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 あれからどのくらい時間がたったのだろう。
 ふ、とトゥリは意識を取り戻した。
 視界にはダンジョンの天井が見え、地面に仰向けで寝転がっていることが分かる。
 気怠さを感じながら身体をおこし、辺りを見渡す。
 そこにはあれほどいた触手の一本も居らず、ただただ平素のダンジョンがひろがっているだけだった。
 トゥリ自身も脱がされたはずの衣類をしっかりと着込み、あのぬるぬるぬたぬたとした粘液も綺麗さっぱり無くなって、まるで何事も無かったかのようだった。

 あれは悪い夢でも見ていたのだろうか。

 そう思ったが、微かに疼く胸やお尻がそれを否定していた。

 こんなもの、今まで感じたことがなかったのに。
 知らなかったのに。
 知ってしまった。
 味わってしまった。

 あの触手たちによる快楽を思い出し、再び敏感な場所が反応してしまいそうになりトゥリは慌てて考えを打ち消した。

 とりあえず、帰ろう。
 触手たちがいなくなったことも、自身を綺麗さっぱり清められた理由も分からないが、考えたところでトゥリには理解し得ない。
 トゥリはもう、宿屋に戻ってベッドに潜り込み疲れた身体を癒やしたかった。

 そうと決めれば即行動。トゥリは落ちていた剣を拾おうとして、その近くに魔石が転がっていることに気付いた。
 それはひと目見て分かるほどに上等で、大きさも申し分ないものだった。
 こんなもの、あの触手たちに襲われる前には無かったはずだ。しかし、魔石は確かにそこにあった。
 ソロで活動するようになってから、こんな上物を見るのは初めてだ。
 これを換金すれば一月は何もせずとも暮らしていけるだろう。
 トゥリはごくりと喉を鳴らし魔石を手に取ると、それを屑魔石が入っている袋へと入れた。

 いなくなった触手たち。
 元々無かったはずの上等な魔石。
 まるで持ち帰れと言わんばかりに落ちているのは、あの出来事への対価なのか。
 多分、きっと、そうだ。
 分からないことならば、自分に都合良く処理すればいい。
 トゥリはそう結論づけてダンジョンを後にし、根城にしている宿へと帰還したのだった。






『エロトラップダンジョンを知ってるか。
 その名が表す通り、エロトラップがちりばめられた地下迷宮ダンジョンだ。
 触手にスライム、ゴブリンなんかの魔物は総じて性的・・にしか攻撃しねぇ。
 女だ男だと関係なく快楽漬けにされるんだ。
 やべぇと思ったらすぐ逃げろ』

 いつだったか酒場にいる飲んだくれがそう話していた。
 本当に存在していたダンジョン。

『じゃないと、もう二度と戻れなく・・・・なるからな』

 ああ、確かに。と、飲んだくれの言葉にトゥリは同意する。
 知らなかった快楽を引きずり出され叩き込まれたおかげで、トゥリは夜毎疼く身体を持て余すようになってしまった。
 ぬたぬたと這いずりまわるあの感触をトゥリは忘れられなかったのだ。

 もう、普通のダンジョンには戻れない。
 トゥリは初心者向けのダンジョンの皮を被った淫獄に、胸を高鳴らしながら向かったのだった。



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