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第3章 元カレとの再会

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 やっぱり、一回り器が大きくなったような気がするな、宗一郎さん。

 さっきの打ち合わせから考えると、この仕事はかなりの長丁場になるはず。

 気を遣ってくれただけかも知れないけど、とりあえず、お互いわだかまりなく仕事が出来そうで良かった。
 昨日までは、最悪、担当を降りる事態があるかも、と思っていたから。

 そして、今回、宗一郎さんの会社を生まれ変えらせる手助けができれば……
 あのとき、彼を傷つけた償いがすこしはできるかもしれない。

 よし、頑張らなきゃ。宗一郎さんのためにも。

 けれど、一難去ってまた一難というか。

 駅に着いてみると、部長は見るからに不機嫌そうな顔つきで、駅舎横の喫煙スペースで煙草を燻らせていた。

 怒ってる?
 でも、先に行くって言ってくれたのは部長だし……


 すみません、遅くなりましたと言おうとしたら、部長が先に口を開いた。
「あの社長と知り合いだったのか」
「はい。大学の先輩です」

 部長はふうーっと煙草をふかすとわたしの顔をじっと見た。
「で、元カレだろう?」

「えっ?」
「お前らの態度を見てたらわかる」

「そ、そんなこと」
 ふたたび煙草を唇に咥え、皮肉な調子で言った。

「それで、あらためて口説かれてたってわけか。再会の口づけでも交わしてたのか。色男だしな、あの社長」


 はあ? 何、それ。
 カチンときた。

「そんなこと、部長に言われる筋合いはないと思いますが」

「ああ、そりゃそうだ。お前が誰に口説かれようが、俺には関係ない」

 乱暴な様子で煙草をもみ消すと、部長は改札に向かおうと一歩踏みだした。
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