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ファースト・トライアルミッション
軽巡宙艦『ハンナ・アーレント』
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……軽巡宙艦『ハンナ・アーレント』……
「……向こうもダウンロードできてないな……」
「……おそらく……! ハリエット艦長…敵艦のパワーサインを感知……インターセプトではありませんが接近中……方位982マーク138……ファーストスピードの80%……」
「……予測針路も含めて3D表示に重ねてくれ、へレーネ……ふん…まだ消えないからデコイだな……ユリアーネ……このコースをデコイ・アルファに入力して発進だ……」
そう言ってハリエット・エイクランド艦長は、手許まで引き寄せていた複製3Dチャートに、右手の人差し指でなぞってコースを入力した。
「…分かりました……入力完了…デコイ・アルファ…起動・発進……」
そう応えながらメイン・ミサイル・コントローラーのユリアーネ・ラントルートが、七色に彩られたネイルの指を制御パネル上で走らせて操作した。
「……まだ距離がある……ライアン……補助エンジン始動……微速0.6で発進……コース172マーク629…10秒後から、面舵5 ° で切り続けてくれ……」
「……了解……」
メインパイロットのライアン・クロスが背筋を伸ばして前を向き、操舵パネル上で指を走らせる。
「……キャシー…全乗員に向けて発信……」
「……はい…」
キャスリーン・ケイツ副長が応えて、手許のパネルを操作する。
「……艦長から総員に達する……今対峙している敵艦は、これまでで最も手強い艦だ……これはかつてない激闘になるだろう……特にかつてなく竣敏な反応と、瞬発力の強い発動が要求される……フルパワーでシールドアップしていても、対艦ミサイル4基の直撃で沈む……隙を突かれれば、勝負は一瞬で決まるだろう……頭に入れてくれ……以上…」
……『ディファイアント』……
「……アドル艦長……敵艦のパワーサインを感知……方位041マーク284~614にかけて変針しながら接近中……」
「……デコイに対してデコイで応えるのか……手強いな……カリーナ…敵艦をキャッチできないか? 微速…低出力で動いている筈だが……」
「……感知、ありません……」
「…まだ遠いか……この艦長…先手を取るタイプか……受けて返すタイプか……どっちだろうな……先制攻撃をまともに喰ったら、それで終わるからな……支え釣り込み脚でも仕掛けてみるか……」
……『ハンナ・アーレント』……
「……この相手の場合…こっちが先手を取るのはマズいな……返す刀で真っ二つにされそうだ……なら…ギリギリまで近寄るしかないんだろうが……それは向こうも考えているだろう……」
「……近寄ってから、戦場宙域のプロデュース・コーディネートに掛かりますか? 」
キャスリーン・ケイツ副長が振り向いて訊く。
「……そうだな……あまり時間的には許してくれないと思うが……やれる範囲でやろうか……」
……『ディファイアント』……
「…シエナ……ある程度近寄ってから、仕掛け作業に掛かろうか? 」
「……ええ…でも、それ程に時間は貰えないでしょう……」
「……ああ…そう思うな……それに近寄ってから……真っ直ぐに動くのはマズい……この戦いでは、スタッフに負担が掛かる……頭と身体と心も解しておいてくれ……難しいとは思うけどな……」
「……分かりました……」
「……先手が悪手ってのは、間違いないと思うが……3手先、5手先で最善手が指せれば……逆転も充分に可能だな……」
……『ハンナ・アーレント』……
「……ユリアーネ……対艦ミサイルの信管セットを、今から言うようにしてくれ……1番・2番・9番・10番を、パワーサイン近距離感応セット……3番・4番・11番・12番を、磁気反応近距離感知セット……5番・6番・13番・14番を、近接起爆セット……あとは接触起爆セットだ……」
「……分かりました……始めます……」
……『ディファイアント』……
「……アリシア…もうすぐ敵艦はデコイを起爆させる……爆発したら、こっちのデコイも起爆だ……そしてセカンド・デコイを起動・発進…方位は127マーク461…ファースト・スピードだ……エマ…敵艦はデコイを起爆して30秒くらい走る筈だ……こちらも同じタイミングで、方位237マーク194に向けて30秒走ってエンジン停止……これで距離を詰める……」
「…了解…」
「…分かりました…」
「……そうしたら、セカンド・デコイとビーコン・アルファとビーコン・ベータの3基から…2秒の時間差でアクティブ・センサースキャンを発振……カリーナ…敵艦もジェルを展開しているだろうが、僅かな揺らぎがある筈だ……それを見付けてくれ……」
「……分かりました…」
……『ハンナ・アーレント』……
「……対艦ミサイルの信管セットを完了しました……」
「……よし…デコイ・アルファ…起爆15秒前…起爆と同時にデコイ・ベータとこちらも発進…コースは同じで、こちらは30秒走ってエンジン停止……続けてデコイ・ベータと放出ビーコン5基の内の2基で、2秒の時間差を置いてアクティブ・センサースキャン……へレーネ…敵艦もアンチ・センサー・ジェルを展開させていると思うが、この時間差スキャンでなら僅かな揺らぎが表示される筈だ……それを見付けてくれ……」
「……分かりました……」
そう応えてメイン・センサー・オペレーターのへレーネ・トラントフは、トップ・オペレーター・シートの上で、背筋を伸ばして座り直した。
「…5…4…3…2…用意…爆破! 」
「…補助エンジン始動…発進…」
「…デコイ・ベータ、発進…」
……『ディファイアント』……
「…敵のデコイ起爆! 」
「…こちらも起爆してセカンド発進…エンジン始動、ファースト・スピードで30秒走ってエンジン停止! 」
「…両デコイ起爆ポイントの相対距離は? 」
「…第5戦闘距離の3.2倍です! 」
「……だいぶ近寄って来たな……これから殴り合いが始まるぞ! ……カリーナ…向こうもセンサースキャンを掛けてくる! スキャン搬送波が干渉し合って見難くなるから注意してくれ! 」
「…分かりました! 」
……『ハンナ・アーレント』……
「……第5戦闘距離の4倍迄には、離れてないって訳だな……コーディネートを始めるなら…第3戦闘距離だろうがね……」
「……26…27…28…エンジン…停止……」
「…よし…2秒差で3点アクティブ・スキャン…開始! 」
「…了解! 開始! え?! あ?! 別のポイントから、同時にアクティブ・スキャンが発振! 」
……『ディファイアント』……
「…アクティブ・スキャンの同時発振感知! 」
「…揺らぎは? 」
「…待って下さい………発見! 揺らぎと別の発振ポイントは同一です! 」
「…ロックしろ! セカンド・デコイ起爆! 同時にサード・デコイ発進! エンジン始動! 全速発進! ロックポイントに向けてインターセプトコース! 30秒でエンジン停止! ちょっと待てよ……エマ! 今俺がマークした岩塊の右側面に右舷のロケット・アンカー2本、エンジン停止したら撃ち込め! 到達したら全力収納! 」
「…了解! 」
……『ハンナ・アーレント』……
「…揺らぎと別の発振ポイントは同一です! ! 敵の2基目のデコイが起爆! 」
「…相対距離は?! 」
「…第5戦闘距離の3.2倍! 」
「……デコイ・ベータ起爆! デコイ・シータ発進! エンジン始動! 全速発進! 直線で真っ直ぐに行け! 30秒でエンジン停止! 今は距離を詰めるんだ! あの敵艦に対して対艦ミサイルが有効になるのは、第1戦闘ラインの内側だ! 」
両艦とも、30秒でエンジン停止した。
「……向こうもダウンロードできてないな……」
「……おそらく……! ハリエット艦長…敵艦のパワーサインを感知……インターセプトではありませんが接近中……方位982マーク138……ファーストスピードの80%……」
「……予測針路も含めて3D表示に重ねてくれ、へレーネ……ふん…まだ消えないからデコイだな……ユリアーネ……このコースをデコイ・アルファに入力して発進だ……」
そう言ってハリエット・エイクランド艦長は、手許まで引き寄せていた複製3Dチャートに、右手の人差し指でなぞってコースを入力した。
「…分かりました……入力完了…デコイ・アルファ…起動・発進……」
そう応えながらメイン・ミサイル・コントローラーのユリアーネ・ラントルートが、七色に彩られたネイルの指を制御パネル上で走らせて操作した。
「……まだ距離がある……ライアン……補助エンジン始動……微速0.6で発進……コース172マーク629…10秒後から、面舵5 ° で切り続けてくれ……」
「……了解……」
メインパイロットのライアン・クロスが背筋を伸ばして前を向き、操舵パネル上で指を走らせる。
「……キャシー…全乗員に向けて発信……」
「……はい…」
キャスリーン・ケイツ副長が応えて、手許のパネルを操作する。
「……艦長から総員に達する……今対峙している敵艦は、これまでで最も手強い艦だ……これはかつてない激闘になるだろう……特にかつてなく竣敏な反応と、瞬発力の強い発動が要求される……フルパワーでシールドアップしていても、対艦ミサイル4基の直撃で沈む……隙を突かれれば、勝負は一瞬で決まるだろう……頭に入れてくれ……以上…」
……『ディファイアント』……
「……アドル艦長……敵艦のパワーサインを感知……方位041マーク284~614にかけて変針しながら接近中……」
「……デコイに対してデコイで応えるのか……手強いな……カリーナ…敵艦をキャッチできないか? 微速…低出力で動いている筈だが……」
「……感知、ありません……」
「…まだ遠いか……この艦長…先手を取るタイプか……受けて返すタイプか……どっちだろうな……先制攻撃をまともに喰ったら、それで終わるからな……支え釣り込み脚でも仕掛けてみるか……」
……『ハンナ・アーレント』……
「……この相手の場合…こっちが先手を取るのはマズいな……返す刀で真っ二つにされそうだ……なら…ギリギリまで近寄るしかないんだろうが……それは向こうも考えているだろう……」
「……近寄ってから、戦場宙域のプロデュース・コーディネートに掛かりますか? 」
キャスリーン・ケイツ副長が振り向いて訊く。
「……そうだな……あまり時間的には許してくれないと思うが……やれる範囲でやろうか……」
……『ディファイアント』……
「…シエナ……ある程度近寄ってから、仕掛け作業に掛かろうか? 」
「……ええ…でも、それ程に時間は貰えないでしょう……」
「……ああ…そう思うな……それに近寄ってから……真っ直ぐに動くのはマズい……この戦いでは、スタッフに負担が掛かる……頭と身体と心も解しておいてくれ……難しいとは思うけどな……」
「……分かりました……」
「……先手が悪手ってのは、間違いないと思うが……3手先、5手先で最善手が指せれば……逆転も充分に可能だな……」
……『ハンナ・アーレント』……
「……ユリアーネ……対艦ミサイルの信管セットを、今から言うようにしてくれ……1番・2番・9番・10番を、パワーサイン近距離感応セット……3番・4番・11番・12番を、磁気反応近距離感知セット……5番・6番・13番・14番を、近接起爆セット……あとは接触起爆セットだ……」
「……分かりました……始めます……」
……『ディファイアント』……
「……アリシア…もうすぐ敵艦はデコイを起爆させる……爆発したら、こっちのデコイも起爆だ……そしてセカンド・デコイを起動・発進…方位は127マーク461…ファースト・スピードだ……エマ…敵艦はデコイを起爆して30秒くらい走る筈だ……こちらも同じタイミングで、方位237マーク194に向けて30秒走ってエンジン停止……これで距離を詰める……」
「…了解…」
「…分かりました…」
「……そうしたら、セカンド・デコイとビーコン・アルファとビーコン・ベータの3基から…2秒の時間差でアクティブ・センサースキャンを発振……カリーナ…敵艦もジェルを展開しているだろうが、僅かな揺らぎがある筈だ……それを見付けてくれ……」
「……分かりました…」
……『ハンナ・アーレント』……
「……対艦ミサイルの信管セットを完了しました……」
「……よし…デコイ・アルファ…起爆15秒前…起爆と同時にデコイ・ベータとこちらも発進…コースは同じで、こちらは30秒走ってエンジン停止……続けてデコイ・ベータと放出ビーコン5基の内の2基で、2秒の時間差を置いてアクティブ・センサースキャン……へレーネ…敵艦もアンチ・センサー・ジェルを展開させていると思うが、この時間差スキャンでなら僅かな揺らぎが表示される筈だ……それを見付けてくれ……」
「……分かりました……」
そう応えてメイン・センサー・オペレーターのへレーネ・トラントフは、トップ・オペレーター・シートの上で、背筋を伸ばして座り直した。
「…5…4…3…2…用意…爆破! 」
「…補助エンジン始動…発進…」
「…デコイ・ベータ、発進…」
……『ディファイアント』……
「…敵のデコイ起爆! 」
「…こちらも起爆してセカンド発進…エンジン始動、ファースト・スピードで30秒走ってエンジン停止! 」
「…両デコイ起爆ポイントの相対距離は? 」
「…第5戦闘距離の3.2倍です! 」
「……だいぶ近寄って来たな……これから殴り合いが始まるぞ! ……カリーナ…向こうもセンサースキャンを掛けてくる! スキャン搬送波が干渉し合って見難くなるから注意してくれ! 」
「…分かりました! 」
……『ハンナ・アーレント』……
「……第5戦闘距離の4倍迄には、離れてないって訳だな……コーディネートを始めるなら…第3戦闘距離だろうがね……」
「……26…27…28…エンジン…停止……」
「…よし…2秒差で3点アクティブ・スキャン…開始! 」
「…了解! 開始! え?! あ?! 別のポイントから、同時にアクティブ・スキャンが発振! 」
……『ディファイアント』……
「…アクティブ・スキャンの同時発振感知! 」
「…揺らぎは? 」
「…待って下さい………発見! 揺らぎと別の発振ポイントは同一です! 」
「…ロックしろ! セカンド・デコイ起爆! 同時にサード・デコイ発進! エンジン始動! 全速発進! ロックポイントに向けてインターセプトコース! 30秒でエンジン停止! ちょっと待てよ……エマ! 今俺がマークした岩塊の右側面に右舷のロケット・アンカー2本、エンジン停止したら撃ち込め! 到達したら全力収納! 」
「…了解! 」
……『ハンナ・アーレント』……
「…揺らぎと別の発振ポイントは同一です! ! 敵の2基目のデコイが起爆! 」
「…相対距離は?! 」
「…第5戦闘距離の3.2倍! 」
「……デコイ・ベータ起爆! デコイ・シータ発進! エンジン始動! 全速発進! 直線で真っ直ぐに行け! 30秒でエンジン停止! 今は距離を詰めるんだ! あの敵艦に対して対艦ミサイルが有効になるのは、第1戦闘ラインの内側だ! 」
両艦とも、30秒でエンジン停止した。
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