『星屑の狭間で』(トライアル・ミッション編)

トーマス・ライカー

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ファースト・トライアルミッション

第5戦闘ライン

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……『ディファイアント』……



「…敵の2基目のデコイが起爆しました! 」


「……分かった! エマ! エンジン停止まで、20秒延長! 」


「…了解! 」


「……エドナ! 砲撃管制を担当する全員は、ミサイル・コントロール・オペレートの支援に入ってくれ! 担当の割り振りは任せる! 」


「…了解! 」


「…指示から発射までの時間を可能な限り短縮する! 特にプログラムから照準セット迄に掛かる時間は、このコーポレート・サポート体制で半減させる! 」


「…了解! 」


「…分かりました! 」


「…お任せ下さい! 」


「……エンジン停止まで…5…4…3…2…停止…しました! 」


「…アンカー発射! 」


「…了解、発射! 」


 『ディファイアント』の艦首右舷から、ロケットアンカー2基が撃ち出されて、アンカー・ワイヤーを曳きながら飛んで行く。


「……ダウンロードは、第3戦闘ラインの内側に入ってからか? 」


「…おそらくそうでしょう……」


「……あの艦はこの30秒間、直線で来た筈だ……まだ距離があるからそれができるんだが……好い度胸だな……それに誘いでもある……誘いに釣られてミサイルを撃ったりしたら、こっちの位置が知られる……」



……『ハンナ・アーレント』……



「……あちらさんもここまでは、ほぼ直線で来ていると思うが……ここから先は分からないな……キャシー……向こうもアンカー・コーナリングを…使ってくると思うか? 」


「……使ってくると、思っていた方が良いでしょう……」


「……そうだな……最後の最後は……殺陣で決まるか……マジック・トリックで決まるか……だな……」



……『ディファイアント』……



「……アンカー……到達! 」


「…全力収納開始! 姿勢制御対応頼む! 残り100mを切ったらアンカー離脱して同時に…サード・デコイとビーコン2基での、2秒間隔3点アクティブ・スキャンを発振! このスキャンで見付けた揺らぎをロックしろ! 」


「…了解! 」


 大質量岩塊にアンカーを撃ち込み、ワイヤーを全力収納することで『ディファイアント』の艦体を岩塊に引き摺らせる。


 この手法を採る事でエンジン出力に依らず、変針と加速ができる。


 その代わり岩塊に近付けば近付く程に強く加速されつつ、急激に反転・変針する……その際に細かく速く、正確な姿勢制御が必要になる……何故なら急速旋回中に他の岩塊に接触すれば、その時に発生する磁気反応を敵艦に読み取られる可能性が高くなるからだ。


 残り300mから200mまでワイヤーを収納した時『ディファイアント』は、ほぼ横っ飛びで岩塊を左側から廻り込んでいた。


 パイロットチームの3人が、30本の指を凄まじく操舵パネル上で走らせながら、エマ・ラトナーが告げる。


「……100m!! 」


「……アンカー離脱! アポジモーターで面舵! 」


「…了解! 」


「……サード・デコイとビーコン2基! 2秒間隔で3点アクティブ・スキャン発振! 」


「…了解! 発振開始! 」


「……揺らぎを捉えたらロック! 進行方位を確認して3D投影! 続けてデコイ3基を放出! 」


「…了解! 」


「……揺らぎを…ロック! 進行方位、632マーク148! 投影! 」


「……サード・デコイ起爆! フォース・デコイ発進! エンジン始動! 全速発進! 30秒でロック・ポイントの後方に入り、出来るだけ近付け! 」


「…了解! 」


 音が聴こえるなら、スラスターの咆哮が轟いただろう……『ディファイアント』はメイン・スラスターノズルから、巨大な青白い輝きを膨らませ、そのまま青白い噴射炎を艦体全長の2倍にまで伸ばして、ロック・ポイントの後方に廻り込み始めた。



……『ハンナ・アーレント』……



「……敵艦からの3点スキャンが来ました! ……そして……敵のデコイ3基目が起爆しました! 」


「……エンジン始動! 全速発進! 取舵30°  で30秒! こちらも3点スキャンを打て! 28秒でシータ・デコイ起爆! デルタ・デコイ発進! 更に30秒全速航行! これで敵艦の後方にマウントする! 」


「…了解! 」



……『ディファイアント』……



「……これはやり合いになるな……アリシア! フロント・ミサイル全管装填……パワーサイン感応で、1番から4番までは30m……5番から8番までは60mでセット! 」


「…了解! 」


「……アドル艦長……やはり撃沈するつもりは無いんですね? 」


 シエナ・ミュラー副長が確認するような口調と、投げ掛ける視線で訊く。


「……えっ? そりゃそうだよ……あんな凄い艦……沈めるなんて勿体無いだろう? 」


「……『同盟』に…入って欲しいですよね? 」


「……できればね……でも今は考えないよ……」


「……敵艦は取舵30 ° で変針中です! 」


 ハル・ハートリー参謀が告げる。


「……まだこちらの位置を正確には知らないが、背後に着かれたくないんだろう……まだミサイルを撃つのには遠い……」


「…艦長! 敵艦からの3点アクティブ・スキャンを感知! 」


「…エマ! 上げ舵! アップピッチ90°  ! 全速で走れ! 後12秒ある! 」


「…了解! 」


「…カリーナ! 『揺らぎ』がどう動くか観てくれ! 」


「…了解! 」


 同時にまた、進行方位に表示されている岩塊を右手の指でマークする。


「……エマ! 今マークした岩塊の右側面に…もう一度右舷のロケット・アンカーを撃ち込んでくれ! この岩塊を廻り込み反転して、奴に肉迫する! 」


「…了解! 」


「……艦長! 敵艦…ダウンピッチ90°  ! 本艦の進行反対方位に転進! 後5秒でエンジン停止します! 」


「……向こうも同じ作戦だ……相対距離は?! 」


「……第5戦闘ラインの内側……第4戦闘距離の172% ! エンジン停止! 」


「…アンカー発射! 」


「…発射! 」



……『ハンナ・アーレント』……



「……そうか……ミサイル・パワーが強いんだから…アンカーを使うなんてまどろっこしい真似はしなくても良い訳だ……」


「……艦長? 」


「……ユリアーネ……艦首ミサイル7番・8番発射準備……艦首正面の岩塊に照準……第1戦闘距離で発射! 」


「…了解! 」


「……ライアン……着弾したらエンジン始動…全速で面舵急速転回……転回し終わったら15秒走ってエンジン停止……」


「…了解! 」



……『ディファイアント』……



「……アンカー到達! 収納開始! 」


「……100mまで堪えてくれ! 敵艦は? 」


「……直進中のようですが? 」


(……やるならあの正面の岩塊だが? まさかな……)


「……変針開始! 姿勢制御始めます! 」


「…頼む! ………エマ! 爆発が起こったらエンジン始動! アンカー離脱して回収しつつ、全速で取舵180°  急速回頭! そのまま30秒直進! 」


「? …了解! 」


「……どうしました? 」


 シエナ副長が心配そうな声音で訊く。


「……もうひとつ……アンカーを使わなくても、位置を悟らせずにできる回頭操艦法があった……ミサイルのパワーが強いから、この手法の方が相手を撹乱できる……今更これに気付くとは……俺もまだまだだな……」


「……対艦ミサイルの発射反応! 2基です! 」


「……アンカー離脱して回収始め! 全速発進用意! 」



……『ハンナ・アーレント』……



「……第1戦闘距離! 」


「…発射! 」


「…発射! 直進中……着弾まで17秒……」


「……総員、ショックと回頭Gに備えてくれ……」


 2基の対艦ミサイルは正面の岩塊に命中…粉々に爆散させた。


「…エンジン始動! 全速発進・急速左回頭180°  ! 30秒でエンジン停止! 」


「…了解! 」

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