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旧ver(※書籍化本編の続きではありません)
幸せの形②
しおりを挟む「あら?ノア、来ていたの?」
ヴィクトリアが公爵邸の庭にあるガゼボにて、昼食の入ったバスケットを広げていると、黒髪の少年が笑顔を浮かべながら駆け寄ってきた。
「母上!」
そうして、ヴィクトリアにぎゅうっと抱きつく。
「母上は今日もお美しいですね!世界中の女性が霞んでしまいますよ!」
言われて、ヴィクトリアは目をぱちくりさせた。
「まぁ、どこでそんな言葉を覚えてきたの?」
「ジルおじさんが言ってました!母上の美しさはもはや罪だと!月の女神様も真っ青だって!」
「………あのね、ノア。ジルおじさんには特殊なフィルターが掛かっているの。だから何でも真に受けちゃ駄目」
「え~?でも、アベル団長も似たような事を言ってましたよ?」
「皆、フィルターが掛かっているの。身内贔屓というやつよ。だから、気にしては駄目。分かった?」
「だって、母上は本当に美しいですよ?シミや皺一つ無いですし!」
「こら!女性相手に、シミや皺だなんて、そんな事を口に出してはいけません!」
「僕、母上を褒めたのにぃ……」
ノアが口にした通り、ヴィクトリアにはシミや皺など、一つも無かった。
寧ろ、外見は一番美しい頃から何一つ変わっておらず、実年齢を感じさせない。
まるで、無垢な少女のようでもあり、色香纏う妖艶な美女にも見える。
「お一人で昼食ですか?」
「いいえ。もう少ししたら、エリック様とシュティが来るはずよ。夜にはレオンハルト様がいらっしゃるから、ノアも晩餐に参加する?」
「是非!レオおじさんは色んな国の話をしてくれるから、ご一緒出来るなんて凄く嬉しいです。今から楽しみだなぁ」
レオンハルトは王族として、ザシャルーク王国の外交を担っている。
それ故に、様々な国へ足を運ぶ為、ノアはレオンハルトの土産話を毎回楽しみにしていた。
人間のエリックやレオンハルト達は、人外であるヴィクトリア達に比べれば外見にも多少の変化があった。
しかし、他の人間達よりは遥かに若く見える為、未だに数多くの女性達が魅了されている。
「わんっ!」
「あっ!シュティ!」
犬の姿でこちらへ勢い良く駆けてくるシュティに、ノアは両手を広げて受け止めた。
シュティの登場から少し遅れて、エリックもやって来た。ノアに気が付き、にこりと笑みを溢す。
「ノア、おかえり。来ていたんだね」
「父上!」
「いつ着いたんだい?昼食は?」
「少し前に着いたばかりです。昼食は馬車の中で軽く食べました」
「……軽く?育ち盛りなのだから足りないだろう。一緒に食べていくか?」
「え」
一瞬だけ、ノアが笑顔のままピシリと固まる。
「いえ、大丈夫です!他の皆にも会いたいですし!それでは、父上、母上、失礼します!」
エリックからの誘いを断り、ノアが脱兎の如く走り去っていく。
シュティもノアと共に行ってしまった。
ヴィクトリアは、そんなノアとシュティの後ろ姿を名残惜しげに見送っていたが、エリックは上機嫌で、ヴィクトリアの隣へ腰を下ろした。
「我が息子ながら、気の利く子だ」
「エリック様?」
「ふふ、何でもないよ。待たせてしまってごめんね。さぁ、昼食にしよう」
* * *
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