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★ピタラス諸島第四、ロリアン島編★
581:誰ならっ!?
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ここは、何処だ?
王宮じゃない、という事は……、チャイロに、どこかに飛ばされたのか??
どこの森だろう???
嗅いだ事のある土の臭い、聞いた事のある木々のざわめき、見た事のあるピンク色の毛……、はっ!?
「カービィ!? しっかりしてよっ!!」
ベシベシベシッ!
足元に横たわる、まだ気を失っているカービィの胸ぐらを掴んで、その真ん丸な顔に俺は、グレコ直伝の往復ビンタをお見舞いした。
「はぁっ!? お、おいらはいったい……、くっ!?? 首がぁあぁぁっ!?!?」
目を覚ました途端、悶絶するカービィ。
どうやら首の後ろが痛むらしい、プルプルと震える両手で押さえている。
「よ、良かった……。生きてたぁ~」
まさか、デコピンで死んじゃったのかと思ったよ。
ホッとしていると……
「モッモ! 大丈夫!?」
背後から声がして、振り返るとそこには、グレコとノリリアと、不思議な虹色の膜に覆われたまま気を失ってるミルクの姿があった。
「グレコ! それにノリリアも!! 良かった、離れ離れになっちゃったのかと思ってた!!!」
慌てて駆け寄る俺。
「ミルク、どうなっちゃったの!?」
「分からないの。でも、死んではいないみたい」
死んではいないみたいって……、じゃあ生きてるの?
この状態で??
ミルクの体を包む虹色の膜は、見るからにプヨプヨと柔らかそうで、カエルの卵を包んでいる膜みたいだと俺は思う。
中が液体で満たされているようにも見えるのだが……、こんなのに包まれていて、息が出来るのか?
「たぶんこれは、守護魔法の一種ポね。見た事のない形のものポが……、ミルクはこの中でも、ちゃんと呼吸をしているポよ。それに、あれだけの瘴気の中にいたというポに、どこも腐蝕されていないポ。まるで奇跡ポね」
ノリリアは、ホッと一安心した様子でそう言った。
目元にはまだ、泣きじゃくっていた跡が残っているが、今は指摘しないでおこう。
「お~い? おまい、大丈夫かぁ~??」
痛む首の後ろをスリスリと撫でながらも、なんとか立ち上がったカービィが、誰かに向かって声を掛けている。
その視線の先にいるのは、近くの木の根本に倒れている、黒い鱗の紅竜人。
「ゼンイ!?」
それは間違いなくゼンイだ。
彼もまた、俺達と同じ様にここに飛ばされたらしい。
チャイロから受けた攻撃が効いているのか、声を掛けた程度では目覚めそうにない。
「ノリリア!? そこにいるのかっ!??」
遠くから声がして見てみると、森の奥からアイビーとロビンズが、こちらに向かって走ってきている。
「ポポッ!? みんな無事ポかっ!??」
「見つかって良かった! 玉座の間に戻った次の瞬間、この森にいたんだ。何が起きたのかは皆目見当もつかないが……、大丈夫、みんな無事だ!!」
「ポポゥ……、良かったポ」
アイビーの言葉に、安堵するノリリア。
「私達だけでなく、近くにいた紅竜人の者達も共に飛ばされたようだ。皆あちらにいる」
ロビンズが指差す先から、今度はメーザとバレが姿を現した。
「モッモ!? 生きてたのかいっ!!?」
おいメーザ、俺の姿を見る度にそれ言うのやめろ!
生きてるわちゃんとっ!!
「スレイとクラボは!? 他の奴隷達は!??」
「仲間はみんな無事さ。何があったんだい? なんで一瞬でこんな所まで??」
メーザもバレも、酷く混乱しているようだ。
「ここは何処なの!? 知ってる!??」
「知ってるも何も、ここは王都を囲う高台の森だよ。俺たちゃ今朝ここを通ったんだ、間違えるはずがねぇ。……ん? あっ!? ゼンイ!??」
倒れたままのゼンイに気付いて、慌てて駆け寄るメーザとバレ。
「あの二人と何話したの?」
尋ねるグレコ。
「あ、っと……、ここは王都を囲う高台の森だって言ってた」
通訳する俺。
「高台の森? って事は……、どこかから王都を見る事が出来るんじゃないかしら??」
グレコに問われて、俺はふと思い出す。
スレイとクラボに連れられて、初めて王都を見たあの時の景色を。
もしかしたらここは……、あの時と同じ場所なんじゃ……?
すると、ドゴォーン! という大きな爆破音が聞こえてきた。
その音が聞こえた方向へと、駆け出す俺。
グレコが後ろからついて来る。
木々の間を縫うように走り、辿り着いた場所は断崖絶壁の岩場だ。
そこから見える景色に、俺は言葉を失った。
月のない、真っ暗な空の下。
家々の無数の明かりが照らし出す王都の中心にあるのは、天辺から轟々と気味の悪い煙を噴き上げる黄金のピラミッド。
黒に紫を混ぜたような色をしたその煙は、空に巻き上げられた後、王都へと降り注ぎ、王宮の立つ金山を始め、王都中の赤岩の建物を徐々に黒く変色させていっている。
そして現れる、一見すると細長い枝のような、巨大で奇妙な棒……
煙が立ち昇るピラミッドの天辺、王宮の中庭があるその場所から、その奇妙な棒が六本生え出ており、まるで生き物のように上下左右へと動いている。
一目見た瞬間に、それが何なのか、俺には分かってしまった。
あまりにも規格外の大きさで、俄に信じ難い事実……
しかしながら、あれは間違いなく足だ。
それも、昆虫の……、蝶や蛾の足。
つまるところ、今まさに、ピラミッドの中から、奴が這い出ようとしているのだった。
「まさか……、あれが邪神となった、蛾神モシューラなの?」
隣に立つグレコが、唖然とした声でそう言った。
六本の虫の足は、その表面に黒くてギザギザとした刺を生やし、もがく様に四方に動き続けている。
あの足から推測できるモシューラの体の大きさは……、デカいなんて言葉じゃ済まされないぞ。
ピラミッドからは、ガラガガラ~っと、凄まじい崩壊の音が聞こえて来る。
それに加えて、俺のよく聞こえる耳には、沢山の悲鳴が届いていた。
異変に気付いた王都の紅竜人達が、町中を逃げ惑っている声だ。
しかし、王都の上空にはあの赤い粒子が無数に舞っていて、全てが腐蝕されるのは時間の問題だろう。
……どうして、こんな事になったんだ?
俺は、チャイロを助けるんじゃなかったのか??
どうしてこんな、蚊帳の外みたいな場所に立って、ただ眺める事しか出来ないんだ???
何も出来なかった自分が情けなくて、悔しくて、俺はギリギリと歯を食いしばった。
「大変な事になったポね」
気付くとすぐ後ろに、ノリリアとカービィ、アイビーとロビンズが立っていた。
四人とも、真剣な眼差しで王都を見つめている。
そして何かを決意したかの様に、ノリリアは言った。
「アイビー、戻ってインディゴに伝えてポ。王都の入口に待機しているヤーリュとモーブに連絡をとって、ミュエル鳥と共にここへ避難するようにポ」
「分かった、伝えて来る!」
「それから……、カービィちゃん。確か、トゥエガから貰ったエリクサーがあったポよね?」
「おう、見てたのか? モッモの鞄の中に、たんまりあるぞ!」
「ポポ。悪いポが、半分分けて欲しいポ」
「いいぞ! 好きに飲めっ!!」
「ロビンズ、【滅瘴薬】はあるポか?」
「あるにはあるが、恐らく数が足りん。どれほど必要になる?」
「分からないポ。だけど、相当数必要になるポね。マンドレイク草が足りないなら、チリアンに至急、即時栽培するよう伝えてポ。事は一刻を争うポね」
「分かった、すぐに取り掛かかろう」
アイビーとロビンズが走り去ると、ノリリアは真っ直ぐ俺を見た。
さっきまで泣きじゃくっていたのが嘘かのような、強く強い眼差しで。
「モッモちゃん。本来なら、世連(世界共和連合の略)にも属さない蛮族国家がどうなろうと、一ギルドの派遣小隊でしかないあたち達には何の関係もないポね。衰退しようが滅亡しようが、好きにすればいいポよ。けれど現状、世界に害を成す敵が二体も世に解き放たれるのを黙って見ていられるほど、あたちは落ちぶれちゃいないポね。なんとかして、奴らを止めなきゃいけないポよ」
「で……、でも、どうやって? 相手は邪神と……、旧世界の神、神代の悪霊なんだよ!? 見た目は子どもでも、あんなに恐ろしい力を持っているんだよ!?? いったい、どうやって……???」
チャイロは……、イグは、もはや止まらない。
邪神モシューラも、既に足が外に出てしまっているし、封印は完全に解けてしまっているはずだ。
瘴気とかいう煙のせいで、辺りはどんどん腐っていくし……
するとノリリアは、深く息を吸って、フーッと吐いて、こう言った。
「あたち達に出来る事は、あくまでも補助、援護に過ぎないポ。邪神と戦える者も、神代の悪霊と渡り合える者も、残念ながらあたち達の中にはいないポね。ただ一人を除いては……」
「ただ一人って……、誰なの? 誰ならっ!?」
この惨劇を止められるのっ!??
「モッモちゃんポ」
……、………、…………ホワッツ?
「あたち達の中で、神の力を持っているのはモッモちゃんだけポ。邪神にも悪霊にも、手が届くのはモッモちゃんだけなのポ! なんとかして、あの二体を倒すポよ!! 覚悟を決めるポ、モッモちゃん!!!」
鼻息荒くそう言って、ノリリアは森の奥に駆けて行ってしまった。
……えと? はい?? 何が???
「さ~て……、やるしかないわね!」
「んだな! とりあえず、このままだと世界が危ねぇ。死ぬ気でやるぞ!! モッモ!!!」
両腕をグッグッと上に伸ばして、準備運動するグレコ。
首が痛いのを我慢して、ニカっと笑うカービィ。
俺はというと、完全に脳内がフリーズしてしまっていて……
は? 皆さん、何を言ってらっしゃるの??
え??? 俺に、あの化け物二体を、倒せと????
いやいやいやいや、寝言は寝てから言わないと……、あは、あははは。
……え、本気?????
意味が分からず、沈黙する俺。
その視界の端では、金山の天辺にある王宮がガラガラと崩れて、真っ赤な目をした邪神モシューラが、大量の瘴気と共に、その姿を現し始めていた。
王宮じゃない、という事は……、チャイロに、どこかに飛ばされたのか??
どこの森だろう???
嗅いだ事のある土の臭い、聞いた事のある木々のざわめき、見た事のあるピンク色の毛……、はっ!?
「カービィ!? しっかりしてよっ!!」
ベシベシベシッ!
足元に横たわる、まだ気を失っているカービィの胸ぐらを掴んで、その真ん丸な顔に俺は、グレコ直伝の往復ビンタをお見舞いした。
「はぁっ!? お、おいらはいったい……、くっ!?? 首がぁあぁぁっ!?!?」
目を覚ました途端、悶絶するカービィ。
どうやら首の後ろが痛むらしい、プルプルと震える両手で押さえている。
「よ、良かった……。生きてたぁ~」
まさか、デコピンで死んじゃったのかと思ったよ。
ホッとしていると……
「モッモ! 大丈夫!?」
背後から声がして、振り返るとそこには、グレコとノリリアと、不思議な虹色の膜に覆われたまま気を失ってるミルクの姿があった。
「グレコ! それにノリリアも!! 良かった、離れ離れになっちゃったのかと思ってた!!!」
慌てて駆け寄る俺。
「ミルク、どうなっちゃったの!?」
「分からないの。でも、死んではいないみたい」
死んではいないみたいって……、じゃあ生きてるの?
この状態で??
ミルクの体を包む虹色の膜は、見るからにプヨプヨと柔らかそうで、カエルの卵を包んでいる膜みたいだと俺は思う。
中が液体で満たされているようにも見えるのだが……、こんなのに包まれていて、息が出来るのか?
「たぶんこれは、守護魔法の一種ポね。見た事のない形のものポが……、ミルクはこの中でも、ちゃんと呼吸をしているポよ。それに、あれだけの瘴気の中にいたというポに、どこも腐蝕されていないポ。まるで奇跡ポね」
ノリリアは、ホッと一安心した様子でそう言った。
目元にはまだ、泣きじゃくっていた跡が残っているが、今は指摘しないでおこう。
「お~い? おまい、大丈夫かぁ~??」
痛む首の後ろをスリスリと撫でながらも、なんとか立ち上がったカービィが、誰かに向かって声を掛けている。
その視線の先にいるのは、近くの木の根本に倒れている、黒い鱗の紅竜人。
「ゼンイ!?」
それは間違いなくゼンイだ。
彼もまた、俺達と同じ様にここに飛ばされたらしい。
チャイロから受けた攻撃が効いているのか、声を掛けた程度では目覚めそうにない。
「ノリリア!? そこにいるのかっ!??」
遠くから声がして見てみると、森の奥からアイビーとロビンズが、こちらに向かって走ってきている。
「ポポッ!? みんな無事ポかっ!??」
「見つかって良かった! 玉座の間に戻った次の瞬間、この森にいたんだ。何が起きたのかは皆目見当もつかないが……、大丈夫、みんな無事だ!!」
「ポポゥ……、良かったポ」
アイビーの言葉に、安堵するノリリア。
「私達だけでなく、近くにいた紅竜人の者達も共に飛ばされたようだ。皆あちらにいる」
ロビンズが指差す先から、今度はメーザとバレが姿を現した。
「モッモ!? 生きてたのかいっ!!?」
おいメーザ、俺の姿を見る度にそれ言うのやめろ!
生きてるわちゃんとっ!!
「スレイとクラボは!? 他の奴隷達は!??」
「仲間はみんな無事さ。何があったんだい? なんで一瞬でこんな所まで??」
メーザもバレも、酷く混乱しているようだ。
「ここは何処なの!? 知ってる!??」
「知ってるも何も、ここは王都を囲う高台の森だよ。俺たちゃ今朝ここを通ったんだ、間違えるはずがねぇ。……ん? あっ!? ゼンイ!??」
倒れたままのゼンイに気付いて、慌てて駆け寄るメーザとバレ。
「あの二人と何話したの?」
尋ねるグレコ。
「あ、っと……、ここは王都を囲う高台の森だって言ってた」
通訳する俺。
「高台の森? って事は……、どこかから王都を見る事が出来るんじゃないかしら??」
グレコに問われて、俺はふと思い出す。
スレイとクラボに連れられて、初めて王都を見たあの時の景色を。
もしかしたらここは……、あの時と同じ場所なんじゃ……?
すると、ドゴォーン! という大きな爆破音が聞こえてきた。
その音が聞こえた方向へと、駆け出す俺。
グレコが後ろからついて来る。
木々の間を縫うように走り、辿り着いた場所は断崖絶壁の岩場だ。
そこから見える景色に、俺は言葉を失った。
月のない、真っ暗な空の下。
家々の無数の明かりが照らし出す王都の中心にあるのは、天辺から轟々と気味の悪い煙を噴き上げる黄金のピラミッド。
黒に紫を混ぜたような色をしたその煙は、空に巻き上げられた後、王都へと降り注ぎ、王宮の立つ金山を始め、王都中の赤岩の建物を徐々に黒く変色させていっている。
そして現れる、一見すると細長い枝のような、巨大で奇妙な棒……
煙が立ち昇るピラミッドの天辺、王宮の中庭があるその場所から、その奇妙な棒が六本生え出ており、まるで生き物のように上下左右へと動いている。
一目見た瞬間に、それが何なのか、俺には分かってしまった。
あまりにも規格外の大きさで、俄に信じ難い事実……
しかしながら、あれは間違いなく足だ。
それも、昆虫の……、蝶や蛾の足。
つまるところ、今まさに、ピラミッドの中から、奴が這い出ようとしているのだった。
「まさか……、あれが邪神となった、蛾神モシューラなの?」
隣に立つグレコが、唖然とした声でそう言った。
六本の虫の足は、その表面に黒くてギザギザとした刺を生やし、もがく様に四方に動き続けている。
あの足から推測できるモシューラの体の大きさは……、デカいなんて言葉じゃ済まされないぞ。
ピラミッドからは、ガラガガラ~っと、凄まじい崩壊の音が聞こえて来る。
それに加えて、俺のよく聞こえる耳には、沢山の悲鳴が届いていた。
異変に気付いた王都の紅竜人達が、町中を逃げ惑っている声だ。
しかし、王都の上空にはあの赤い粒子が無数に舞っていて、全てが腐蝕されるのは時間の問題だろう。
……どうして、こんな事になったんだ?
俺は、チャイロを助けるんじゃなかったのか??
どうしてこんな、蚊帳の外みたいな場所に立って、ただ眺める事しか出来ないんだ???
何も出来なかった自分が情けなくて、悔しくて、俺はギリギリと歯を食いしばった。
「大変な事になったポね」
気付くとすぐ後ろに、ノリリアとカービィ、アイビーとロビンズが立っていた。
四人とも、真剣な眼差しで王都を見つめている。
そして何かを決意したかの様に、ノリリアは言った。
「アイビー、戻ってインディゴに伝えてポ。王都の入口に待機しているヤーリュとモーブに連絡をとって、ミュエル鳥と共にここへ避難するようにポ」
「分かった、伝えて来る!」
「それから……、カービィちゃん。確か、トゥエガから貰ったエリクサーがあったポよね?」
「おう、見てたのか? モッモの鞄の中に、たんまりあるぞ!」
「ポポ。悪いポが、半分分けて欲しいポ」
「いいぞ! 好きに飲めっ!!」
「ロビンズ、【滅瘴薬】はあるポか?」
「あるにはあるが、恐らく数が足りん。どれほど必要になる?」
「分からないポ。だけど、相当数必要になるポね。マンドレイク草が足りないなら、チリアンに至急、即時栽培するよう伝えてポ。事は一刻を争うポね」
「分かった、すぐに取り掛かかろう」
アイビーとロビンズが走り去ると、ノリリアは真っ直ぐ俺を見た。
さっきまで泣きじゃくっていたのが嘘かのような、強く強い眼差しで。
「モッモちゃん。本来なら、世連(世界共和連合の略)にも属さない蛮族国家がどうなろうと、一ギルドの派遣小隊でしかないあたち達には何の関係もないポね。衰退しようが滅亡しようが、好きにすればいいポよ。けれど現状、世界に害を成す敵が二体も世に解き放たれるのを黙って見ていられるほど、あたちは落ちぶれちゃいないポね。なんとかして、奴らを止めなきゃいけないポよ」
「で……、でも、どうやって? 相手は邪神と……、旧世界の神、神代の悪霊なんだよ!? 見た目は子どもでも、あんなに恐ろしい力を持っているんだよ!?? いったい、どうやって……???」
チャイロは……、イグは、もはや止まらない。
邪神モシューラも、既に足が外に出てしまっているし、封印は完全に解けてしまっているはずだ。
瘴気とかいう煙のせいで、辺りはどんどん腐っていくし……
するとノリリアは、深く息を吸って、フーッと吐いて、こう言った。
「あたち達に出来る事は、あくまでも補助、援護に過ぎないポ。邪神と戦える者も、神代の悪霊と渡り合える者も、残念ながらあたち達の中にはいないポね。ただ一人を除いては……」
「ただ一人って……、誰なの? 誰ならっ!?」
この惨劇を止められるのっ!??
「モッモちゃんポ」
……、………、…………ホワッツ?
「あたち達の中で、神の力を持っているのはモッモちゃんだけポ。邪神にも悪霊にも、手が届くのはモッモちゃんだけなのポ! なんとかして、あの二体を倒すポよ!! 覚悟を決めるポ、モッモちゃん!!!」
鼻息荒くそう言って、ノリリアは森の奥に駆けて行ってしまった。
……えと? はい?? 何が???
「さ~て……、やるしかないわね!」
「んだな! とりあえず、このままだと世界が危ねぇ。死ぬ気でやるぞ!! モッモ!!!」
両腕をグッグッと上に伸ばして、準備運動するグレコ。
首が痛いのを我慢して、ニカっと笑うカービィ。
俺はというと、完全に脳内がフリーズしてしまっていて……
は? 皆さん、何を言ってらっしゃるの??
え??? 俺に、あの化け物二体を、倒せと????
いやいやいやいや、寝言は寝てから言わないと……、あは、あははは。
……え、本気?????
意味が分からず、沈黙する俺。
その視界の端では、金山の天辺にある王宮がガラガラと崩れて、真っ赤な目をした邪神モシューラが、大量の瘴気と共に、その姿を現し始めていた。
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