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第3章 “ハムおじさん”

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 正午、高良田健と“ハムおじさん“は公園へ到着した。高良田健はいつものベンチに座ろうとしたが、そこには子連れの母親2人が座っていて、遠くで走り回っている娘達を眺めながら談笑していた。

 高良田健はその2人の前に立ち、声をかけた。

「ごめんなさい、“ハムおじさん“の配信を行いたいので、このベンチ、僕たちに譲ってくれませんか?」

 高良田健が爽やかなイケメンスマイルを浮べながら言った。

「え?“ハムおじ“?あ、ホントだ!!“ハムおじ“じゃん!!」

 とベンチの左側に座っている茶髪のショートカットの小太りの母親が落武者頭の“ハムおじ“を見つけて言った。

「何それ」

 と右側に座っている紫色のセミロングの太っている母親が言った。

「え!?“安藤さん“知らないの!?最近流行ってるのよ~」

「へ~、“高杉さん“が言うなら間違いないわね」

 “高杉さん“は“ハムおじさん“のファンだった。2人はベンチを譲ってくれた。高良田健は空いたベンチに座り隣にスマホを立て、ライブ配信を続けた。

 ベンチの横に立って娘たちと“ハムおじ“の動向を見ている“高杉さん“が高良田健に話しかけた。

「ねえ、私が“ハムおじ“に〈ハム活〉してもいいかな?」

「ええ、良いですよ」

 高良田健は爽やかにそう言うと、鞄からハムを1枚抜き出して、“高杉さん“に渡した。

 “高杉さん“はハムを持って砂場で遊んでいる娘たちと“ハムおじ“の元へと近づいた。

「あー壊したー」

 “ハムおじさん“が建造中のお城を崩したから、“高杉さん“の娘の“メラミンちゃん“が声を上げた。

「基礎ができてない基礎が、だから崩れたんだ」

「言い訳より謝罪でしょー?」

 “安藤さん“の娘の“いろはちゃん“が“ハムおじさん“を指差しながら言った。

「人を指差すんじゃない!!」

 と“ハムおじさん“がその指を払いのけて言った。“いろはちゃん“は泣いた。

『泣かしたw』

『クズすぎwww』

『歴代1位だな、この“クソハム“」

 “高杉さん“がポイと崩れたお城の上にハムを放り投げた。“ハムおじさん“はハムを放り投げた方を向いた。“高杉さん“と目が合った。“ハムおじさん“は“高杉さん“を上から下まで舐める様に見て、“いろはちゃん“への説教を続けた。

「人の事を指差すんじゃない、どういう教育を受けて来たんだ」

 ギャンギャン泣く“いろはちゃん“。それを無表情で見ている“メラミンちゃん“。『お前だ』『おまゆうw』『お前こそどんな教育受けてきたんだ』とコメ欄、ドスドスと忍び寄る足音。

「なんで食べないの“ハムおじ“~」

 と“高杉さん“。

「己の体型をかえりみろ!!」

 と“ハムおじさん“が“高杉さん“を一喝した所でドスドスと忍び寄っていた“安藤さん“の右の張り手が“ハムおじ“の頬を

『バチーーーーーン!!!!!』

 “ハムおじさん“の体が吹き飛び、砂場の外へ落下した。視聴者たちからまた投げ銭が飛んだ。“いろはちゃん”の顔に笑顔が咲いた。

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