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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
744:ピッッッ、カァーーーーーン!!!!!
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「さて……、僕の役目はここまでです」
ユディンはそう言うと、持っていた鉄仮面を被り直し、何も無い目の前の空間に右手で大きく円を描いた。
するとそこには、ユディンが此方に戻ってきた時のものと同じ、黒い渦の様な穴が出現した。
それは間違いなく、この世界と魔界とを繋ぐ、時空穴と呼ばれるものだろう。
「もっ!? もう帰るのっ!!?」
驚いて、声を上げる俺。
……いや別に、ユディンにずっとここに居て欲しいわけではないけどねっ!?
けど、もうちょっと居ても良くない!!?
ユディンは、鉄仮面の隙間から覗く金色の瞳で、俺の事をジーッと見つめた。
「モッモ君、君のおかげで、僕は元いた世界の、元いた時代へと帰る事が出来た。時空を軽々と超えてしまう君の力は計り知れない。だから……、いや、今はよそう。君は、君の思う様に生きるべきだ。しかしながら、運命とは不思議なもの。君とはいずれ、またどこかで、再会できる気がするよ。それまで僕は、魔王で有り続けられるよう、最大限の努力をするつもりだ。だから君も、君に与えられた使命を、必ずや果たしてくれ」
ふぁっ!? 使命っ!!?
なんだっけそれ!!??
穏やかな口調ながらも、どこか圧のあるユディンの言葉に、俺は脳内がプチパニックになる。
しかしながら、そんな俺の様子などお構い無しに、ユディンは視線をずらして……
「アーレイク……、いや、アイビー。これが、アーレイクが見る事の出来なかった未来、パターンXだ。アーレイクは不安がっていたが……、どうだろう? 僕は、悪くない結果だと思うが??」
鉄仮面を被っている為に、その表情は伺い知れない。
だけども、とてもリラックスしているような声色からして、どうやらユディンは微笑んでいるようだ。
魔力とは少し違う、穏やかな緑色のオーラが、ユディンの全身から流れ出ているのが見えた。
「ユディン……。そうだね。僕も、悪く無いと思う。ありがとう、僕達を助けてくれて。ありがとう、この世界を守ってくれて!」
アイビーは、その目に大粒の涙を浮かべながらそう言った。
その心情を思い計る事は、俺には出来ない。
だけどアイビーからも、穏やかな緑色のオーラが流れ出ていた。
「いや……、僕は、アーレイクとの約束を守っただけの事。アイビー・ルフォシリアン。どうかこれからは、君の生きる道を大切に……。さようなら、アイビー、皆さん、そしてモッモ君。この世界がいつまでも平和であるよう、祈っている」
ユディンはそう言うと、目の前の時空穴へと足を踏み入れ、その中へと姿を消した。
そして、ユディンの姿が見えなくなると同時に、時空穴はスーッと消えてなくなった。
残ったのは、力場と呼ばれる大きな光の玉と、それを封じる為の紫色の魔法陣だけ……
「行ってしまったわね」
ポツリと呟くグレコ。
「なんじゃなぁ……、謎過ぎる奴じゃったの」
ふんっと鼻から息を出し、腕組みするテッチャ。
「悪魔のくせに、全然悪魔っぽく無かったしなぁ~」
ヘラヘラと感想を述べるカービィ。
みんなが、ユディンが消えた後を眺める横で……
「モッモ君」
「ひゃいっ!?」
アイビーに、囁くような声で名前を呼ばれて、ビクッと体を震わせる俺。
全くもってビビるような場面では無いのだが、さっきまでが色々あり過ぎて、ビビる事が常態化してしまっているようだ。
クルッと振り向いて、アイビーを見る俺。
何っ!? なっ!!?
……え、誰!?!?
「ありがとう。これでもう、思い残す事は無い」
そう言ったアイビーは、まるでアイビーじゃ無いような……、全然別の誰かのように、俺には見えて……
すると次の瞬間、アイビーの体から、白い光を纏った何かがスーッと流れ出てきたかと思うと、それはそのまま上へと登っていき、岩だらけの天井へと消えていった。
「…………へ?」
なんだ? 今のは??
「アーレイク殿。達者で……」
俺と同じものが見えていたらしいギンロが、アイビーの頭上を眺めながら、そんな事をボソッと呟いた。
え? え?? それってつまり……、え???
「モッモ君」
「へぁいっ!?」
またまたアイビーに名前を呼ばれて、視線を向けると、そこにはいつも通りのアイビーが立っていて……
「力場を封印しよう。コトコの遺産である五芒星の盤で、崩壊の陣を完成させるんだ」
「あ……、わ、分かった!」
俺は鞄をガサゴソと漁り、それを取り出した。
さっきまで小脇に挟んでいたそれは、俺の体温で温められていたらしく、ほんのりと温かい。
「みんな、少し離れて」
アイビーが、力場を囲う魔法陣から離れるよう、みんなに指示を出す。
みんなはその言葉に従って、そそくさと俺から離れて行く。
えと……、え、大丈夫だよね?
その、魔法陣を完成させた途端、バーーーンッ! とかって、爆発したりしないよね??
ドキドキしながら、シャリンシャリンと音を立て、魔法陣の上を歩いて行く俺。
時空穴を開ける為に必要な、力場と呼ばれる光の玉。
その真下にある魔法陣の、中央に当たるその場所には、ペコッと凹んだ小さな穴がある。
五角形のそれは、見るからに俺が持っている五芒星の盤がピタリと嵌まりそうだ。
だ、大丈夫……、だよね???
ドキドキとうるさい、小ちゃな俺のマイハート。
ゴクリと生唾を飲み、息を止めて、そっと五芒星の盤をその穴に嵌め込んだ。
すると次の瞬間、五芒星の盤の中心にある鏡に力場が映り込んだかと思うと、盤の上の紫色の宝石がキラリと煌めいて……
ピッッッ、カァーーーーーン!!!!!
「うひゃあぁぁっ!?!?」
足元の魔法陣が馬鹿みたいに光り輝いて、俺は叫び声を上げると共に、両手で目を覆った。
背後では、同じ様に、様々な声で叫ぶ皆の声が聞こえて……
「キャアッ!?」
「どわぁあっ!?」
「うほぉおっ!?」
「ぐっ!?」
「ギャッ!?」
「ポポォッ!?」
「うっ!?」
なになにっ!?
何が起きたのっ!??
何が起きるのぉっ!??
焦りながらも、身動きが取れずに固まる俺。
しかし、辺りはシーンとしており、何かが起きた気配も、これから何かが起きる雰囲気も無くて……
恐る恐る両手を下げて、目を開けてみると、光は既に収まっており、力場の大きな光の玉も、地面に描かれていた光る魔法陣も、全てが綺麗さっぱり消えてしまっていた。
「お、おろ……? 消え……、た??」
力場と魔法陣が消失した事によって、辺りは真っ暗闇となっている。
さすがの俺の目も、あれだけ眩しい光を見た直後だと、暗闇の中に何があるのか全く分からない。
「モッモ!? 大丈夫!!?」
グレコの声が聞こえた。
「あっ!? うん! 大丈夫!!」
俺がそう答えると、少し離れた場所に、ポーッと光の球が浮かび上がって……
まさかっ!? 力場が復活!!?
と、思ったが、違った。
「皆の者~! 此方でござるよ~!! 拙者の空間魔法で、外に出るでござる~!!!」
あっ!? いたのかカサチョ!!?
毎度の事ながら、いつから居たのか居なかったのか分からないカサチョが、空間魔法を行使して、何も無い暗闇の中に、塔の外へと繋がる穴を作り上げていた。
穴の中の景色は明るく、塔の外はもう朝なのだろう、キラキラと輝いて見える。
「終わった、か……」
ポツリと呟くアイビー。
だけど、暗闇の中にいるからして、彼がどんな表情なのかは分からない。
声の感じからして、ホッとしているような、気が抜けたような、そんな様子である。
そりゃそうだよな、未だによく分かってないけど……
アイビーはアーレイク・ピタラスだったわけだから、これまできっと、大変だったよな。
俺が、アイビーのこれまでの人生に思いを馳せようとしていると……
「さぁ~て! いったい何がどうなってこうなったのか……。塔の外に出たら、最初から最後まで、キッチリ説明して貰うポよ!? アイビー!!?」
キビキビとした、容赦の無いノリリアの声と、フッと微笑するアイビーの声が聞こえた。
あ~……、アイビーのやつ、この後きっと、ノリリアに尋問されるんだぁ~。
疲れているだろうに、みっちりむっちり、何時間も尋問されるんだろうなぁ~。
わぁ~、可哀想~。
今後の展開を予想して、俺はヒクヒクと引きつり笑いをした。
ユディンはそう言うと、持っていた鉄仮面を被り直し、何も無い目の前の空間に右手で大きく円を描いた。
するとそこには、ユディンが此方に戻ってきた時のものと同じ、黒い渦の様な穴が出現した。
それは間違いなく、この世界と魔界とを繋ぐ、時空穴と呼ばれるものだろう。
「もっ!? もう帰るのっ!!?」
驚いて、声を上げる俺。
……いや別に、ユディンにずっとここに居て欲しいわけではないけどねっ!?
けど、もうちょっと居ても良くない!!?
ユディンは、鉄仮面の隙間から覗く金色の瞳で、俺の事をジーッと見つめた。
「モッモ君、君のおかげで、僕は元いた世界の、元いた時代へと帰る事が出来た。時空を軽々と超えてしまう君の力は計り知れない。だから……、いや、今はよそう。君は、君の思う様に生きるべきだ。しかしながら、運命とは不思議なもの。君とはいずれ、またどこかで、再会できる気がするよ。それまで僕は、魔王で有り続けられるよう、最大限の努力をするつもりだ。だから君も、君に与えられた使命を、必ずや果たしてくれ」
ふぁっ!? 使命っ!!?
なんだっけそれ!!??
穏やかな口調ながらも、どこか圧のあるユディンの言葉に、俺は脳内がプチパニックになる。
しかしながら、そんな俺の様子などお構い無しに、ユディンは視線をずらして……
「アーレイク……、いや、アイビー。これが、アーレイクが見る事の出来なかった未来、パターンXだ。アーレイクは不安がっていたが……、どうだろう? 僕は、悪くない結果だと思うが??」
鉄仮面を被っている為に、その表情は伺い知れない。
だけども、とてもリラックスしているような声色からして、どうやらユディンは微笑んでいるようだ。
魔力とは少し違う、穏やかな緑色のオーラが、ユディンの全身から流れ出ているのが見えた。
「ユディン……。そうだね。僕も、悪く無いと思う。ありがとう、僕達を助けてくれて。ありがとう、この世界を守ってくれて!」
アイビーは、その目に大粒の涙を浮かべながらそう言った。
その心情を思い計る事は、俺には出来ない。
だけどアイビーからも、穏やかな緑色のオーラが流れ出ていた。
「いや……、僕は、アーレイクとの約束を守っただけの事。アイビー・ルフォシリアン。どうかこれからは、君の生きる道を大切に……。さようなら、アイビー、皆さん、そしてモッモ君。この世界がいつまでも平和であるよう、祈っている」
ユディンはそう言うと、目の前の時空穴へと足を踏み入れ、その中へと姿を消した。
そして、ユディンの姿が見えなくなると同時に、時空穴はスーッと消えてなくなった。
残ったのは、力場と呼ばれる大きな光の玉と、それを封じる為の紫色の魔法陣だけ……
「行ってしまったわね」
ポツリと呟くグレコ。
「なんじゃなぁ……、謎過ぎる奴じゃったの」
ふんっと鼻から息を出し、腕組みするテッチャ。
「悪魔のくせに、全然悪魔っぽく無かったしなぁ~」
ヘラヘラと感想を述べるカービィ。
みんなが、ユディンが消えた後を眺める横で……
「モッモ君」
「ひゃいっ!?」
アイビーに、囁くような声で名前を呼ばれて、ビクッと体を震わせる俺。
全くもってビビるような場面では無いのだが、さっきまでが色々あり過ぎて、ビビる事が常態化してしまっているようだ。
クルッと振り向いて、アイビーを見る俺。
何っ!? なっ!!?
……え、誰!?!?
「ありがとう。これでもう、思い残す事は無い」
そう言ったアイビーは、まるでアイビーじゃ無いような……、全然別の誰かのように、俺には見えて……
すると次の瞬間、アイビーの体から、白い光を纏った何かがスーッと流れ出てきたかと思うと、それはそのまま上へと登っていき、岩だらけの天井へと消えていった。
「…………へ?」
なんだ? 今のは??
「アーレイク殿。達者で……」
俺と同じものが見えていたらしいギンロが、アイビーの頭上を眺めながら、そんな事をボソッと呟いた。
え? え?? それってつまり……、え???
「モッモ君」
「へぁいっ!?」
またまたアイビーに名前を呼ばれて、視線を向けると、そこにはいつも通りのアイビーが立っていて……
「力場を封印しよう。コトコの遺産である五芒星の盤で、崩壊の陣を完成させるんだ」
「あ……、わ、分かった!」
俺は鞄をガサゴソと漁り、それを取り出した。
さっきまで小脇に挟んでいたそれは、俺の体温で温められていたらしく、ほんのりと温かい。
「みんな、少し離れて」
アイビーが、力場を囲う魔法陣から離れるよう、みんなに指示を出す。
みんなはその言葉に従って、そそくさと俺から離れて行く。
えと……、え、大丈夫だよね?
その、魔法陣を完成させた途端、バーーーンッ! とかって、爆発したりしないよね??
ドキドキしながら、シャリンシャリンと音を立て、魔法陣の上を歩いて行く俺。
時空穴を開ける為に必要な、力場と呼ばれる光の玉。
その真下にある魔法陣の、中央に当たるその場所には、ペコッと凹んだ小さな穴がある。
五角形のそれは、見るからに俺が持っている五芒星の盤がピタリと嵌まりそうだ。
だ、大丈夫……、だよね???
ドキドキとうるさい、小ちゃな俺のマイハート。
ゴクリと生唾を飲み、息を止めて、そっと五芒星の盤をその穴に嵌め込んだ。
すると次の瞬間、五芒星の盤の中心にある鏡に力場が映り込んだかと思うと、盤の上の紫色の宝石がキラリと煌めいて……
ピッッッ、カァーーーーーン!!!!!
「うひゃあぁぁっ!?!?」
足元の魔法陣が馬鹿みたいに光り輝いて、俺は叫び声を上げると共に、両手で目を覆った。
背後では、同じ様に、様々な声で叫ぶ皆の声が聞こえて……
「キャアッ!?」
「どわぁあっ!?」
「うほぉおっ!?」
「ぐっ!?」
「ギャッ!?」
「ポポォッ!?」
「うっ!?」
なになにっ!?
何が起きたのっ!??
何が起きるのぉっ!??
焦りながらも、身動きが取れずに固まる俺。
しかし、辺りはシーンとしており、何かが起きた気配も、これから何かが起きる雰囲気も無くて……
恐る恐る両手を下げて、目を開けてみると、光は既に収まっており、力場の大きな光の玉も、地面に描かれていた光る魔法陣も、全てが綺麗さっぱり消えてしまっていた。
「お、おろ……? 消え……、た??」
力場と魔法陣が消失した事によって、辺りは真っ暗闇となっている。
さすがの俺の目も、あれだけ眩しい光を見た直後だと、暗闇の中に何があるのか全く分からない。
「モッモ!? 大丈夫!!?」
グレコの声が聞こえた。
「あっ!? うん! 大丈夫!!」
俺がそう答えると、少し離れた場所に、ポーッと光の球が浮かび上がって……
まさかっ!? 力場が復活!!?
と、思ったが、違った。
「皆の者~! 此方でござるよ~!! 拙者の空間魔法で、外に出るでござる~!!!」
あっ!? いたのかカサチョ!!?
毎度の事ながら、いつから居たのか居なかったのか分からないカサチョが、空間魔法を行使して、何も無い暗闇の中に、塔の外へと繋がる穴を作り上げていた。
穴の中の景色は明るく、塔の外はもう朝なのだろう、キラキラと輝いて見える。
「終わった、か……」
ポツリと呟くアイビー。
だけど、暗闇の中にいるからして、彼がどんな表情なのかは分からない。
声の感じからして、ホッとしているような、気が抜けたような、そんな様子である。
そりゃそうだよな、未だによく分かってないけど……
アイビーはアーレイク・ピタラスだったわけだから、これまできっと、大変だったよな。
俺が、アイビーのこれまでの人生に思いを馳せようとしていると……
「さぁ~て! いったい何がどうなってこうなったのか……。塔の外に出たら、最初から最後まで、キッチリ説明して貰うポよ!? アイビー!!?」
キビキビとした、容赦の無いノリリアの声と、フッと微笑するアイビーの声が聞こえた。
あ~……、アイビーのやつ、この後きっと、ノリリアに尋問されるんだぁ~。
疲れているだろうに、みっちりむっちり、何時間も尋問されるんだろうなぁ~。
わぁ~、可哀想~。
今後の展開を予想して、俺はヒクヒクと引きつり笑いをした。
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