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究極の一枚

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 山頂で朝焼けを見ながら、写真家の高橋真一郎は、自分で沸かしたコーヒーを楽しんでいた。彼はこの場所で夜通し待ち続け、ついに完璧な写真をおさめたのだ。

「これぞ、究極の一杯だ…」真一郎がほくそ笑んでいたその時、突然背後から声がした。

「美味しそうね、一口ちょうだい?」という声に驚き、真一郎はコーヒーカップを少し傾けてしまった。

「ちょ、ちょっと!誰?」と振り返ると、そこには風に髪をなびかせる若い女性が立っていた。彼女は軽装で、しかもハイヒールを履いていた。

「私、木村梓。あなたが有名な山岳写真家の高橋真一郎さんだって聞いてね。会いに来たの」と梓がにっこり笑いながら言った。

「ええっ、ここまで?特別な装備もなしに?」真一郎は驚愕しながらも、どこか彼女の無邪気さに心を引かれた。

「山を登るのは初めてじゃないわ。でも、こんな美しい朝焼けを見るのは初めて。それに、あなたの写真みたいになる瞬間をこの目で見たかったの」

「はは、それにしてもハイヒールはないだろう…」と真一郎が苦笑いする。

「これ、実はお守りなの。失敗しないようにって、母がくれたの。」

「へえ・・・」

 梓はコーヒーを指差し、「これがあなたの写真が素晴らしい秘訣かしら?」

 真一郎は少し考え、「ああ、これはね、山を登った後のご褒美なんだ。でも、おかげで君に会えたわけだし、一緒に飲もうか」と言い、もう一つカップを取り出した。

 二人は山の頂でコーヒーを飲みながら、写真のこと、登山の魅力、そして日常の小さな楽しみについて語り合った。

 朝焼けの光は、彼の会話を優しく照らした。
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