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本編
放課後の学院と脅迫状①
しおりを挟む『ディアナお嬢様はまだ学院からお帰りになっておりません』
アーベントルト公爵家の執事の言葉に、何故だか僕は戦慄した。
僕はいつもディアナから避けられている。連絡だって取っていないし、むしろ取れない。帰宅時間さえ把握出来ていない。
だけど。
(ディアナ!!)
僕はすぐに学院へとんぼ返りして、どうしようもく酷い胸騒ぎを感じ、ディアナの姿を探す。
学院に居るとは限らない。
偶々何かで帰るのが遅れて、入れ違いになっただけかもしれない。下校途中で友人の貴族令嬢達と買い物をしている可能性だって……なくも、ない。
その場合、公爵邸に連絡を入れていないとおかしいけど。
入れ違いになっただけならいい。
僕が勝手に焦って、勝手に慌てただけになるんだから。
でも。
(まさか、第二王子派の連中がディアナに何か?!)
連中が一番阻止したいのは、僕に後ろ楯が出来る事。アーベントルト公爵家という、強固な楯が。
軍部に多大な影響力を持つアーベントルト公爵を敵に回すのはリスクが高過ぎる。故に、流石にディアナに手を出す者はいないと思っていた。
(考えが甘かった……!)
門を入ってから暫く走り、馬車乗り場の確認をすると、未だにアーベントルト公爵家の紋章入りの馬車が停まったままだった。
未だ馬車の元へやって来ないディアナを心配する御者に声を掛けて、ディアナを探してくる旨を伝える。
嫌な不安が確信に変わる。
やっぱりディアナに何かあったに違いない。
既に帰ってしまった側近達に連絡する時間さえ惜しくて、非効率にも手当たり次第に探していくと、生徒会室の近くまで来た時に、誰かが走り去っていくのを見た。
「誰だ?!」
叫ぶように問い掛けても返事は無い。追い掛けようと再び足を動かそうとしたその瞬間。
生徒会室の斜め向かいの資材室から声が聞こえた。
まさか。
「……ディアナ?」
資材室の扉には鍵が掛かっていた。
そして――――
「ディアナ!!」
資材室の中で、その身を震わせながら青褪めているディアナを見つけた。
……………………
…………
*ディアナside*
放課後になっちゃったよ……
これ、本気でやばいやつ。
私は開かない資材室の扉に背中を預け、座り込んでいた。
あーあ。こんな事なら3次元のリーンハルト殿下なんて放っておけば良かった。ばっかみたい。
こんなんじゃ、例え今、誰かが脅迫状を持ってきたとしても、とても回収なんて出来な――――
コツコツコツ。
(足音……?)
これはチャンスだわ!
ちょっと恥ずかしいけど、資材室の扉をバンバン叩けば気付いてくれるかもしれない。
「誰か……っ?!」
資材室の扉の上部についている小さなガラス窓。そこから廊下の方を見てみれば、学院の制服を着た男子生徒の手には怪しい封筒。
(あれは……脅迫状?!)
男子生徒は平然と生徒会室の中へ入ると、すぐに手ぶらな状態で廊下へと出てきた。
間違いない。やっぱりさっきのアレは――――
ディアナは扉を叩く事も声を上げる事も忘れていた。
犯人がそそくさと走り去るのを見つめながら、必死にその顔を頭に刻み込む。
そして、すぐに気付いた。
先程、危惧していた事そのままに、このままでは脅迫状を回収出来ない。みるみる顔色を青褪めさせて、必死に何とかこの資材室から出なくてはと焦燥を募らせていると……
「誰だ?!」
その叫ぶような声に驚いて、ビクリと肩を揺らした。
この声は、まさか――――
「……ディアナ?」
確かめるように名を呼ばれた。
私の大好きな金色の髪に、王族の証である金色の瞳。
私の愛する有名な某声優様と同じ声。
「ディアナ!!」
今一番この場にいて欲しくない、私の婚約者であるリーンハルト殿下が、そこに居た。
* * *
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