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そうなっちゃう?
しおりを挟む昔から気に入らなかった。
何をするにも先を行く婚約者が嫌いだった。
勉強も、ダンスも、政治や統治の事だって、王子である俺よりも才能があるのが気に食わなかった。
傲慢で高飛車で、プライドの塊みたいな女。
キツイ眼差しも、女という性の代表であると言わんばかりの高圧な態度も、何もかもが嫌いだった。
新しいドレスだの、ブローチだの、ペンダントだの、香水だの、果ては口紅の自慢ばかりの、何をするにも付いてくる鬱陶しい女。
こんなのが婚約者だなんて、父上は一体何を考えているのだろうと、いつも思っていた。
だから、その当てつけのつもりで、生徒会専用の中庭に迷い込んだ婚約者とは正反対の少女を構うようになった。
初めは田舎臭いお節介娘としか思わなかったその言動に、だんだんと癒されていった。
そんな俺に気付いた時、穏やかで優しいその笑みに、暖かいその心根に、どうしようもなく惹かれた。
人を心から思って流れるその涙は、綺麗で、そして純粋そのものだった。
貴族令嬢らしくない彼女は学園で浮いていたけれど、彼女まであの女のようになってしまうのは耐えられそうになかった。
そんな彼女が、あの女から嫌がらせを受けているという事実に、憤らない訳がなかった。
困ったように笑いながら、それでもあの女を許す彼女の優しさに、また惹かれた。
誰よりも優しく、誰よりも美しい心を持った彼女が愛しかった。
いつの間にか、彼女は俺にとって大事な存在となっていた。
だからこそ、そんな彼女を陥れようとしたあの女を許せる訳がなかった。
卒業パーティで婚約破棄を突き付けたのは、堂々と彼女と結婚する為の布石だった。
あの女に辛酸を舐めさせ、己の愚かさを自覚させる為の手段でもあった。
それが何故、こんな事になったんだろう。
確かに愛しいエトワールと婚約する事は出来た。
だが、会えるのは月に一度だけ。
俺は軟禁された上に王位継承権が剥奪され、代わりにあの女の王位継承権が復活したらしいと父上から知らされた。
訳が分からなかった。
俺があの女との婚約を望んだ記憶なんて無い。
一切だ。
きっと父上は、あの女に弱味でも握られているんだろう。
そうでなければ、あの時あんな酷い事を実の息子である俺に言う訳が無い。
こんな風に、軟禁する訳が無い。
こんな事態になっている訳が無い。
前世返りについても教えられたが、きっとこれもあの女の策略だ。
だからこそ誰に何を言われようが、信用出来なかった。
このままでは、この国はあの女によってめちゃくちゃにされてしまう。
俺が、なんとかしなければ。
次期国王である、このアレクサンドルフ・ロストシュヴァイトが。
ぐっと拳を握り、俺は虚空を睨み付けたのだった。
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