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1.くすぐったいのがバレるまで
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「疲れた⋯⋯」
奏が気怠そうに部屋に入ってきた。俺は
「おつ」
とだけ言って、テレビの画面に視線を戻す。
「ごめんね。なんか全然仕事が終わらなくて」
奏はため息を吐きながら俺の横に座った。時計を見ると、確かに奏が「少し仕事の電話をする」と言って部屋を出てから結構な時間が経っていた。
「いや、別に」
俺は奏の方は見ずに返事をする。
「はあ。眠い」
横に座ったまま、奏は目を閉じていた。どうせ大して寝ていないのだろう。
「ちょっと寝れば?」
俺は言った。きっと奏が寝たら俺も寝るだろう。誰かが寝ていると眠くなるものだ。
「うん、そうしようかな」
奏はそう言うと、目を閉じたまま俺の肩に頭を乗せた。
「そこまでは許可してないぞ」
と俺が言うと奏は
「んー?」
と曖昧な返事をした。
奏は都合が悪くなるとすぐに聞こえない振りをする。俺はいちいち言い返す必要もないと判断し、肩に奏の頭を乗せたままテレビを見ていた。
しばらくはそうして穏やかに過ごしていた。しかし、俺はふと奏の髪が気になった。ふわふわとした癖毛が、俺の首にかざる。
「奏、髪くすぐったい」
俺は僅かに身を捩り、奏の髪を首から離した。
「んー?」
奏は相変わらず目を閉じたまま、俺の首に髪が当たるように位置を調整してくる。
「髪当てんな。くすぐったい」
俺は我慢の限界がきて、肩から奏の頭を引き剥がした。一度気になると、少しの刺激でも意識してしまう。特にくすぐったいのは嫌だ。
奏は首をかくんと落としながら
「ひどいなあ」
と笑った。そして、その笑顔が次第にいたずらを思いついた子供のような顔に変わるのを、俺は見逃さなかった。
奏が気怠そうに部屋に入ってきた。俺は
「おつ」
とだけ言って、テレビの画面に視線を戻す。
「ごめんね。なんか全然仕事が終わらなくて」
奏はため息を吐きながら俺の横に座った。時計を見ると、確かに奏が「少し仕事の電話をする」と言って部屋を出てから結構な時間が経っていた。
「いや、別に」
俺は奏の方は見ずに返事をする。
「はあ。眠い」
横に座ったまま、奏は目を閉じていた。どうせ大して寝ていないのだろう。
「ちょっと寝れば?」
俺は言った。きっと奏が寝たら俺も寝るだろう。誰かが寝ていると眠くなるものだ。
「うん、そうしようかな」
奏はそう言うと、目を閉じたまま俺の肩に頭を乗せた。
「そこまでは許可してないぞ」
と俺が言うと奏は
「んー?」
と曖昧な返事をした。
奏は都合が悪くなるとすぐに聞こえない振りをする。俺はいちいち言い返す必要もないと判断し、肩に奏の頭を乗せたままテレビを見ていた。
しばらくはそうして穏やかに過ごしていた。しかし、俺はふと奏の髪が気になった。ふわふわとした癖毛が、俺の首にかざる。
「奏、髪くすぐったい」
俺は僅かに身を捩り、奏の髪を首から離した。
「んー?」
奏は相変わらず目を閉じたまま、俺の首に髪が当たるように位置を調整してくる。
「髪当てんな。くすぐったい」
俺は我慢の限界がきて、肩から奏の頭を引き剥がした。一度気になると、少しの刺激でも意識してしまう。特にくすぐったいのは嫌だ。
奏は首をかくんと落としながら
「ひどいなあ」
と笑った。そして、その笑顔が次第にいたずらを思いついた子供のような顔に変わるのを、俺は見逃さなかった。
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