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初デート(2)
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「デ、デート!?」
突然の発言に思わず顔を上げると、ヘンリーは楽しそうな表情のまま続けた。
「ドレスを見に行きましょう。殿下のパーティーまでに仕立てないといけませんから」
「あっ、ああ! そうですよね! ドレス、要りますもんね。行きましょう!」
(私ったら何を勘違いしているのよ! ただの買い物よ!)
今まで外に出たことがないクリスティーナを気遣ってくれたのだろう。デートというのは方便で、服飾店を紹介してくれるのだろう。
クリスティーナは自分の勘違いを恥じながら、そう解釈した。
馬車で連れてこられたのは、想像以上に高級そうなお店だった。
(こんな高そうなお店……これが普通なの? 何着も買ってたら、あっという間に貯金がなくなりそう)
自分の貯金を頭に思い浮かべながら、今日の予算を考える。
クリスティーナがそわそわとしてる間に、ヘンリーが店主に何やら話している。店主は楽しそうに頷くと、クリスティーナの方を向いた。
「お嬢様はどのようなデザインがお好きですか?」
「えっと……」
「定番の物から流行りの物まで、お好きなデザインをお選びください」
差し出されたカタログをめくると、品の良いデザインがずらりと並んでいた。
(値段が書いてないっ! 安いやつを選ぼうと思ったのに!)
クリスティーナはドレスをしっかりと見たことがない。母親が着ているドレスをチラリと見たくらいだ。
良し悪しや好みなど、分かるはずもなかった。
とりあえずシンプルなデザインの物が安いだろうと適当に指さした。
「こ、これを……」
「まぁ、お目が高いですわ! 店頭にある見本を着てみますか?」
「ええ!? あー、着なくても……」
ヘンリーを待たせてしまう。そう思って断ろうとしたが、ヘンリーがそれを遮った。
「追加で似たデザインの物も一緒に頼む」
「かしこまりました」
結局三着ほど着る羽目になってしまった。
(どれも似たようなデザインだし、全部素敵に見える)
そう思っていたが、実際に袖を通すと一着だけ目を惹くドレスがあった。
ダークグリーンのフリルの少ないデザインで、胸元と袖口に控えめな刺繍があしらわれている。
「まあ! よくお似合いですわ」
「そ、そうでしょうか……」
「お嬢様の柔らかい雰囲気にとても合っています」
鏡で見ていると、自分でも素敵なドレスを着ていることが嬉しくなってきた。
(ドレスって着ているだけでウキウキしてしまう物なのね。なんだか着ている自分まで素敵になれるみたい!)
「ではこれでお願いします」
クリスティーナが決めたドレスを嬉しそうに眺めていると、ヘンリーがさっと会計をし始めた。
「ちょっと、ヘンリー様! 私が払います!」
「これはプレゼントさせてください」
「駄目ですよ。私が着るドレスですし、流石に申し訳ないです」
ここまで連れてきてくれただけでも有り難い。これ以上甘える訳にはいかなかった。
クリスティーナが必死に断っても、ヘンリーは会計を止めようとしなかった。
「これは役目を果たしてもらうための経費だから。僕が払います」
「でも……」
「今日はデートだって言いましたよね? 格好つけさせてください」
「それを言われたら……お願いします」
クリスティーナが引き下がると、ヘンリーは満足気だった。
ヘンリーは、クリスティーナを家に送りとどける最後の時まで紳士的だった。
(ヘンリー様は面倒見が良いし、人気があるのも頷けるわ。こんな優しさを一身にに浴びていたら好きになってしまうもの)
クリスティーナは今日初めてのことばかりで、ベッドに入っても興奮でしばらく眠れなかった。
突然の発言に思わず顔を上げると、ヘンリーは楽しそうな表情のまま続けた。
「ドレスを見に行きましょう。殿下のパーティーまでに仕立てないといけませんから」
「あっ、ああ! そうですよね! ドレス、要りますもんね。行きましょう!」
(私ったら何を勘違いしているのよ! ただの買い物よ!)
今まで外に出たことがないクリスティーナを気遣ってくれたのだろう。デートというのは方便で、服飾店を紹介してくれるのだろう。
クリスティーナは自分の勘違いを恥じながら、そう解釈した。
馬車で連れてこられたのは、想像以上に高級そうなお店だった。
(こんな高そうなお店……これが普通なの? 何着も買ってたら、あっという間に貯金がなくなりそう)
自分の貯金を頭に思い浮かべながら、今日の予算を考える。
クリスティーナがそわそわとしてる間に、ヘンリーが店主に何やら話している。店主は楽しそうに頷くと、クリスティーナの方を向いた。
「お嬢様はどのようなデザインがお好きですか?」
「えっと……」
「定番の物から流行りの物まで、お好きなデザインをお選びください」
差し出されたカタログをめくると、品の良いデザインがずらりと並んでいた。
(値段が書いてないっ! 安いやつを選ぼうと思ったのに!)
クリスティーナはドレスをしっかりと見たことがない。母親が着ているドレスをチラリと見たくらいだ。
良し悪しや好みなど、分かるはずもなかった。
とりあえずシンプルなデザインの物が安いだろうと適当に指さした。
「こ、これを……」
「まぁ、お目が高いですわ! 店頭にある見本を着てみますか?」
「ええ!? あー、着なくても……」
ヘンリーを待たせてしまう。そう思って断ろうとしたが、ヘンリーがそれを遮った。
「追加で似たデザインの物も一緒に頼む」
「かしこまりました」
結局三着ほど着る羽目になってしまった。
(どれも似たようなデザインだし、全部素敵に見える)
そう思っていたが、実際に袖を通すと一着だけ目を惹くドレスがあった。
ダークグリーンのフリルの少ないデザインで、胸元と袖口に控えめな刺繍があしらわれている。
「まあ! よくお似合いですわ」
「そ、そうでしょうか……」
「お嬢様の柔らかい雰囲気にとても合っています」
鏡で見ていると、自分でも素敵なドレスを着ていることが嬉しくなってきた。
(ドレスって着ているだけでウキウキしてしまう物なのね。なんだか着ている自分まで素敵になれるみたい!)
「ではこれでお願いします」
クリスティーナが決めたドレスを嬉しそうに眺めていると、ヘンリーがさっと会計をし始めた。
「ちょっと、ヘンリー様! 私が払います!」
「これはプレゼントさせてください」
「駄目ですよ。私が着るドレスですし、流石に申し訳ないです」
ここまで連れてきてくれただけでも有り難い。これ以上甘える訳にはいかなかった。
クリスティーナが必死に断っても、ヘンリーは会計を止めようとしなかった。
「これは役目を果たしてもらうための経費だから。僕が払います」
「でも……」
「今日はデートだって言いましたよね? 格好つけさせてください」
「それを言われたら……お願いします」
クリスティーナが引き下がると、ヘンリーは満足気だった。
ヘンリーは、クリスティーナを家に送りとどける最後の時まで紳士的だった。
(ヘンリー様は面倒見が良いし、人気があるのも頷けるわ。こんな優しさを一身にに浴びていたら好きになってしまうもの)
クリスティーナは今日初めてのことばかりで、ベッドに入っても興奮でしばらく眠れなかった。
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