悪役令嬢は双子の淫魔と攻略対象者に溺愛される

はる乃

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旧ver(※書籍化本編の続きではありません)

幸せの形③



「はぁ~。母上との時間を邪魔すると、父上が不機嫌になるからなぁ。仲が良いのは良いことだけど、狭量過ぎる父上には困ったものだよ。ね?シュティ」
「わふ!」

ノアは眉根を寄せ、困った顔でやれやれと溜め息をついた。
思わずシュティに同意を求めれば、その通りだと言わんばかりに返事を返されたので、ノアは嬉しくなって足元にじゃれつくシュティをわしゃわしゃと撫で回した。

「シュティは可愛いなぁ。それに、何だか一緒に居ると落ち着くし」
「わうっ!」

シュティは嬉しそうに尻尾をぶんぶんと振る。まるで普通の犬のように。

ノアは藤色の瞳を細めた。

「そう言えば、フィルやナハトはシュティが苦手だったな……」

不意に思い出した、母であるヴィクトリアの忠実な双子の従者達。
ヴィクトリアの息子であるノアも、当然彼等とは仲が良い。
以前、シュティがジュースを被ってしまい、ノアがシュティを洗ってあげたいから手伝って欲しいと、フィルとナハトに願い出たことがあった。

『『ノア様のお願いとあらば』』

二人共、すぐに了承してくれたが、シュティに触る事には難色を示していた。

(犬アレルギーなのかな?)

彼等にも会いに行こう。
ノアがそう考えた時、お腹がきゅるっと鳴った。やはり育ち盛りの少年には、軽食だけでは足りなかったようだ。

父の不興を買ってでも、一緒に昼食を食べれば良かったかもしれない。

この場に居るのは犬の姿をしたシュティだけだが、ノアは少し恥ずかしそうに顔を赤らめて笑って誤魔化す。

「あははっ。シュティ、僕はちょっと厨房に行ってくるよ。最近、新しい子・・・・が入ったらしいからね!」

新しく入ったらしい使用人が気になるフリをして、本命は恐らく厨房のお菓子だろう。
可愛らしい言い訳。
誰かがノアの言葉を聞いていたならば、きっと微笑ましく感じたに違いない。

――――しかし。


「可愛いだといいな」


先程まで藤色だったノアの瞳の色が、鮮やかな深紅へと徐々に移り変わっていく。
よく見てみると、その深紅の瞳には、金色が混じっていた。

「ふふ、ちゃんと加減しなくちゃね。愉しみだなぁ。……僕好みの人だったらいいな」

そうして、嬉々として厨房へ向かうノアを見送り、シュティが人知れず美丈夫な青年の姿へと変化する。

その神々しい姿は、以前と何も変わっていない。
むしろ、以前より光り輝いているようにも見える。
シュティは短く嘆息し、くしゃりと銀に近い美しい白い髪を掻き上げた。

『……新入りは娘ではなく、確か男だった筈。ノアが少し暴れるかもしれんな』

シュティが金色の瞳を細め、その場からふわりと飛び立った。目指す場所は、アスモデウスの居る西館。

『フィルとナハトも居るだろうし、ノアのことは彼等に任せよう』

シュティの真なる姿を、ノアはまだ知らない。
だが、何か気付いてはいるかもしれない。

(ノアは、聡い子だから――――)

……………………
…………

ノアは、ヴィクトリアが交わった相手の、全ての精気が混ざり合って産み落とされた子供。
聖獣であるシュティや、悪魔であるアスモデウス、淫魔のフィル、ナハト、ルカ。人間のエリック、ジルベール、アベル、レオンハルト。

そして、母体となったヴィクトリア。

その全ての精気が混ざり合っており、まだ覚醒はしていないが、魔力や聖なる力も引き継いでいる特異な存在だった。

今後の成長次第で、神の使いにも、悪魔にもなれる。

そんな相反する力を内に秘めるノアには、好んで食すものがあった。

それは、他人の“精気”。

アルディエンヌ公爵邸にて働いている年若い女性は、現状、殆どがノアの糧となってしまっていた。


* * *
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