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第三章

思わぬ幸運

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 力を出しっぱなしで死んでしまう、という言葉にヘルマンさんとの会話を思い出した。

「もしかして、聖女の力のことですか? やはり寿命がエネルギーとして放出されているのですか……?」

「うん! だからリディア心地良いの! でも心配ー」
「人間は寿命が短いから、すぐなくなっちゃうよ! さっきあげた力で止められるでしょ?」

 聖女の力は寿命の消費を代償としている。ヘルマンさんの予想は正しかったのだ。
 貰った力に意識を集中させると、自分からエネルギーが放出されているのが感じられた。その流れを止める方法も自然と分かった。

 聖女の力を妖精の力で制御してみると、エネルギーの放出が止まった気がした。

「……これでいかがでしょう。止まりましたか?」

 パールとルチルに確認すると、二人は手で丸をつくって頷いた。

「バッチリ!」
「出来てるよー!」

「良かった。教えてくださってありがとうございます」

「いいよー! だって、リディアが死んじゃうのは嫌だもん」
「そうだよ! また遊んでもらわないといけないもん。じゃーねー!」

 二人は言いたいことを言って満足したのか、あっという間に消えてしまった。辺りを見渡すと、花畑は消えていた。

(パールとルチルにはどんなにお礼をしても足りないわ……いつかお返し出来ると良いのだけれど、遊んであげるくらいしか思いつかない!)

 パールとルチルは呪いを解いて力を分け与えてくれただけでなく、寿命の消費まで止めてくれた。あの二人に出会えたのは本当に幸運だった。




「あぁ……リディアは随分あの二人に好かれているね。彼らのあんな無邪気な姿は珍しいよ! 僕は隣にいるだけで少し緊張してしまった」

 二人が去ってしまうと、クラウスが感嘆の声を上げた。どうやら普段の彼らは、もっと違う雰囲気のようだ。

「緊張していたんですか? ふふっ、それこそ珍しいです。でも、手を握ってくださったおかげで頑張れました」

 笑いながらお礼を言うと、ようやくクラウスも表情を緩めた。

「僕もリディアと手を繋いでいたから平静でいられたよ。それより、寿命の消費が止まったって本当かい?」

「はい、もう大丈夫なようです。心配事が一つ減りました!」

「良かった! じゃあ、後は呪いだけだね。妖精の力で何とかなりそう?」

「おそらく……とりあえず、一旦帰ってヘルマンさんとクリスティーナさんに報告しましょう」

 そうだ、ここからが勝負だ。次の新月までに呪いをかけた人物を見つけ出さないといけない。直感では何とかなると思っているが、もう少しヘルマンさんに呪いについて詳しく教えてもらおう。
 怪しい人物を何人かに絞ることが出来れば、妖精の力で探りを入れられるはずだわ。
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