あちらの悪役令嬢は、前世が猫だったようです。

藤 都斗(旧藤原都斗)

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そんでどうしろと

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「なるほどなるほど、しかしこれは冷静な相手には通用しないな」

 にっこり笑ったままのご当主様が、暴走寸前だった魔力を落ち着かせてしまった。
 ご当主様の言う通り、直情型の相手との戦闘なら有効な手ではある。

 しかし、俺の目的はこれだけではない。
 
「ぬうっ!?」

 魔力を落ち着かせる為の僅かな時間。
 それはどんな冷静な相手だろうと微かに気を引く事が出来る。
 どれだけ油断や隙の無い相手でも、魔力という己の根幹を揺るがされたら、萎縮までは行かなくとも隙に近い物を生み出す事が可能なのだ。

 つまり。

「俺だってやれば出来る子なんですよ!」

 掌に魔力を収束させ、ぐっと握る。
 それを拳の強化と推進力に変換。

 鋼よりも硬質化した俺の拳が、ご当主様の鳩尾にめり込んだ。

「はっはァ!! その意気や良し!!」

 確かに手応えがあった、なんなら肋骨の二本は折れただろう。
 もしかしたら内臓にも損傷があるのかもしれない。
 にも関わらず、ご当主様は血の混じった唾液を手の甲で拭いながら、獰猛な獣のように口角を上げ、なんとも物騒な笑顔を浮かべた。

 いやなんでこんな元気なのこの人!!

「久方振りだ! 俺に傷を負わせた者は!!」

 豪快に笑うご当主様の口から出たのは、物凄く楽しそうに、まるで戦闘狂の人みたいな台詞だった。

 案の定というか、お約束というか、そんな感じの気がしないでもない。
 というかそんな感じなんだろうなとしか思えないけど、今そんなの知りたくなかった訳で。

 これってどこまでやったら終わりなんですかね!?

 腹にめり込ませた腕を羽交い締めるように掴まれ、このままでは折られるとゾッとしてしまった俺は頭が真っ白の混乱状態、つまり盛大なパニックになった結果。

「うおおおおおおお!!」
「むっ!?」

 ご当主様をブン投げた。

 筋力強化していたせいでそれはそれはもう思いっきり空高く。
 豆粒よりも小さくなってしまったご当主様に、別の意味で血の気が下がった。

 頭を抱えてしまいそうになったけど、その豆粒が物凄いスピードで俺目掛けて落ちて来るのを察してしまったので、バックステップで一気に下がった。

 途端に舞い上がる土煙と、響き渡る轟音が同時にやって来る。

「くっ、視界が!」

 焦った次の瞬間、背後から気配。
 体を無理矢理捻ってカウンターを狙う。

 魔力を込めた拳をその気配に向かって放とうとしたその時、俺の本能がそれを拒否した。

 土煙の中、姿を現したのは​───────

「ぅにゃああああああああ!!」
「クロ!?」

 物凄い勢いとスピードで俺に突っ込んで来たクロだった。
 無理な体勢だった腰がゴギッという嫌な音を立て、おまけとばかりに激痛が俺を襲う。

「にゃあぁん! ぷなあぁん! んなぁああん!」
「ちょ、ま、クロ、今それやってる場合じゃいだだだだ!」

 誰か助けてー!!


 
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