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第15羽 憎しみの誕生
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《いろいろ勝手なことを言ってすまなかった。ありがとう、お譲さん》
カラスは顔を上に向けながら体を沈め、照明灯から羽を広げ飛び立った。
そのとき、兄の復讐が脳裏をかすめ、このカラスなら何とかしてくれるかも知れないと思った悠はとっさに《私の名前は悠、あなたは?また会える?》と言うと、カラスは羽ばたく後ろ姿のまま《ムエゼだ。ここ数日正午はこの場所にいる》と答え青空の中へ小さくなっていった。
それから程なく、琴音の車が駐車場に現れ、帰路につくこととなったが車中はどこか重苦しかった。
悠が葬式のことを聞いても琴音は上の空で生返事しかせず、ときおり吐く溜息には泣き出すのを噛み殺している様子が窺えた。
そうしてマンションに着き、夕食の時間になった。琴音は黙々とクリームパスタを口に運びながら赤ワインを飲み、物思いに耽っているような顔でテレビを見ていたが深い溜息の後、悠に顔を向け重い口を開いた。
「うちの店のママが常連さんとゴルフに行ってカラスに襲われて、ママは…頭に怪我を負って入院したんだけど、でも、でも常連さんは……死んだんだって」
パスタが半分残った皿にフォークが落ちる音がし、琴音が頭を抱え泣き始めた。
感情をさらけ出す琴音の姿に動揺する悠だったが、カラス、そうまたもやカラスの言葉が出てきたことに別な意識が反応した。
「その常連さんって、どんな人だったの?」
充血した目を見開き、頬には涙の粒が伝っている顔で琴音は悠を見た。
その顔はクライマックスにさしかかったパニック映画のワンシーンのようだった。
「前に言ったかも…カ、カツラの人。社長さんで、傾いた会社を立て直した努力家の人だったのに」
努力家?あの社長の努力とは何だと思う?首切り、リストラだよ。悠はカラスの囁きが聞こえた気がした。
「このままじゃここも引き払わなくちゃいけないかも。お店もいつ再開できるかわからないし…」
テーブルに突っ伏し、涙声で言う琴音だったが、悠がその言葉の意味を知ったのはずっと後だった。
突っ伏した琴音の握りこぶしがテーブルを叩いた。
そして少しの間を置いて再びテーブルを数回叩いた後、搾り出すような嗚咽がテーブルを伝って悠の耳に届いた。
身近な常連さんが死んだから?将来の見通しが不安になったから?
何を思ってテーブルを叩いているのか、悠にはわからなかった。ただ根源の全てであるカラスに対する憎しみは生まれただろうと思った。今生まれなくてもいずれ、必ず。
カラスは顔を上に向けながら体を沈め、照明灯から羽を広げ飛び立った。
そのとき、兄の復讐が脳裏をかすめ、このカラスなら何とかしてくれるかも知れないと思った悠はとっさに《私の名前は悠、あなたは?また会える?》と言うと、カラスは羽ばたく後ろ姿のまま《ムエゼだ。ここ数日正午はこの場所にいる》と答え青空の中へ小さくなっていった。
それから程なく、琴音の車が駐車場に現れ、帰路につくこととなったが車中はどこか重苦しかった。
悠が葬式のことを聞いても琴音は上の空で生返事しかせず、ときおり吐く溜息には泣き出すのを噛み殺している様子が窺えた。
そうしてマンションに着き、夕食の時間になった。琴音は黙々とクリームパスタを口に運びながら赤ワインを飲み、物思いに耽っているような顔でテレビを見ていたが深い溜息の後、悠に顔を向け重い口を開いた。
「うちの店のママが常連さんとゴルフに行ってカラスに襲われて、ママは…頭に怪我を負って入院したんだけど、でも、でも常連さんは……死んだんだって」
パスタが半分残った皿にフォークが落ちる音がし、琴音が頭を抱え泣き始めた。
感情をさらけ出す琴音の姿に動揺する悠だったが、カラス、そうまたもやカラスの言葉が出てきたことに別な意識が反応した。
「その常連さんって、どんな人だったの?」
充血した目を見開き、頬には涙の粒が伝っている顔で琴音は悠を見た。
その顔はクライマックスにさしかかったパニック映画のワンシーンのようだった。
「前に言ったかも…カ、カツラの人。社長さんで、傾いた会社を立て直した努力家の人だったのに」
努力家?あの社長の努力とは何だと思う?首切り、リストラだよ。悠はカラスの囁きが聞こえた気がした。
「このままじゃここも引き払わなくちゃいけないかも。お店もいつ再開できるかわからないし…」
テーブルに突っ伏し、涙声で言う琴音だったが、悠がその言葉の意味を知ったのはずっと後だった。
突っ伏した琴音の握りこぶしがテーブルを叩いた。
そして少しの間を置いて再びテーブルを数回叩いた後、搾り出すような嗚咽がテーブルを伝って悠の耳に届いた。
身近な常連さんが死んだから?将来の見通しが不安になったから?
何を思ってテーブルを叩いているのか、悠にはわからなかった。ただ根源の全てであるカラスに対する憎しみは生まれただろうと思った。今生まれなくてもいずれ、必ず。
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