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旧ver(※書籍化本編の続きではありません)
仕事に勤しむ三人
「解せない」
眉根を寄せ、そう不満げに漏らしたのはエリックだ。
王太子専用の執務室にて、エリックの手伝いをしていたジルベールが、顔さえ上げずに手元の書類に目を通しながら「何がですか?」と問い掛ける。
「僕は父上に叱られた上、まだこんなにも仕事が残っているというのに、どうしてジルはそんなに余裕があるんだ?」
「それは勿論、仕事が溜まらないようにしていたからでしょう」
「なんだって?……あの状況で、よく仕事をしようと思えるな。僕はリアから片時も離れたくなかったというのに。……まぁ、途中で休息は取っていたが……」
「ああ、レオンハルト殿下の時ですね」
「…………」
「あの場には、精気を与える人間が四人も居た。しかも全員、彼女に好意を持っている。であれば、彼女はすぐに回復し、危機的な状況からは脱するだろうと、容易に想像出来る。だから焦る必要も無いし、仕事にも手が回る」
「……僕は嫉妬で気が狂いそうだったけど?」
「僕にだって嫉妬の気持ちくらいありますよ。……ですが、まぁ、今更ですし。それに、僕は殿下と違って夢の中でばかり彼女を抱いていましたからね。彼女の命を救う為とはいえ、現実世界で堂々と抱けるだなんて願ってもない事でしたから」
ヴィクトリアとの情事を思い出したのか、僅かに口元に綻ばせるジルベールに、エリックは苛立ちながら仕事を再開する。
「……いつもあんな感じなのか?」
「あんな感じとは?」
「その……媚薬とか……」
エリックが言葉を濁ませつつ、ボソボソと口にすると、ジルベールは「ああ」と納得したように答えた。
「媚薬や玩具の事でしたら、そうですね。その方が興奮しますし、何より彼女が気持ち良さそうですから」
「いや、だが……」
「殿下も見たでしょう?あんなに気持ち良さそうに悦がって喘ぐ彼女を。殿下には申し訳ないですが、僕と彼女の身体の相性は抜群です。僕以外の男では、きっと満足出来ないでしょう」
「ジル、お前……」
幼い頃から共に過ごしてきたジルベールに対して、ここまで殺意が芽生えたのは初めてだ。
しかし、一時の感情を暴走させてジルベールを殺すわけにはいかない。
そうして、エリックの意識はこの場に居ないヴィクトリアへと向けられた。
腹立たしいことこの上ないが、確かにヴィクトリアはジルベールとの情事で激しく感じていたようだった。
もしかしたら、ジルベールが言う通り、本当に他の男では満足出来ない身体になってしまったかもしれない。
(いや、しかし……)
そこまで考えてから、エリックははたと気付く。
(リアは僕との情事でも、十分感じてくれていた筈だ)
エリックが王宮へ戻ってきてから既に数日経っているが、あの日の事は今でも昨日の事のように鮮明に思い出せる。
『好きっ……好きぃ♡♡エリックとするの、大しゅきぃぃ♡♡♡』
『嗚呼、リア!僕も好きだよ♡大好きだよ♡僕のリア♡♡………さぁ、出すよ?僕の子種を出すよ?全部、受け止めて……!』
『ひゃあああん♡♡♡イクの、止まらな……アアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーー♡♡♡♡♡』
……………………
…………
「…………」
「殿下?……どうかしましたか?」
「いや、何でもない」
可愛すぎるヴィクトリアを思い出し、エリックは赤くなった顔を隠すように片手で覆う。
(馬鹿か、僕は。思い出したら勃ってしまうなんて……)
涙で潤んだ瞳、上気した頬、濡れた唇。どこもかしこも柔らかく、蜜を溢れさせてぐずぐずに蕩けた身体。張り詰めた男根を奥まで挿れれば、ヴィクトリアの中が嬉しそうにキツく絡み付いてくる。
まるで、もっともっとと強請るように。
(……リア……)
今すぐ、彼女に逢いたい。
彼女になら――――ヴィクトリアになら、精気を全て吸われても構わない。
それ程までに、エリックはヴィクトリアを愛していた。
「殿下?……少し休憩しましょうか」
「いや、いい。すまないな。早く片付けてしまおう」
「分かりました」
束の間、仕事とは何か別の事を考えていたらしいエリックにジルベールは首を傾げつつ、気を取り直して手にしていた書類へと再び視線を落とす。
窓の外に燦々と輝く太陽はまだ高い。
けれど、残りの書類はまだまだあり、今日中に終わらせるのは難しいだろう。
途中、無言で執務室から出て行ったジルベールが、騎士団で鍛錬を終えたばかりのアベルに拘束魔法を掛け、無理矢理引き摺って戻って来た。
魔物相手であれば決して隙を見せないアベルだが、相手がジルベールだった為に油断してしまったのだ。
「いや、あの……俺、書類仕事とかは苦手なんですけど……?」
そうして、月が夜空に輝き、星が瞬く頃、エリックの仕事は終わった。
明日にはきっと、学園でヴィクトリアに逢えるだろう。
* * *
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