59 / 64
そうかそうか
しおりを挟む粉塵が上がる。
それが晴れるよりも速く、山のように重い拳が飛んで来た。
咄嗟に両腕でガードするが、衝撃で吹っ飛ばされてしまう。
それでもゴロゴロと転がる事で衝撃を逃がしながら体勢を整えた。
防御力を上げる為に、無詠唱で肉体を物理的に堅くする魔法を使っていなければ上半身が吹き飛んでいた事だろう。
ちなみにその辺の奴が受けたら木っ端微塵確定である。
なんつー恐ろしい威力だろう。怖過ぎる。
「どうしたんだい? 君はこんなものじゃないだろう?」
土煙以外の、よく分からない何かのオーラのようなものを身にまといながら、ご当主様がにっこりと笑う。
目を閉じているにも関わらず目が光って見える程、濃い魔力を目に宿しながら笑っているので、めちゃくちゃ怖い。
なんでこうなったんだ! と声高に叫びたいくらいには怖い。
俺が何したっていうんだ、いやもしかして何もしなかった罰がこれか?
もっと王子を王子らしく仕立て上げていくべきだったのか?
でもそうしたらクロは王子と結婚してた訳で、多分俺は勝手に樹海とか行って死んでたし、今みたいに幸せそうにお昼寝するクロとか見られなかっ
「考え事とは余裕だね?」
「はいっ! 申し訳ございませんでした!」
思考を遮るように俺の顔面を狙ったご当主様の拳が頬を掠める。
ビッと嫌な音がして、頬から血が垂れたような感じがした。
無理矢理に避けながら答えたから腰が捻れそうだ。
だけどそれでも頑張って腹筋と太腿に力を入れて体勢を整える。
「不敬罪などに問うつもりはないから遠慮しなくていい、かかって来なさい」
「っ……分かりました!」
とはいえ、ご当主様は強い。
さすがは公爵家当主と言うべきかは分からんが、とにかく強い。
俺が魔法特化型だから余計にそう感じるのかもしれない。
「拘束!」
これは読んで字のごとく身体の動きを阻害する魔法だ。
「ほう、さすが次期魔法師団長候補、魔力密度が高い」
「実はそれだけじゃありませんよ!」
「む?」
俺の拘束魔法は物理で拘束しつつ、魔力でも拘束する。つまり。
「侵食しているだと……!?」
肉体だけではなく精神体も拘束する為には、魔力を侵食させないと無理だから仕方ない。
この世界の魔力とは、精神体と書いてスピリチュアルボディと書くなんかよく分からんアレから生成されている。
魔力で魔力を拘束するとどうなるかというと、蓋をされた蛇口のようになる。
平常時ならともかく、魔力を使っている戦闘時では、身体の中を魔力が暴れ回る事になるのだ。
つまり、意図的に魔力暴走を起こす事が出来るようになる。
はちゃめちゃに危険なので、良い子は真似しないようにして欲しい。
ちなみにこれは多分俺しか制御出来ないと思う。
思い付いた人も居るだろうけど、相手の精神体がどういうものかを理解しないと普通の拘束魔法と変わらないので、使える人が居るかどうかすら怪しいんじゃないだろうか。
ドヤ顔しておこうかな、やっぱやめとこう、後が怖い。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる