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★セシリアの森、エルフの隠れ里編★
35:美形男子
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「我は、これ以上先へは行けぬ。しばしの別れだモッモ、グレコよ」
荊が生い茂るセシリアの森、その手前で足を止めて、ガディスがそう言った。
「うん! 送ってくれてありがとう!! ガディス!!!」
ガディスの背をスルリと下り、お礼を言う俺。
「大丈夫、心配しないで。モッモの面倒は、私がちゃんと見るから! ご苦労様!!」
面倒てっ!?
言い方! グレコ、言い方気をつけてっ!!
ガディスに別れを告げて、不気味なセシリアの森に、迷うことなく足を踏み入れるグレコ。
その後に続いて歩き出そうとした、その時だった。
ローブの裾を、ガディスがくいっと引っ張ったのだ。
おおうっ!? なんだぁあっ!!?
後ろに転びかけ、焦って振り返る俺。
「モッモよ、心して行け。グレコはああだが……、ここにいるエルフが皆、味方だとは思うな。お主は本来なら、ここに立ち入ってはならぬ者だ。もし、命の危機を感じた時には、迷わず精霊を呼べ、よいな?」
コソコソと、小さな声で、ガディスはそう言った。
何のことだかよく分からないが、一応頷く俺。
「うむ。では、我は西へと帰る。さらばだ、小さき友よ」
そう言い残し、ガディスは森の中を走り去って行った。
友かぁ……、フェンリルが友達って、なんかカッコイイな、うん、へへへ♪
ガディスの言葉は気になるが、ここまで来ておいて帰るわけにもいかない。
俺は、荊の生い茂るセシリアの森へ、グレコの後を追って入って行った。
「セシリアっていうのは、この樹の事なの。うねうねしてて、黒くって……、かなり不気味でしょ? でも別に、毒があるわけじゃないのよ。ちょっと荊が多いだけでね、痛っ!?」
前を行くグレコは、自分で言っておきながら、体のあちこちを度々荊に擦って痛がっている。
俺はというと、体が小さいおかげと、全身の触覚が敏感なおかげで、とても妙な歩き方ではあるが、自慢のフカフカボディに荊が刺さるような事はない。
「でも……、どうしてこんな場所に住んでいるの? もっと綺麗な所に住めばいいのに」
テトーンの樹の村とは大違いな風景に、俺は首を傾げる。
風通しも悪いし、日当たりも悪いし、おまけに地面は軽くぬかるんでいるのだ。
なんでわざわざ、こんな場所に住んでいるんだ?
そんな事を考えていると、俺の耳に、ザザザザッ! という、何かが動く音が聞こえた。
なんだっ!?
「グレコ! 止まって!!」
小さな声で、グレコを制止する俺。
「何? あ……、あぁ~、まぁ、そうなるよねぇ……」
なぜか諦め口調になるグレコ。
音はどんどん大きくなり、どんどん増えていく。
そして、あっという間に、周りを取り囲まれて……!?
「動くな。動くとこのエルフの弓が、お前の脳を貫くぞ」
俺のふさふさな後頭部に、何者かが弓矢の先を突き付けてそう言った。
ひっ!? ひえぇぇぇっ!!?
あまりに突然の襲撃に、俺は両手を高く上げて降参のポーズをとり、固まってしまう。
見ると、四方八方に、耳の尖った、真っ白い肌に真っ黒い髪の、血のように赤い瞳を持ったエルフの男達が、ぐるりと俺の周りを囲んでいるではないか。
一、二、三、四、五、六、七、八、九……、十人もっ!?
いったいどこから湧いて出たんだっ!!?
……それにしても、まぁ~イケメンばかりだこと。
揃いも揃って綺麗なお顔。
どこぞのアイドルグループかのような、美形男子十人に囲まれて、違う意味でちょっぴりドキドキ……
「待って頂戴。彼は客人よ、弓を下ろして」
グレコが彼らに話し掛ける。
「いくらグレコ様だとて、その命令には従えません。外界の者を里に入れる事は掟で固く禁じられているはず……。それを承知の上で、そのような事を仰られているのですか?」
後ろで弓を構え続ける男が答えた。
男の物言いから、何やらグレコはちょっと身分が高いのでは? と思う俺。
グレコ! 頼むっ!!
助けてくれっ!!!
「その者が、巫女様の仰っていた、神の力を宿しし者だとしても……、かしら?」
グレコの言葉に、俺の後頭部に当てられていた弓矢の先がピクリと動く。
動揺したのか? したんだなっ!?
じゃあ弓を下ろして頂戴よっ!!!
「この者が? 戯言もほどほどにして頂きたい」
「冗談じゃないわよ、ハネス。彼はれっきとした、時の神の使者なの。もう一度だけ言うわ、弓を下ろして。さもないと、あなたに神の天罰が下るわよ?」
そうだぞっ! 弓を下ろせっ!!
精霊呼ぶぞぉっ!!?
すると、俺の後頭部からスッと、弓矢の先が離れていった。
ふ~、危なかったぁ……
イケメンたちに囲まれながら、危うくお漏らしするところだったぜ。
脅してきた相手の顔を見てやろうと、ゆっくりと後ろを振り返る俺。
するとそこには、歪んだ表情で俺を見る、超絶ハンサムなエルフの男が立っていて……
「こいつが神の力を宿しし者だと……? はっ! 俺は信じないぞ!!」
めちゃくちゃ偉そうな物言いで、そう吐き捨てた。
くっそぉ~……、どんな奴かと思えば……
イケメンかよこん畜生っ!!!
荊が生い茂るセシリアの森、その手前で足を止めて、ガディスがそう言った。
「うん! 送ってくれてありがとう!! ガディス!!!」
ガディスの背をスルリと下り、お礼を言う俺。
「大丈夫、心配しないで。モッモの面倒は、私がちゃんと見るから! ご苦労様!!」
面倒てっ!?
言い方! グレコ、言い方気をつけてっ!!
ガディスに別れを告げて、不気味なセシリアの森に、迷うことなく足を踏み入れるグレコ。
その後に続いて歩き出そうとした、その時だった。
ローブの裾を、ガディスがくいっと引っ張ったのだ。
おおうっ!? なんだぁあっ!!?
後ろに転びかけ、焦って振り返る俺。
「モッモよ、心して行け。グレコはああだが……、ここにいるエルフが皆、味方だとは思うな。お主は本来なら、ここに立ち入ってはならぬ者だ。もし、命の危機を感じた時には、迷わず精霊を呼べ、よいな?」
コソコソと、小さな声で、ガディスはそう言った。
何のことだかよく分からないが、一応頷く俺。
「うむ。では、我は西へと帰る。さらばだ、小さき友よ」
そう言い残し、ガディスは森の中を走り去って行った。
友かぁ……、フェンリルが友達って、なんかカッコイイな、うん、へへへ♪
ガディスの言葉は気になるが、ここまで来ておいて帰るわけにもいかない。
俺は、荊の生い茂るセシリアの森へ、グレコの後を追って入って行った。
「セシリアっていうのは、この樹の事なの。うねうねしてて、黒くって……、かなり不気味でしょ? でも別に、毒があるわけじゃないのよ。ちょっと荊が多いだけでね、痛っ!?」
前を行くグレコは、自分で言っておきながら、体のあちこちを度々荊に擦って痛がっている。
俺はというと、体が小さいおかげと、全身の触覚が敏感なおかげで、とても妙な歩き方ではあるが、自慢のフカフカボディに荊が刺さるような事はない。
「でも……、どうしてこんな場所に住んでいるの? もっと綺麗な所に住めばいいのに」
テトーンの樹の村とは大違いな風景に、俺は首を傾げる。
風通しも悪いし、日当たりも悪いし、おまけに地面は軽くぬかるんでいるのだ。
なんでわざわざ、こんな場所に住んでいるんだ?
そんな事を考えていると、俺の耳に、ザザザザッ! という、何かが動く音が聞こえた。
なんだっ!?
「グレコ! 止まって!!」
小さな声で、グレコを制止する俺。
「何? あ……、あぁ~、まぁ、そうなるよねぇ……」
なぜか諦め口調になるグレコ。
音はどんどん大きくなり、どんどん増えていく。
そして、あっという間に、周りを取り囲まれて……!?
「動くな。動くとこのエルフの弓が、お前の脳を貫くぞ」
俺のふさふさな後頭部に、何者かが弓矢の先を突き付けてそう言った。
ひっ!? ひえぇぇぇっ!!?
あまりに突然の襲撃に、俺は両手を高く上げて降参のポーズをとり、固まってしまう。
見ると、四方八方に、耳の尖った、真っ白い肌に真っ黒い髪の、血のように赤い瞳を持ったエルフの男達が、ぐるりと俺の周りを囲んでいるではないか。
一、二、三、四、五、六、七、八、九……、十人もっ!?
いったいどこから湧いて出たんだっ!!?
……それにしても、まぁ~イケメンばかりだこと。
揃いも揃って綺麗なお顔。
どこぞのアイドルグループかのような、美形男子十人に囲まれて、違う意味でちょっぴりドキドキ……
「待って頂戴。彼は客人よ、弓を下ろして」
グレコが彼らに話し掛ける。
「いくらグレコ様だとて、その命令には従えません。外界の者を里に入れる事は掟で固く禁じられているはず……。それを承知の上で、そのような事を仰られているのですか?」
後ろで弓を構え続ける男が答えた。
男の物言いから、何やらグレコはちょっと身分が高いのでは? と思う俺。
グレコ! 頼むっ!!
助けてくれっ!!!
「その者が、巫女様の仰っていた、神の力を宿しし者だとしても……、かしら?」
グレコの言葉に、俺の後頭部に当てられていた弓矢の先がピクリと動く。
動揺したのか? したんだなっ!?
じゃあ弓を下ろして頂戴よっ!!!
「この者が? 戯言もほどほどにして頂きたい」
「冗談じゃないわよ、ハネス。彼はれっきとした、時の神の使者なの。もう一度だけ言うわ、弓を下ろして。さもないと、あなたに神の天罰が下るわよ?」
そうだぞっ! 弓を下ろせっ!!
精霊呼ぶぞぉっ!!?
すると、俺の後頭部からスッと、弓矢の先が離れていった。
ふ~、危なかったぁ……
イケメンたちに囲まれながら、危うくお漏らしするところだったぜ。
脅してきた相手の顔を見てやろうと、ゆっくりと後ろを振り返る俺。
するとそこには、歪んだ表情で俺を見る、超絶ハンサムなエルフの男が立っていて……
「こいつが神の力を宿しし者だと……? はっ! 俺は信じないぞ!!」
めちゃくちゃ偉そうな物言いで、そう吐き捨てた。
くっそぉ~……、どんな奴かと思えば……
イケメンかよこん畜生っ!!!
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