悪役令嬢は双子の淫魔と攻略対象者に溺愛される

はる乃

文字の大きさ
39 / 113
旧ver(※書籍化本編の続きではありません)

ディペの憎悪

しおりを挟む




時空のはざまにある、アスモデウスの居城。
この居城では、人間や魔物達が住む世界とは違った時間が流れている。

魔法により、窓の外には永遠と終わらない夜空が広がっており、城の内部はさながら迷路のようになっていた。
そんな居城にあるガラス張りの温室では、ディペが自らの主人でもあるアスモデウスを探していた。

花や木々の代わりに、この温室内にはクリスタルで出来た花や木々が生い茂り、キラキラと月の光を反射しながら煌めいている。

「あっ!アスモデウス様!」

ディペが目当ての人物を見つけて、嬉しそうな笑みを浮かべながら走り寄る。

アスモデウスは温室の奥に設置されている、柔らかで質の良い、ふかふかのソファーに寝そべっていた。ディペの声に一度だけ金色の混じった真紅の瞳を開けたけれど、すぐに興味が失せたかのように、また瞼を閉ざした。

「アスモデウス様、起きて下さいまし。そろそろお腹が空いたのでは?どうぞ、私をお召し上がり下さい」
「……今週はお前が勝ったのか?」
「はい!皆、アスモデウス様に精気を捧げたく、ギリギリまで命懸けの戦いを繰り広げました」
「何人殺った?」
「今回は三人ですわ。アスモデウス様」

ディペはうっとりとした顔をして頬を薔薇色に染め、寝ているアスモデウスの上に跨がる。アスモデウスの美しさは悪魔の中でも群を抜いており、配下であるディペもまた、アスモデウスに主人としての敬愛だけでなく、思慕の念を抱き、その美貌の虜となっていた。
衣服が開けて露になっている厚い胸板や割れた腹筋に指を滑らせ、甘えるようにアスモデウスの身体に身を寄せる。

早く早く抱かれたい。
美しい主人とひとつになりたい。

「アスモデウス様」

服の上から、アスモデウスの情欲にそっと触れる。それだけで、ディペの秘処は蜜を溢れさせてしまう。
しかし。



「止めろ」



再び開かれたアスモデウスの瞳は、恐ろしく冷たいものだった。

今までそんな目で見られた事が無かったディペは、身体を硬直させ、血の気が引いていく。

「あ、アスモデウス様……?」
「今はそんな気分じゃない。失せろ」

ここですぐに引けば、ディペは未だ配下の中でも優位な位置に立てただろう。
けれど、前に何度も精気を捧げる為に抱かれ、至福の快楽を身を以て知ってしまっている彼女は、諦め切れずに食い下がってしまったのだ。

「ですが、先週も先々週も精気を摂っていらっしゃらないのでしょう?アロやジェラでは満足出来なくとも、私なら……」

自身の秘処を擦りつけるようにアスモデウスの上で動くと、次の瞬間、ディペは突然呼吸が出来なくなる。

「かはっ……?!」

アスモデウスに片手で首を締められたからだ。



「いつから主人に意見できる程偉くなった?私は“失せろ”と言ったのだ。……この雌豚がっ!」



端正な顔が苛立ちで歪み、その瞳は血のような真っ赤で、ディペは魚のようにはくはくと口を動かしながら、己の最期を覚悟した。

ミシミシと軋む骨。
あと少しアスモデウスが力を加えたら、ディペの首はポキリと折れてしまっていただろう。

だが、アスモデウスは殺すことはせずに、青褪めて血の気の失せたディペを、ソファーの下へと放った。

「………っぁ?!」
「次は無いぞ、ディペ。今すぐ私の前から消えろ。……私が抱きたいのはヴィクトリアだけなのだから・・・・・・・・・・・・・



――――“ヴィクトリア”?



アスモデウスは眉根を寄せ、切なく焦がれるような瞳で天を仰ぐ。



「嗚呼、ヴィクトリアが欲しい。私の虜にならなかった者はヴィクトリアだけだ。……どうすれば手に入るのか、今の私には分からない。……彼女以外、欲しくない。彼女を……」



“彼女を抱きたい”。



そう小さく零すと、アスモデウスは再びソファーに寝そべってしまった。

閉ざされた瞳。
以前は、精気を捧げる時だけ、甘やかに惑わすような魅惑的な瞳を向けて下さったのに。



ディペはゆらりと静かに立ち上がり、温室から出ていく。

その胸に、激しい憎悪を抱いて。



「ヴィクトリア……?アスモデウス様が興味を持たれて、二度程この城へ招いたという半端者か」

アスモデウスが気紛れに喚び出す者の事は、配下の数人がチェックしている。
喚び出された者は人間にしろ魔物にしろ、アスモデウスと契約した場合、ある意味ではその時点で自分達と同僚になるからだ。実際には、その者がアスモデウスに飽きられた後、自分達強者の玩具となるわけだが。


“半端者”。
人間からサキュバスへ転化したものの、魂が異質で、魔物になり切れなかった女。


(そんな半端者がアスモデウス様の御心を惑わせるだなんて……)



許せない。



ディペはアスモデウスの居城から飛び出し、人間達の世界へ向かった。
主人である愛しのアスモデウスに元に戻ってもらうには、原因となった者を消してしまえばいいと考えたからだ。

存在自体が無くなってしまえば、アスモデウスも興味を無くし、再び自分を見てくれるだろう。
その頃にアスモデウスの空腹がピークに達していたならば、獣ように激しく抱いてくれるかもしれない。

ディペは口端を上げて、黒い翼を羽ばたかせながら、自身の濡れそぼった蜜口に指をつぷりと挿れて掻き混ぜる。
その顔は自分を抱くアスモデウスを想像して恍惚としていた。

「ああっ、アスモデウス様……!今すぐ貴方を惑わせる雌豚を、このディペが排除して参ります!……アスモデウスさまぁ♡♡」

こうしてディペは、ヴィクトリアの居るリリーナ魔法学園へ向かったのだった。


* * *
しおりを挟む
感想 102

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。