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第8章 千秋楽の夜
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楽屋口で出待ちしているファンの女性たちの鋭い視線を浴びながら、亮介さんを先頭にしてわたしたちは楽屋口から中へと入っていった。
「お、ここだ」
宗介の楽屋は長い廊下の中央あたりに位置していた。
さすが主役だけあって、舞台への出入りが一番しやすいところを割り当てられている。
亮介さんがノックすると、中から向井さんが出てきた。
「弟です。取り次いでもらえますか」
すると、奥から「おう、入れよ」と彼の声。
宗介……
声を聞いたとたん、舞台の感動が蘇ってきた。
そして、ドアが閉まるのと同時に、わたしは、鏡前に座っている宗介に駆けより、後ろから抱きついた。
「宗……めちゃくちゃ良かった」
「郁美」
振り向いた彼の顔は、満足感に満ちていて、いつもに増して輝いていて見える。
「さすが、我が夫。もう惚れ直したよ」
「お褒めにあずかり光栄のいたり」
と、宗介もおどける。
ふふっと笑い合っていると「あのー」と亮介さんが苦笑しながら声をかけてきた。
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