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第2章 シンデレラ・プロジェクトって?

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 チンと音がしてエレベーターの扉が開くと、玲伊さんが待っていてくれた。

「やあ、いらっしゃい」

 思わず、目を奪われる。

 玲伊さん、うちの店にいるときとはまるで別人。
 完全にオンの表情。
 自信に満ち溢れた青年実業家の顔をしている。

 美しさに精悍さと男らしさも加わって……
 なんて言うか、もう眩しすぎる。
 ただただポーっと見とれてしまいそうになる自分に、「しっかりしてよ」と心のなかで叱咤した。

「玲伊さん、なんでわたしが会議室に呼ばれるんですか」
 降りるなり、困惑顔で問いかけるわたしを、玲伊さんはまあまあとなだめて「とにかくこっちに来てくれる」と先に立って歩いていった。

 会議室と言っても、もちろん事務用の机や椅子が置いてあるだけの、無味乾燥な部屋ではない。

 まるで温室のようにさまざまな種類の大型観葉植物が置かれており、ナチュラルカラーのフローリングの上にはカラフルな幾何学模様のラグが敷かれている。
 そしてテーブルも椅子も、カフェに置かれていてもおかしくないような、素敵なデザインだ。
 
 玲伊さんのあとに続いておそるおそるその部屋に入ると、女性がふたり、先に席についていた。

 ひとりはわたしも知っている人。
 〈リインカネーション〉の統括マネージャーの笹岡隆美さん。
 ハーバード大学で経済学を修めた才色兼備のすごい女性。
 開業以来、玲伊さんを影でしっかりと支えている実務のトップだ。 

 そして、もうひとりの見知らぬ女性が立ち上がり、笑みを浮かべたままこちらに向かってきた。
 明るめの茶髪のショートカットにモカ色のパンツスーツが良く似合っている。
 彼女も笹岡さんに負けず劣らず〝できる女〟オーラを全身から発散している。

 やっぱり、わたし一人、あまりにも場違いだ。
 居たたまれない心地に、自然と顔がうつむいてしまう。

「この方ですか?」
「そう。どう、今回の企画にピッタリじゃない?」
「ええ、まさに原石ですね。磨けば磨くだけ、光、輝きそう」
「でしょう?」

 彼女はわたしの前に一歩進み出て、手にしていた名刺を差し出した。
「カレンの紀田と申します。よろしくお願いします」
「あ、加藤優紀です」
 名刺に目をやると、紺色の用紙に白抜きの文字で「『KALEN』 編集部 紀田 カスミ」と書かれていた。

「えっ『KALEN』って、あの雑誌の『KALEN』の編集の方なんですか?」

 『KALEN』は20代から30代の女性に絶大な人気を誇るファッション誌。
 昨年、創刊45周年記念号を発売して即完売となり、話題になった。
 増刷分を注文してもなかなか入ってこなくてお客さんに文句を言われたのが、記憶に新しい。

 席につくと「早速ですが」と紀田さんはホッチキス止めされているA4サイズの企画書をわたしの前に置いた。
 表紙に大きな文字で『シンデレラ・プロジェクト』と記されている。
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