人生崖っぷちですが王子様に拾われました!?〜崖っぷち元人気漫画家×崖っぷち大学生が協力してBL漫画で一発逆転狙います!〜

一色

文字の大きさ
60 / 91
第二章

13. 大人

しおりを挟む
「痛くない? 大丈夫?」

 優しい声が、聞こえる。
 それは、体を開かれる前に必ず尋ねられる合言葉のような質問だった。
 さんざん慣らされた体は、その言葉を聞くだけで、期待に奥の熱を燻らせる。

 ブラインド越しに月明かりが部屋を照らす中、長い指先がベッドに沈む俺のルームウェアのボタンを一つずつ外してゆく。
 彼と色違いで揃えたリネンのシャツは、柔らかく簡単にはだける。けれど、曝け出されてゆく体とは裏腹に、心は奥底に沈むような感覚だった。

 熱い唇が、耳元を擽りながら囁く。



「ねぇ、やめようか」



 なにを?



 声にすらならない息が零れた。
 驚きで目を見開く俺の隣に、早川もぽすんと沈んだ。

「さっき、何か言いかけたでしょ?」
「……なんでもないって」
「本当?」
「……ほんと」

 月明かりの下で、射抜くようにこちらを見つめるヘーゼルの瞳から目を逸らす。
 誤魔化すように彼の胸元に額をくっつければ、握りしめていた拳を彼の手に押し開かれた。手のひら同士が隙間なく触れ合い、じんわりとしたぬくもりが広がる。

「今日はこのまま寝ようか」
「……するの、やめるってこと?」
「そう。今日だけ特別。喉も治ったみたいだし、代わりに子守唄でも歌ってもらおうかな。それとも、しりとりでもする?」
「ふはっ、何それ」

 場にそぐわない急な提案に、思わず噴き出す。すると、長い指が乱れた前髪を梳かすように優しく触れた。


「君が嫌がることはしたくないんだよ」


 それは小さな声だった。
 でも、確かに俺の鼓膜を揺らした。

 はっと息を呑むと、柔らかく微笑む唇がゆっくりと頬に触れる。
 そのまま瞼を下ろせば、その口付けは唇へと落とされた。

「んっ、……ふ、ぁ」

 耐えきれず溢れた声は、自分のものとは思えない程に甘ったるい。
 何度か角度を変えながら、長いようで短いキスは早川が離れたことで簡単に終わった。
 微かに濡れた彼の唇は、どもまでも艶やかで目が離せない。


「ほら、おやすみしようね」


 まるで子供をあやすような言葉だった。
 燻る体の熱に火をつけたのは彼なのに、大人の余裕を見せつけるような姿に、どうしようもなく焦燥に駆られる。

 肌けたボタンを直そうとする手を、俺は気がつけば止めていた。


「嫌じゃないから。

 ……もっと、してほしい」


 膨れ上がった欲望を口にすれば、ヘーゼルの瞳は嬉しそうに細められた。

 熱に浮かされた唇が、再度絡まってゆく。


 溺れてる。


 溺れさせられている。


 優しすぎる甘い毒に。


 もしかしたら、すべて彼の手のひらで踊らされているだけなのかもしれない。


 そう分かっている筈なのにやめられない。

 
 俺は、この熱を手放すのが怖いんだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

【第一部・完結】毒を飲んだマリス~冷徹なふりして溺愛したい皇帝陛下と毒親育ちの転生人質王子が恋をした~

蛮野晩
BL
マリスは前世で毒親育ちなうえに不遇の最期を迎えた。 転生したらヘデルマリア王国の第一王子だったが、祖国は帝国に侵略されてしまう。 戦火のなかで帝国の皇帝陛下ヴェルハルトに出会う。 マリスは人質として帝国に赴いたが、そこで皇帝の弟(エヴァン・八歳)の世話役をすることになった。 皇帝ヴェルハルトは噂どおりの冷徹な男でマリスは人質として不遇な扱いを受けたが、――――じつは皇帝ヴェルハルトは戦火で出会ったマリスにすでにひと目惚れしていた! しかもマリスが帝国に来てくれて内心大喜びだった! ほんとうは溺愛したいが、溺愛しすぎはかっこよくない……。苦悩する皇帝ヴェルハルト。 皇帝陛下のラブコメと人質王子のシリアスがぶつかりあう。ラブコメvsシリアスのハッピーエンドです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...