くに隠れて待っても…奴らはここに集まって来ますが、どうしますか? 」
「…いや…歩いて行こう…何にしても、この臭さは堪らん…」
「…分かりました…」
そのまま道なき森の中をふたりで200歩ぐらい歩く。
斃した魔物の屍骸からは離れているのに臭いが強まってきたから止まった。
「…来るのか? 」
「…来ますね…デカい奴です…シエンさん、左手から来る奴はお願いします…僕は右手から来る奴をやります…」
「…分かった…」
そう応えてまたセイバーを、今度は右手で持った。
15拍くらいで、それは姿を現した。
直立二足歩行で身長は普通の大人の3倍弱…凄まじく筋肉質で、鋭い角を生やした獰猛な顔…毛むくじゃらの外観と、ツルツルした無毛の外観の魔物が2体ずつ…それぞれペアで左右から現れた。
今回はリエンが先に動いた。
「…リエン・セン・シンに従い、出でよ! 風牙!! 」
「…続けて、リエン・セン・シンに従い、出でよ! 焔牙!! 」
最初より出力を上げたようで、衝撃音も大きかった。
魔物の身体をブチ抜いて空いた穴も、さっきよりずっと大きかった。
3回目の攻撃では、リエンの手から焔の棒が横に伸びて魔物の身体を貫き、そのまま巻き付かせて燃やした。
デカい魔物を2体…それぞれ一撃で斃したのは凄い…感心してる場合じゃない。
セイバーを起動して加速縮地走で跳び出す…デカいから動きは鈍い…2体の間を跳び廻りながら、片脚と片腕をそれぞれに斬り跳ばし…バランスを崩して倒れる前に、頸を刎ねた。
パワーを切って、また仕舞う。
「…お見事です…それに焼き斬っているから出血も無いんで…そんなに臭くないですね…」
「…どうも…これより大きい魔物はいるかね? 」
「…居るには居ますが、数は少ないですね…シエンさんの剣の刃は、毀れないんですか? 」
「…金属質じゃないからね…無限のパワーって訳でもないが……リエン…これなら1度に10体出て来ても勝てるだろう…もっと奥まで歩いて行くか? 」
「…シエンさん…森の奥をあんまり甘く観ない方が良いですよ…近くに隠れて待ち受けましょう…」
「…分かった…」
トライ・コーダーを手に取って見ると、ベッドに入ってから9時間30分が経過している。
この惑星世界に於ける1日が何時間なのか、まだ判らない…だが間違いなく、朝ではあるようだな。
この寝室については案内された時に説明されていたので、隣の小さな浴室を使わせてもらう。
小さな浴槽だが、もう湯がなみなみと張られている…メイドの女性達が3人くらいで張ったのだろう…私が元居た世界では、既にこうした労働者の階級階層構造はない…やはりこの惑星世界の社会構造は、私から観れば前時代のものだ。
湯を汲み上げて身体を洗う…その後は浴槽に浸かって充分に温まる。
置いてあるタオルで水分を拭き取り、服を着直す…持ち物も総て確認して、身に着け直した。
グラスを取って水差しから水を注ぎ、飲み干した頃合いでドアがノックされた。
「…失礼します。シエン様…おはようございます…朝食の用意が整っております…宜しければ、ご案内致しますが…如何でしょうか? 」
「…分かりました。ありがとうございます…今、出ます…」
監視されているような気がしないでもないのだが、従って出る。
後に続いて案内されながら言ってみる。
「…お湯を入れて下さって、ありがとうございました…」
「…お礼には及びません…仕事ですので…」
「…お手伝いの皆さんは…何人、いらっしゃるのですか? 」
「…8人です…」
「…なるほど…分かりました…」
コミュニケーターとトライ・コーダーによる音声データの蓄積と翻訳機能…それに『百話法』による言語修得とも相まって、会話はかなり出来るようになってきた。
そしてもうひとつ判ったのは、想像を超えてこの家には、大きい資産があると言う事だ。
昨夜、夕食を頂いたダイニング・ルームに通される…リエン君は既にテーブルに着いていて、お茶を飲んでいた。
「…おはよう…ミスタ・リエン…」
「…おはようございます…シエンさん…だいぶ、会話が出来るようになってきましたね…」
「…ありがとう…『百話法』と言う…知らない言語でも…短期間で習得できる…技術のおかげです…しかし、できるようになるのは会話だけで…文字や文章は解りません…」
「…話せるだけでも大したものですし、今はそれでも充分ですよ…ああ、すみません…お座り下さい…お茶が入ります…」
「…ありがとう…」
テーブルに着くとメイドの女性が、ソーサーに乗せたティーカップを置いてくれる…昨日も頂いたハーブ・ティーのように観えたが…色合い・香り・味わいも、少し違う…ブレンドを変えたらしい。
ふた口飲んだところでオバクご夫妻が入室したので、立ち上がる。
「…おはようございます…ミスタ・オバク…ミセス・オバク…」
「…おはようございます…シエン・ジン・グンさん…私のことは、ガマラスと呼んで下さい…」
「…おはようございます、シエンさん…私のことは、リーゼとね? 」
「…分かりました。では、私のことはシエンとお呼び下さい…」
「…僕のことは、リエンでお願いしますね、シエンさん…」
「…分かりました…」
お茶を飲み終わると、朝食が配された。
卵2個のターン・オーバー…ボイルされたポテト・にんじん・葉物野菜・ハム2枚にソーセージ2本…ブレッドにミルクにポタージュ・スープ…ほぼ完璧な朝食だ。
大変に美味しく頂いた…昨夜の夕食に深く安定した睡眠に、この朝食だ。
みるみる身体に力がみなぎるのを感じる…オバクご夫妻には私達2人に、やって欲しい仕事があるのだろう。
暫く休んでから、リエンが立ち上がった。
「…それじゃ、シエンさん…仕事に行きましょう…」
「…分かった…」
改めて、身なりと身に着けている物を確認してから…2人で玄関に行き、靴を履いてドアを開けた。
閉めたドアの直ぐ外でメイドの女性達4人の見送りを受ける。
会釈して歩き出すと、門扉の手前ではオバクご夫妻が待っていた。
歩み寄って握手を交わす。
「…気を付けて…」
「…無理はしないでね…」
「…ありがとうございます…」
「…早めに帰ります…」
門扉を開けて外に出る。
リエン君と並んで歩き出す。
少しして振り返ると、ミスタ・オバクが葉巻を咥えて火を点けていた。
「…街から出て森に入り…魔物を処理するんだね? 」
「…そう…最初だから…数体で良いでしょう? 」
「…別に何体でも良いがね…街の人々は…魔物による被害を結構…受けているんだね? 」
「…街の人々だけじゃないです…旅の乗り合い馬車とか…商隊もね…」
「…街には魔物に対抗できる…戦う集団のようなものは…無いのかね? 」
「…騎士団がいるけど…魔物どもの方が…圧倒的に数が多いんですよ…」
「…私が感知したところでは…魔物にそれ程の知性は無い…戦い方を工夫すれば、少ない人数でも…充分に戦えると思うがね…」
「…知性を持つ魔物ってのもいるんですよ…僕達は『魔族』と言ってるんですがね…大きい戦いになれば『魔族』が魔物どもを従えて襲って来ます…騎士団だけで対抗するのは、厳しいですね…」
「…この状況を放置すれば…いずれ『魔族』が魔物どもを従えて、この街に迫るだろう…だからオバクさんは君を勧誘して…私も勧誘しようとしているのかな? 」
「…平たく言えば、そうですね…それに、これをやっているのはオバクさんだけじゃないですよ…」
「…なるほどな…」
その後はあまり話さずに歩いて行き、やがて城市の門が観えて来た。
街の大通りは昨日と同様で人通りは多く賑やかだ。
背後から子供が走って来るような気配は無い。
リエン君が小さい出店に立ち寄って、何かをふたつ買った。
「…シエンさん、今日の昼食です…持ってて下さい…水はありますか? 」
「…ありがとう…水は持っているから、大丈夫だよ…今日の仕事は夕方まで掛かるのかい? 」
「…太陽が傾きかけたら、戻ろうとは思っていますけどね…時間的な事で、何か要望はありますか? 」
「…特にはないよ…ありがとう…」
携行する簡易食ならパルギがあるから、特に貰わなくても大丈夫なのだが…ケープのポケットに入れた。
「…外に出ますよ…」
「…分かった…」
私達は5歩程度離れて並んで歩き、門を潜って城市の外に出た…このまま一本道を行けば、森の中に入る。
後300歩歩けば森に入ると言う辺りで、リエン君に訊いた。
「…私の戦うスタイルは、主に至近距離から近距離なんだが…君はどうなのかな? 」
「…そんなに違わないと思いますけど…至近距離は苦手かな…」
「…分かった…」
どうやら脚の速さでは、私の方が上のようだ。
様子のおかしい鳥が2羽…頭上を飛び回っている。
「…上を飛び回っている鳥だけど…妙な気配だな? 」
「…流石ですね、シエンさん…あれは『魔鳥』です…つまり…僕達2人の事が、魔物どもに知られました…」
「…『魔族』にも…だろ? 」
「…ええ…でも僕らふたりだけなんで…今日は出て来ないでしょう…」
「…なるほどね…」
「…入りますよ…」
「…ああ…」
応えてから、セイバーの1本を左手で持った。
森に入って80歩の辺り…かなりの高速で近付く足音がふたつ…四足歩行と二足歩行だ…強い悪意と補食衝動が詠み取れるから、魔物だな…もう直ぐ目の前に出て来る。
「…どっちをやります? 」
「…四つ脚の方が速いから、そっちだな…残りは頼む…」
「…はい…」
会話しながらリエンの前に出て…セイバーを右手に持ち換え、起動する。
オレンジ色のライト・ソードが私の身長ほどに伸びたのを観て、リエンが驚きながら興味津々に関心を寄せたのが詠める。
直後、繁みから四つ脚の魔物が跳び出す…加速跳躍で右手に跳びながら、ソードで四つ脚を両断した。
同時に跳び退ってリエンを前に出す。
彼の頭上の『歪み』から、ひとつが分かれ出て前に出た…そこで唐突に気付く。
(…亜空間ポータルか…)
そこで、二足歩行の小柄な魔物が跳び出して、リエンに跳び掛かる。
だが、その次の瞬間に観た光景には驚かされた。
「…リエン・セン・シンに従い、出でよ! 風牙!! 」
小規模ながら音速の壁を突破するような衝撃音が響いて、そちらに気を取られていたから魔物を見るのが遅れた。
観ると、もう魔物は倒れていて…身体の中央には、何かにブチ抜かれたような大穴が開いている。
「…君は魔物を武器として使うのか? 」
「…いや…魔物よりも程度の低い…『獣魔』って奴です…この技術は『獣操魔術』と言います…」
リエンが言った最後の固有名詞を、まだコミュニケーターは正しく翻訳しなかった。
セイバーのパワーを切ってケープの裏に吊り下げる。
「…直ぐに次が来ますよ、シエンさん…どうやら本当に…全く別の世界から来たんですね…それも…遥かに技術の進んだ世界だ…」
「…さっき言った『獣魔』と言うものを君は…16匹も使役しているのか? 」
「…その通りですよ、シエンさん…本当に…流石ですね…貴方がさっき使ったあの武器…僕にも使えますか? 」
「…残念ながらそれは不可能だな…セイバーの起動には…私の生体データが必要だ…」
「…なるほど…」
またふたりで森の中を歩き出す…まだもっと魔物を斃す必要もあるのだが…魔物そのものが発するこの凄まじい臭みにも閉口したのだ。
「…魔物ってのは、こんなにも臭いのか? それに…魔物は共喰いもするのか? 」
「…両方とも、その通りです…近くに隠れて待っても…奴らはここに集まって来ますが、どうしますか? 」
「…いや…歩いて行こう…何にしても、この臭さは堪らん…」
「…分かりました…」
そのまま道なき森の中をふたりで200歩ぐらい歩く。
斃した魔物の屍骸からは離れているのに臭いが強まってきたから止まった。
「…来るのか? 」
「…来ますね…デカい奴です…シエンさん、左手から来る奴はお願いします…僕は右手から来る奴をやります…」
「…分かった…」
そう応えてまたセイバーを、今度は右手で持った。
15拍くらいで、それは姿を現した。
直立二足歩行で身長は普通の大人の3倍弱…凄まじく筋肉質で、鋭い角を生やした獰猛な顔…毛むくじゃらの外観と、ツルツルした無毛の外観の魔物が2体ずつ…それぞれペアで左右から現れた。
今回はリエンが先に動いた。
「…リエン・セン・シンに従い、出でよ! 風牙!! 」
「…続けて、リエン・セン・シンに従い、出でよ! 焔牙!! 」
最初より出力を上げたようで、衝撃音も大きかった。
魔物の身体をブチ抜いて空いた穴も、さっきよりずっと大きかった。
3回目の攻撃では、リエンの手から焔の棒が横に伸びて魔物の身体を貫き、そのまま巻き付かせて燃やした。
デカい魔物を2体…それぞれ一撃で斃したのは凄い…感心してる場合じゃない。
セイバーを起動して加速縮地走で跳び出す…デカいから動きは鈍い…2体の間を跳び廻りながら、片脚と片腕をそれぞれに斬り跳ばし…バランスを崩して倒れる前に、頸を刎ねた。
パワーを切って、また仕舞う。
「…お見事です…それに焼き斬っているから出血も無いんで…そんなに臭くないですね…」
「…どうも…これより大きい魔物はいるかね? 」
「…居るには居ますが、数は少ないですね…シエンさんの剣の刃は、毀れないんですか? 」
「…金属質じゃないからね…無限のパワーって訳でもないが……リエン…これなら1度に10体出て来ても勝てるだろう…もっと奥まで歩いて行くか? 」
「…シエンさん…森の奥をあんまり甘く観ない方が良いですよ…近くに隠れて待ち受けましょう…」
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