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第1章 誰、それ?

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***
 
 そして、あっという間に翌々日になった。
 榊原宗介の来社は13時ごろらしい。
 
「あ、郁美先輩」
 早めに昼食を終えて戻ってきたわたしに知花が声をかけてきた。

 知花のまわりには、部内、部外を問わず、大勢の女子社員が集まっていた。
 
「宗様の写真撮ったら、わたしのスマホに送ってもらいたいんですけど」
 いつもより3倍メイクに手間をかけました、ほら、ネイルもバッチリです! と言いたげな知花が拝んできた。

「写真は広報の人が撮るだろうけど、わたしは撮らないよ。それに課長がSNSへの掲載はNGって言ってたけど。ほら、ドラマのこと、まだマル秘だし」

「えー」知花ががっくりと肩を落とす。
 自慢する気満々だったな。まったく。

「会社の信用問題にも関わるから、こっそり上げたりしたら、絶対ダメだからね」
 わたしはそこにいた全員に釘を刺す。
 はーい、とちょっと不満げな返事が返ってきた。

「ほら、もうすぐ昼休憩終わるから。みんな自分の部屋に戻って」          

 そのとき、廊下がガヤガヤしだして、女の子の黄色い歓声が聞こえはじめた。

 こちらです、という声とともに、オフィスのドアが開く。
 専務と課長に先導されて、マネージャーに付き添われた榊原宗介が入ってきた。
 
 突如、オフィス内の空気が変わった。

 女子社員たちが洩らす、ため息混じりの声がさざ波のようにあたりに広がる。

 でもさすがに、女子高生のように大声で叫ぶ人間はいなかった。
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